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執恋お友達のsana様から
戴いたお話です。
長いので分割を作っています。
( その1 その2 その3 )
1つの記事で読まれたい方は
こちらからどうぞ。


煙草を吸うカッコいい
樫原さんが出てきます♪

以下、創作になります。
Authorはsana様です。
創作であることをご了承の上
ご理解いただけた方のみ
どうぞお読み下さい。



******* Smile in .... ***********

THANKS SANA!!




私は樫原さんの笑顔が苦手だ。

まるで何もかも
お見通しですよ、と
言っているような笑顔。


今日戻ってきた
テストの点数が
あまり良くなかったことも、
この前のお茶会で
ほんの少しだけ
お茶をこぼしてしまったことも、
そのあとお屋敷に帰ったとき
樫原さんの反応を盗み見していることも、
来週の樫原さんの
お誕生日プレゼントを
こっそり用意していることも、
そのくせ知られたくないと
思っている私の気持ちでさえ、

きっと、お見通しなんじゃないかと思う。



だから私は、樫原さんの笑顔が苦手だ。













義兄さんの専属執事の樫原さんは、
普通の執事さんよりずっと顔が広い。


学校の友達の中にも、
パーティーやサロンで
たびたび見る樫原さんを
覚えている人がいて、

「穏やかで優しそうな方ね」

と言われたりして
結構人気者だ。


そのたびに、私はこっそりと思う。



いいえ、あの人はとても怖い人なの。
何食わぬ顔であらゆることを
見聞きして、記憶して、分析して、
いざというときのために
いつもいつも備えているのよ。



そして、他の女の子たちが知らない
樫原さんの顔を知っていることに
ひとり、優越感を感じる。













私が初めて
樫原さんの違う一面を知ったのは、
九条院家にきて
まだ間もないある日のこと。



中岡さんにビリヤードを
習い始めたけれどまだまだヘタで
人前で練習するのが
恥ずかしかった私は、
休日の夜遅く、
一人で遊戯室へ向かっていた。



何のためらいもなく、
いつも通りに扉を開けた瞬間、
目に飛び込んできた光景に
釘付けになった。





間接照明で照らされた
薄暗い部屋の奥、
使い込まれて鈍く光る
重厚なチークのカウンターに
寄りかかるようにして
樫原さんが立っていた。




いつもと違う、
ノータイのワイシャツの
胸元を開けたラフな格好で、
片手に挟んだタバコをくわえたまま、
どこか遠くを見るような目をして。




執事服じゃない姿を見たのが
初めてだったとか、
タバコを吸うのを知らなかったとか、
そういうことじゃなく。



目の前にたたずむ人が
「いつも優しい笑顔の樫原さん」じゃなく、
急に知らない大人の男性に
見えたことに動揺して、
そして何故か目が離せなかった。





扉の開く音で樫原さんが
こちらにゆっくりと視線を向けた。


まっすぐに見つめられて、
ますます動けなくなる。




しばらくして、
ようやくわかったというように
「お嬢様」と私を呼び、
カウンターから体を起こした。




「暗くてお顔が良く見えず、失礼いたしました」




言いながらさりげなく
タバコを灰皿に押し付ける。
白く細い煙が手元から一筋
立ちのぼって消えていく。



「何かおやりになるのですか?」




ああ、やっぱりこの人は
樫原さんなんだ。


いつもの笑顔と口調に、
あらためてそう思う。
でも、なんだか落ち着かない。
樫原さんなのに、どうして。



「あ、あの・・・ビリヤードを練習しようと、思って」



さっきまであんなに
目が離せなかったのに、
今度はまっすぐに見られない。


意識的に
ビリヤード台の方を向きながら
しどろもどろに答える。



「よろしかったらお相手いたしましょうか?」



樫原さんがゆっくりと
近づいてくるにつれて、
タバコの匂いが私を包む。


苦くて、大人の香り。



タバコの匂いなんて
街中だったらどこでもするのに、
なんだか今はそれがすごく特別に感じる。




「樫原さんて、タバコ、吸うんですね」



少し驚いたように
私と数歩離れた場所で立ち止まった
樫原さんは、気まずそうに顔を俯けた。



「申し訳ございません。匂いは付くし体には悪いしで
良いことはないとわかっているのですが・・・どうしても
やめられないのです」


今までに見たことのない
自嘲するような笑みが、
ますます樫原さんを
知らない男の人に見せていた。


それに比例するように
どんどん落ち着かなくなってきた私は、



「あ、あの、やっぱり・・・今日はやめておきます」



とだけ言って、一目散に逃げ帰ってしまった。










それから私はなんとなく
樫原さんを観察するようになった。


誰が見ても
“義兄さんの傍らでいつも微笑んでいる有能な執事さん”
の、それ以外の顔を知っていることが
なんだかとても特別な気がして。



もっともっと見てみたい。



怖いもの見たさのような、
そうじゃないような、
抑えられない好奇心を
自分で不思議に思いながらも、
毎日少しずつ、樫原さんを見つめ続けた。










数ヶ月も経つと、結構色々な収穫があった。



九条院家のことに関しては
義兄さんよりも詳しいこと。

他の執事さんたちや
使用人たちに怒るときは
ちょっと冷たくて怖く見えること。


疲れているときはふとした瞬間に
遠くを見るような目をすること。


お酒はラフロイグ、
タバコはマルボロの赤が好きなこと。


打ち解けると冗談を言ったりもすること。

仕事の笑顔とほんとの笑顔が違うこと。




・・・意外と、それが可愛く見えること。





ひとまわりも年上の男の人を
「可愛い」と思うようになるなんて
樫原さんに出会うまでは
考えたこともなかった。












あの、遊戯室から
逃げ帰ってしまった日から
しばらくして、樫原さんとも
時々ビリヤードをするようになった。


はじめは中岡さんと
練習しているときに
たまたま居合わせた樫原さんが
私もまぜてくださいませんか、と
申し出たのがきっかけ。


中岡さんと一緒だったおかげで、
前よりもずっと落ち着いていられた。

そして、ごくたまにだけれど
樫原さんと二人でもやるようになって。



二人きりでも
自然に話ができるようになって。

樫原さんがお酒を飲んだり、
冗談を言ったり、
笑顔になったりするのを見るようになって。



あるときふいに、
あ、可愛い、と思ったのと同時に、
好きになってしまったって、わかった。



12も年が上で、
年齢以上にもっともっと、
誰よりも大人な人。


年齢以下に
いろいろできない私なんて、
妹どころか、娘くらいに
思われてるかもしれない。
それでも惹かれてしまう気持ちは
どうしても消えてくれなくて。



あのときのタバコの火みたいに、
樫原さんが消してくれたらいい。
一筋の煙になって、少しずつ少しずつ、
消えていけたらいいのに。

そんなことを考えていた。












いつか遊戯室で、
おしゃべりに紛れて
聞いてみたことがある。



「樫原さんて、彼女はいるんですか?」


どきどきを必死で隠そうとしていたのも、
お見通しだったかもしれない。


どうしても顔をあげられなかったから、
樫原さんがどんな表情を
していたのかわからない
けれど、答える声は笑みを含んでいた。



「いませんよ。私は性格悪いですからね。
それに執事という仕事柄、なかなかプライベートに
割ける時間もありませんし」



カツン、と勢い良く
玉を撞いた中岡さんが、
体を起こして嘆息した。



「出会いの少ない職場ですからね・・・職務上、どこかの
お屋敷のメイドと合コン、なんていうのもあり得ないですし」



合コン、なんて
庶民的な言葉を久しぶりに聞いて、
私は思わず笑ってしまった。



「ここの執事さんはみんなかっこいいから、
合コンなんてしたらきっと大変ね」



カウンターに琥珀色のブランデーが入った
分厚いグラスを置いて、
キューを手に台へ向かいながら
樫原さんも笑った。



「中岡や真壁は引く手あまたでしょうね。
まあ、真壁は見向きもしなそうですが」
「執事たるもの、そのような場に出るのは言語道断だ!
とか言われそうです」



眉間にしわを寄せて
真壁さんのマネをする
中岡さんがおかしくて、
笑い転げてしまった私は、
次に始まった
二人の会話に対する心の準備が
全然できていなかった。




「でも、樫原さんこそ引く手あまたでしょう?
仕事はできるしスマートだし、私が女だったら
惚れそうですけど」


「・・・気持ち悪いこと言うな。残念ながらこんな
おじさんがいいって言う奇特な女性はなかなかいないよ」


「そんなこと言って、きっと樫原さんのことだから
果てしなく理想が高いんでしょう?どんな人ならいいんです?」




笑いすぎて滲んだ涙を拭いていた私は、一気に凍りついた。




樫原さんの好み・・・。




正直に言って、とっさに
(聞きたくない)と思ってしまった。
誰よりも私自身が、
樫原さんに似合うのは綺麗で、
頭が良くて、
落ち着いた大人の女性だと、
思っているから。



耳をふさぎたいような、
聞きたいような、
混乱した気持ちのまま
目を向けると、樫原さんは
キューを構えた目線はそのままで
口元だけをにやりと微笑ませた。





「*****お嬢様かな」


「―――――えっ?」



私は思わず間の抜けた声をあげて、
そのまま真っ白になった。



一瞬何を言われたのかわからなくて、
からかわれたんだってわかってからも
どう反応したらいいかわからなくて、
樫原さんが玉を撞くのを見つめたまま
馬鹿みたいに突っ立っていた。



玉はすべるように台を転がったけれど
ポケットには入らなかった。



樫原さんは息をついて
台から体を起こすと
固まっている私を見て
いつものようににっこりと笑った。



(あ・・・)




私の苦手な笑顔だ。


樫原さんが、
ほんとの樫原さんじゃないときの。



「****お嬢様のような方が理想だと思います」




私は、なんだか腹が立ってきた。


どうして、そんな笑顔で。
そんな見え透いたお世辞で。
喜ぶとでも思ってるの?
本気じゃないってわからないほど
子供じゃないのに。




「・・・冗談はやめてください」




私の声色に、樫原さんだけじゃなく
中岡さんも驚いたような顔になる。



しまった、と思ったときには
もう遅かった。
一気に気まずい空気が流れる。



ううん、子供なんだ。
こんなことで取り乱す私は、
誰が見たって小さな子供だ。


「あ、やだ、ごめんなさい。ちょっとびっくりしちゃって」



あわてて取り繕うように
笑って手を振る。
心臓が、ズキズキと
痛いくらいに鳴っている。


「いえ、私もびっくりしましたよ。
樫原さん、告白するのは二人っきりのときにしてくださいね」


中岡さんがいたずらっぽく笑って
キューを構えつつ、
話題をビリヤードに切り替えてくれて、
そのフォローでようやく
息苦しいような空気が薄らいだ。



すごくほっとしたのに、
なぜか私の胸の中はどんどん
息苦しくなっていく。


こんな会話も、
最初から最後まで
いつもの笑顔だった樫原さん。





それがとても、苦しかった。










伝えてしまおう、と
覚悟が決まるまで、
その出来事から
少し時間がかかった。



最終的に覚悟が決まった理由は
もうすぐ樫原さんのお誕生日だから。
でも決めてしまったら、
なんだかすっきりしたような気もした。


プレゼントと一緒に気持ちを伝えて、
それで終わりにしよう。


なんのために、って、
自分に区切りをつけたいだけで、
樫原さんにとっては
せっかくのお誕生日に
迷惑なだけかもしれないけれど。


でも皮肉なことに、
樫原さんならいつもの笑顔のまま
終わらせてくれるはず、っていう
妙な安心感があった。



苦手な笑顔に
助けられるときが来るなんて。


なんだか笑いたいような、
泣きたいような気分だけれど、
行き場のない想いが
行きつく先が
あの笑顔だというのなら、
今までの苦手な気持ちが
妙に納得いくような気もした。












明日、少しだけお時間をいただけませんか?


と聞いたとき、
しばらく答えが返ってこなかったので
不安になって見上げると
樫原さんは黙ったまま
私をじっと見ていた。



どうして、とか、
何の御用ですか、とか
聞かれたらどうしよう。


そこで初めて
何も考えていなかったことに
気がついて、更に
じっと見つめられている恥ずかしさで
かあっと顔に血が上るのがわかった。



わずかに残った思考能力で
必死に言い訳を探しているとき、
頭の上から樫原さんの声が降ってきた。




「夜でしたら時間がとれますので、
お話なら庭のあずまやでいかがですか?」



見上げた樫原さんの表情は、
やさしいけれど笑顔じゃなかった。


理由を聞かれなかったことに
ほっとしていた私は
それを気にする余裕もなく、
提示された場所と時間に
うなずくだけで精一杯だった。












樫原さんへのプレゼントは、
色々考えた結果、
あまりプレゼントに
ふさわしくないものになった。



ガラス細工の小さな灰皿。



きっとタバコを吸う
男の人へのプレゼントなら
本当は眺めても嬉しいような
きれいなライターとか、
タバコ入れとかになるんだと思う。


灰皿なんて実用的すぎて、
お父さんにあげるものみたい。
自分でも少し笑ってしまう。


でも灰皿なら
常に持ち歩くこともないし、
人に見られることもない。
たとえ使わなくたって、
捨ててしまったって、
私にはわからない。


樫原さんを困らせたくない、
というのはきっとタテマエで。

私は、樫原さんが
私に気を遣うのを見たくないんだ。



いつもの笑顔で心を覆って
優しい嘘をつかれるのが
何よりも嫌だった。


でも私が
この九条院家のお嬢様である限り、
樫原さんは笑顔を見せるだろうから。
だったら、その必要が
なるべくないモノがいい。



そうして選んだ、
精一杯のプレゼント。
それくらいの気遣いは
できるんだって、精一杯の背伸び。



告白するときくらい、
私のことを対等に見てほしい。
子供としてじゃなく、
一人の女性として答えてほしい。



それだけが、私の願いだった。





******************************

その2はこちらから.
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