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久しぶりに書きました。
ナイトメア〔悪夢〕です。


普通の夢のように
明るかったり
楽しかったり
どきどきするところはないです。

むしろ暗い気持ちや
どろどろとした
嵐のようなものです。


出来れば夜、読んでもらいたいです。


分割はこちらから。

その1 その2 その3 その4

以下、創作になります。

悲恋です。
誰かが死ぬことは無いけど、ただ悲しいです。


どうぞ、創作であること、
ナイトメアであることをご了承の上
ご理解いただけた方のみ
どうぞお読みください。







下げます。



携帯閲覧の方は
この先続いていますので
ナイトメアであるということを
ご理解して、引き返すのなら、
どうぞこちらで、読み終わってください。









*********  永遠の恋人  ***************








好きだから。
愛してるから。


愛してるからこそ
傍にいられなかった。


ただの日常でさえ
彼がいることで
幸せで不幸せで
苦しくて愛しかった。


気がつけば
傍にいたいより
どうやって別れようか考えてた。


いつの間にか
自分の気持ちは
自分の手に
負えなくなっていた。










苦しかった。
いつも。


自分も。
きっとあの人も。

全てが苦しくて。





あの夜。




あたしからさよならを告げた
その足であたしは
侑人さんの部屋に行った。



「樫原さん、あたし、もうだめなの」



「自分からさよならしてきた」



「あの人、なにも言わなかった」




その言葉だけで
この人は全てを理解してくれた。
ずっとあたしの恋の相談役だった。


心が壊れて
ばらばらになった痛みでも
涙さえ出ず、閉めた扉の前で
立ち尽くすあたしを
侑人さんが近付いてきて
そっと抱きしめた。



その温もりで
あたしは初めて
泣くことができた。



侑人さんはあたしに約束してくれた。




「苦しくなるほど、君が僕のことを好きにはなることはないよ」




だから安心して。
僕の傍にいればいいい。


優しく笑って約束してくれた
そんな儚くて残酷な約束に
あたしはすがりついた。



「全て忘れさせてあげる」


君のことが好きだ。
愛してる。




初めて侑人さんと
交わしたキスは
あたしの涙の味だった。


閉じた瞼には
真壁さんの姿が
浮かんでいた。

















大好きだった。
初めて心から好きになった
彼はあたしの専属執事だった。




恋の始まりは
突然訪れた。


気がついたら
とても好きになっていた。




彼もあたしを愛してくれた。



何度も繰り返された言葉。

「好きだ」
「愛してる」


彼の口から出るこの言葉は
全てあたしのものだった。


その言葉は何度も
あたしの心を震わせて
切なくなった。

切なくてしょうがなかった。




どれだけ人を
好きになっていいのか
わからなかった。


気がついたら
ずるずると一人だけの沼に
引きずり込まれるように
あたしは彼だけしか見えなくて
苦しいほど、
彼を愛するようになっていた。



彼と過ごした日々。
彼が傍にいてくれて
あたしがその隣で笑っていた。

幸せだった。
なにもかも。
完璧で。

何が起きても
大丈夫だと想ってた。




―――何も本当は起きなかった。



だけどあたしの心で・・・・

あたしの中の海が
大嵐になり
そして船が転覆した。








気がついたら
あたしは彼にまつわる全てを
自分にしたくて
彼を独占したくて
その想いに心を絡めとられて
がんじがらめになっていた。






他の誰も見ないで。
あたしだけ見てて。
あたしのことしか
考えないで。




専属執事であれども
屋敷の使用人には
かわらない彼は
もちろん、屋敷に働く
色んな人たちと話をする。



そんな当然のことでさえ
嫌でしょうがなかった。



あたし以外の誰かに触れないで。
あたしのものだけでいて。
だってあなたは
あたしのものでしょう?


屋敷の中で
他の使用人と話をしている
彼を見るたびに
心がざわついた。



嫌でしょうがないの。
あなたが他の誰かと
仲良くしているのを見るたびに。


あたしと付き合うようになって
彼は少し変わった。

ポーカーフェイスだった
その表情でさえ
たまに優しい笑みを
浮かべるようになった。


好きになった欲目かもしれない。



あたしだけしか
しらなかったはずなのに
あなたの魅力なんて。




彼にはあたし以外にも
大事にしているものがある。


彼が誇りに思っている
執事の仕事。
彼が好きな音楽。
彼が好きな遊戯。
彼が入れる紅茶でさえ。


彼が心を注ぐもの全て。



その全てが消えてしまって
ただただ、それが
あたしだけであればいいと
心の底から望んだ。





許せなかった。


こんなにあたしが好きなのに
彼があたしだけじゃなくて
他のものにも時間をとられてることが。


彼があたし以外を見ていることが。



むやみやたらに
嫉妬した。


彼の目に映る物全て。
彼が話す人、男女かまわず全て。



あたしの姉にさえも。



そんな醜い嫉妬心で
心に嵐が吹き荒れる。
黒くて、そして
燃えるように熱い。


真壁さんは
きっとそんな
あたしの中に吹き荒れる嵐を
気づいてた。



気づいていたからこそ
何度も言葉をくれた。





愛してる。
俺が愛してるのはお前だけだ。
お前だけがいればいいんだ。
俺もお前を愛してるだろう?





そんな言葉は
あたしの中の一時的な
慰めにしかならなかった。


だから。

何も言わずに
よく彼の胸の中で泣いて
声にならない声で叫んだ。






あなたなんか好きになるんじゃなかった。






自分の中に宿った
鬼のように残酷で
そして恐ろしいものは
もう自分でも手に負えなかった。


止め処も無く
疑い深くなる。

情緒不安定になって
無言でただ泣くあたしを
彼はただきつく
抱きしめてくれた。



抱きしめているうちに
この嵐が過ぎ去って
きっとあたしが
心穏やかになるようにと
願いを込めて。



何度も耳元で
名前を囁いてくれた。
愛してるといってくれた。




そんな風に泣いた夜は
泣き疲れて、気がつくと
彼の胸で眠っていた。




明け方、あたしは
真壁さんの腕の中で
目を覚ます。


少し疲れて眠っているような
そんな表情に
あたしは一人
切なくて、また泣いた。



(離れた方がいいのかもしれない)



心の中で誰かが告げる。

でももう一人の自分は
彼がいない人生なんて考えられない。



そう叫んでいた。




もう、どうして
こうなってしまったのか
わからなかった。










苦しくて辛くて不安で
後悔して泣いて切なくなる。
そんな日々を繰り返し。





幸せを感じるたびに
それが壊れてしまうかもしれない
そんなことばかり考えてた。



もう、幸せを幸せと
感じられなくなっていた。


何か些細なことでも
あたしの心は
ぐちゃぐちゃになる。


その混乱から暴れて
そして真壁さんを
傷つけたくなる
どうしようもなく。



こんな苦しい思いを
あたしにくれないで。
あたしにさせないで。



あたしのことが好きなら
こんなあたしにしないで。
いつもあなたと笑っていられる
あたしにしてよ。




些細なことで
不安になる。
些細なことで
嫉妬に駆られる。

そして苦しくなる。
辛くなる。
苦しくなる自分に
また苦しくなる。



苦しい。
とても苦しい。


こんな思いをするなら
出逢わなければ良かった。


出逢いたくなかった。


真壁さんにも。
そしてこんなあたしにも。




何度も何度も思った。


好きだから
許せないことが沢山ありすぎた。




・ ・・なのに、同じくらい
あたしは真壁さんの
ちょっとした一言や微笑とか
ただ普通の日々が
とても愛しくて仕方なかった。



それを失いたくなかった。


どうにかこの二人の世界を
守りたいと想えば想うほど
こうやって許せなくなることが
多くなってきて最後には
真壁さんを責めていた。



この世界の秩序を乱すあなたを。



全てを排除してしまいたい。
あたしとあなた以外。


そうしたらあなたは
あたし以外を見つめたり
あたし以外に話しかけたり
あたし以外を
大事にすることはないでしょう?




こんな思いを抱くほど
真壁さんのことを愛するとは
想ってもなかった。



・・・疲れる。
嫉妬して。
疲れるんだ。


この想いで
自分が疲れていくのがわかる。





あなたのことを一番知ってるのは
あたしだってことはわかってる。
あなたが一番心を許してるのも
あたしだってことも知ってる。


あなたがあたしのことを
一番愛してることも
わかってる。



なのに・・・・


たまにあたしの
見ていないところにいる
あなたを見ると
その足をひっぱりたくなる。


あたしの知らない話をする
あなたを見ていると。


ひっぱって
引き摺り下ろしたくなる。
ここにいて
あたしのそばにいて
あたしだけを見ていて、と。




どうやったらこの人を
あたしから離れていかないように
できるんだろうか?

失わないですむ為には
どうしたらいい?



そんなことばかり考えていた。




彼に足枷をつけてしまいたい。
あたしから離れていかないように。




醜くて仕方が無いほどに
彼のことだけを
ただただ欲しがる自分がいた。



貪欲に彼自身を
欲しがって。
その全てを。


その世界さえも
自分だけにしてしまうか、
もしそれが出来ないのなら
その世界さえも
奪ってしまいたいと
思う自分がいた。




こんな気持ち。
許せない。

抱いている自分も。
抱かせるあなたも。

苦しい。苦しいよ。
好きだから苦しい。





何度も泣いた。
泣いても泣いても
涙は枯れなかった。






好きだから別れたくなる。

そんなことを
初めて知った。


幸せになるために
人を好きになるんじゃないの?

そんな疑問さえ
打ち消すような
辛さが、この恋にあった。



それでも。

彼があたしを抱きしめる。
愛してると耳元で囁く。

その一瞬は
泥のように闇のように
窒息しそうな
苦しさと辛さの中ででも
あたしはいつも
信じられないぐらい幸せだった。



幸せと辛さは表裏だ。



優しく真壁さんが
あたしを包んでくれるたびに。
あたしを大事にしてくれるほどに。



守りたいと奪いたいが
表裏のように。



理性を吹き飛ばすほど
あたしのことを
好きになってくれたらいいのに。


そう願っていた。



あたしが好きなほどに
あなたがあたしを好きなところを
見せてくれないのなら。


あたしを奪えないのなら。
奪ってしまいたいという
衝動を我慢できるような
そんな気持ちなら・・・・。


どれだけあなたが
あたしに本気なのか見せてよ。





別れてもいい?


何度もそのことを
真壁さんに言いたかったけど言えなかった。




別れてもいいって言ってよ。


言わないのなら
今すぐあたしのことを
その腕であたしを壊して。
こんなあたしを。

奪うだけ奪って
あたしがもう何も
考えないものになるまで。

奪えないぐらいだったら
あたしのもとから去って。




そんな叫びは
彼に届かなかった。

ううん。
届けられなかった。


抱きしめられると感じる
幸せと同じだけ辛くても。


あなたはいつも通り
いつものあなたで。

あたしの耳元で
愛を囁く。


「愛してる、****」





あたしがこんなに黒くて
闇の中に沈んでるなんて
全然気づいていない。


あたしはただ一人
自分だけが
汚れてしまってる気がした。



でも。

幸せそうに
嬉しそうに
そして少しだけ
切なくなったように
あたしを見つめる
真壁さんの前にいると。


どれだけ疲労してても
どれだけ疲弊してても。



彼にあたしが今背負っている
この重荷を一緒に背負って
欲しいと願いながらも
同じだけの気持ちで
彼のことだけが好きだった。


彼を守りたいと思っていた。



あたしの中では
嵐が吹き荒れる。

愛してるという気持ちと
憎んでいる気持ちが。




もう生きていくないぐらい
絶望しているから。
こんな愛に絡み取られて。

大嫌い。
あなたのことなんて
大嫌い。
大嫌い大嫌い。
こんなに嫌いでしょうがなくて。


苦しいぐらい好きなのに
大嫌いなの。

こんなに好きにならせた
あなたが憎い。

あなたがいなかったら。

こんなにも心に
あなたのスペースを
作ってしまう前に
こうなることを
もっと予測すべきだった。

こんなに好きになるなんて
想ってなかったから。


許せないほど憎んでる。
こんな気持ちにさせるあなたを。


でも同じぐらい
愛してる。



何度も何度も反芻した。


ぶり返しが来るように
あたしの中の心は
いつも揺れ動いた。


でもずっと変わらなかった。
最終的に行き着く先は
この恋の苦しさだった。


とても深く、深く。
足なんかつかない。
沼に沈んでいくように。


あたしの中の深い闇や
泥沼は、ただ深くなるだけだった。













大好き。
大好きだったよ、真壁さん。


好きすぎてダメだったの。
好きすぎて
あなたの全てが欲しくて
いつかいなくなってしまったらって
不安だけが募っていって・・・・


あたし、ダメになったの。

どうして?


わからない。

いつの間にか
側にいられなくなってた。



たまに優しくしてくれて
たまに笑いかけてくれる。

ただそれだけで
あたしは幸せだったのに。
どうして?
どうしてなの・・・?


望みすぎたから?
彼の全てを欲しがったから?
ただただ不安だった。




会いたい。
傍にいるだけでいい。
彼の笑う顔が見たい。
彼の後姿だけでもいい。

もう一度彼に抱きしめられたい。
もう一度、「おまえ」って呼んで欲しい。


大好きだった。
大好きだったよ、真壁さん。

好きすぎてダメだったの。
好きすぎて
あなたの全てが欲しくて
あたし、壊れてしまった。

どうして?
わからないの。
わからないのに・・・・・
いつの間にか、側にいられなくなってた。

お願い神様。
もう一度だけ
彼の口から聞きたいんです。

あたしのことを愛してるって言葉を。

あたしだけを愛してるって。

こんなことを望むなんて
あたしは許されないってわかってる。
でも、お願い神様。
お願い・・・・・。

傍にいたかった。
抱きしめられたかった。
どんなに苦しくても
本当は手放したくなかった。


会いたいよ。
逢いたいんだ。
逢いたくてしょうがないよ。

あたしだけを見てて欲しかった。












目を瞑ると
別れを告げたときに
彼がそっと伏せた睫を思い出す。






好きで苦しい。
真壁さんがいつか
いなくなるかもしれないって
そう思うと、苦しくてしょうがない。


真壁さんが
いつかあたしから
離れていく気がするから。
その前に離れたい。

好きで好きでしょうがないの。
こんなに好きになって
あたしは壊れてしまった。

もう嫌なの。
別れたい。





眼鏡越しの、その瞳には
何の色も映ってなかった。



別れたくないと言われたくて
引き止めて欲しくて
そう初めて告げたのに。



あたしの中の
賭けだった。


これであなたが別れたくないと
どうしようもなく粘ってくれたら
きっとあたしが抱いている
この苦しさを真壁さんに伝えられる。


この苦しさのところまで
真壁さんを
引き摺り下ろせる。


そう思ってた。




でも・・・・。



別れたいといった言葉に
あなたは・・・・。
静かに答えた。


「俺がどれだけお前のことを愛してるか、お前はわからないよ」


その一言だった。

繋いでいた手を
自分から振りほどきたいと
暴れたのに
いざその時が来たら
その手を自分から
静かに離してた。


「・・・・別れたくないって言ってくれないんだね」

「待てよ」


ただ、「別れたくない」、
その一言が聞きたかっただけだった。


逃げようとして
つかまれた手を振り払って
あたしは部屋を飛び出した。





執事と令嬢の恋を越えて
ただの男と女だったはずなのに。
いつの間にか、
色んなものに縛られて。



ただの恋じゃなくなっていた。



どこかで掛け違えたボタンが
いつのまにか、ボタンさえ
なくなっていた。

失いたくなかった。
ずっとずっと。


大好きでしょうがなかった。
好きって2文字や
愛してるって5文字では
全然伝えられないほど
あふれてくる気持ち。


気持ちが大きすぎて
いつのまにか、自分の手で
もてなくなってた。
あたしのこの小さな手には
あたしのこの小さな心には
この想いは重すぎて。








・・・・・・・・・・・・・・






夢を見ていた。

真壁さんがあたしのことを
「おまえ」って呼んでいた、あの頃。

おまえのことだけを
愛してるよ。

そう目を見て囁く真壁さんが
とても愛しくて。

眼鏡はずしていい?

おねだりしたら
優しく微笑んでくれたから
あたしはそっと真壁さんの
眼鏡をはずした。


彼の素顔にみとれる。

眼鏡越しじゃなくて
あたしのことを
ちゃんと見てよ。


ちゃんと見てるよ。
おまえが見てないところでも。


俺にはおまえしか
見えないんだ。


そう囁かれる声に
とても切なくなって
何も言わずに
真壁さんの胸に
そっと寄り添った。




夢の中であたしは
胸が張り裂けそうなほど
幸せだった。








・・・・・・・・・・・・





目が覚めると
まだ明け方にもならない時間で
あたしの隣には
違う人が眠っている。


シーツ越しに見える
侑人さんの顔にかかる
髪の毛をそっと撫でた。

その感覚で起きたのか
侑人さんが目を覚ます。

そっと開いていく
その瞼の重みが
やけにゆっくりと感じられる。



「侑人さん」


「なんだい?」

眠っていた侑人さんの声は
少し掠れている。


「ううん・・・・ちょっと」


まだ眠りの世界に半分いるだろう
侑人さんが少し身体を起して
あたしを包むように
腕を伸ばしてきた。


ぎゅーっと抱きしめられる。


大事だよって抱きしめ方。


あたしの頭が
侑人さんの定位置に納まる。

鎖骨の下、胸の辺り
侑人さんの心臓が聞こえるところに
あたしの頬が当てられる。



侑人さんの素肌。



その腕に絡みとられるように
あたしも彼にくっつく。


あたしの髪の毛も
身体も全て
侑人さんの素肌に
くっつくのがわかる。



何度も抱かれるうちに
侑人さんに肌が馴染む。


もう抱かれている
ふとした瞬間に
真壁さんの名前を
呼びそうになることも
なくなった。



キスの合間の吐息と共に
きちんと呟かれる名前は
「侑人さん」だ。



身体も彼を忘れて
侑人さんを覚えてきた。
彼から教えてもらった
キスさえも全て
侑人さんが変えてくれた。



愛され方も。
抱きしめられたときの
力の抜き方も。
キスに応えるときの吐息さえも。
もたれかかる時の場所も。



侑人さんの匂いが
あたしの匂いと溶け合うように。
全て彼が「消去」されて
侑人さんに染まる。



緩やかに侑人さんに包まれて
大事にされて。




・・・・それでいい。




心に抱えている影を
消せないのなら
見えるところは全て。
変えられるところは全て。



侑人さんに溶けてしまいたい。









同じベッドの上で
毎晩絡み合う。
もう子どもだからとか
年の差なんて感じない。

侑人さんを誘惑して
彼があたしを愛して
2人がひとつになる。


樫原さん、と呼んでいた名前は
彼に初めて愛された日から
侑人さん、にかわった。


彼のベッドで先に待っている。


仕事が終わって戻ってきた彼を
せかすように、そのネクタイを解いて
一緒にいられなかった時間を
取り戻すかのようにきつく抱きつく。



そんなあたしを
侑人さんは受け止めてくれる。



そして気持ちいいことを
沢山してくれる。


夢中になりすぎて
侑人さんしか見えなくて
もうそれだけでいいと想うほどの
気持ちよさを。



一緒にいないと不安なの。



真壁さんを好きだった頃の
不安とは違う不安。


侑人さんの温もりでしか
生きているって感覚が無い。
そんな足元さえ見えない不安。


ベッドでずっと絡み合っていられたら
どんなに幸せだろう。
その温もりだけでいい。


ベッドから出たくない。
侑人さんと2人でここにずっといたい。



そういって駄々をこねるあたしを
侑人さんが優しく説得する。



その優しさが好きで
駄々をこねるあたしを
侑人さんが毎日
2人の約束かのように
なだめてキスをする。




そんな時。

あたしの中の海は凪いでいる。



沢山の気持ちいいことや
暖かさをこの人はくれる。

だから。
あたしの海は
嘘のように静かで穏やかで。

そして光がさしている。







侑人さんに愛されて
いつものように
そのまま眠ってしまった。

眠りに着く前に覚えているのは
侑人さんの身体の感覚。


抱きしめるように
あたしの身体に絡みつく
その腕と足。
少し汗ばんだ肌。
急かす心臓の音。
身体にかかる彼の重み。






一回り年上の彼は
とても上手だ。
















夢から目覚めた途端に
覚えのある苦しさに襲われた。


理由はわかっている。


ただただ、あの夢の中で
幸せだったから。


寝ている時に見る夢が
幸せなほど
目覚めている現実は
とても辛い。




あたしは自分の中の
嵐が収まるように
ぎゅっと目を瞑った。



「また彼のことを思い出してるのかい?」


慟哭するように震えて
涙をこらえるあたしを
腕の中に抱きしめながら
そっと侑人さんが囁く。


「・・・・うん」



心から愛して
愛しすぎて苦しくて
傍にいられなくなったあたしを
侑人さんが抱きしめてくれた。



その日からはじまったこの関係。



緩やかに愛に
包まれていながらも
たまに訪れる嵐のような
身を引きちぎるかのような苦しみや
悲しみで身を捩って泣くあたしを
この人は全て受け入れてくれる。


・・・・許してくれてる。


傷ついて自分で
粉々に砕いた心の欠片1つ1つを
侑人さんが見つけて
繋ぎ合わせてくれる。




「かわいそうに」

「君が好きだ」

「うん・・・・・」



何も言わずに抱いて欲しい。

ただこの人の温もりだけが
あたしを癒してくれるから。


そんなあたしの心の中にいるのは
苦しいほどに、あの人だけ。






思い出すと
また泣いてしまう。
ぼろぼろに涙が出て
止まらなくなる。


そんなあたしの涙を
侑人さんがそっと舐める。


君が苦しくて泣くなら
その苦しさを
同じように味わうよ。




泣きつかれて眠るとき。

侑人さんが優しく
あたしの髪の毛を
その指で梳く。

優しく撫でてくれる。




いい夢が見られますように。


現実がこんなに辛いのなら
夢の中では幸せでいられるように。











ねえ侑人さん。


ん?


・ ・・・・苦しくないの?


ふふ、苦しくないよ。


どうして?


さあ。


さあ、じゃわからないよ。


そんなに知りたい?


・・・うん。



君が心を許してるのが
僕だけなのが嬉しいから
苦しくないんだ。
むしろ嬉しいぐらいだよ。
僕にしか見せない
そんなところを独占できてるから。



・・・・。



泣いている君も
苦しんでいる君も。
好きなんだ。



・・・侑人さん。


ん?




・・・・あたしをさらって。
どこか遠くに行きたい。


****・・・・。



侑人さんと二人きりになりたい。






それなら準備ができ次第、
2人きり旅行でも行こうか。



・・・・いいの?



君のすることに
ダメなことは1つもないよ。


侑人さんのお仕事は?


大丈夫だ。






ただ行く前に。


なあに?


指輪を買っていこう。


・・・・。


婚約しよう、****。


え・・・・。



君が良いのなら
一生傍にいたいんだ。
受け取ってくれるかい?



・ ・・あたしでいいの?


そんな質問はいらないよ。


侑人さん・・・・。




君はただうなずけばいいんだ。
うなずいて、僕の隣にいればいい。



****、幸せにするよ。



そっと彼があたしの頬に
キスをする。
涙は出なかった。



どんな指輪がいい?



・ ・・・侑人さんが
選んでくれるのだったら
何でもいい。



それなら、君らしい指輪を選ぼうか。


うん。





侑人さんが少しほっとしたように
息を吐くのがわかった。
そんな侑人さんが愛しくて
そっと腕を回して
その胸に擦り寄った。


抱きしめて、とばかりに
彼の胸の中にもぞもぞと
入り込んだら
くすっと笑うのが聞こえる。


「****、愛していますよ」


閨の睦言。
その甘さにあたしは目を瞑る。



いつものように。


そのまま首筋から
舌がなぞるように
胸元に降りてくる。


閉じた視界の中では
触られる感触だけ。
気持ちよくて
考えることを放棄することにした。


「侑人さん・・・・」

侑人さんの息が
あたしの肌をなぞる。


「****・・・・」

囁かれる声が
あたしの中を満たしてくれる。




溺れてしまいたい。
一生このまま。

きっとこの人は
それさえも許してくれるから。













彼から遠ざかることができたら
きっともっと・・・・
侑人さんのことを
好きになれる。






この人のことを
もっと好きになりたい・・・。












次の日、侑人さんが指輪を
選んでくれた。


特注になった指輪が
出来上がるのを待って
侑人さんと婚約した。


義兄さんが応援してくれた。


その背中押しで
あたしは侑人さんに連れられて
スイスの別荘にしばらく
滞在することになった。
婚前旅行・・・・になるんだと想う。


専属執事の真壁さんは
連れていかない。


そのことを真壁さんに告げたのは
執事長だった侑人さんだった。
真壁さんは何も言わなかったと
侑人さんが教えてくれた。




そう・・・。


何も言えなかった。


式までしばらく準備があるから、と
侑人さんがあたしの
執事として傍にいてくれることに
決まった。


真壁さんがあたしの専属に戻るのは
式が終わって、いつもどおり
侑人さんが義兄の執事に戻った後。




閨の中。
シーツに放り出された手に
ふと目をやると
侑人さんが選んでくれた
指輪が光っていた。

その光だけが
あたしと侑人さんを
繋いでいるような気がして
たまらなく苦しくなった。

でもそんな苦しささえ
全て侑人さんが
消してくれた。


迷いや後悔や
苦しさや辛さの中で。
この光だけは
大事にしたいと想った。








旅行から帰ってきたら
式を挙げる。


流れるように
予定は決まっていった。





・・・・・・・・・・・




出発当日。


出かける準備ができて
車が回されてた。
玄関先に使用人の人たちが
揃って並んでいる。

その並びの列の最後に
彼がいるのを見つけた。


胸が苦しい。


視界に彼がいるだけで
苦しくてしょうがなくなる。


彼がじっとあたしを見つめている。
執事の仮面を被った彼が。



(好きだ)
(おまえのことを愛してる)



何度も何度も
彼が囁いてくれた言葉。
恋が叶ってすぐの頃の幸せ。
死んでしまうかもしれないと
想うほど幸せだった。

(あの時にあたしは死ぬべきだったね)



彼との恋が終わる日が来るとは
想ってもいなかった。
自分の手で終わらせるということも。


それも彼が許してくれない形で。




胸が焼けるように
ひりひりと痛い。



真壁さんの前に立つ。
いつものように。

専属執事の彼と
こうやって出かける前に
身支度を最終チェックするのは
久しぶりだ。

ずっと侑人さんが
ついててくれたから。


あたしの気持ちが揺れないように。


真壁さんから
離してくれてた。



彼がそっと目を伏せて
その綺麗な指で
あたしの服を調える。

それがとても懐かしくて。
そして辛くて。




囁いた。


どうしても聴きたかった。
もう一度彼の声が。



侑人さんと遠くに行ってしまう
その前に、もう一度だけ。



「真壁さん、怒ってる?」

声が震えるのがわかる。


「いいえ」


答えは一秒の狂いもない
時計のようだった。
きっちりと、それ以上はなく。
ただそれだけで。


しばらく訪れる沈黙。

思わず目を伏せたあたしに
そっと真壁さんが囁いた。


「正しかったよ、その選択は」


「え?」


あたしを見上げた瞳は
とても穏やかだった。


「樫原さんなら、お前を幸せにしてくれるだろう」



その目は
語っていた。


それに。
俺は執事に戻っただけだ。
何であろうとも

「ずっと傍にいるという誓いは果たせるよ」



いつか・・・・
彼が言っていた
言葉を思い出した。


恋人じゃなくてもいい。
どんな形であれ
俺はお前の傍を離れない。

たとえお前が他の男の元に
いくのなら、そのとき俺は
「執事」に戻るよ。

お前に忠誠を誓った執事として
そしてお前の傍を離れない。
ああ、どんなことをしてでも
お前の傍を離れたくないんだ。


傍にいられるのなら
どんな犠牲でさえ払う。


お前の傍で一生を終えられたら
それが俺の本望だから。



お前の傍を一生離れないことを誓う。

これが他の誰にも出来ない
俺だけの愛し方だ。




「真壁さん・・・約束・・・・」


死ぬまで傍にいて。
あたしより先に死なないで。
ずっと傍にいて。
そう頼んだ約束。


「ああ、覚えてるよ」


「まだ・・・・」

聞き終わらないうちに
言葉が被せられた。

「終わってないよ」

(俺が終わらせるわけないだろう)



真壁さんがあたしのことを
まだ愛している気持ちが
伝わってくる。


目を落としたら
手袋をした真壁さんが
あたしの胸元のネックレスを
直してくれた。


そのネックレスは
いつか真壁さんが
見立ててくれた
ネックレスだった。


金具を触るその指が
少し震えてるように想うのは
きっと・・・・
気のせいかもしれない。





(あたしもまだ・・・・)


何も言えなかった。
何かを言うのも
真壁さんは許してくれなかった。

ただ真壁さんは
静かにまた
執事の仮面を被った。


ごめんなさい、なんて言えない。
でも、ありがとう、も言えない。


愛しているからこそ
ずっと一緒に願ったからこそ
こういう結果になってしまった。


全てはあたしが弱いから。
弱いあたしは
強いあなたのそばに
いられなかった。


きっとあなたは
静かに受け入れてくれたけど
ずっと許してはくれないだろう。


あれだけ約束して
あれだけ傍にいたいといった
あたしから先に手を離したことを。


他の誰かの手をとって
逃げてしまうなんて。

きっと許してない。

でも。

それでもあたしを
愛してくれてる。
許してはくれなくても。






ふと忘れていた情景が
思い浮かぶ。





ふと顔を上げたときに
あたしを見つめてくれていた
真壁さんの優しい視線。

朝のモーニングティの時
少し猫舌のあたしが
すぐに飲めるように
冷ましてくれていること。
あったかいって呟いた声で
少しだけ微笑んだこと。


あたしが綺麗だといったお花を
忘れずに部屋に飾ってくれること。


あずまやでお茶をすると
庭園を一緒に歩きながら
手を繋ぎたいけど繋げなくて
あたしと真壁さんの前に伸びた
影の手に、そっと手を重ねた。


あたしの一歩後ろを歩いていた
真壁さんがそれに気づいて
影の中のあたしの手にそっと
自分の手の影を重ねてくれた。


手、繋いじゃった。

そう呟いたら
聞こえなかったふりをして
横を向いていたけど
でもその横顔は
とても優しかった。


ベッドで寝かせてくれた後
そっと額を撫でて、おやすみ、と
キスしてくれてたこと。


手袋をはずして
あたしに触ってよって
わがままを言ったときでさえ
仕方が無いと苦笑しながらも
あたしを抱きしめて
その綺麗な指で
あたしの頬を撫でてくれたこと。


目を見て何度も
愛しいと言ってくれたこと。


キスしてくれる時に
少しかがんでくれたこと。

キスして、って
あたしからせがんだら
苦笑しながらも
いつもより熱くキスしてくれたことも。

背の高い真壁さんの首に
巻きつけた手が
真壁さんの髪の毛を触る。


抱きついた時に
ほんのりと香る彼の香り。


キスの合間に
呟かれる愛の言葉。



いつだって
あたしが欲しい言葉をくれた。


愛してる。
お前だけを愛してる。
何度だって言う。
お前を愛してる。

何も不安に想うことはないよ。

一生傍にいる。
そうお前に誓ってる。
俺はお前のものだよ。
俺の一生はお前だけのものだ。








この人はあたしのことを
とても愛してくれた。
ううん・・・今もすごく
愛してくれてる。













「御帰りをお待ちしています、****お嬢様」


その声に背中を向けて
あたしは侑人さんの手を取って
屋敷を出た。


振り返らなくてもわかる。
真壁さんがじっと息を殺して
あたしを見つめていることが。


でも振り返れない。


振り返ったら
あたしが今までそっと積んできた
色んなものを壊してしまう。


今あたしの手に光る指輪や
その手を繋ぐ
この優しい人さえも
きっと・・・・失ってしまうから。


振り返りたかった。
本当は振り返りたかった。


もう一度。
これで最後だから。
そんな言い訳を
何度使ってでも。



でも、出来なかった。


猛烈に悲しみが襲ってくる。
痛みを感じる激しい風が
心の中で吹き荒れる。





「行こうか」


「・・・うん」


その衝動を抑えて
あたしは隣にいる人の手を
ぎゅっと握った。





ねえ、侑人さん。
あたしはとてもずるいよ。


こんな形にしてしまった。


真壁さんを
一生離さないつもりなの。
「恋人」から「執事」に
戻してまでも。

そうしながら、あたしは
あなたの手を取っている。

あなたがあたしを
心から愛してくれてることを
知っていながら。

侑人さんのこと大好きだよ。


あなたがあたしを
愛してくれるほど気持ちは
同じぐらいではないけど
でも、感謝してるし
傍にいて、あなたに愛されて
嬉しいと想ってる。



あなたに抱かれるのも
好きなの。
あなたはあたしの中の海を
鎮めてくれるから。


空洞になった心に
光を与えてくれる。
寂しさで凍えるあたしを
抱きしめてくれる。
ばらばらになった心のカケラを
あなたが繋げてくれる。



車に乗り込んだ。
傍に侑人さんが座る。


走り出した車の中で。


目を閉じて
侑人さんの肩に
自分の頭をあずけた。

何も言わずに
侑人さんがあたしの頭を撫でる。




「侑人さん。ずっと傍にいて」

溜息と共に呟かれる言葉は
必ず侑人さんが拾ってくれる。


くすっと笑うのがわかる。


「今も傍にいるよ」
勿論、これからもね。



その言葉の強さに
思わずあたしは
侑人さんを見つめる。


「こんなあたしでも?」


「そんな君だから好きなんだ」


あたしの目を見つめ返す
その優しい目が
たまらなく痛い。


「・・・・・あたしのことわかってる?」


「ああ、全てわかってるよ」



「こんなに狡いのに?」

ひっそりと笑うのがわかった。





じゃあ君は僕のことをわかってる?



え?



ふふ。



・・・・・侑人さんは優しくて大人で、あたしのことを愛してくれる人。




正解だけど、少しハズレ。



え?



優しいかもしれないけれども
それは君だからだ。
それに・・・・。


それに?




僕は君を
手に入れるためには
なんだってした。



・・・・



その結果、君は僕の傍にいる。
ずるくても、僕は君を手に入れられて
幸せだと想ってる。





僕と君、真壁の三人で言うなら
ずるくないのは誰もいないよ。
三人、それぞれ狡い。



好きだから失いたくないと
真壁を執事に戻して
自分を愛する男の元に
逃げ込んだ君も。


同じく好きだからこそ
ずっと傍にいられる
“執事“に戻って
愛している気持ちを
隠し持ったまま
一生“演技”をし続けて
君の傍を離れるつもりもない真壁も。



君に利用されてもいいと
言いながらも、こうやって
真壁から君を奪って
手に入れ、君と真壁が
愛し合っていることを
見てみぬフリをする僕も。





それは君もわかってるだろう?



・・・・侑人さん。



だから気にしなくていいんだ。




茶番だとはわかっていながらも
僕は君を愛することができて
君が傍にずっといてくれて
とても幸せなのだから。



(きっと君は僕のことを好きになる)





・・・・ねえ侑人さん。
あたしたち、これからどうなるの?




そんなあたしの
何気ないふりを装った
疑問に、侑人さんが優しく笑う。


まるであたしの中の
不安を全て見透かしているように。



そうだな・・・・。


僕と君の二人のことを言うなら
君も僕を愛するようになる、きっと。


好きにならせるよ。


彼とは違った愛し方でね。




そして。
僕と君と彼の三人のことをいうなら。



君次第だよ。


え・・・・?


君が決めることだから。
決めてもいいし
決めなくてもいい。


・ ・・・・・。



でも僕は一度手に入れた君を
二度と離すつもりはないから。



・・・それならあたしに
選択肢残ってないじゃない。
侑人さんがあたしを
手放さないというなら。


ああ、そうだね。




ふっと笑うのがわかる。
窓越しに入ってくる光が
優しくあたしたちを
包んでくれる。






ねえ侑人さん。

ん?

あたしを手放さないの?


・・・ああ。一生ね。



あたしが逃げようとしても?




逃げようとしているのを
捕まえるのは好きじゃないけど
君が僕から逃げるとは想わないな。



どうして?



だって君のことを理解して
君のことを許せるようなのは
僕ぐらいしかいないからね。



ふふ。侑人さん、なんだかすごいね。



相手が君だからだよ。
大事な大事な
君だからだ。





侑人さんといると
なんだか全て大丈夫って
気持ちになってくる。







そう微笑んだあたしの脳裏に
さっきの真壁さんの
顔が浮かんできた。






こうなってみて
初めてわかった。


胸が張り裂けそうなほどの
痛みと共に、自分が一体
何がしたかったのか。
何を望んでいたのか。


真壁さんの全てを手に入れたいと
心の底から望んだ
本当のあたしの望みは。




ただただ
彼の「永遠」になりたい。



それだけだった。



あたしと彼の間でしかない
特別で、誰にも変えられない
その繋がりが欲しかった。


大事なものを手に入れたいなら
何か大切にしているものを
手放さないといけない。


もし、それが本当なら。


この別れで
あたしと真壁さんが
永遠にお互いを手に入れた。


お互いがお互いの
「永遠」になった。



ずっと・・・忘れられない
忘れることができない
「運命の恋人」になった。


手放したからこそ
わかる愛がある。
手放したからこそ
守れた愛がある。


想い出は永遠に。

こんなに苦しいほどの想いを
封印して、お互い
別の道を生きていく。




終わらせてしまったのが
あたしなりの
この恋の守り方だった。


傷つけたくない。
傷つきたくない。


その想いと同じぐらい
この恋を守りたかった。


どんな形であれ。


そう願った先にあった何かを
あたしは掴めたんだろうか。




「愛している」と呟いた
痛いほど真剣な気持ちを
嘘にしたくなかった。


嘘になるぐらいなら
幸せの絶頂で失って
「永遠」にしたかった。


近くにいながらも。

お互いがお互いを想う気持ちを
封印していることを
知っている。

秘密じゃない秘密。


いつだって
あたしの心にいるのは
あなただけだよ、真壁さん。


こんな恋の終わり方だったから
ずっと・・・・もうずっと
忘れないね。
あたしも。あなたも。




・ ・・・人はどうして
愛する人に
巡り逢ってしまうんだろう。



愛なんてなければいいのに。

愛なんて
綺麗なものなんか
何も無い。
満たされるものも無く
ただ奪うだけ。


愛したいと願うほどに。
失いたくないと想うほどの人に。

願いが強ければ強いほど
その願いで
心が脆くなる。







一番欲しかったものを
手に入れたはずなのに。



どうして


どうして今
あたしの心は
こんなに寂しいのだろう。


焼け付くような胸の痛みは
何かに引き裂かれたかのよう。

ただ激しい風に吹かれる
ぼろぼろに斬られた
ただそこに風が通る
寂しさに変わっていた。

何も見えない空洞のように
ただそこに広がる無。


心の中の海風の音が
聞こえてくる。
とても寂しい音。
風を切る音。


きっとその海の上には
夜空が広がっている。



月のない闇夜。



雲の切れ目から
覗くのはただ1つの星。
北極星のように
ただそれだけが輝いている。


冬の海のように
荒立つ波を映し出す星の光は
きっと・・・・・。












****。


名前を呼ばれて
目を開けると
侑人さんが
とても優しく微笑んでいた。


あたしを幸せにしてくれる人。


そう。
あたしと侑人さんは
これからもっともっと
愛し合うようになる。



心の中に真壁さんがいても
この人は受け入れてくれた。


身勝手で狡くて
誰かを傷つけることでしか
自分を守れないあたしを。



手を伸ばしたら
侑人さんが
その手の甲に
自分の手を重ねた。


重ねた手のひらが
温かい。


もたれかかった肩だけじゃなくて
もっと甘えたくて
あたしは侑人さんの膝に
頭を乗せた。


膝枕をねだるあたしの髪の毛を
侑人さんが優しく撫でる。

その優しい指が
髪の毛の中に潜り込んで。
優しく愛撫する。




「愛してるよ」


その言葉が切なくて。



なにも答えられなかった。



「侑人さん・・・・あたし・・・・」



泣いているのを見られたくなくて
片手で両目を覆った。



幸せな恋なんて
全て嘘だ。

幸せになんか
ならなくても良かった。
ただあの人の
傍にいれたら。



本当はただ
それだけでよかった。




でもこの言葉さえ
もう既に遅い。




荒ぶる波に
飲み込まれたかのように
涙が止まらなくなって
あたしは両手で顔を覆って
泣き出した。




号泣するあたしの頭を
ずっと膝に乗せたまま
侑人さんは
何も言わずに
ただ撫でてくれる。


あたしの中の海が
鎮まるように。





大丈夫。
大丈夫だ、僕が傍にいる。







頭や髪の毛、
震える身体や背中を
撫でる手がそう伝える。


膝越しに伝わってくる温度でさえ。
その手は温かくて優しかった。


言葉は無かった。


ただそっと
侑人さんは身をかがめて
涙で濡れるあたしの瞼に
優しいキスを落としてくれた。

















**********Fin.************







□ あとがき□

ナイトメアでした。

このお話は実はあたし自身が
大好きな人に対して
気持ちが溢れてしまった時に
書いたお話がベースになってます。

最初に書いたお話が
めちゃくちゃなぐらい
ぐちゃぐちゃで
お話自体にもあまりなってなくて。

書き終わって
気持ちが落ち着いた後
そのお話は封印していました。

それが今回、
自分の中でも区切りがついたのか
きちんとお話として
整えてみようと思い
今回、ナイトメアとして
出しています。

本当にこのお話は
綺麗なものなんかは
殆ど無くて
ただ欲があって
ずるかったりするお話です。
真壁や樫原さんの登場も
本当にその二人に
申し訳ないと思いつつ
書いてしまっています。

ただ、このお話を
醜いものだけで
終わらせてくれなかったと
感じられたのは
樫原さんの懐の深さでしょうか。

誰か他に好きな人がいても
それでも包み込んでくれる
樫原さんの優しいところや
大人の部分を描きたかった。

それと同時に
ヒロインと真壁の
苦しい恋も。

永遠ってなんだろう?

そう思います。

恋を守りたかったゆえに
失うことでしか
守れなかった不器用さや
その弱さ、ずるさを
書いてしまいました。

人間ってずるい。
そう思っている
あたし自身の暗い想いが
このお話には
出ているかもしれません。


ナイトメアと題うって
記事としてUPしたものの
これを読んで
気持ちが重くなったり
すごく辛くなったりしたら
本当に申し訳ないです。

幸せな恋があるのと同じように
苦しくて辛い恋もある。

たまにはこういう話も
いいかな、と
どうぞ見逃してください。


18.September 2009 つぐみ


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