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eclipse of the love  11/07/2008  
*****eclipse of the love ****











eclipse of the sun.






段々と辺りが暗くなってくる。






今日は皆既日食の日。
専属執事の真壁さんと一緒に
九条院家の庭で観測をしている。

いつものあずまやじゃなくて
庭の奥にある噴水のところ。

真壁さんが準備してくれた
観測用の道具と一緒に。
お茶もある。
大好きなお菓子もある。
カメラも持ってきてある。


花壇の真ん中だから
周りには高い木もないし空が広い。

あたしは隣により添う真壁さんの横顔を
こっそりと眺めて・・・・・。






その右手をゆっくりと握った。









・・・・・・・・・・・・・









「明日学校休んでもいいよね?」


昨日の夜、そう聞いたら
真壁さんが眉間に皺を寄せて
すごく難しい顔をした。





(やっぱりサボるってダメ?)





「・・・・」

案の定、返事が返ってこなかったから


「もういい。義兄さんに聞いてくるから」


その足で部屋を出た。


「っ・・・ゆいこお嬢様!?」

びっくりした声を背中に聞きながら。





・・・・・・・・・






明日ね、皆既日食があるの。


あたし・・・
学校に行っていたら授業で見れないから
明日だけは学校を休ませてくれないかな?


想いきって義兄さんに甘えてみた。



応接間で樫原さんの入れた
紅茶を飲んでいた義兄さんは
思わずびっくりしたのか
紅茶を吹きだしそうになる。


「それってゆいこちゃん・・・ズル休み?」

「うん、そう」

間髪をいれず、にんまりと笑って答える。

皆既日食が観たくて学校を休むのに
屋敷の主である義兄さんに許可をもらおうなんて・・・・





あたしは立派な確信犯だ。





「え・・・・でも学校・・・」





目を丸くしている義兄さんの
ソファの隣に腰掛けて
思わず身を乗り出して頼む。


「だって明日を逃したら、ここで見れる皆既日食は何十年も後なんだよ?」

(そう、だから明日の皆既日食は真壁さんと一緒に見たいの)

「だからお願い!」

ズル休みするのは明日だけだから!!


思わず必死に頼み込むあたしを
義兄さんが目をぱちぱちさせて見ている。


「そ、そんなにどうしたの?」

「明日・・・明日どうしても皆既日食見たいんだ」

返答に困っているんだと想う。


さすがに学校をズル休みさせてくれって
前日に頼みに、ううん、甘えて
許可をもらいに来てるから。



お願いお願いお願い!!



駄々をこねるように
義兄さんに頼み込むあたし。
その様子をそばにいる
樫原さんがくすくす笑った。


「あー。ゆいこちゃん、それって・・・・ああ・・・」


保護者なのにそんなに頼まれたら・・・・
ちょっと困った顔をしている。


こんなに頼み込むあたしに
ダメとはいえないのが
義妹に優しい義兄さん。


懇願するあたしに困り果てて
救いの視線を後ろに控える
樫原さんに投げたのがわかった。


あたしは、樫原さんにも
胸の前で両手を合わせてお願いする。



「ね、樫原さん?いいって言って!」

樫原さんが良いって言ったら、きっと義兄さんもいいって言うから!!
お願い!お願い!!


必死で頼みこむ。


その様子をふふっと笑う樫原さんに
あたしは(おねがいー!!)って
想いっきり上目遣いで頼んだ。


視線を義兄さんに移すと
義兄さんが困り果ててるけど
段々と苦笑いしてきている。


(あと一押しだ!)


と、あたしは義兄さんに
ぎゅっと抱きつくようにしてお願いした。


「義兄さん、お願い!休んでも良いって言って?」

「えっ・・・!!ゆいこちゃん!!!?」

狼狽した声が聞こえる。

(これって奥の手♪)


照れて困り果てながらも
抱きとめようとしてるのか
義兄さんの両手が
空中で右往左往しているみたい。


その様子を見て、
樫原さんが我慢できないというように
吹きだした。

「侑人、何がおかしい?」


義兄さんが困った声ながらも
樫原さんに問いかけると
樫原さんは余裕で微笑みながら言った。


「いいじゃありませんか、慎一郎様」


普段、ゆいこお嬢様を
一番甘やかしてるのは
慎一郎様なのですよ?

こんなにお願いをしてくる
ゆいこお嬢様をお断るなんて
到底無理ですので
早めに承諾されたほうが
よろしいかと想いまして。


想わぬ応援にあたしは嬉しくなった。


抱きついた義兄さんの肩越しに
樫原さんをちらりっと見る。
すると、樫原さんがあたしを
見つめてるのがわかった。


視線が合う。

ちょこっとだけ
樫原さんが目配せしてくれる。


(あ・・・これが作戦だってことは樫原さんにはバレバレね)

でもありがと。

あたしも樫原さんに目配せした。



こうやったら絶対に義兄さんが
あたしの我侭を聞いてくれるってわかってるから。

思わず使っちゃったけど。

でも、悪用はしてないよ?


舌をぺろりって出しそうに
企んじゃってるあたし。



お願いー!って
抱きついてきた義妹に困りながらも、
義兄さんが赤い顔をして
わかったよ、と言ってくれて
ちょっとだけ身体を離す。


「もう、ゆいこちゃんったら」

そう少し照れながら義兄さんが
許してくれた。
今回だけだよって。


こうやって学校を
ズル休みすることがばれたら
僕が夏実に怒られるから、と。
だから、夏実には学校をズル休みしたことは
内緒にしておくんだよ。

そう言った義兄さんに
にっこり微笑みながら樫原さんが

「じゃあ明日は、お嬢様のお気分が優れないってことで学校の方へは連絡をいれておきましょう」

なんて言ってくれた。
あたしはその言葉ににんまり。
義兄さんと樫原さんの抱きこみは完了♪

「嬉しい!ありがとうー義兄さん!!」

今度こそ、奥の手じゃなくて
嬉しさのあまりに義兄さんに抱きついた。
ぎゅーっとする。
嬉しくてしょうがない。


「義兄さんありがとう。我侭きいてくれて」


そんな子どもみたいに甘えるあたしを
義兄さんが照れながら抱きとめてくれる。

義兄さんが許してくれたら
なんだってして良いはず。
樫原さんだって許してくれたし。


うん、やっぱり義兄さんはあたしに甘い。


それに・・・傍についている
樫原さんも、あたしが我侭なのも
大目に見てくれるし。

義兄さんが少し照れながら
明日の皆既日食の時間や
その準備のあれこれを
樫原さんに言いつけてる。

義兄さん、さっきあたしの
我侭に困っていたけど
でも・・・・なんだか嬉しそう。
あたしに我侭言われたのが嬉しいのかな。


だって、義兄さんの趣味は
『ゆいこを甘やかすこと』と
書いてもいいぐらいだから。



なにがともあれ。

専属執事の真壁さんが
どんなことを言っても。


あたし、明日は学校休んじゃうもん。


(これで明日は真壁さんと一緒に皆既日食が見られる・・・)




思わずワクワクしてきた。


「あたし、明日の準備してくる!!」

ありがとうね
義兄さん、樫原さん!!



思わず嬉しさのあまり
スキップをするように
応接間を後にして
自室に帰った。







・・・・・・・・・・・・・・






「ゆいこお嬢様。10:57ごろピークだそうです」


「そうなんだ~」

じゃあ、まだ時間があるね。


そう言って、真壁さんが
入れてくれた紅茶を飲みながら、
部屋でのんびりしようとしたら、
既に10時前にもう庭に移動するように言われた。

場所はいつものあずまやじゃなくて
もっと広いところ。
観測するときに邪魔にならないように
高い木や建物がないところ。


幸い九条院家の庭は広いから
高い木をあまり植えてない
庭の奥の噴水のところに
ガーデンテーブルを置き
そこでティータイムをしながら
観測することにした。







今日の真壁さんはちょっと不機嫌。



カップにお茶を注ぐ真壁さんの様子を
ちらりと盗み見る。


昨日、ああやって眉間に
しわ寄せて無言で難しい顔をしたあと。

あたしが義兄さんから許可をもらって(ぶんどって)
「明日は学校休んでもいいんだ」
だから観測の準備してね、と頼んだら。

少しびっくりした顔をして
その後、執事の仮面をすっと被ってしまった。


今日はズル休みをしちゃってるから。

多分(真壁さん理想の)お嬢様に
あるまじき行為なんだと想ってるんだわ。

(・・・確かに学校休んじゃったのは悪いけど)


でも、今日は真壁さんと一緒に
この皆既日食を見たかったの。
無理に頼み込んででも
堂々と見たかったの。


だってそうじゃなければ
専属執事の真壁さんが抜け出して
あたしも学校抜け出して一緒に観測、
なんて出来るわけなかったから。


最初から真壁さんと一緒に皆既日食を
みたいのなら、こういう手を使うしかなかった。


今日のこの貴重な時間は
あたしと貴方のものなんだよ。



そう告げたかった。





でも、ちょっと不機嫌になった
真壁さんは昨晩からむっつりしてて。


いつもだったら、執事として
一日の終わりの挨拶をした後に
恋人として挨拶で額にキスしてくれて
おやすみなさいをしてくれる。

たまにはそれから先も部屋にいてくれて
キスしたり・・・それ以上したり
そのまま一緒にいてくれたりするのに。





昨日はむっつりしたまま、
出て行ってしまった。





(なんで、こんなに怒るかわかんない)

わかんないけど・・・・。

でも滅多に見れない皆既日食を
真壁さんと一緒に見れるっていう
楽しみや喜びで、あたしは笑顔だった。











「ねえ、真壁さん」

「はい?」

「黒いフィルム貸して?」

そう言って真壁さんが
急遽準備してくれた太陽を見る
黒いフィルムを貼った眼鏡みたいのを取ってもらう。


不機嫌でもいいの。
一緒にダイアモンドリングを見たいから。
特別な日を一緒に過ごしたいから。


きっと一生の想い出に残る体験だと想う・・・。





真壁さんがあいかわらずな
執事の顔で表情も変えずに
フィルムを取ってくれる。


眼鏡みたいにかけれるように
真壁さんが昨日のうちで工夫して
作ってくれていた。


それをかけてみる。


視界は黒い。


空を見上げる。

星も何も見えない。






太陽は確かこの位置だった・・・。







そう想って顔を上げて
黒い視界に太陽を探す。




どこだろ・・・、確かここらへんかな?






そう想ってよく目を凝らしたら。

いつも見ているサイズの太陽じゃなくて
もっと小さくなって、はっきりと
その形がわかる、太陽があった。


燃えるような赤いオレンジ色。

少しだけ欠け始めているのがわかる。

三日月のような朱色の太陽。





(素敵・・・・神秘的だわ)







「!!すごい!!」


真壁さん、見てみて!!
もう欠け始めているよ!!


そう言って横にいるであろう
真壁さんを捕まえようとしたら、
ずっと上を向いて太陽をみていたせいか、
ふらっとした。



あ・・・・!!



思わずふらついた体をつかさず
真壁さんがぎゅっと捕まえてくれる。
その手は力強い。


「ほら、危ないだろう?」


思わず恋人の口調で話しかけられて
あたしはどきっとする。


近い・・・・。
距離が近い・・・!


転びそうになったから支えるために
すぐ傍にいるにしても、
急にこうやって大好きな人から
抱きしめられると流石にドキドキしてくる。


「あ・・・・ありがとう」


思わず口ごもってしまう。
多分見えてないけど、あたしの頬は赤くなっているはず。



興奮のあまり、
真壁さんを呼ぼうとして
ふらつくなんて・・・。


(子どもっぽかったかな)



それもまだ黒いフィルムの
眼鏡をかけたままだから、
真壁さんがいるであろう方向を見ても、勿論視界は黒いまま。



急いでその眼鏡を外して
真壁さんにその眼鏡を渡そうとしたら
その手をさえぎられた。

ぎゅっと握られる。



(え・・・・?!)






「本当にやんちゃなんだから」


そう呟く声が聞こえた次の瞬間、
すばやく唇が奪われた。


「っ!!!」

黒い眼鏡の下で
あたしは目を見開く。

「っ・・・・!!!ま、真壁さん!!!」



思わず動揺した声を出した
あたしに、またまたくすっと笑う声が聞こえる。


心臓がどきどきする。


「やんちゃなお嬢様には、これくらいしなくては、騒ぎが収まりませんからね」


わざと困った風に笑いながら
あたしの専属執事兼恋人は言ってくる。


その言葉に響いている少しからかうような
甘い響きに心が跳ねながらも
子ども扱いは嫌だと、あたしは訴えようとした矢先。


またキスをされた。
それも覆いかぶさるように。


「!!!!!!」


一瞬何が起こったかわからなかった。

気がついたら唇がきつく吸われている。
舌で割られる唇。




(ま、真壁さん!!こ、こ、庭だから!!!)

誰かに見られたら・・・・と考える前に
そのキスの甘さに一気に心がさらわれた。







「・・・・んん・・・あ・・・」








ぎゅっと口腔に入ってきた真壁さんの舌で
舐められるように吸われて、ふらつきそうになる。
その強烈さに目を見開きながらも。


次第にそのキスに酔い
気がつくとあたしは目を瞑っていた。


黒フィルムの眼鏡で
顔が見えない分だけ感じてしまう。


真壁さんの息遣いや。
その唇の感触や
舌の動き・・・。


他から見えないように
わざと覆いかぶさるように
抱きしめられている温かさや
執事服がする真壁さんの匂い。


息が詰まりそう。


急に訪れたこんなキスに。
全て奪われたように思考停止した。


やがて、ゆっくりと唇が離れる。




強引なキス。




あたしの言葉さえ全て飲み込んでしまう。




大胆不敵な真壁さんそのもの。


でも・・・・それはすごく甘くて。

ここでそんなのダメだよって
責めたいけど
でも、もっとして欲しくなる。







「・・・・・真壁さん、もっとして」



あたしは思わず訪れた
恋人同士の時間をもっと
長引かせたくて・・・・。

太陽観測用の眼鏡を外して
愛しい人の今の表情をみようとした。

それをすっと遮られる。



「だめだ」

「・・・・え???」


その手が眼鏡を取るのを防ぐ。


両耳を押さえるように眼鏡を外すのを
両手で塞がれて、あたしはびっくりした。

「な、なんで?」


「ゆいこお嬢様、今は学校をズル休みしてまでも見たがっていた皆既日食の時間ですよ」


想いっきり嫌味をこめながら、そしてからかいながら
真壁さんが意地悪そうにあたしに言う。


「この眼鏡がないと、太陽の光で目をやられてしまいますし、欠けている太陽を見ることは出来ません」

「せっかく旦那様にも“おねだり”をしてズル休みしたのに、日食をみなくては勿体無いではないですか」


おもいっきり、「おねだり」の部分に
意味ありげな力が込められる。

「っ・・・!!」


真壁さん、あたしが義兄さんに
抱きついておねだりしたのを知ってるんだ!

思わずぱっと気づいて、言い訳しようとしたら


「ま、真壁さん、あれは・・・・」

その唇を真壁さんの指でしーっとふさがれた。
唇に立てられた指がゆっくりと唇をなぞる。

それ以上喋るなと暗に示している。

思わずその仕草で黙り込んでしまった
あたしに、そっと真壁さんの顔が近付くのがわかる。



顔の近くで囁かれる。
その息遣いが、あたしの顔に触れるのがわかる。


「わかっておりますよ。どうしても皆既日食が観たくてたまらなかったんですよね?」


執事調の落ち着いた声で
言われたすぐ後に耳元で


「とはいっても、他の男に抱きついたなんて、いくら義理の兄の旦那様だとはいえ、恋人としては許せないがな」


むっつりした恋人の声が聴こえた。






あ・・・・・。

もしかして。





昨日から真壁さんがむっとした感じで
怒ったまま、夜の挨拶も抜きだったのは
こういう理由だったのかな?


「真壁さん、違うの」


日食をどうしても見たかったのは
訳があって・・・・っ!





言い訳しようとするあたしを
真壁さんが見つめているのが感じられる。


う・・・・

眼鏡をしているから顔まで見えない。
真壁さんがどんな気持ちか
ちゃんとはわからないよ。

「と、とりあえず、言い訳させて!!」


慌てふためくあたしの言葉を
真壁さんがさえぎるように言う。


「言い訳なら今から聞くだけ聞いてやるよ」


・・・ああ、本気で怒ってるかも。
ああ、やっちゃった・・・。
真壁さんを怒らせちゃった。


あたしは黒眼鏡でよく見えない中、
手探りで近くにいる真壁さんの腕にすがりついた。


「・・・・怒らないで、真壁さん」



ちょっと泣きそうになった
あたしの様子を見たのか、
真壁さんが眼鏡をはずさせまいと
両手で遮っていた力を緩めてくれた。



そっと黒フィルムの眼鏡を外す。


辺りはさっきよりも明るさが落ちてきてる。
月光が明るい夜のような
青がかった灰色の空の下、
あたしは真壁さんをじっと見つめた。


(ああ、やっぱり怒らせてしまってたんだ・・・・)


真壁さんは、いつものように
眉間に皺をよせてむっつりして
下をむいちゃってる。

機嫌が悪かったり何か考えているときの
執事モードの時のフェイス。
さっきあんなに・・・・
甘くキスしてくれた人だとは思えないぐらい・・・・。







「・・・・真壁さん、来て」



あたしはそっと
真壁さんの腕をひっぱって、木陰に行った。


そして屋敷に背を向けるように
木の幹に隠れて真壁さんの首に
腕を伸ばして絡みつくように抱きついた。





「機嫌直して、真壁さん?」


相変わらず、黙り込んで
眉間に皺を寄せている
真壁さんの唇にあたしは軽くキスをする。

ちゅっと軽くキスをしながら、
真壁さんの名前を呼ぶ。


「ね?機嫌直して」
「ねえ、真壁さん?」
「なんでもなかったんだから」
「ごめんね」
「もうあんなことしない」
「だから機嫌直して?」



ご機嫌とるように何度もキスをしていたら、
不意に背中に回された真壁さんの腕が
あたしをぎゅっと抱きしめた。


あ・・・・・。



そうおもった瞬間、
真壁さんの胸の中に包まれる。
あたしの全てを包むように。


ぎゅっと強く抱きしめられる。


その強さが真壁さんの気持ち、
そのものだと感じた。

耳元で真壁さんが囁く。
吐息混じりに。

言われる言葉はわかってる。

もう怒ってない。
呆れているような・・・。
ううん、それよりも
少し苦しそうで切なそう。





「・・・・いくら俺と皆既日食が見たいからといって、あんな風にしてはダメだ」

「他の男になんかに抱きつくなんて、許せないだろ?」

(・・・やっぱりばれてたんだ・・・・)


でも・・・。
どうしても、今日みたいな日は一緒に過ごしたかったんだ。

「・・・・だって何十年かに1度の皆既日食だから」

「きっと今日のものが見れたら、その次の皆既日食も、真壁さんと一緒に見れる気がしたの」


ううん。
その次も一緒に観たいと想ってるから。

その次に見るときに
「前に見たときは」って
想い出話を真壁さんとしたいの。
だから絶対に今日は一緒に観たかった。



大好きだから。
1つ1つの想い出を沢山作っていきたいの。
だから今日みたいな
貴重な日は絶対に一緒にいたかった。
一緒の空を眺めたかった。

何十年かに一度ぐらいの割合でしか
観れないという珍しい皆既日食。

いつもあたしたちがいる
この庭、ここで観ることが出来るのが
すごく素敵な想い出になると想ったの。


(ちょっと切ないけど、でもこれがあたしの本当の気持ち)



大好きな人と貴重な一日を過ごしたい。

ううん。
真壁さんと過ごすならどんな一日だって
大切な一日だってわかってる。

わかってるけど・・・
今日はもっともっと特別な日になると想ったの。



「・・・その気持ちは俺も同じだよ、ゆいこ」

お前と一緒に皆既日食見れて嬉しい。

でもそのためにお前が
俺以外の男に抱きついたのは許せない。
わかるだろう、この複雑な気持ちが?



そう苦しそうに呟かれて
その声の切なさと反対に
あたしの胸は少しづつ温かくなっていった。



ごめんね、真壁さん。



でも、真壁さんもあたしと一緒に
過ごすことを望んでくれてたんだね。

真壁さんの複雑な様子より
あたしはその気持ちが嬉しくて。


(真壁さん、大好きだよ)


そんな気持ちを込めてぎゅっと抱き返した。
それに真壁さんが少し雰囲気を緩める。



きっと・・・・

あたしが嬉しがってるのが伝わったから。


気持ちが一緒だったんだと伝わったから。






「・・・お前が旦那様に断りに行く前に、俺が何を考えていたかわかるか?」


「え・・・・わかんない?」

「どうやってお前を休ませようか考えていたんだ」

「えええっ・・・・!!??」


あの時の沈黙は真壁さんが真壁さんなりに
あたしの”ズル休み“の理由を考えててくれたから?
想わぬ事実でびっくりして目を見開いた。


「あたし・・・てっきり、ズル休みするなんて、お嬢様として言語道断な!と怒ってると想ったの」


その言葉に真壁さんがふっと笑った。
あ・・・苦笑してる。


「お前・・・・言語道断って・・・」


真壁さんがおかしそうに笑うのをみて
あたしも笑ってしまった。


「・・・・だって真壁さん、難しい四字熟語得意だから」


恐悦至極とか。
滅私奉公とか。

きっと真壁さんの心の中では
こういう単語がよく使われているはずって
思っているのはあたしだけの秘密。

真壁さんはあたしがあんまりわからない
漢字熟語をよく使う。
キョウヨウ、っていうんだっけ?


「お嬢様。今度またお時間を作って、慣用句や熟語の使い方をお勉強いたしましょうね?」


ちょっと難しい顔で学校の先生みたいに
さらりと真壁さんが言い放つ。

・・・もう、執事の顔をして
こうやってからかうなんて意地悪なんだから!
あたしが、こういう漢字とか
苦手なことをわかってて、もう!


思わず、真壁さんのからかいに
あたしはわざとふて腐れた顔をした。

そしたら、真壁さんが膨れた頬にキスしてくれる。





「ほら。俺が教えてやるんだ」
楽しみにしておくんだな。


そう言って
またくすくす笑う。

「意地悪」

「意地悪じゃないよ」

もう、俺様真壁様モードが全開過ぎて
あたしはそれに、いちいちドキドキしちゃう。


「真壁さんの意地悪」

くすっと笑われる。
そうやって楽しそうにからかう
真壁さんがカッコよすぎて。

どうして、こうも意地悪なのに
キスは上手だし、
あたしを抱きしめてくれる腕も
見つめている瞳も
こんなに甘いんだろう?



いつも意地悪っていうか・・・
翻弄されちゃうのよね。
真壁さんの1つ1つに。


振り回されてドキドキしちゃうの。



真壁さんもそういうあたしをわかっているから、
こうやってからかったり意地悪したりする。

お前は俺に意地悪されるのが好きだろう?って
前に言われたことがある。


手の平で転がされてるみたい。


真壁さんの腕の中でいじけたり、ふて腐れても
すぐさま、甘いキスを落とされて
あたしはメロメロになってしまう。


ちょっと悔しい。



でも。


真壁さんはいつも
あたしのことを見つめててくれる。
あたしのことを好きでいてくれる。


きっとあたしが
真壁さんにメロメロなように。
真壁さんも内心、
あたしにはメロメロなんだって想ってるから。


真壁さんがあたし以外の人に
こんなに甘いことは絶対にない。
真壁さんがあたし以外の人と一緒にいて
こんなに楽しそうなのも見たことがない。


真壁さんはあたしのことがとても好き。


幸せだと想う。


そんなことを考えたら
少し胸が切なくなった。







その切なさを隠すように
あたしは思いっきり背伸びをして
真壁さんの首に絡み付いて
目と目の高さを一緒にする。



驚いた真壁さんに
あたしはつかさず言う。
想いっきり高飛車に。


「真壁さん」

「ん?なんだ?」

「この次の皆既日食も、あたしと一緒に観て」


ずーっとずーっと何十年後のことでも。

約束して。


真壁さんはあたしの傍で
皆既日食みるんだから。


これは命令です。



ぎゅっと目に力を込めて「命令」した後
真壁さんににっこりと微笑んだ。


お嬢様な立場でたまには真壁さんを
からかいたい。
いつも、あたしばかりからかわれて
先手をとられてばかりだから。


真壁さんがちょっと驚いた顔をした後で
すぐさま表情を整えて執事の微笑で応えてくれる。


「この真壁直樹、一生ゆいこお嬢様の傍にお仕えすることを誓っております」



そしてゆっくりと
顔が近付いてきて・・・・。

唇すれすれのところではっきりと言われた。


「ゆいこお嬢様こそ、お覚悟ください」


その響きはからかいもなく
真剣そのもの。

言葉と共に激しく深く・・・
口づけされる。


「っ・・・!!」



執事の言葉なのに
恋人そのもので。


ぎゅっとされた腕にもっと力が入る。
抱きしめられている腕のきつさも。
キスで攻められる熱さも。

全て全てあたしを満たしてくれる。


思わず息が漏れてしまう。
夢中でキスをした。


「お前が嫌がろうと、俺は一生お前の傍を離れないからな」


キスの合間に囁かれる言葉。
吐息と共に頷いた。



「この次の日食の時も俺はお前の隣にいる。約束だ」


その独占欲と
その強い気持ちに
心が縛られるほど切なくなって。


「うん・・・・ずっと傍にいてね」


そう呟くのが精一杯だった。

崩れ落ちそうなあたしを
真壁さんがしっかりと抱きしめる。
離してくれない。
どこにも行かせてくれない。


むさぼるように
真壁さんのキスを味わった。



「ゆいこ」


あたしの名前を呼ぶ声が聴こえる。



「真壁さん・・・」




「好きだ」



「・・・あたしも真壁さんのことが好きだよ」




何度も繰り返される言葉で
胸が締め付けられる。


好きだと囁く声が
熱を帯びて耳元で聴こえる。
その声がもっと聴きたくて
頭を傾けた。



あたし達の頭上には
もう消えようとしている太陽の光。


この九条院家の庭も青白い光で包まれて
いつもとは違う場所みたい。

青白くなってきた世界にぽっかりと浮かぶ空。

太陽の周りに虹のリングが見える。


太陽を見るフィルムがないから
きちんと太陽のリングは見えないけど。


でも。


あたしたちを祝福するかのように
頭上に丸く・・・・太陽を囲むように
丸くキラキラしている虹が見える。



そんな不思議な空間の中。

太陽のリングよりも。


真壁さんのキスのほうがすごく大切。



目を瞑ると真壁さんの心の中で
燃えているだろう光が見える。

目を瞑ってキスをすると
その炎の熱さや強さを感じるの。

燃えさかる炎は
さっき見た太陽の光のようだ。






こうやって
抱きしめあっているのを
屋敷から見えないように。


木の幹にもたれかかって、そっと隠れたまま。
青白い光が広がる庭は昼間なのに夜のよう。
花壇の花たちでさえひっそりと息を潜めて
愛し合うあたし達を見守っている気がする。



夜でもなく
昼でもなくて。


あたしと真壁さんしかいないような世界。


いつもとは違う光に包まれながら。





そっと愛を交わす。


静かに激しく。







真壁さんに抱きしめられ
キスをされる。


もちろん、それだけじゃない。






愛の言葉をもっと囁いて欲しい。
あたしのことをもっと好きだといって欲しい。

ずっと傍にいるって
今日この世界でここで何度も誓って欲しい。



そんな想いで
胸が一杯になりながら。




あたしと真壁さんは
太陽がまた姿を現すまで
しばらく・・・・・・
そこから出てこれなかった。


























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