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ゆびきり  11/03/2008  





********** ゆびきり ********








隆也くんはあたしに沢山約束をしてくれる。

「今度はどこそこに遊びに行こう」、
からはじまって、
「そのうち立派な執事になるから」、とか。
未来のことをよく語る。


「ずっとお嬢さんの傍にいます」
「一生お嬢さんは、オレが守りますから」

これはもう口癖。

その言葉を聴くたびにあたしは、
嬉しいのと同時に不安になる。
ずっと一緒にいようって言葉がいつか
嘘になったりする日が来るんじゃないかとか。
そんな不安に襲われてるあたしの気持ちを
隆也君にはわからないと思う。


人を疑うことを知らなくて、いつもまっすぐ正直で
そして強い人だから。

隆也君はそうやって約束をするときはためらいもなく、
すぐに指を出してくる。




ゆびきり。

小指と小指を絡めて。



必ずあたしの目をじっと見て。
優しく見つめながら約束してくれる。
その瞳に不安だとか疑いだとか、ためらいの色はない。
約束した後にもし近くに誰もいなかったら
きちんとキスしてくれる。
両頬に手を当ててくれる、その仕草がとても好き。
大好きな人が、すごく幸せそうなのが、手にとってわかるから。


だからあたしはいつも隆也君がしてくれる約束に心をまかせる。


彼が語る「きっとそうなる」約束は
あたしにとっては「そうなってほしい」約束。


この約束の差の切なさをわかってるのは
きっとあたしだけだ。





彼の瞳はいつもまっすぐ未来をむいている。
約束語った瞬間。
それは彼にとって真実で疑いのない未来。

「いつも、隆也君がしてくれる約束は口だけだよ」

たまにそう言って拗ねてみせる。
だって隆也君の約束とは、破られたりするから。


例えば。



今日は俺が迎えに行くからって約束が、
隆也君が急に庭仕事に借り出されて
手が開かなかったからとかで、中岡さんが来たり。


(なんであたしの専属なのに)


今日はお休みだから2人きりで一緒にお茶をしようって言って
あずまやに行ったのに、誠吾君や瞬君にも会っちゃって
2人とも誘っちゃって2人きりの時間じゃなくなるとか。


(あたしは2人きりでお茶したかったのに)


わかってる。
あたしがただ拗ねてるだけのことだって。


でも。

事情はわかっていても。
小さい、小さい約束でも。
破られるのがあたしがとても嫌いって知っておきながら。
「ごめん」っていう言葉を聞くのがキライ。



「だったら、約束なんかしないでよ」

約束したら期待しちゃうから。
隆也君の約束は当てにならない。
そう憎まれ口をたたいてちょっと拗ねるあたしを
隆也君は小さい子をあやすように甘やかす。



―――初めの頃は隆也君がこうやって
沢山約束をしてくれるのが嫌だった。
約束されるたびに、それを破られることを考えるから。
あたしはすぐに不安になったりするし
すぐに拗ねるしすぐに揺らいだりする。

だから、隆也君のまっすぐさがたまに眩しい。
まっすぐに未来を見つめているところが。
眩しいからこそ傍に居て、あたしのことをずっと
照らして欲しいと思う。
あたしにとって隆也君は、すごくぴっかぴかで
そばにいるだけで、心がすごく明るくなるの。


20090428033935.jpg


太陽みたいな人。
すごく、大好き。
とっても好きだから。






今日もちょっとだけ隆也君と喧嘩した。
喧嘩というよりはあたしが一方的に拗ねているだけ。

だって、隆也君――-


「ねえ、一緒にお茶しようよ」

昼下がりにあたしはあずまやで隆也君と2人でいた。

「だめです。だって今オレ、勤務中ですから」

こっちに座って、と隣の席をぽんぽんって叩いても。
隆也君はちょっと厳しい表情で断る。


「・・・誰も見てないよ?」
「でも、だめです」

思わずじろって睨んでみたけど隆也君もそれと
同じぐらいの目線で少し目をそらしている。
あたしは、ただ、隆也君とお茶を飲みたいだけ。
それに前に一緒にお茶しようっていった約束、
まだ果たしてないのに。
誰もみてないのに、こんな風に
妙に硬いところがある隆也君にちょっとむっとする。


「この間の約束は?」

「え?」

「2人きりでお茶しようって言った約束」

思い出したように隆也君が少し焦る。

「あ・・・あれは、また今度ってことで」

今度ってなに?なんで、今じゃだめなの?
自分の中でむくむくと隆也君に対しての不満が募る。


「・・・・隆也君の意地悪」


そっぽ向いて言ったら、少し慌てたように隆也君が
あたしの視線に入るところに動いて
あたしの顔を覗き込んできた。


「意地悪じゃないっすよ」

だからあたしは、またその反対方向をみて拗ねる。

「あの時2人きりでお茶しようって言った約束破っておいて、
今断るなんてありえないよ。」

「あ・・・・」



言っているうちに、言葉がきつくなって責めているのがわかる。


「なんで2人で過ごす休日に、他の人が来るわけ?」

わかってる。
今、この場面での話をしていないことは。

「それは・・・・お嬢さん」

いきなり怒り出した様子のあたしをみて
隆也君が少し呆気にとられてるのがわかる。


「お嬢さんって呼び方もキライ」
「・・・・・」


もうめちゃくちゃだ。
わかってる。
言ってることにスジが通ってないことぐらい。
でも、めちゃくちゃでも言いたいことが沢山ある。


「あたしは、ただ隆也君と一緒にいたいだけなのに」
「隆也君は、あたしとの時間より、他の人との時間を選んでる」

あたしだけに隆也君の時間が使われればいいのに。
専属っていいながらも恋人だっていいながらも
隆也君を独り占めできないのが本当はとても悔しい。
約束破ったとか、そういうことだけじゃなくて、
それ以前のあたしの不満・不安が押し寄せてくる。


「そんなことないですよ」

「うそ」

「本当ですって」

少しだけ隆也君がムキになって答える。


「約束破ったくせに」

「・・・破ってないです、まだ」

「うそつき」

「嘘じゃないっす。今度休みのときにでも2人で・・・」

「今、がいいの」


最後まで言わせない。
もう、今日は責める言葉を自分の口から止められない。


「今一緒にここに座って、お茶してよ」

そしたら約束守ったってことにしてあげる。

「・・・・それはだめです」


すごく困った顔してる。
勤務中だからお嬢様と同じ席に執事が着くなんて。
立派な執事を目指している隆也君からしたら
だめだめなことだよね、これって。
それをわかっててあたしは無理強いする。

だめなことさえあたしの為にしてくれたら、
約束を破られたと感じて不安になった心が
少し満たされるかと思って。


「ほらね。やっぱり隆也君は、あたしのことより、
他のことを優先させてる」

「そんなことありません」


「ううん、そんなこと、あるよ」

「・・・・お嬢さん」


少しだけ哀しそうな顔をしているのが、横目でわかる。
でも、あたしだって傷ついてるんだから。
・・・本当はこんな喧嘩とか、愚痴を言っちゃうとか、
大好きな人の前で可愛くないって全部わかってる。
でも、小さい約束でも守ってくれないと
あたしは不安になる人間なの。


少し泣きそうになる。こんなつもりじゃなかったのに。


隆也君が持ってきてくれたポットのお茶は、
もうきっと冷めているはず―――。






「お嬢さん、すいません、ちょっと来てくれます?」



そう言っていきなり隆也君があたしの手をとってひっぱった。


「え?なに?」

「きちんと話をしましょう」


そういって真剣な眼差しでこっちを見つめてくる隆也君。
あたしはその視線をふりきれなかった。















そのまま手をひっぱられて自室に帰ってきた。
あずまやにティーセットは置きっぱなし。



自室に入った途端、ドアを閉めた隆也君が
あたしをひっぱって壁に押し付ける。
逃げれないように、壁に手をついてあたしの横をふさぐ。

隆也君はあたしよりずっと身長が高いから、
身をかがめるようにしてあたしに視線を合わせる。
逆光で隆也君の表情が薄暗くしか見えない。
その動作にあたしはすごくドキッとした。






「お嬢さん、なんであんなってオレを困らせるの?」


少し怒ってる。ううん、困ってる。
当惑した色が目に浮かんでるのがわかる。

「だって」

あたしが答える前に隆也君が話し始める。


「オレだってお嬢さんの傍に座って、一緒にお茶飲んで
楽しい時間を過ごしたいよ」
「でも、それは執事としたら失格だろ?」

少し溜息をつくようにして隆也君があたしに告げる。

「だって隆也君が、あたしの恋人じゃないみたいなんだもん」

駄々っ子だってわかってる。
でも本当にそう思うんだ。


「なんすか、それ?」

あたしの答えに、隆也君が目を丸くする。

「隆也君、時々あたしとの約束より、他の人のことを
優先させたりする」
「それがたまらなくいやなの」


あたしの言葉に、少しづつ隆也君の顔が曇る。
あたしの大好きなピーカン照りのような
あの笑顔が遠のいていくのが自分のせいだと分かりながらも
すごく寂しく感じる。



「オレの気持ち、疑ってるんっすか?」


少し低い声で問いただされる。
その目はとても真剣だ。


「・・・・・そうじゃないけど・・・・」
「じゃあ、なに?」


間髪をいれずに、隆也君が訊いてくる。
あたしの一字一句を聴き逃さないように
あたしに顔を近づけてくる。





「・・・・あたしは、隆也君がいつも沢山約束してくれるから
不安なの」


「え?」


少し驚いた顔の隆也君に、あたしの心の中にいつもある
寂しさをみられたくなくて、顔を背けながら言った。


「・・・・約束は破られるためにあると思うから」

「・・・・・」

「隆也君が最初から破るつもりで約束してるとは思わない」

でも小さな約束でも。
隆也君にとって小さな約束でも。
それをとても嬉しく思ってるあたしには
破られることがとても傷つくの。

だって大好きな人がしてくれた約束だから。


言い終わった後、そっと隆也君をみた。




あたしが言う言葉1つ1つを聴いていた隆也君は
少し不思議な顔をしている。




その次の瞬間


「ああ、わかった」

不意に隆也君が理解した。


そして、にこっと笑って、あたしのほうを見て笑う。
いつもの明るい笑顔で。少し頬が赤くなってる。


え?


「今わかった。お嬢さん、オレにそんなこと思ってたの?」

少し嬉しそうな声であたしのほうを見て、
キラキラした目をする隆也君。

「・・・・う、うん」


とっさのことで、なんで隆也君が
こんなに嬉しがってるのかがわからない。

「いままでずっと?」
「・・・・・うん」

あたしの返事を聴いた隆也君が
壁についていた手を離して、少し口を押さえた。
その顔が赤くなってる。でもすごく嬉しそうで。



・・・・なんで照れてるの?



「まいったなあ」


隆也君があたしに笑いかける。ものすごく嬉しそうで

そして―――



「なんで、そんな可愛いの?」


そう言ったと思ったら、隆也君がいきなり
あたしをぎゅっと抱っこして持ち上げた。


「きゃ!!た、隆也君!!??」
「ああ、もう、めっちゃ可愛い」


ええー?
!!!!

あまりの展開にあたしはついていけなかった。
なんか隆也君、1人で喜んでるんだけど。


抱きしめて持ち上げていたあたしを下ろしたら
今度は大きく腕を広げて、あたしをぎゅっと抱きしめた。

そして髪の毛に頬ずりするのがわかる。
すごく外国人みたいな仕草。
大きなお父さんが小さな子どもに
可愛い可愛いってするような感じ。


「オレからの約束がとても大事なんだ?」


少し問いかけるような隆也君の声。
ぎゅーっとされた腕の力が少し強くて窮屈。


「・・・・うん」
「それを破られないかっていつも心配って」

すこし声を潜めて、隆也君が嬉しそうにあたしの耳元で囁く。

「それは裏を返せば、オレのことが好きでしょうがないって
ことっしょ」

オレ、すっごく今、幸せ!
そう言って、もっともっと強く抱きしめてくる。




え?どうしてそう思うの?


それに、手加減なしで抱きしめられたらきついよ、隆也君。

いきなりの展開で目を丸くしちゃったけど
でも上機嫌な隆也君を見ていたら。
なんだか悔しくなった。


あたし、本当に隆也君のこと好きで好きでしょうがなくて。
それで不安に思ったりするのに。
隆也君はそうじゃなくて、その不安すら
自分のことを好きなゆえ、気持ちの強さだと思ってる。

(それはそうなんだけど・・・・さ)

(ここは喜ぶところじゃなくて、もっとなんか、
あたしに大丈夫だよ、とか言うところじゃないかな、隆也君?)



隆也君、マイペース過ぎ。




こうやって不安になったりするあたしって
すごく損しているような気分になるよ。
拗ねているのも損してる気持ち。
でも拗ねないでいるのも損してる気持ち。

思わずさっきの不機嫌よりも、もっともっと不機嫌な顔をして
ぷいっとした。
抱きしめている隆也君の胸をぐいっと押して離れる。


「あれ?どうしたの?」

あたしのテンションの低さに気づいたのか
隆也君が不思議そうな顔をして顔を覗き込む。

「どうしたも、こうしたもないよ」
隆也君、本当にマイペース過ぎ!


もう、なんていうか、隆也君にはついていけない。
そう思って離れようとしたら

「どうして怒ってるの?」

腕を掴まれる。

「そんなの、自分で考えたら?」

思わず憎まれ口が出てしまう。
掴まれた腕のまま、振り向かないで言う。

「なんで?オレがそんな喜ぶのってダメ?」


覆いかぶさるように後ろから聞こえてくる声は、
まったくもって。
あたしの、この複雑な気持ちをわかってないことがありあり。


「だめじゃないけど・・・・」

「じゃあ、なんで、そんな顔してるの?」

掴まれた腕で引っ張られて、正面に持ってこられる。
隆也君がすこしかがんで、あたしの両頬に手を当てる。


「・・・・・・」

答えてよ、ってその目線で暗に促される。
しばらく沈黙していたけど、
隆也君はずっとあたしの両頬を包んだまま。
言わないと離してくれそうにないから、
あたしは、しぶしぶ観念した。



「だって悔しいから」

「へ?」

へ、じゃないよ。
とぼけた声が返ってくる。
ああ、やっぱりあたしの中のこの複雑な気持ちとか、
隆也君はあんまりわからないんだね。
もう、それさえも悔しい。

「こんなにあたしばかり隆也君のことが好きで、悔しいから!」

思わず唇尖らせて言ってしまった。

でも言ってしまった後に自分がどれだけ恥ずかしいことを
叫んじゃったかと気づいて、うわあ、って目を閉じた。
頬が赤くなるのをとめられない。
こんなのって自分のほうが好きだっていうのを
叫んでしまったのと一緒だから。

唇尖らせたまま、目を閉じてしまった
あたしに隆也君がきょとんとした様子で
当たり前のように告げる。



「オレもゆいこお嬢様のこと好きですよ?」

・・・その言葉があまりにも、普通な響きすぎて
ため息が出てきてしまった。

「・・・・・もういい」

両頬に添えられた手を避けて
今度こそ隆也君から離れようと振り払った。

「えっ!ちょっ、ちょっと待って」

少し慌てた声。

「ねえ、なんでそんな怒ってる?」
「おしえてよ」

でもまた後ろ腕に掴まれる。
ああ、もう。

「・・・・・・」

「オレ、本当にお嬢さんのこと好きです」

好きなら、もっとあたしの気持ちを分かって欲しい。
だから、なにも言わない。


「・・・その・・・・、もしかしてオレの気持ち疑ってるんすか?」

何も言わないあたしを誤解したかのように、
少し傷ついたような隆也君の声。


「・・・・・・・・」

「答えて」

「答えたくない」

「・・・・・・・・」

溜息がきこえた。

隆也君があたしの正面に回るのが分かる。
でも目を合わせたくなくて、視線を横に逸らした。

「じゃあ答えなくていいから、こっち向いて」

両手を掴まれて、かがんで、
あたしの目を見ようとする。


20090428033937.jpg

「やだ」
「ちゃんと話をしよ」
「やだ」

もう、やだ、って言葉しか出てこない。
なんでこんな展開になったか、
あたしにもわかんない。


素直になれなくて。
ずっと目線をあわさないで横を向いたままのあたしを見て、
隆也君がまたため息をついた。

「オレ、ほんと訳わかんないよ。いきなり不機嫌になったりして」
「オレがゆいこのことすっごい好きってこと、わからないわけ?」

少しふてくされたような口ぶり。

「・・・・・・・・」

「ん?」


どうなの?って隆也君が訊いてくる。
ん?って言われても・・・。

「わからない・・・わけじゃない」

しどろもどろで答える。

「わけじゃない、けど?」

「・・・・・・・」

そう言われても。
拗ねてしまった気持ちは簡単には戻らない。

「じゃあ、オレがどれだけお嬢さんのこと好きか
証明してもいい?」


「え?」


掴まれた手をひっぱられ、くるっと身体をひっくり返され、
とんっと、押されたら背中は壁だった。


「そしたら、オレがどれだけゆいこのこと好きかってわかるはず」

あたしが答える間もなく
隆也君が激しくキスをしてきた。







壁に押し付けられる。
躊躇なくぶつかってくる感情。

キス。
キス。
キス。


ものすごい勢いで隆也君から、
あたしの中に注がれるのがわかる。
普段の隆也君の愛情って、温かくて包み込んでくれる
優しさだけど、これは・・・・違う。
もっと激しくて。あたしを奪うような。
あたしをさらっていくようなキス。


「ん・・・・たか・・やくん・・・・、苦しい・・・・」

キスの合間に息を吸う。だんだん酸欠になりそう。
隆也君の唇が許してくれないから。

「だめ・・・もう・・・・少しだけ」

キスの合間にしか話せない。
ぎゅっと心臓を鷲づかみされたかのようにキスの嵐で
あたしは、もうドキドキしながらもぼうっとしてきた。

「ん・・・・んん・・・」

壁に押し付けられてる。壁際まで追い詰められる。
隆也君の手が壁についてあたしを逃がしてくれない。
いつもは、だめって言ったらすぐにやめてくれるのに。
今日はその言葉さえ効かない。
まだ執事服を着て、勤務中なのに。

恋人同士のときにも沢山キスしてくれるけど、
それとは。違う。




「・・・・も・・・、わかったから・・・」
「本当に?」


あたしの降参の声に不意に激しいキスが止んだ。

隆也君があたしの顔を覗き込む。
にんまり笑ってるのがわかる。

キスであたしの不安を取り除いたつもりなんだ。
それはなんだかずるいと思いながらも
覗き込んでくる優しい瞳を見たら
あたしは何も言えなくなる。

だからまた憎まれ口を叩いちゃう。
この人に憎まれ口を叩いても、笑って流してくれるって
わかってるけど、でもそれでも。

「どうして隆也君は、そんなに自信たっぷりなの?」

少し悔しくてそう言った。

「え?」
「だって、いつも自信たっぷりじゃない」
あたしとずっと一緒にいられるって。

「あたしは時々不安だよ」
「隆也君みたいに、強くないから」

きょとんとしていた隆也君が不意に頷いた。

「なにそれ・・・」

そういって、隆也君は少しびっくりしたように呟いた。

「なにそれ、じゃないよ」

隆也君と違って、あたしは不安に弱いってこと。
思いっきり不機嫌にそう言ったら隆也君は、
まじまじとあたしの顔を見た後、ふっと笑った。

「強いとか、そんなんじゃないよ」

そして少しだけ顔を赤らめて、真剣な顔であたしを見つめる。
しっかり目を見つめて隆也君があたしに語る。
一言、一言、大事に。


「オレはお嬢さんのことに関しては、もう決めてるんすよ」
何があっても、お嬢さんのそばを離れないって。
ずっとお嬢さんの笑顔を守るのは自分だって。
こんなに大好きだから手放したくないって。
ずっとそばにいたいって、いつも思ってます。
専属として選んでもらって、こうやって毎日傍にいれて、
オレ、ほんと幸せっす。
でもそれ以上の気持ちで、オレはお嬢さまが好きなんだ。
1人の女の子として。ほんとオレ、
あきれるくらい、めっちゃお嬢さんのことが好きなんすよ。
お嬢さんがオレのことを好きなこと以上に。



思わずぽかーんとしてしまうほど
隆也君のいきなりの大胆な告白に
あたしは目を、耳を、心を奪われる。

「だから、俺はお嬢さんに沢山約束したくなるんです」
お嬢さんにいつも笑っててもらいたいから。
1つ1つ約束を叶えていけば、きっとオレ
ずっとお嬢さんの傍にいれると思うから。


そこまで言った隆也君は少し言葉を切って
あたしの目を覗き込み

「お嬢さんは、一生オレが守ります」

最後は力強く宣言してくれた。



(思いっきり・・・大胆な・・・!)


すごく、赤面してるけど、とても嬉しそうに、
そして、あたしのことを愛しそうにみつめてる隆也君。

スゴイことを言ってるよ隆也君・・・・。


思わず呆然と見つめてしまった。


―――なんでこんな言葉だけで
あたしの中にある不安とか全部消し去ってしまうの?
ものすごい力だよ、隆也君。

太陽のようないつもの笑顔でにこにこしてくれるもんだから、
思わず照れ隠しに言ってしまう。

「・・・お嬢さんって呼ばないでよ。こんなときまで」

赤くなったあたしに気がついたのか、
隆也君が笑うのがわかる。

「だってなんか呼び捨てで呼ぶって恥ずかしいじゃないっす」

さっきの大胆な告白の方が絶対恥ずかしいと思うのに
隆也君って、本当に・・・・。
思わず笑いがこみ上げる。

「恋人同士なのに」

んー、って少し斜め上をみて唇をまげていた隆也君だけど、
ちょっと納得したみたいに、あたしのほうを見てにこっと笑った。


「じゃあ、ゆいこ」

これでいい?って訊く隆也君の口から出た
あたしの名前にどきっとする。

「遅いよ」

でも、そ知らぬふりをする。

「ごめん」

ごめんって言いながらも、隆也君は笑ってる。
その笑顔があたしを見つめている。


さっきの言葉・・・・。
あたしの心を満たしてくれた。
あんなにも率直でストレートに言われるって・・・・
本当に嬉しい・・・・




「ねえ、隆也君」
「ん?」
「・・・・さっきの言葉、とっても嬉しかった」

嬉しさと恥ずかしさのあまり、ちょっと俯きかげんで告げた
あたしに、隆也君が目を輝かせて覗き込んでくる。

「どこらへんが?」
「んもう!意地悪しないで」
「ごめんごめん。だってゆいこが可愛いからつい」
「隆也君ったら!」

思わず、隆也君の胸を叩く。ぽかぽかぽか。
笑いながら隆也君がそんなあたしを受け止めてくれる。
もう!って言いながら、叩いていた胸に飛び込んだら
隆也君が後ろに手を回してぎゅっと抱きしめてくれる。

隆也君・・・・。

あたしを抱っこで持ち上げて
近くの椅子に座った自分の上にあたしを置く。
横に抱っこされながら、あたしは隆也君の首に
腕を回して抱きつく。

「隆也くん・・・・」
「ん?」
「なんかすごく子どもみたいになってるよ、あたし?」

隆也君はすごく体格がいいから、少し小さいあたしは
隆也君によく抱っこされる。
お父さんみたい、って思っているのはナイショ。


「膝の上にあたし置いてたら、重いよ?」

隆也君が笑う気配がする。

「いいよ。可愛いから許す」

その言葉がおかしくてくすっと笑うと、隆也君も笑った。

近くで見る隆也君。

あたしのことをすごく優しく見つめてる。
少しだけ顔が赤くなってるのがわかる。
あたしも・・・きっと赤くなってるはず。

恥ずかしくて、隆也君の首元に
自分の頭をくっつけた。
ことん、って置くと、隆也君の肩の温かさが伝わってくる。

ここはあたしの場所。

頭を抱くように回されたたくましい腕。
すごく綺麗に筋肉がついてるのがわかる。
隆也君がくんくんとしながら、あたしの髪の毛に鼻をつける。
髪の毛にキスされる。

「ゆいこ、ほんとすげえかわいい」

そして髪の毛に頬ずりされた。
腕にも。首元にも。


それがくすぐったくて、あたしは
くすくす笑いながら身を捩って逃げる。
なんか・・・その仕草がとても恥ずかしい。


あんまり年は変らないのに。
すごく溺愛されてるって気がする。
隆也君の手放しの愛撫が恥ずかしくて、
隆也君の胸にしがみついてくーってハグしていたら、
隆也君があたしを抱きしめて、少し揺らす。


隆也君の胸はすごく広い。
そしてたくましくて。
あたしのことをすっぽり包んじゃう。
大きな海に抱かれてるみたいに。
あたしは、少しだけ身体を揺らされるのが
気持ちよくて目を閉じた。
力を抜いて、隆也君にもたれかかる。


「隆也・・・・くん・・・・」
「ん?」
「・・・・ううん、なんでもない」

そのあたしの身体を隆也君の腕が抱っこしてる。
優しく手が背中を撫でてくれる。
目を瞑って、隆也君の愛撫に
身を任せていたら不意に耳元で囁かれた。


「オレ、本気だから」
「え?」
「本気でいつも、ああいうことを思ってる」

腕の中から見上げると隆也君はどっかの方向をみて
頬を染めながら真剣なまなざしをしている。

「隆也君・・・・」

名前を呼ばれて、隆也君があたしを見つめる。
その瞳がとても・・・甘い。
赤くなってるのに、隆也君から目が離せない。
目を閉じた。

「いつか、ゆいこと・・・・」

言葉がキスで消される。

「・・・うん」

それすら、とても甘い。
キスの合間に隆也君が囁く言葉が
あたしの唇の上を優しくなぞる。


「オレにとって、ゆいこは太陽みたいなんだ」
「え?」
「ゆいこの笑っている顔を見てると、本当にオレも嬉しくなって」
だからいつも笑ってて欲しくて約束するんだ。

「・・・・」

「執事の仕事も、最初は戸惑っていたけど」
ゆいこの笑顔が見たくて頑張れるオレがいるんだ。
オレ、きっと一人前の執事に認めてもらうようになるから。

「そしたら、ゆいこのこと、恋人だって宣言する」
「え?」
「今だって、もうほとんど知れ渡ってるかもしんないけど」

そういって隆也君がふわっと笑う。
あたしは―――その笑顔をずっと守りたいと思う。

「でもちゃんと一人前の執事になったら
ゆいこの恋人だって胸をはれるから」

少し大げさに胸を叩く仕草をする
隆也君の子どもっぽい仕草にあたしはくすっと笑った。

「・・・そんなことしなくても、隆也君はあたしの自慢の恋人だよ」

そうだよ。
隆也君はそのままの隆也君なだけであたしの自慢なの。
とても優しくて。とても頼りになって。
そして、素敵な笑顔を持っている人。

あたしの恋人。


「それはわかってるけど、これは男のケジメです」

そういって、隆也君があたしの髪の毛を
くしゃくしゃっと撫でる。

「そんな不安そうな顔をするなよ」
「だって、隆也君・・・・」

思わず幸せで泣きそうになって
あたしは隆也君を見上げた。

「ああ、もうこんな可愛い顔、誰にも見せないで」

あたしの両頬を隆也君がぎゅーって手で押さえる。
隆也君の大きな手にはあたしの顔は小さいみたい。
両手で頬を外にひっぱったり、内側に寄せてみたり、
あたしの顔で遊ぶ。


もう!って思うけど、そうしながらも、
隆也君がすごく優しい目で見つめてくれてるのがわかる。
不器用そうに、あたしの横顔を包む手のひら。


その手のひらが暖かい。

思わず優しい気持ちになって目を閉じたら、
閉じた瞼にキスが降ってきた。


「いつか、ゆいこのことを迎えにいくほど一人前になるから」


顔中、あちらこちらキスされる。
瞼に。
睫に。
鼻先に。
額に。
頬に。
唇の端に。
唇に。

少し開かされた唇に隆也君の唇が重なる。

―――本当に隆也君はべろんべろんに
あたしに恋してる。
舐めちゃうくらい愛してくれる。
それがたまらなく嬉しい。


「・・・一人前じゃなくてもいいよ」

その言葉で隆也君がくすっと笑う。

「オレ、お嬢さんに釣り合う男になりたいんだ」
「あ、今またお嬢さんって言ったー!」

思わずツッコんじゃって、あたしと隆也君は
くすくす笑う。

「だってオレ達、新米お嬢様に新米執事じゃないか」
2人で一人前になろう。
そんな日がきたら、お嬢様と執事の恋も
許されるんじゃないか?


隆也君があたしをぎゅっと抱きしめる。
その広い胸にもたれかかって
あたしは腕を回して隆也君の首にぎゅーっと抱きつく。


許される、許されない。
そんなの、どうだっていい。
そんなの関係ない。
あたしは隆也君が大好きだから。
隆也君もあたしが大好きだから。


ぎゅーって抱きついたあたしを隆也君が名前で呼ぶ。

顔を上げると、隆也君がキスしてくれる。
隆也君らしいキス。
優しいんだけど、なんかもっと・・・・強い。
熱くて、そして、温かい。
いつもまっすぐにあたしを見つめてくれる笑顔は、明るくて。


そのぴかぴかの笑顔が好き。




「ねえ、隆也君」
「ん?」
「約束して」
「いいよ」

ぐっと隆也君が、あたしの目の前に自分の小指を差し出す。


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「・・・・もう!約束の内容も聞かないで、
すぐゆびきりしようとする?!」

思わず笑いながら、自分の小指を隆也君の小指に絡めた。

「え?だって、ゆいことだったら、どんな約束でもいいんだよ」

なにそれ。


笑いながらそういうあたしを隆也君が囁く。


だってどんな約束でもどんなゆびきりでも、
ゆいこの願い事だったら全部オレは叶えてあげたいんだ。



その言葉で思わず嬉しくなって




ぎゅって抱きついた。



―――隆也君がいつも沢山約束してくれるのは
あたしのことが好きだから。
あたしの願いだったらなんだって叶えたいと
思ってるからなんだ。

だから「守れる、守れない」じゃなくて約束してくれる。
躊躇なくゆびきりしてくれる。

少し泣きそう。



あやすように隆也君の手があたしの背中をぽんぽん叩く。
隆也君の優しい言葉があたしの中に沢山積もっていく。
隆也君にはいつも甘えたくなるの。
隆也君があたしをめちゃめちゃ好きだっていうのは
わかってるから。

ずっと隆也君に見つめられてたい。
一生懸命がんばってる隆也君の傍で、あたしも頑張りたい。
多分、遠からぬ未来、隆也君が一人前の執事になった時は
きっときっと。


隆也君の永遠の約束をしたい。


あたしはさっき絡めた自分の小指と
隆也君の小指を思い出した。

ずっと死ぬまで一緒って約束。
ずっと愛し合うって約束。

きっと。
きっとそういう日は来るはず。


ううん。
そういう日を迎えるためにあたしたちは、
毎日、沢山約束するの。


約束するのは縛りたいからじゃない。


相手の未来に自分がいるってことがわかっているから。
ゆびきりをして1つ1つ、それが叶えられていくたびに
あたしたち2人も未来に近付くの。
隆也君があたしにしてくれる沢山の約束。



―――それは隆也君が約束してくれた瞬間に
もう叶えられてる。




ゆびきりしよう。
ずっとずっと大切な約束だから。





大好きだよ、隆也君。
これからもずっと、あたしのそばにいてね。



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******** ゆびきり FIN. *******
FOR YUN

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