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〔執恋〕連載の「ダンスのお相手は?」23話です。
長いので分割を作りました。
こちらは、その2です。

その1はこちらから。
1つの記事で読みたい方はこちらから。

以下、創作になります。

ご了承の上、ご興味のある方のみ、
どうぞお読みください。



******* ダンスのお相手は?23 (その2)











「そんなに哀しそうに泣かないでくれ」



そう言われても
涙は止まらなかった。


反論しても反論しても、
あたしは樫原さんに
勝つことができない。



「どうして・・・・どうして樫原さんは、こんなにあたしのことをいじめるの?」



いじめてなんかいないことは
わかっている。

樫原さんが言っているのは、
多分・・・・事実なのだから。
いじめようとして言ってるんじゃなくて
現実を言っているだけだ。



「君を守りたいだけなんだよ」



「・・・守らなくていい・・・守らなくていいよ」
もう放っておいて欲しいの。


あたしの言葉は
届かなかった。




仮の話でも、
それはありえること。
それはあたしだって、
頭の隅で・・・わかってる。
ありえないことではないってことが。


「君のことをとても大事に想っているからだ」
だから、君を放っておくことができない。
みすみす傷つく結果を迎えるような
そんな状況に君を置けるわけがない。


泣いて泣いて
肩を震わせるあたしを
樫原さんがぎゅっと抱きしめている。

そして、落ち着かせようと
背中を優しく撫でながら叩く。

その仕草でさえ、
あたしは悲しくてしょうがなかった。



「大事に想っているなら、あたしと真壁さんがずっと一緒にいられるようにしてくれたらいい」

それが、あたしの望みなのだから。


泣いているのをそのままに、
あたしは樫原さんに訴える。


そんなあたしに、
樫原さんがそっと微笑みかけた。


その微笑が、とても淋しそうで
あたしは泣きながらも
自分の今の胸の痛みを忘れて
樫原さんをじっと見つめてしまった。



「真壁が君をこんなにも泣かせたりしないのなら」

私がこうやって強引に
君を守ろうとすることはない。

「結果的に君を守ることが出来るのなら、私は悪役でもいいんだ」


君を守りたいんだ。
令嬢ということでまとわりつく策略からも。
君を「令嬢」に縛り付ける真壁からも。
真壁への愛で苦しむ君自身からも。


****にもう泣いて欲しくない。


だから、君がこうやって泣くのなら、
私は君を傷つける、その愛からも
君を遠ざけようと思う。

苦しむ恋をしている君を
その恋からも守りたい。
傷つく君をもう見たくないんだ。





「そんな・・・・守ってくれなくてもいい」



苦しく搾り出すような
小声で言った
胸がひりひりする。

樫原さんが
あたしを大事に想ってくれて
そういってくれるのはわかる。
でも、それを受け入れることはできない。



あたしの言葉を
樫原さんが聞きとめて
ひっそりと笑う。


「君が想うより、この世界は色々なことがある。」



「私は一生を君に捧げて、君を守って尽していくことを誓うよ」




「そう、君が私を選んでくれるのなら」



だからこっちへおいで




真剣な声で樫原さんが
あたしに語りかける。

涙でぼやけていた樫原さんの姿が
急にはっきりと見え出す。

その瞳はあたしだけを
見つめていた。


気持ちが伝わってくる。



抱きしめられている腕からも。
身体越しに伝わる温かさからも。



きつい言葉であたしに
現実を突きつけて追い詰めるのは
樫原さんがあたしのことを
愛しているせい。



自分を選ばそうとしている。

君の幸せのためなんだ、と。





樫原さんが、あたしの心に
手を伸ばしてきているのを感じた。




こっちにおいで



そう、聞こえない声が
心の中で聴こえる。




あたしがどれだけ弱くて
脆くて、そして誘惑に弱いか
この人は知っているから。


その弱さゆえに、これから先
傷つくかもしれないのを
危惧して、樫原さんが
あたしを守ろうとしている。


それは樫原さんの、
あたしへの・・・・愛だと想う。



あたしを手に入れるために
樫原さんが容赦なく
迫ってきているのがわかる。


その強い気持ちに・・・・
押されそうな自分がいた。


守りたい。

そう言われて、
断れるほど、
あたしは強くない。


いつだって、何かから
誰かに守って欲しいと想っている。
できることならば、どんなことであれ
傷つきたくない。









―――-今、樫原さんが
重大な決断をあたしに迫っている。




その答えは・・・・?






じっと見つめられていることに
苦しくなって、あたしは視線を外す。






横を向いたあたしの耳元で
真壁さんからもらった
ハートのピアスが、きらりと
揺れるのに、ふと気がついた。





ピアス・・・




真壁さん・・・・・。






ぎゅっと目を瞑った。









目を閉じた先に見える
誰かを見極めようとして。





今、ここで誰が見えるか・・・・・












ふっと、見えたのは。








あの雨の夜、
電気の消えたホールで
あたしを抱きしめていた
真壁さんだった。










息が止まるほどに抱きしめられた
真壁さんの腕の力。


彼に抱きしめられて
雨の音を聴きながら。



ずっと、ずっと
雨が降り止まなければいい。
ずっと、ずっと
この夜が続けばいい。


2人しかいない世界で、
ずっと一緒にいたいと願ったこと。















あたしは急に走馬灯のように
思い出していた。







ぐっと、時間が
真壁さんの元へ戻る。



あの晩、熱に浮かされて見た夢。

そして、目が覚めたときに
傍にいてくれた真壁さんの
優しさや苦しみ。


あたしの決意。



誰を傷つけても。
自分が傷ついたとしても。


この恋を守ろうという決心。






樫原さんとだったら
幸せになれる。
それはわかっている。


彼はあたしのことを
守ってくれるだろうから。

外からも。
そして、あたし自身からも。
その愛で包んでくれるはず。


だから、真壁さんと一緒にいるような
苦しさはないだろう。




でも、それが本当に
あたしの幸せだろうか?




あたしは・・・・
自分が幸せになる以上に
真壁さんに何かしてあげたい。


真壁さんと一緒に
幸せになりたい。



一緒にいることで
もし苦しんだとしても、
あたしは真壁さんの
傍を離れたくない。




(ずっと手を繋いでいれますように)


そう誓った時の気持ちは
今も・・・・変わらない。


その切実さは、
今も、あたしの心の中にある。











(こっちにおいで)





その声も聴こえる。


心を決めて、今日、
ここに来たというのに。




すぐに浚われそうになる
自分の弱さを知った。




苦しいほどの悲しい。
悲しいほどに苦しい。



人を愛するという気持ちが
痛いほどわかる。




真壁さんのことを
とても好きだから。

樫原さんがあたしのことを
全てのものから守りたいと、
愛してくれる気持ちがわかる。




でも、その気持ちに応えることは
・・・・できない。


だって、あたしは
真壁さんのことが好きだから。


誰に何を言われても、
この気持ちは変えられないの。


今、ここで樫原さんの手を取るのは
間違っている。
一番好きな人じゃない人の手を
取ることはできない。


そうすることは・・・・
樫原さんがいくら待ってくれて
他の人を好きなあたしを
許してくれても・・・。


樫原さんに悪いと想う。


そんなことはできない。

自分のために樫原さんを
・・・・利用するなんて。
利用してもいい、といわれても、
それができるわけない。





でも・・・・。

樫原さんの気持ちを
踏みにじりたいとか
そんな気持ちはない。


好きじゃなくても
いつか好きになるまで待つという
譲歩をくれるほどの気持ちを
無下には扱えない。



人を好きになる気持ちが
わかっているから
好きになってくれた人の気持ちを
大事にしたい。
















「・・・・・樫原さん、あたし・・・・」



あたしのことが
本当に好きならば、
あたしの気持ちを聞いてほしい。






あたしは、そう樫原さんに切り出した。







********* ダンスのお相手は?23 ********


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