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******* 恋愛写真 **********

 ~ Beautiful Butterfly ~






俺の心の中には、1冊のアルバムがある。

そのアルバムの名前は「つぐみ」。
この九条院家のお嬢様のお名前だ。

そして、俺の想い人。

アルバムの中には、俺がこれまで見てきた
彼女の写真が収められている。
専属執事として傍についている分だけ、
毎日、そのアルバムに写真は増えていく。


朝起こしにいったときの無造作な寝顔。
眠気眼をこする子どものような仕草。
おはよう、と微笑むときの優しい顔。
パジャマの姿を恥ずかしがる背中。
制服のリボンを結ぶときの凛とした表情。
髪の毛を梳かす鏡越しの顔。
並んで歩くときの彼女の華奢で細い肩。
教室で友達といる時の楽しそうな横顔。
俺を見つけて、すぐさま飛んでくる可愛い姿。
靴を履こうとして、うずくまったときに流れる髪の毛。
お茶のときにカップを持つ小さくて細い指。
飲むときに、こくんと動く、白くて小さな喉。
盗み見る綺麗なエッジを描く横顔のライン。
庭の咲き乱れる花を見つめて瞬きする睫毛の作る影。
考え事をするときにひじを突いて顎を乗せる仕草。
何かを語ろうとするときにゆっくりと開けられる唇。


そして、時々俺を見つめて微笑むときの優しい瞳。
眠る前にキスをねだって閉じられた瞼。


どれもこれも。
あまりにも、俺の心を奪うものだから、
心の中でシャッターを切らずにおれない。
俺だけが知っている彼女の1つ1つ。
ちょっとした仕草でさえ愛しい。


今、少女から女性に変わろうとしている彼女。

さなぎから蝶に変わる1人の女の子の傍にいて
成長という名のラインで、日々変化する、
その綺麗さ、儚さ、そして女らしさに
俺は感動し、切望する。

蜘蛛のように、その蝶を捕らえてしまいたい。
そして、その美しい羽を折って食べてしまいたい。


君は気づいているんだろか?
俺がこんな欲望を持っていることを。

ただ、優しい男だと俺のことを思っているのなら
それは大きな間違いだ。

本当の俺は、独占欲もあって、
そして、黒々としたものも胸に秘めている。
でも、これまで生きてきた年数で、
俺はその姿を君の前から隠すことができる。
隠して、君の傍で居続ける。
いつか、君を捕らえようと心の奥底で望みながら。

君を捕らえてしまいたい衝動に駆られたとき、
俺は心の中でシャッターを切る。
捕らえることができないのなら、
せめて、その姿を永遠に心に焼き付けようと思って。

君が美しい羽を持っている蝶だ。
その美しい金粉を撒き散らし、
“女”であることを匂わせる。

その匂いに酔いしれながら
俺は君が傍にいてくれることに
心の底から、幸せを感じるんだ。

君が微笑むだけで、俺がどれだけ心を震わすか
わかっているんだろうか?

その1つ1つの仕草が
たまらなく、俺の心を幸せにするんだよ。
揺さぶられて、見境がつかなくなる。

だけど、たまに幸せすぎて、
それをもっと完璧に自分のものにしたくて、
「終わり」にしたくなる。

自分の手で「終わり」にしてしまえば、
それは、もう誰からも奪われることのない時間だから。
幸せな時間、と名づけて、それを永遠に保存できるから。


「終わり」がいつ来るのか、怯えなくてすむ。


その美しい蝶の飛ぶ姿を
ずっと見守っていきたいという想いと、
どこかへ飛んでいってしまうのなら
今すぐ捕らえて、ここで俺の手で
その美しい羽をもぎ取ってしまいたい衝動。


2つの気持ちのどちらも、俺の心だ。

こんな俺の心を君に伝えたなら、君はどう答えるだろう?


こんな気持ちを―――、こんな矛盾した俺を、
いつか君に見せることができるだろうか。


「執事でなくなろうとも、おそばにおります」


その言葉は君をずっと見つめておきたいが為。

俺がいないところで、
こんなに愛らしくて美しい存在が
息をしていることが許しがたい。

見ていないところへいってしまうくらいなら、
今すぐ俺のものにしてしまいたい。
傍にいられないのなら、今すぐ――-。






「-----中岡さん・・・?」



気づくと、彼女が俺の腕に手をかけてきて、こちらを見ていた。
覗き込むように、俺の瞳を見つめている。

もう片手には、屋敷に滞在している客人からの贈り物、
色とりどりのチューリップの花。
これを飾ろうと、彼女が花瓶を選んでいたところだった。


「どうしたの?」


贈り物に嫉妬して、俺は自分の世界にいたのか。
もしかしたら、表情にも怪訝な様子が出ていたのかもしれない。

こんな黒い気持ちを彼女に気づかれたくなくて、
すっと表情を整えて彼女に微笑み、
冗談交じりで、彼女に甘い言葉を囁く。

「あんまりにも可愛いから、その姿を写真に撮りたいなって思ったんだ」

じっと見つめて、彼女に告げると、すぐ頬が赤くなる。


彼女は俺のことが好きだ。


こうやって確認しながらも、俺の心は震える。
でも、今日の彼女は赤い顔をしながら、
少しきっぱりと予想もしていなかった言葉を言った。



「いやよ」


「え?」


「だって、写真になってしまったら、なんだか遠いよ、久志さんから」


「・・・・・・」


その言葉の意味があまりよくわからなくて黙ってしまった俺に、彼女が微笑みながら言葉を続ける。


「あたしは、ずっと久志さんの傍にいるの。だから、写真なんて必要ないでしょ?」


そう、首をちょっとだけ傾げて言う。


「写真に写ったあたしを見るより、いつも傍にいるあたしを見つめていればいい」


自信満々で、目をキラキラ輝かせて言う君。
言った後で、自分の言葉の大胆さに赤くなる頬。


君は今、自分の口から未来を語ったのをわかっているか?


この姿に、俺はまた心の中で夢中にシャッターを切る。
これでまた、アルバムの写真が増えた。




君は何もわかってないよ。

どれだけ、俺が君を、
君の全てを愛してるか。


参ったな。
こんなに君を好きになってるなんて。
あんまり、俺を喜ばせないでくれ。


君を好きになりすぎるから。



「つぐみ・・・」



胸の奥からあふれてくる愛しさと、切なさで、俺は彼女をゆっくりと抱きしめた。


いきなり抱きしめた俺の手を振り解かずに君は、
手に握ったチューリップを傍に置いて、
そっと俺の背中に手を回してくる。


胸に頬擦りしてくる彼女。
華奢で、細くて、小さくて。
その身体中、舐めまわしたいほど愛しい。



どこかへいってしまわないでくれ。
ずっと傍にいてくれ。

そう、心の中で呪文のように唱えながら。











願わくは、彼女が死ぬときまで、
俺が彼女の傍にいられますように―――。






















時よ、止まれ。



今、この瞬間が永遠になれ。

















そう、強く祈りながら。


俺は自分と彼女の姿に心のシャッターを切った。














********** 恋愛写真  Fin . ********

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