2017 09 / 08 last month≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫10 next month
スポンサーサイト  --/--/--  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 | スポンサー広告  | Page Top↑
風に舞いあがるビニールシート風に舞いあがるビニールシート
(2006/05)
森 絵都

商品詳細を見る


『風に舞いあがるビニールシート』 森絵都

森絵都の直木賞受賞作。
同時に受賞した三浦しをんのファンなので、
森絵都とダブル受賞か~と、少し惜しい気がしていたけど、
この作品を読んで、森絵都がこの作品で直木賞を獲ったのがわかる気がした。
作家の力量が無駄なく詰め込まれた短編集。
それに比べると、三浦しをんが“まほろば駅前”で受賞したのが、少し不可解。
三浦しをんに限って言うならば、別の作品で受賞して欲しかった。

それはさておき。

短編集であり、6作収められてる。

『器を探して』菓子コーディネーターの秘書を務める主人公が
クリスマスイブの日に美濃焼きの器を探す話。

『犬の散歩』捨て犬の里親探しのボランティアをしている主婦の話。

『守護神』夜間大学に通う主人公がレポ代筆の神様と言われてる
伝説の女性ミシナミユキと対峙する話。

『鐘の音』25年前、仏像の修復師を志していた主人公が
ある寺の仏像に出会った話。

『ジェネレーションX』自分より若い取引先の男と一緒に仕事をするうちに
自分の忘れていた青春を思い出す中年男性の話。

『風に舞いあがるビニールシート』国連難民高等弁務官事務所に勤務する
主人公が、元上司で元夫であったエドが勤務地で死亡したことにより、
自分とエドの結婚生活を振り返り、その死を乗り越えようとする物語。

どの話も、よく構成を練られてて、味付けもよくまとまっていた。
ある種、よく出来すぎていると思えるような作品をずらりと並べてる
感じさえもある。それが直木賞を獲るヒケツなのかもしれないけど。
ただ、たんに森絵都がここまで書ける、という力量が
読んですぐに伝わる6編である。

自分が一番印象的だったのは、表題にもなった
『風に舞いあがるビニールシート』。
UNHCRの職員としてフィールドワークの仕事にこだわるエドが
妻である里佳に語った言葉が忘れられない。

色んな国の難民キャンプで、ビニールシートのように軽々と
吹き飛ばされてしまうものたち、それは、人の命だったり、
尊厳だったり、ささやかな幸福だったり、もみくちゃに飛ばされる。
暴力的な風が吹いた時、真っ先に飛ばされるのは、老人や女性や子供、
そして生まれて間もない赤ん坊達で、自分はそれに手を差し伸べずにはいられない。
だから、自分の子供を育てる時間や労力があるならば、
すでに生まれた彼らのために、それを捧げるべきだ。
それは、責任、もしくは贖罪である。

あくまでもフィールドでUNRCHの職員としての責務をまっとうすることを
生きる道として選んだエドと、その彼を愛し、彼を連れ去るフィールドを
敵のように憎み、そして彼と家庭を持ち、幸せになりたかった里佳。
熱烈に愛しながらも、すれ違ってしまう二人が悲しかった。
愛しぬくこと、そして愛されぬくこともできなかったと、
元夫のエドの死さえ、自分自身の悲しみをも控えてしまう
里佳の苦しみが痛かった。

人間それぞれ生まれてきて、その人が選ぶ、自分自身の生き方、
自分なりの“幸せかたち”がある。
それと共に、“自分が為すべきこと”というものもあるものだと思う。
エドと、里佳の、“幸せのかたち”と“自分が為すべきこと”は
違っていた。それが最大の不幸だと思った。
相手を尊重しているからこそ、譲れないものがある。
二人が結婚という形でなしえたものは、二人で過ごした時間だけで、
そこから何も発展することなく、一度交わった二人の人生が
またそれぞれのあるべき道に戻っていったのは、自然の成り行きだと思った。

愛し合っているからこそ、相手を自分の領域に引き込みたい。
自分の思う“幸せのかたち”に閉じ込めたいと思う。
なぜなら、それが自分の“幸せのかたち”だから。
しかし、それは相手にとって幸せなんだろうか。

この『風に舞いあがるビニールシート』を読んで、
自分がすぐに思い出したのは、映画『追憶』である。
映画でも、主人公の二人が惹かれあい、そして結婚するが、
結局、二人の結婚生活はうまくいかず、別れてしまう。
お互いが、お互いの幸せの形に収まる事が出来ず、
自分らしく生きたいと思った結果、子供を産んだ日に別れて
それぞれの道を行くことを決意する話である。
どんなに愛し合っていても、一緒にはいられないことがある。
『追憶』を観るたびに、この哀しさと決断するほろ苦さが
胸にせまってくる。この寂しさを、エドと里佳にも感じた。

エドと里佳の結婚生活で、一番印象に残っているエピソードは、
二人が離婚し、エドがコソボへ戻る日、
二人が最後に過ごした朝のことだ。
二人で最後に訪れた旅行先のバナナワニ園で買ったワニ人形を
眠っているエドが左手に握り締めているのを里佳が、
こっそり抜き取って、代わりに自分の右手を滑り込ませる。
眠っているエドが目を覚ますまでの間、どうか、忌まわしい風で
ビニールシートを飛ばす風を思い出して、エドが苦しみませんようにと、
祈りながら迎えた朝のシーン。

丁度、その辺りを読んでいたときに、自分は
ご飯を食べながら読んでいたのだけど(行儀が悪い!)、
思わず、目から涙がボタボタと落ちてきて、文字通り
号泣してしまった。ご飯を食べながら、いきなり泣いてしまったのは
後にも先にも、この時だけだ。自分でもびっくりした。
でも、泣かずにはおれないほどの、激しい衝動が
自分の心を揺さぶったほど、印象的なシーンだった。

私事な感想で申し訳ないんだけど、この本、
あのシーンを読むだけでも価値があると思う。
なんであんなシーンに、って思う方もいらっしゃると思うのだけど、
それでも、ここ最近一番印象に残った読書経験は?と問われると、
この表題の『風に舞いあがるビニールシート』のある場面で
ご飯を食べながら、いきなり泣いてしまったことをあげるだろう。

なぜ、あんなに泣いたのか。
自分にも、以前、同じようなことがあったから、かもしれない。
里佳にかなり感情移入して読んではいなかった、けど、
あのシーンを再び、そこだけ出してきて読んでも、心が揺さぶられる。
エドと里佳の間にあった愛情が、そこに現れてると思うからか。
あのシーンが忘れられない。



ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 森絵都  | TB(1)  | CM(2) | Page Top↑
つぐみさん、こんばんは♪
TB&コメントありがとうございます。

私も手を握るシーンとても心に残りました。
人と人が一番深く繋がり合うのは、こんな時なのかもしれません。

森さんの他の作品は未読ですが、直木賞受賞に相応しい本でしたね。
しをんさんの受賞は「風が強く吹いている」を待って欲しかったです(> <)
同時受賞のこの本と比べられ、イマイチと評されることがファンとしてはとても悔しかった!!
花梨  11/18/2007 Sun URL [ Edit ]
----------------------------------------------------------------



花梨さんへ
この作品は、まさに直木賞を獲っておかしくないぞ~ってくらいの力量を感じさせましたねぇ。三浦しをんも上手いと思うけど、あの作品で獲るなんて意外や意外。あの愛ルケの渡辺先生に「怪しい作品である」なんていわれていましたし(苦笑) この作品とW受賞って、なんだか、しをんがかすむような気がして惜しいです(しをんの家族みたいな発言していますが)汗
正直、『カラフル』のイメージが強かったので、児童書・ヤングアダルトぽぃ印象があった森絵都なのですが、この作品でだいぶ見直しました。ちょっとマイブームになりそうな作家です♪
つぐみ  11/20/2007 Tue URL [ Edit ]
----------------------------------------------------------------



Secret




TrackBack URL
→http://nutsmeg.blog107.fc2.com/tb.php/81-9d3a0387

Blog状況

最近の記事

カテゴリー

訪問者数

メールフォーム