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ランナー  10/19/2007  
ランナーランナー
(2007/06)
あさの あつこ

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『ランナー』 あさのあつこ

野球少年の物語『バッテリー』で有名な、あさのあつこの陸上物語。
あさのあつこ、って名前を聞くと、『バッテリー』って思うけど、
実際、図書館の本棚には歴史物語やらもあって、
少年少女の話だけじゃなくて、歴史物も書いてるのねって
意外な感じがするお姉さん。

三浦しをんの『風が強く吹いている』で陸上物にはまってから、
あれこれと話を聞きつけては、借りてきているのだけど、
この『ランナー』も陸上話。どちらかというと、佐藤多佳子の
『一瞬の風になれ』のようなグラウンドで走る系の陸上話。
陸上の試合に挑む、って場面が主な作品じゃなく、
こちらは陸上の才能に恵まれた主人公の、陸上以外の視点から
「はしることとは」という探求が描かれている。

碧李(みどり)は、高校生1年生。
最近親が離婚して、母と妹と一緒に引っ越してきた。
陸上部に所属していながらも、慣れない母子家庭で、
離婚のショックで傷ついた母親を支えながら、
妹の面倒を見ている。
なんか、物語は陸上部での練習とかがメインの話じゃなくて、
殆どが家族関係と、そこから逸脱して成長して羽ばたく少年を
イメージした話。碧李の妹の杏樹は実は従姉妹で、
離婚した父の弟夫妻の子だった。碧李の母の勧めで弟夫妻が
出かけた時に事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。
その罪悪感から、碧李の母は杏樹を引き取るのだが、
離婚のショックで、元夫を憎む気持の余り、元夫と血の繋がっている
杏樹を虐待してしまう。虐待を知った碧李はそれを防ぐため、
陸上部を辞めて、できるだけ妹の側にいようと決心する。

ストーリーは、碧李の視点からと、あともう一人、
陸上部のマネージャーである杏子も出てくる。
碧李の場合は、虐待が行われている壊れかけた家族像を
必死で保とうとしているのだけど、杏子の場合は、親の愛情と
そしてその家族から解き放たれたいという、縛られた立場。
家族の繋がりってなんだろう、と、碧李と杏子の家庭を通じて考えてしまう。

この『ランナー』って陸上物として売り出されてるけど、
実際は家族の話で、陸上の走り、がメインじゃないと感じた。
家族の話、特に碧李の母と、その義理の娘、杏樹の関係を通して、
家族というものを見据えているような…。
虐待をしてしまう、虐待でうけた心の傷、とか、
生々しくて、そして傷つけ傷つきあっている関係が痛々しい。

いっそのこと誰かを悪者にしてしまえば、簡単に納得が出来て、
複雑な思いで苦しむことはないのだろう。
しかし、虐待をしてしまう碧李の母もその自分の行為に傷つけられ、
それでもなお、誰かを傷つけることでしか自分を保つことが出来ない。
この悪のスパイラルをどこかで消し去ることが出来ないだろうか、って
読みながら考えていた。

世の中に、やっぱり子供を虐待してしまう親はいるわけで、
それがエスカレートして殺人になってしまうケースも多い。
どうして虐待をしてしまうんだろう、って、その親たちは
多分自分自身に何度も自問自答しているんじゃないかと思う。
してしまう、一線を越えるか超えないか、超えても戻ってこられるのか。
危うい心の暗い闇につかまってしまったのが虐待だ、とは
簡単には言えないことなのだけど、それでもなお、考えてしまう。
なぜ虐待をしてしまうのか。当事者じゃない自分は、それ以上何をも
言及するできないけれども、それでも一言は言いたくなる。

虐待なんて、この世から無くていい。
無くていいものこそ、無くならないというのは、
ほんとに、一体どういうわけだろう。


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