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失われた町  10/26/2007  
失われた町失われた町
(2006/11)
三崎 亜記

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『失われた町』 三崎亜記


本の雑誌で見かけた1ページどりの広告に興味を惹かれ
借りてきてみた。作者、若い!

消滅する町について関る人々の物語。
30年周期ごとに町が1つ失われる。
町の消滅には、一切の衝撃も神童も、音も光も伴われない。
ただ人だけが消滅する。
その町は、“町の意思”によって、住んでいる住人を飲み込み、
そして、町に関る人々を引きずり込むべく触手を伸ばしてくる。
それを人々は“汚染”と呼んだ。

連作短編仕様になっており、それぞれ主人公が違う。

消滅した町の調査員であった茜。
そこで知り合った和弘が町の汚染のため記憶をなくしていることを承知で
彼と一緒に生きていく決心をする、エピソード1。

30年前に消えた町での唯一の生存者であり、
消滅体性ゆえに管理局で働く白石桂子。
次の町の消滅を阻止するために動きながらも、
特別汚染対象者として、生きていくために、
絶えず忍び寄る町の汚染と戦い、触手を遠ざけながらの人生で
愛する人がいるわけでなく、孤独な彼女が
公園で野宿するカメラマンと出会う、エピソード2.

妊娠していた妻を町の消滅で失った英明が、
妻の分離者であった本体と暮すようになり、
そして子供を授かるものの、町で消滅した妻に引き摺られ、
町の汚染により、本体も消え行くエピソード3.

などなど。

ストーリーは月ヶ瀬町という町の消滅した時間を基準に
消滅した時間から、そして30年後の次の町の消滅までに戦う人々を描く。
どの話でも登場する白石桂子は、月ヶ瀬町の消滅よりも前、
それより30年前に消滅した倉辻町での唯一の生き残り。
今度こそ、町を消滅させない、と、消滅阻止に関る人生を選んできた
何人もの人々の物語であった。

町の消滅でかけがえのないものを失っているから。
時には理不尽なことが人生に降りかかるけれども、
それを誰にも止めることはできない。
でも、大事なものが失われるその瞬間まで諦めずに
精一杯「生きる」ことを考えて生きたいと思っている。

生きる、ということについて真摯なテーマに
喪失感をからめて描かれている作品だった。
個人的には白石桂子とカメラマンの脇坂の運命の恋、
「澪引きの海」と「舵取りの呼び音」のエピソードが好きだったけど、
でも、消滅するのを防ぐため、月ヶ瀬町から必死で
外部へコンタクトを送ってきた潤と由佳の繋がりも心に残った。
人がいる分だけ、繋がっている思いがある。
大切な人が残した思いを引き継ぎ、そしてそれを胸に生きていく。
なにかを成し遂げるために。
結果が結論じゃなく、其処に至るまでの過程をどう生きるか。

SFのような話かと思ったら、中身はまるっきり人間の生き方について
真面目に取り組んで書かれた話だった。

泣く時は潔く泣くと決めて目を開けたままポロポロとなく茜や、
町の消滅に引き摺られ消えていく母に対して、
自分達が終わらせるから、と語る娘。
自分のような存在を二度とつくらないためにも、
消滅の連鎖を断ち切るために生きていく、最期のその日まで、と誓う桂子。

明日失われるかもしれないとしても、
その瞬間まで自分が為すべき事をして、生き続けようという決意と、
そして望みはきっと誰かがつなげてくれるという希望。
刹那的な気持でいうのではなくて、着実に人生を一つ一つ掴んで
真摯に生きていこうというテーマが一冊を貫いており、
読みながら、自分でも思っていなかったほど、胸を打たれてしまった。

ほんというと、本の雑誌で広告を見たときにも、
前にどこかで同じように広告を見たときも、
こういう作品だとは思っていなかった。
ただ軽い、ミステリーや、日常的な作品で、今流行りぽぃような
ただ発売当初騒がれて数年後には消えるような作品だと思っていた。
侮るなかれ、初対面の印象ごときで。

読み始めて数ページで、これは思っていた印象とは
違う作品だ!とわかった。意外と食わず嫌いで、
自分の勝手な印象で遠ざけてる作品ってあるもんだなぁ。
これは読んで良かった。かなり良かった。




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