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遮光  10/17/2007  
遮光遮光
(2004/07/01)
中村 文則

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『遮光』 中村文則

2003年芥川賞候補になった作品。
ネットサーフィン中に見つけた読書ブログでの
お勧め本だったので、読んでみた。

話は、美紀という恋人を失った“私”の話。
これまで生きてきた中で、家族を失い、
そしてきちんとした人間関係を結べないまま大人になった私。
現実乖離をしている私は、ある日、出張ヘルス嬢の美紀と知り合う。
大きく口を開けて笑う明るい美紀と愛し合うようになった私は
初めて生きてきてよかったと思うようになる。
結婚を申し込んで一緒に生きていこうと決めた矢先、
美紀は交通事故で死んでしまう。
かくて、私がこれまで取り戻せるはずだった、“
喪失した人生”のやり直しさえも“喪失”した私は、
美紀のいない現実を否定しながらしか生きていけなくなり、
よりいっそう、現実から乖離してしまう。
美紀の死体から指を切り取り、持ち去った後、
その指と一緒に暮すこと、そのことを隠すことのみが、私に出来ることだった。


読みながら、私の抱えている息苦しさや重さ、喪失感で
鬱々としてしまいました。少しづつ狂っていく人間の思考に入り込むというか。
押しつぶされたような感覚を覚えながら読み進めていくのは
気が進まないし、好んで手に取りたい、というより、
少し自分から遠ざけておきたいような作品だった。
でも、よく考えると、そこまで感じさせる文章の力は凄い。
これが純文学か~、と溜息をつきながら読み終えた。

私はいう。

『恋人同士がやる典型さに憧れた。
美紀がいれば、私には違う人生があった。
ただ美紀を幸せにしたかった。
美紀と、よくある平凡な生活を、典型的な生活をただしたかった。
美紀の指なんていらなかったのだ。
指なんかよりも、美紀そのものが、ただ欲しかった。』と。

恋人を失ってしまったとしても、現実はずっと流れていて、
そして、一人残されてしまったとしても、否定して嘘をついても、
死んだ恋人をいくら待とうとも、何度も何度も思い出して後悔しても
死んだ恋人の体の一部を持っていようとも、帰ってこない。

著者があとがきにこう書いている。
『どうしようもない事柄、というものがある。いくら平和な国で生活しているとは
いっても、乗り越えがたい苦しみは、確かに存在する。』

乗り越えがたい苦しみ、だからこそ、文章で表し、
それを形にして、生み出す作業が必要だ。
そこに人間として生きる真髄があり、心の深いところにある感情を揺り動かす。
そんな悲しみについて書かれた作品が、この『遮光』である。

読後に襲ってくる重みがあるので、精神状態が余り安定しない時に読むのは
お勧めしないのだけど、でもこんなに鬱々としながら、そして最後まで
その力を維持しつつ走り抜けていくさまは、読む価値あり、だと思います。
泣けるから、感動できるから、というプラスの面だけで本を判断するのではなく、
マイナスな感情を喚起するものであっても。
ここに書かれているのは、人間が太刀打ちできない圧倒的な悲しみだ。


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