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ナイトメアの分割、その3になります。

その1 その2 その3 その4


以下、創作になります。

ナイトメアですので、
ご注意ください。



********* 永遠の恋人 3**********:




出発当日。


出かける準備ができて
車が回されてた。
玄関先に使用人の人たちが
揃って並んでいる。

その並びの列の最後に
彼がいるのを見つけた。


胸が苦しい。


視界に彼がいるだけで
苦しくてしょうがなくなる。


彼がじっとあたしを見つめている。
執事の仮面を被った彼が。



(好きだ)
(おまえのことを愛してる)



何度も何度も
彼が囁いてくれた言葉。
恋が叶ってすぐの頃の幸せ。
死んでしまうかもしれないと
想うほど幸せだった。

(あの時にあたしは死ぬべきだったね)



彼との恋が終わる日が来るとは
想ってもいなかった。
自分の手で終わらせるということも。


それも彼が許してくれない形で。




胸が焼けるように
ひりひりと痛い。



真壁さんの前に立つ。
いつものように。

専属執事の彼と
こうやって出かける前に
身支度を最終チェックするのは
久しぶりだ。

ずっと侑人さんが
ついててくれたから。


あたしの気持ちが揺れないように。


真壁さんから
離してくれてた。



彼がそっと目を伏せて
その綺麗な指で
あたしの服を調える。

それがとても懐かしくて。
そして辛くて。




囁いた。


どうしても聴きたかった。
もう一度彼の声が。



侑人さんと遠くに行ってしまう
その前に、もう一度だけ。



「真壁さん、怒ってる?」

声が震えるのがわかる。


「いいえ」


答えは一秒の狂いもない
時計のようだった。
きっちりと、それ以上はなく。
ただそれだけで。


しばらく訪れる沈黙。

思わず目を伏せたあたしに
そっと真壁さんが囁いた。


「正しかったよ、その選択は」


「え?」


あたしを見上げた瞳は
とても穏やかだった。


「樫原さんなら、お前を幸せにしてくれるだろう」



その目は
語っていた。


それに。
俺は執事に戻っただけだ。
何であろうとも

「ずっと傍にいるという誓いは果たせるよ」



いつか・・・・
彼が言っていた
言葉を思い出した。


恋人じゃなくてもいい。
どんな形であれ
俺はお前の傍を離れない。

たとえお前が他の男の元に
いくのなら、そのとき俺は
「執事」に戻るよ。

お前に忠誠を誓った執事として
そしてお前の傍を離れない。
ああ、どんなことをしてでも
お前の傍を離れたくないんだ。


傍にいられるのなら
どんな犠牲でさえ払う。


お前の傍で一生を終えられたら
それが俺の本望だから。



お前の傍を一生離れないことを誓う。

これが他の誰にも出来ない
俺だけの愛し方だ。




「真壁さん・・・約束・・・・」


死ぬまで傍にいて。
あたしより先に死なないで。
ずっと傍にいて。
そう頼んだ約束。


「ああ、覚えてるよ」


「まだ・・・・」

聞き終わらないうちに
言葉が被せられた。

「終わってないよ」

(俺が終わらせるわけないだろう)



真壁さんがあたしのことを
まだ愛している気持ちが
伝わってくる。


目を落としたら
手袋をした真壁さんが
あたしの胸元のネックレスを
直してくれた。


そのネックレスは
いつか真壁さんが
見立ててくれた
ネックレスだった。


金具を触るその指が
少し震えてるように想うのは
きっと・・・・
気のせいかもしれない。





(あたしもまだ・・・・)


何も言えなかった。
何かを言うのも
真壁さんは許してくれなかった。

ただ真壁さんは
静かにまた
執事の仮面を被った。


ごめんなさい、なんて言えない。
でも、ありがとう、も言えない。


愛しているからこそ
ずっと一緒に願ったからこそ
こういう結果になってしまった。


全てはあたしが弱いから。
弱いあたしは
強いあなたのそばに
いられなかった。


きっとあなたは
静かに受け入れてくれたけど
ずっと許してはくれないだろう。


あれだけ約束して
あれだけ傍にいたいといった
あたしから先に手を離したことを。


他の誰かの手をとって
逃げてしまうなんて。

きっと許してない。

でも。

それでもあたしを
愛してくれてる。
許してはくれなくても。






ふと忘れていた情景が
思い浮かぶ。





ふと顔を上げたときに
あたしを見つめてくれていた
真壁さんの優しい視線。

朝のモーニングティの時
少し猫舌のあたしが
すぐに飲めるように
冷ましてくれていること。
あったかいって呟いた声で
少しだけ微笑んだこと。


あたしが綺麗だといったお花を
忘れずに部屋に飾ってくれること。


あずまやでお茶をすると
庭園を一緒に歩きながら
手を繋ぎたいけど繋げなくて
あたしと真壁さんの前に伸びた
影の手に、そっと手を重ねた。


あたしの一歩後ろを歩いていた
真壁さんがそれに気づいて
影の中のあたしの手にそっと
自分の手の影を重ねてくれた。


手、繋いじゃった。

そう呟いたら
聞こえなかったふりをして
横を向いていたけど
でもその横顔は
とても優しかった。


ベッドで寝かせてくれた後
そっと額を撫でて、おやすみ、と
キスしてくれてたこと。


手袋をはずして
あたしに触ってよって
わがままを言ったときでさえ
仕方が無いと苦笑しながらも
あたしを抱きしめて
その綺麗な指で
あたしの頬を撫でてくれたこと。


目を見て何度も
愛しいと言ってくれたこと。


キスしてくれる時に
少しかがんでくれたこと。

キスして、って
あたしからせがんだら
苦笑しながらも
いつもより熱くキスしてくれたことも。

背の高い真壁さんの首に
巻きつけた手が
真壁さんの髪の毛を触る。


抱きついた時に
ほんのりと香る彼の香り。


キスの合間に
呟かれる愛の言葉。



いつだって
あたしが欲しい言葉をくれた。


愛してる。
お前だけを愛してる。
何度だって言う。
お前を愛してる。

何も不安に想うことはないよ。

一生傍にいる。
そうお前に誓ってる。
俺はお前のものだよ。
俺の一生はお前だけのものだ。








この人はあたしのことを
とても愛してくれた。
ううん・・・今もすごく
愛してくれてる。













「御帰りをお待ちしています、****お嬢様」


その声に背中を向けて
あたしは侑人さんの手を取って
屋敷を出た。


振り返らなくてもわかる。
真壁さんがじっと息を殺して
あたしを見つめていることが。


でも振り返れない。


振り返ったら
あたしが今までそっと積んできた
色んなものを壊してしまう。


今あたしの手に光る指輪や
その手を繋ぐ
この優しい人さえも
きっと・・・・失ってしまうから。


振り返りたかった。
本当は振り返りたかった。


もう一度。
これで最後だから。
そんな言い訳を
何度使ってでも。



でも、出来なかった。


猛烈に悲しみが襲ってくる。
痛みを感じる激しい風が
心の中で吹き荒れる。













**************

その4はこちらから。
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