2017 08 / 07 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫09 next month
スポンサーサイト  --/--/--  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 | スポンサー広告  | Page Top↑
〔執恋〕連載の「ダンスのお相手は?」23話になります。

長いので分割をつくりました。

こちらは、その1です。
(その2はこちらから)

1つの記事で読まれたい方は、
こちらからどうぞ

以下、創作になります。
ご了承の上、ご興味のある方のみ、
どうぞお読みください。


******** ダンスのお相手は?23 *********:









「みんな、君を守ろうとしているんだ」




樫原さんの優しい言葉の
1つ1つがあたしの心をえぐる。


その優しさが、
あたしにとって、
矢のように刺さっていたい。



「こんな怖い顔をしないで」


あたしは、ぎゅっと目を瞑った。

樫原さんの話す、あたしがこれまで
知らなかった真実がとても怖くて。
それを受け入れがたいと
態度で示したくて。



でも、そんな頑なな態度のあたしを
樫原さんは許してくれない。


そうっと髪の毛をすくいながら、
あたしの顔に触れる優しい指。

その指の感触は、先週・・・・
あたしの執事としてついていた頃、
世話をしてくれて、
お化粧をしてくれたときの
その親密さを思い出させた。


ぎゅっと瞑った瞼を
樫原さんの親指が優しく撫でる。
どきどきするよりも、
切なかった。


止めていた息を
ゆっくりと吐き出す。

目を開けた先には
あたしをじっと見つめる
樫原さんがいた。


「驚かないで聞いてくれ」


そんな言葉で断られても
あたしは、ただ首を振るだけ。

いやいや、と
耳を塞ごうとするあたしを
樫原さんが両手で捕まえる。


どうしても聞かせようと。
両手を掴まれて、
ぐっと引き寄せられた。
身をそらすこともできない。

その瞳はとても真剣だった。







旦那様は****が九条院家の
対外的な付き合いに巻き込まれて
政略結婚のように
意にそぐわない結婚をするのを
非常に杞憂していらっしゃる。


旦那様も、奥様と結婚するまで
何度もそのような縁談があって、
それを断り続けて、ようやく奥様と
恋愛結婚された方だから。


巻き込まれないうちに
旦那様は****が好意を持っている
人間と婚約でもさせようと
思っている。





「その候補に挙がっているのが、私だ」








言葉の最後で、もう聞いていられなくて
ぎゅっと瞼を瞑った。
息を呑んだまま止めた呼吸。


あたしと樫原さんが恋人に
なることを、義兄さんが望んでいる・・・?


考えたこともなかった・・・。






「・・・・それは余計なお世話だわ」


きつい言葉しか出てこない。
義兄さんの好意も、
それに対しての樫原さんのことも。


「離して」


掴まれていた腕を
あたしは乱暴に振り払おうとした。

でも、樫原さんはそれを許してくれなかった。


「****」


ただ、あたしの名前を呼んで、
あたしを落ち着かせようとする。


「・・・・候補なんてわかんない。どうしてあたしの大事なことを、他の人が決めるの?」
おかしいよ。


そう呟きながらも、
頭の中では半分わかっていた。


緑川さんから言われた言葉。
家同士の縁談のこと。

執事と令嬢の恋。
それは、あたしが思っている以上に
困難が付きまとうということ。


あたしの身に
これから降りかかるかもしれない
危険性のあることだってこと。

現実味のある話だってこと。



どうしたらいい?


これからの不安、
真壁さんへの想い、
義兄さんが期待していること、
あたしが今いる世界、
樫原さんの誘惑、
未来に対する不安。



そんな強い想いで
あたしは倒れそうになるのを
必死で堪えた。

この衝撃の嵐が過ぎてしまうのを
待つように、じっと目を瞑って、
息をとめた。


今にも泣きそうな気持ちを
折れそうな気持ちを
あたしはぎゅっと抱きしめた。



「*****」



そんなあたしを、樫原さんが
そっと抱き寄せる。
大事に、大事に、
壊れ物を扱うかのように。


「驚かせてすまない」


呟くようにいわれ、
あたしは抵抗すらなく
彼に抱きしめられた。



「でも、わかって欲しい」

その声は少し掠れていた。


・・・・・わかるよ、樫原さん。
今、あなたが嘘を
ついていないことくらい。


抱きしめられてはじめて、
自分が震えていることに気がつく。
そっと息を吐き出す。
心臓が激しく動悸している。


本当は今すぐ、
あたしを抱きしめている
この腕を解いて、言いたかった。


(誰がなんといおうと、あたしは真壁さんのことしか好きじゃないの)



でも、そんな言葉は、
口に出したとしても、
樫原さんには効かない。


だって、この人はわかってるから。


あたしが自分に
心を揺らしていることを。
あたしの言葉に
一理の嘘が混じっていることを。
あたしの弱さを。



口をつぐんで、
ただ抱きしめられるまま
抱きしめられているあたしが、
少しづつ落ち着いてくるまで
樫原さんは、ずっと
抱きしめてくれていた。


その胸は思っている以上に
広くて温かい。


抱きしめる腕の強さ。
抱きしめられた感触。



いつもあたしを抱きしめてくれる
真壁さんのことを、手にした砂が
指の隙間からさらさらと
こぼれるように、忘れそうだった。



早く帰りたいと思っていた。


でも、もう、彼のもとには
帰れないんじゃないかと
思い始めている自分がいる。


あたしと真壁さんを取り巻く現実。


今は、温室のように
薄い膜で守られている。
それは、あたしが
まだ高校生だから。
庇護する対象だから。
義兄さんや九条院家が
守ってくれている。


でも、いつ、
それが変わるかわからない。


少なくても、
庇護してくれている義兄さんは
外界から、その温室が破られる前に、
温室の中で咲く、大事にしてきたお花、
あたしを、九条院家にある
別の温室に移そうと、
樫原さんを適任に選んだ。


そのことが恨めしかった。


義兄さんが、樫原さんのことを
とても信頼しているのは知っている。
でも、真壁さんだって・・・・。


ううん、わかってる。


義兄さんにとって、秤にかけて
大事にしている義妹をまかせるなら
専属執事の真壁さんよりも、
自分の片腕として、長らく傍にいて
有能すぎるほど有能な樫原さんを
遠慮することなく選ぶだろう。



あたしを大事に思っているなら。
余計に。

そんな秤を使うはずだ。



(あたしと真壁さんの仲を守ってくれる人は誰もいない・・・・)




その事実にとても傷ついていた。
そして、困惑していた。
急に心細くなった。



そんなあたしに、
なおも樫原さんは告げる。


「もし、君が私のもとへ来るならば、君を守ってあげられる」


今回の緑川家のように
無理やり縁談を
もちかけられることもなく。


君だって意にそぐわない
結婚など嫌だろう?


「で、でも・・・」

あたしは真壁さんが好きなの。


そう必死で続けたい言葉は、
樫原さんの言葉でかき消される。


抱きしめられている腕から
顔を上げると、
そこには確信を持った樫原さんが
じっとあたしを見つめていた。

余裕の微笑とともに。


「少なくても、私なら君もそこまで嫌いじゃないだろうし」
キスをするような仲なんて、すぐだ。


「っ・・・・・!!」


大胆不敵な発言。
冗談のように付け加えた言葉で
あたしは目を見開いた。


「か、樫原さん・・・・!!??」


驚きすぎたあたしに
樫原さんがくすっと笑う。

・・・・多分、今の雰囲気を
和らげるためのジョークのような
ものだったんだろうと思いながらも、
あたしは、激しく動揺していた。


いつも先手を打たれてしまう。

そして、言葉の1つ1つで
ぎりぎりまで攻め立てられる。


条件を出して、
あたしに、こっちに来いと誘惑する。


その誘惑に負けまいと
反論しようとしても
言葉が続けられない自分がいた。



嫌よ。
そう言いたいのに。


そんなあたしの百面相を見ながら
樫原さんが、くすくす笑いながら言う。



「君が真壁のこと以上に、私のことを、今は、好きじゃないことはわかっているけれども」


今は、という言葉の区切りが
ずしっとあたしの心に響く。


「けれども・・・・?」


思わず聞き返す。

すると、樫原さんが、
耳元から顔を上げて、
あたしに表情が見えるところで。

じっとあたしを見つめた。


「私を選ぶなら、君はいずれ、私のことを好きになる」


「っ・・・・」


その自信のある言葉にあたしは、
またドキッとする。


「待ってみようじゃないか、それまで」


微笑むように、穏やかに言われる。


あたしは、その言葉を
さらりと言われたのが、
とても悔しかった。


「・・・、待つことありません。あたしが好きなのは真壁さんだけだし、それに」

悔し紛れに早口で
反論するあたしの唇を
いきなり、しーっとするように
樫原さんが自分の人差し指を当てて、
それから先の言葉をふさいだ。


「っ・・・!!」

「仮の話だけれども、最後まで聞いてくれ」


嫌よ。
そう反射的に言いたかった
あたしの唇は彼の指に
ふさがれたままだ。





九条院家の御曹司の片腕と
その義理の妹が結婚するならば、
世間としても許してくれるだろう。



「っ・・・・・」



あたしが揺れている隙を
樫原さんが見逃さない。



「それに考えてごらん」

真壁は君の専属執事だが、
君が政略結婚の縁談に
巻き込まれるとしたら
どうやって止める?

どうやって九条院家の令嬢である
君を守ることができる?





抱きしめられている腕から
顔を出して、樫原さんを
見つめていたのが
もう、見つめられなくて。


代わりに涙がこぼれた。


その涙を救うように
そこまで言った樫原さんが、
そっと唇を指先でなぞりながら
涙をふき取り、唇を開放してくれた。


こぼれる涙は、
真壁さんへの気持ちだ。

真壁さんに逢いたい。
今、こうやって、
2人の仲を揺すぶられて
あたしが苦しい想いをしているのを
助けて欲しかった。


あたしを助けられるのは
真壁さんだけだから。


守ってやるといって、
誘惑してくる相手に
どう言えばいい?


(真壁さん・・・・)



思わず募る気持ちで
涙が一筋、流れるのを
そのたびに、
樫原さんがゆっくりと指でぬぐう。


そして、
(さあ、何か言ってごらん)
そう促されるように見つめられる。

その視線は限りなく優しい。

優しいから、あたしは何も言えなくなる。



「・・・・あたしは・・・・」


言葉に詰まってしまう。
そんなあたしに
冷静に樫原さんが言う。


「私にはできて、真壁にはできないことがあるんだよ」


その言葉から
樫原さんの自信が伝わった、
悔しいけれども、
それは否定できない。




でも。

樫原さんにできて、
真壁さんにできなかったとしても。



これだけは確実だ。
あたしの心を握っているのは
真壁さんだけ。

あたしが好きなのは、
いつも傍にいる専属執事で、
惜しみない愛を
あたしに注いでくれる
真壁さんだけ。







「あたしは、自分の好きな人以外とは結婚しません」

・・・もしそんなことになったら、
あたしは、九条院家を出てもいい。
真壁さんと一緒に出て行くわ。

きっと真壁さんだって、
そんな結婚をあたしには許さない。

だって、一生離れることを
許さないと誓ったんだもの。

だから、樫原さんに
守ってもらわなくてもいい。







ようやく、あたしは
樫原さんの言葉に反論できた。

抱きしめられていた腕を
解くように離れようとした。
でも、その腕はあたしを
放してくれなかった。



離して。



そう樫原さんを見ても、
樫原さんはその腕を解かなかった。

抵抗しながらも
じっと見つめあっていたら、
樫原さんがふと笑った。


え・・・・?


その微笑に
あたしの胸はざわついた。
あたしの反論さえ、
微笑んでしまう樫原さんに。





「****、じゃあそれは真壁にとって
本当に、幸せな決断だと思いますか?」


静かに優しい声だった。






ぎくりとする。


幸せな決断・・・・。




「それは・・・・・」


思わず言葉に詰まったあたしに
樫原さんが、優しく微笑みかける。

まるで、小さい子に諭すかのように。


「真壁は執事の職が天職で
その仕事に誇りを持っています。
その男を、貴女は自分のために
執事である自分を捨てろというのですか?」


「っ・・・・・・。」




貴女が、もし真壁のことを
本当に心から愛しているなら、
彼を執事の職を取り上げるなど、
出来ないはずだ。






あたしはそれ以上
聞いていられなかった。


樫原さんが言っている言葉は
いつもあたしが
思っていることだったから。


執事の仕事を真壁さんから
取り上げることは
絶対にしてはいけない。


だって、あの人は執事の仕事を
あんなにも愛しているんだもの。

そう、一緒にいたいのなら。


「執事」と「お嬢様」の関係が
あるからこそ、
側にいられている事実。



思わず、とても悲しくなって
あたしは涙がまた
頬を伝うのがわかる。


どうして?
どうして?


その言葉しか出てこない。


堪えられなくて、
両手で顔を覆うように
泣き出してしまった
そんなあたしを
樫原さんがまた
ゆっくりと抱きしめた。




********** ダンスのお相手は?23話 その1 *********


その2は、こちらから。
 | 【執/恋】創作ー分割  | Page Top↑

Blog状況

最近の記事

カテゴリー

訪問者数

メールフォーム