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凍りのくじら  11/14/2007  
凍りのくじら (講談社ノベルス)凍りのくじら (講談社ノベルス)
(2005/11)
辻村 深月

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『凍りのくじら』 辻村深月

ダヴィンチのプラチナ本として紹介されていたのを
読んだのがキッカケで、辻村深月の作品を手に取った。
最初にこちらを借りようと思っていたのに、
後ろに書かれている粗筋に惹かれ、
『冷たい校舎の時は止まる』から読んだ。
久しぶりのミステリーだ~と思いいつつ。
その作品が面白かったので、今度こそは、と思い、
本命だった『凍りのくじら』を借りてきた。

ストーリーは、理帆子が写真家を志すまでの、きっかけの物語。
理帆子の父は自然撮影で人気のあった写真家で5年前に失踪。
そして残された母と二人暮しだったが、母は癌で入院中。
そんな彼女は高校生だが、周りの人間にあまり馴染んではいない。
彼女が好きな遊びは、ドラえもんの作者である漫画家の
不二子・F・不二男のSF(少し・不思議)をもじって、
周りの人たちを、SFであらわすこと。
理帆子の母は、「少し・不幸」、理帆子自身は「少し・不在」
同級生には「少し・憤慨」と「少し・不安」。
そして、父と母の旧友には「少し・不完全」、元恋人には「少し・腐敗」。
自分の精神年齢の高さゆえに、周りの人間と心の底から分かち合えず
どうしても距離を置きながら、演技をすることで、一緒にいられる状態。
そんな理帆子が、高校2年生の7月、同じ高校の3年生から、
写真のモデルに、と頼まれる。

読み終わったあとの感想。

確かに、ダヴィンチでプラチナ本として一押しなだけある!
理帆子の家族の話と同時に、元恋人である、自分よりイタイ人間の若尾とのやり取り、
そして写真のモデルに、と話を持って来た別所との交流を通して、
理帆子自身の精神的な、周りとの環境、周囲の人々との違和感や
その内面を軸に話が語られる。

好きな話だった。写真集のくだりとか、不覚にも泣いてしまった。
病気苦ゆえに失踪してしまった写真家の父、そして癌に冒されながらも
夫の写真を整理して構成し、写真集作りに取り組む母。
二人が子どもである理帆子にあらわした愛情表現の違い。
母と理帆子が上手く通じ合えない関係。
色んな人がいて、色んな愛情の示し方がある。
それが、派手にならずに、そしてきっちりとおさえていた。

周囲の人間には馴染めない、そして心を開いて、きちんと向き合っていけない。
だからこそ、周りを自分より頭が悪いと決めて、それなりの対応しかしない。
そして執着をしない。
そんな自分を客観視しながら、精神的に同類な若尾と恋人同士になるが、
結局のところ、きちんと分かり合えることもなく、関係が消滅する。
なんとなく、どころじゃなくて、あたし自身と似かよったところがある
面白いのは、ストーリーの中で繰り返し語られる、理帆子自身の話だった。
自分がどういう人間であるか、そして周りと自分との関係をどう捉えているか。

理帆子に自分は似ている。
まぁ、似ているとはいっても、理帆子ほど賢く現実に対応して
演技をしながらも、周囲にあわせることはしていない、というか出来ない。
あんまり周囲の顔色や、人間性を観察することはなくて、
客観視して、自分ときっぱり切り離していないところが、理帆子とは違う。
イタイ人間を自分自身と同類と思ってしまうところとか、
感情の出し方とか、そんなところが似ていた。

自分と似ている、と思う主人公の話を読むと、どうしても、
感情移入してしまうことが多いのだけど、今回は少し客観的に見れた。
小説のストーリーでの作られた主人公として見れた、というのかな。
写真がテーマで出てきたり、ストーカーまがいの1歩危うい若尾とか、
写真を撮りたがる別所の言葉とか、現実ではありえないだろう、と思える
一歩行き過ぎた感があったからかな。
まぁ、話を全部読み終わってみたら、この理帆子の視点で語られ、
つづられていく話自体が、SF(少し・不思議)な話なんだけど。

今、感想を書きながら思ったんだけど、このSF遊びって、
割と使えるよな~。周りの人間をどう見るか、観察力を養う時に、
ぴったりだと思った。この、SとFの2語だけで相手を的確に言葉で当てはめる。
意外と、言語センスが問われるかのような。
少し、周りの人間で試してみよう。

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