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5月12日の大木隆也の
誕生日祝いに書いたお話、
「夜の遊園地」の後編になります。

前編はこちらから


長いので分割を作っています。

その4 その5 その6


プチ企画として、
ゆんさんのイラスト、
そして、このヒロイン視点の
「夜の遊園地」を受けて、
NANAさんがアンサーとして、
隆也視点のお話を
対で書いてくださる予定♪

NANAさんのアンサーは、
後日♪




以下、創作になります。
ご興味のある方のみ、
お読み下さい。









































**** 夜の遊園地 後編 *****





















11日、誕生日の前日。




あたしは、白凛の制服を着て、
鏡の前でしかめっ面をしていた。



(・・・・・隆也君に明日のこと、気づかれないようにしなくちゃ)




だから、わざとそっけなくすることにした。


朝ごはんの時間だと
部屋に呼びにきた隆也君に
いつもは、おはようのキスをするけど、
今日はちょっとだけ軽めに。
挨拶程度。



本当は、いつも通り
首に抱きついて
キスしたいくらいだけど、
我慢我慢。



いつも、抱きついて
頭を撫でてもらったり
優しくキスしてもらう時間がなくて
寂しいけど・・・・。



でも、今日は少し距離を置いて
隆也君の口から
自分の誕生日の話題が
出ないようにするの!



だからいつもは、
朝のキスで甘えて、
ご飯の時間ぎりぎりまで、
隆也君といちゃついてるけど、
今日は、わざと、それもスルー。




あれ?って顔を
隆也君がしている。



それはわかってるけど、
わざと見ないふり。




ご飯を食べたあと、学校までの道。



鞄を持って一緒に歩いてくれる隆也君と
いつもだったら、歩調を揃えて
一緒に歩きながら、
それもゆっくり歩きながら、
分かれるまでの時間を惜しむ。



でも今日は、すたこら歩いて、
隆也君とあまり話しもせず。




(あんまり話をすると、ボロが出ちゃうかもしれないからね!)



あれれ?って顔で、
また隆也君があたしの背中を
見つめているのがわかる。




ちょっとその視線が痛い・・・・。




でも、わかって。


今日はあとで喜ばせるために
ここで、すこし
距離を置いてるだけだよ。




あたしの多分、そういう目論見は
通じてないと思うけど。




教室前で鞄を
奪い取るようにして、
隆也君にさよならをいう。



隆也君は一瞬なにか
言いたげな顔をしてたけど、
もう授業始まるから、と、
自分から先に切ってしまった。




隆也君を見送って。


あたしは、自分の席に
鞄をおいた後
そっと窓際に行き、
校庭を歩く隆也君を探す。





いつも隆也君とやっている合図。




今日は、それさえも
スルーしようかと
思っていたんだけど・・・・。


でも、これはあたしの大好きな
毎日の日課だから。







大好きな人はすぐにわかる。


目印が上がってるかのように。


カメラのピントが合うように。







隆也君の後姿。




あたし、隆也君の執事姿、
すごく好き。



なんていうか、
たくましいし、
背も高いし。


そしてなによりも
雰囲気がいいと思う。




隆也君は、あたしの
クラスメートからも
意外と人気がある。



専属執事として、
教室まで鞄を持ってくれて
帰りも迎えてくれるんだけど、
その時に、ちょっとだけ
他の女の子から視線を感じる。




隆也君はすごく
マイペースな人だから
そんなことに
気づいてないだろうケド。




(あたしの恋人なんだよ、このかっこいい人)




堂々と言えたらいいのに。


いつも、そう思う。




隆也君が校庭を
横切りながら、振り向いて、
あたしの教室の方向を見た。



いつも2人だけの内緒の合図。



教室まで送られた後、
あたしは隆也君が車に戻るのを
窓から見送って手を振るの。



もちろん、隆也君も手を振ってくれる。



2人だけの合図。


普通の「お嬢様・執事」の
関係だけじゃなくて、
あたしたちは恋人同士だから。



いつものことながら、
あたしは隆也君が
振り返るのを
ドキドキしながら、
背中を見詰める。




そして、振り返ったら、
その姿にドキッとする。



まっすぐに隆也君の視線が
あたしの姿を
探しているのがわかる。


こんなに遠くにいるのに。



あたしを見つけて
すぐさま笑顔になる隆也君。



あたしは、いつも通り、
隆也君にだけわかるように
ちょっとだけ手を振った。



それを見て、隆也君が
笑顔で手を振るのが見えた。




その姿に、あたしは
胸がドキドキしてくる。



本当だったら、
今すぐ隆也君のところに
走っていきたい。
そして、抱きつきたい。





今日は・・・・ちょっと
隆也君とあまり触れてなくて
寂しいな。




でも、夜中の0時を過ぎたら。
2人でデート。
それも、遊園地で!



それを考えたら。



サプライズで驚かしたときの
隆也君を想像したら。



とりあえず、今、
なんか、あたしたち
雰囲気悪いけど、
でも大丈夫なはず。



隆也君のために。
これまでで、
一番だ、っていうくらい
思い出に残る誕生日を
あたしが作ってあげたいの。




(だって、大好きなんだもん)




大好きで大好きで。
いつも傍にいて
欲しいと思ってて。


これからも
ずっと一緒にいたくて。




いつもの2人の合図を終えて
隆也君が校門を出て行くまで
あたしは、その後姿を見つめていた。











・・・・・・・・・・・





学校が終わって、
廊下に出たら、
隆也君が迎えに来ていた。



いつも通り。



だけど、違うのは、
なんだか、あたしが
朝と変わらず
「よそよそしい」ことだけ。



隆也君がなにか、ちょこちょこ
話題を見つけて話しかけてくるけど、
あたしは、とりあえず、
そっけない態度で流していた。



(やっぱり驚かすためには、それとない演技よね、演技)




しばらく話しかけてきていた隆也君だけど、
でも、あたしが
あんまりにも無反応だから、
だんだんと喋らなくなって。




校門を出るまでの間、
あたしたちはなんだか
気まずい雰囲気だった。







車に乗り込んで、すこしため息をつく。




(なんか・・・・隆也君が言いたそうだけど、でも・・・)





考えたら、今日はまともに
隆也君と話をしてないや。



いくらサプライズの
誕生日パーティを
ばれないように
用心しているからといって
これはちょっとやりすぎかな。




こうやって学校の時間以外は、
ほぼ一緒にいるって言うのに、
まともに話をしてないって、
隆也君と喧嘩をしたときくらい。




今日はそんな日じゃないけど、
でも、喧嘩のときと同じような
態度を取ってるっていうのに、
ちょっとだけ気づいた。




(いくらなんだって、やりすぎかな・・・?)



ちょっとだけ心配になる。



せっかく明日は誕生日なのに、
隆也君ったら、自分の誕生日、
なんて一言も言わない。
(あたしが言わせてないだけ?)



考え事をしていたあたしに
不意に隆也君が訊く。




「お嬢さん」



「え?なあに?」


振り返ったら、
真剣な目をした隆也君が
すぐ傍にいた。



「オレ、なんかお嬢さんの気の障ることでもしたっすか?」



「え・・・・」



「なんか変ですよ、今日」


「う、ううん。なんでもないよ」


「なんでもないって、態度じゃないって思うんですが」




うっと詰まってしまう。
確かに今日のあたしの態度は
さすがに変だよね。



いつもだったら甘えん坊で
隆也君に抱きついて
離れないぐらい
べたべたなあたしが、
自分からそっけなくしてるもん。




そんなあたしに
隆也君は戸惑ってる。




「・・・・ううん、本当になんでもないんだってば」



「・・・・それならいいんですけどね」



それ以後、会話無し。
とても気まずい。


あたしの回答が
腑に落ちないのか、
隆也君のほうも、
思案顔になって、
少し口をへの字にして
考え込んでる。




チラって隆也君の横顔を見る。




(絶対・・・・訳わかんねえって思ってる顔だわ)




いくらなんでも、不味かったかな。
ここまで、そっけなくするのは。



でも、こうやって
距離を置いておかないと、
あたしは、夜中0時の
楽しい計画で
頬が緩んできそうだったから。




隆也君がきっと
喜んでくれるって思うから、
それを想像して、
嬉しくてにやけてしまうから。






とはいえ。




少ししょんぼりとした顔の
隆也君を見ていると、
胸が痛んだ。




隆也君は何も
悪くないんだよ。


悪いどころか・・・・。
こうやって隆也君のことを
サプライズで驚かすためとはいえ、
そっけない演技をしているあたしは、
ある意味、かなりの嘘つきだ。




(ん・・・・なんか、自分でやっておきながら後味悪いや)



早くサプライズ誕生日祝い、終われ!



隆也君のお誕生日になる、
その日の0時0分には。
一番傍で。
隆也君にごめんね、と
大好きだって告げよう。




少しため息をつきながら、
あたしは、今日の夜の楽しい
サプライズに想いを馳せた。









・・・・・・・・








・・・でも、隆也君は。



あたしが思っていたよりも、
ずっとずっと、あたしの態度を
気にしていたみたい。




学校から帰って
自室で制服を脱いだあと、
宿題をしようとしたら、
不意に隆也君から抱きしめられた。




オレ、本当になんかした?



そう、すこし苦しそうな声で訊かれて
あたしは何も言えなかった。



なにかオレに隠してることはある?



恋人同士の口調で訊かれる。



さっきの車の中での質問とは違う。
あれは、執事としての口調だった。



でも、訊かれても何も答えられない。



だって、隆也君の
誕生日パーティを計画して
サプライズするために、
隠してるんだよ、て
ここで言ってしまったら、
これまで準備した意味がない!



特別な誕生日パーティにしたくて、
プレゼントだって、吟味した。


カーネーションだって、
綺麗に咲いてきてる。
まだまだ蕾もあるけど、
でも、小さな花束にできるくらい
本数はできた。



樫原さんにだって、
遊園地の手配を頼んだり。







「ねえ、答えて」


「・・・・本当になんでもないよ」



「嘘。態度にすぐ出てるぜ」



「・・・・・」



・・・何もいえないあたしを
隆也君がじれたのか、
そのまま沢山キスされて、
白状するようにといわれたけど、
何も言わなかった。




ただ、言えるときが来たら言うから。




そうしか言えなかった。




(あと、数時間の我慢だから、ね、隆也君)





そう心の中で繰り返すあたしに、
隆也君がびっくりすることを言う。


樫原さんの部屋に
昨日の夜、何しにいったの?




え?



硬い声と硬い表情。


思わずびっくりしてしまった。



でも、そう訊いた後の隆也君は
すごく気まずそうな顔をして、
その言葉を取り消した。




・・・・気づいてたんだ。


というより、見てたのかな?
あたしが樫原さんの部屋に
カードを持っていくところを。



(あれは、隆也君への誕生日カードを預けただけだよ)




そう言ってしまえたら楽なのに。




それが言えなくて。
言ってしまったら、
サプライズじゃなくなるから。
計画を全部話さないといけないから。



黙り込んだあたしを、
隆也君がぎゅっと抱きしめた。





好きだ。



耳元で囁かれる。



ちょっとだけ、その声が
いつもより硬い。
いつもの隆也君らしくない。



「あたしも隆也君のこと、大好きだよ」



じっと目を見つめて言った。
それを見て、隆也君がじっと見返す。
そして、ふっと笑った。



・・・・でも、あたしにはわかってる。



その笑顔は、隆也君がちょっとだけ
無理したときにする笑顔だってこと。



そして、口をへの字にして、
納得はいってないけど、
でも、いいや、って
顔をするのもわかる。



(さすがにマイペースな
隆也君でも、あたしが
ちょっと変なそぶりを見せたら、
すぐにわかるんだね)




変なところで、
あたしは感心していた。





あと、もう少ししたら、
あたしの計画がわかるから。



そして、最高の誕生日になるから。




あたしは、微笑みながら
隆也君の胸に抱きついた。
ぎゅーっと抱き返される。



そして、いつも通り、膝に座らされて
あたしは、だっこされて、
甘やかされた。




隆也君からしたら
問題は解決してないだろうけど、
でも、いつも通り、
あたしのことを甘やかす。



それは、多分、
あたしにとても
甘いから、だと思う。





隆也君。



もうちょっとだけ騙されててね。
最高のお誕生日を
プレゼントしてあげるから。





あたしはそんな隆也君の優しさに
頬ずりするようにして甘えた。






・・・・・・・・・・・・・






ディナー後、計画通り
藤の花を観にいった。



もともと、
藤の花のライトアップを
夜に観にいこうって計画を
樫原さんが出してくれた。



誕生日の前日だって
ばれないように、
1週間ほど前から、
予定に組み込んでくれて
それとなくわからないようにしてくれた。



だから、あたしが
ディナーの席で
藤の花が見ごろなんだって、
って話題にだしたら、
つかさず樫原さんが、
そろそろ見ごろが終わるから
早めに、なんなら
今日の夜でも、と
話題を繋いでくれた。






夜のドライブ。






いちお平日の夜だから、
そんなに遅くならないうちに
帰るんですよ、と
玄関先で樫原さんが
笑顔で見送ってくれる。




(樫原さん・・・めっちゃ演技派だね)




なんて感心する。
車に乗り込みながら、
樫原さんに軽く会釈をしつつ
(おねがいね)って
口だけ動かして伝えた。




そしたら、樫原さんが
にっこり笑いながら
(お任せ下さい)と
声無しで伝えてくれた。



















藤棚は見事だった。


もう花の盛りは終わったかな?と
思っていたんだけど、
例年より冷え込みが
残っていたらしく
まだ花は大丈夫だった。



ライトアップされた藤の花たち。




ほんのりと香ってくる
藤の花の甘い匂い。





「すごく綺麗・・・・」





藤の花って、普通の花よりも
すごく色気がある気がする。





桜の花のライトアップは
華やかですっきりした
美しさがあるけど
藤の花のライトアップは、
まさに艶やかって言葉が
ぴったりだと思う。




ライトアップされた
藤の花を見ながら、
すぐ横を歩く隆也君をちらりと見る。





「ね、隆也君、いい匂いするね」



その言葉で、隆也君が
鼻をくんくんさせながら、
にっこり笑う。



ほんとだ、いい匂い。




「お嬢さん、匂いのある花が好きなんですね」



さっき部屋で充分に
隆也君に甘えて
いつも通りをしたせいか、
隆也君の態度が
少しだけ柔らかい。





にっこり笑って、
こっちを見つめてくれる。




「え?」



「いつも、お嬢さんは花を見ると、その匂いのことをいうから」



「あ・・・・そうだっけ?」



あたしは、自分のことだからか
そんなこと、気がついたこと無かった。



言われてみれば、確かに。


お花を差し出されたら、
その匂いを一番に嗅いでみるかな。



「そういえばそうだね」



「でしょ?」


「ふふ。隆也君、あたしが気がついていないところもよくわかってるんだね」



「当然です。だって専属執事だし、それに恋人ですから」




にっこりと笑って
胸を叩きながら言う隆也君。



たくましいな~。
思わずその笑顔に
釣られて笑ってしまう。



隆也君があたし自身も
気づかなかったクセを
知っていたことが
ほんのちょっぴり嬉しかった。



「隆也君ってさ。あたしのこと、本当によく知ってるよね」



執事さんとして
傍にいることもあるけど。
あたしが感心するくらい、
隆也君は、
“あたしメモ”を持っていて、
あたしの好き嫌いを、
細かくメモしてる。




執事の仕事のうちだから、
といわれても、
そんなの、
恋人に言われると、
あたしはくすぐったくて仕方ない。




「だって、俺はお嬢さんに関しては、もう世界一っていうほど知っていたいんですよ」




「え?」




「つまり、お嬢さんの隅から隅まで知りたいってことです」




にこっと笑った顔が
ほんの少し赤い隆也君。



あたしの隅から隅までって・・・。
その意味がなんだか、とても甘くて。
あたしも、釣られて赤くなった。




「あたしは・・・・隆也君にそう言ってもらえると嬉しい」




「俺だって、お嬢さんのことを沢山知るたびに」
もっともっと好きになるから。だから
もっと知りたいっていつも思うんです。



なんか、すごく恥ずかしくて。
あたしは、その隆也君の言葉に
顔を上げきれなくて。



だから、そのまま、
すとんと、
隆也君の胸に
あたしの頭を預けた。




今は・・・誰も周りにいない。
お屋敷の人は誰も。


だから、こうやって
もたれて甘えても。
見咎められない。




(今日は・・・ずっと隆也君と距離を置いてたから)




なんか、こうやってしているだけで、
すごく落ち着く。



隆也君はその大きな手で
あたしの背中を支えてくれて、
髪の毛を撫でててくれる。
甘えっ子だな、と微笑みながら。




あたし、やっぱり
隆也君と離れるとか
(そんなこと一度も考えたこと無いけど)

だめだな、って思う。




今日だって、目的があって
隆也君と少し距離を置いただけで、
こんなに・・・欠乏気味だもん。




「ほら、あっちの方にも行ってみよう」




あたしがいつも通りに
甘えてきたせいか
隆也君がさっきよりもっと
柔らかく笑ってる気がする。



足元がぬかるんでいたりするので、
気をつけてくださいね、って
手を出してくれる隆也君。






「手を繋いでくれる?」



あたしの言葉に、
隆也君がにこっと笑う。



そしていつも通りに
エスコートしてくれる。


あたしは、この優しい恋人に
本当に大好きだ、って
伝えたくてしょうがなかった。



だから、人目につかないところへ
隆也君と歩いていった。




藤の香りが漂う。



夜の方が、
匂いがこもる気がする。


空を見上げると、
満月に近いお月様。



夜遅くて、
ライトアップを
観に来てる人も少ない。






「お嬢さん、ちょっと上向いて」




「ん?」





人目を盗んで、隆也君が
あたしにキスをしてくれた。
啄ばむようなキス。




藤棚の下で。




垂れ下がる藤の花に隠れて。





ちょっとびっくりしたけど、
でも、そのキスは優しい。



両頬を隆也君の
大きな手で包まれる。
見つめられて微笑む。






誕生日前日のキス。







ねえ、隆也君。
今日の夜は特別だけど、
でも、特別なのは、
この藤棚だけじゃなくて
もっともっと、
あれこれあるからだよ。





意味深にふふっと笑ったあたしに
隆也君が目を丸くする。


そして、にこっと笑った。


それってオレの誕生日のことっすか?



単刀直入に訊いてくるものだから、


(誕生日の話題だしちゃったけど・・・・でも、ごまかせばいいか)


「ん?それっていつのこと?」

と訊き返した。


もちろんわかってるけど、
でも、あと少しで
サプライズの時間なのに
ここでばらすわけにはいかない!




(それにしても、ここ数日、ばらさないように大変だな・・・・自分)



そう思いつつも、
質問をするりと抜ける。



隆也君が、すこし残念そうで、
なにか言いたげなのがわかるけど。


それ以上
何も言わせなかった。



(わかってるよ、隆也君!)



あたしは、心の中で呟いた。



それ以上の質問はだめ、とばかりに
あたしは、自分から背伸びして
隆也君にキスをして、口を封じ込めた。











・・・・・・・・・・









藤のライトアップを2人で
手を繋ぎながら歩いて。

途中何度も
隆也君をキスで防ぐ。


こうやって2人で
いちゃついていたいから
もう少しここにいようよって誘うと
隆也君は、もちろん嬉しそうな顔で
あたしにキスをしてくれる。




そうやってキスしている間に
時間がどんどん過ぎて。










あたしは、
こっそりと時計を見る。



時間は11:30.


そろそろかな。









「もうこんな時間だから、帰ろう?」


そう言うと、少し隆也君が目を丸くした。



「もう少し、ここにいない?」



「え・・・・?」



「ほら、もう少しで日付変わるし・・・・」



(あ!そっか。隆也君、もしかして、ここで誕生日の0時を迎えようと・・・)




思わずあたしも目を丸くする。



隆也君が少し赤い顔をして、
少しだけ口をへの字にして、
どっかの方向を見て言う。



「俺、もう少しここにお嬢さんと一緒にいたいっす」



(それはあたしもだよ!)




で、でも!!
お誕生日の0時は、
ここじゃなくて
別の場所で過ごすんだから。



隆也君、サプライズを
気づいていないにしても、
とりあえず、ここを離れて・・・

移動して
遊園地に行かなくちゃ!!




ここにいたいっていうのを
断る理由もない・・・ないけど、
でも、とりあえずここを出ないといけない。




焦ったあたしは思わず


「あ、あたしはもう疲れて眠いから、早くお屋敷に帰りたいんだ」



なんて言ってしまった。


その言葉を聞いた途端に
隆也君が、がっかりした顔をした。




(あ・・・・傷つけちゃった・・・?)



そりゃあそうだよね。


あと30分ぐらいで
自分の誕生日だし。
その誕生日の0時に
大好きな人といたいって思うのは、
それも2人だけのロマンチックな場所で、
隆也君だけじゃない。



(もちろん、あたしも)


でも、少しがっかりした
顔をした後に、
隆也君は、すぐさま
またにっこり笑ってくれた。




「お嬢さんがそう言うなら。帰りましょうか?」




「そ、そうしてくれると助かる」




思わず焦り気味に言うあたしを
隆也君が不思議そうな顔で見つめる。




「ごめんね、隆也君」



がっかりした顔を見たからか、
思わず謝ってしまってた。



「そ、そんなお嬢さんが謝ることないっすよ」


そう言ってくれる
隆也君はすごく優しい。



思わず、どうしようもなくなってしまって
あたしは隆也君の顔を
じっと見つめた。




「ほら。そんな顔をしていたら、可愛すぎて、俺」
まだここに2人でいたいって思うから。




そういって、隆也君が
あたしの頬を包んで、
おでことおでこをくっつける。



至近距離で見つめる。




思わずその言い方にドキってしてしまう。



隆也君って、本当に・・・・
てらいもなく、ストレートに
好き、とか、可愛い、って言うから。
その度にドキドキしちゃう。




頬が赤くなるのがわかる。
隆也君の言葉が嬉しくて
そしてこそばゆいから。




(ちょっとずるいよね。あたし、負けてばっかりだ)



思わず口をすぼめて、
軽く睨んだ。



そんなあたしの顔を見て、
隆也君がくすっと笑う。



そして、おでことおでこをくっつけて
見つめた視線を外さないまま
少し甘く囁く。




「疲れたんだったら、抱っこして車まで行く?」



だ!だ!だっこ!!



「疲れたんだったら、甘えていいよ」



その言葉で、
あたしは余計に赤くなる。
そんな子どもじゃないんだから!



あたしが慌てるように、
そう言うと、隆也君がまた笑う。



冗談だよ、って。



その少し頬を赤くして、
あたしのことをからかうなんて、
隆也君のイジワル。




「だって、抱っこしてる時に俺に甘える姿がとても可愛いからさ」


な、な!!!
なんて恥ずかしいことを
隆也君ってさらりというんだろう。




もう、ほんと。
隆也君のストレートさには
あたし、勝てないや。



・・・そりゃあ、たまに隆也君に甘えて
抱っこしてもらって、喋ってるときに
そのままもたれて、気がつくと
寝てしまうこともあるけど。



隆也君って、
たまにあたしのこと、
ほんとヌイグルミみたい
っていうか、
そういう小さい
可愛いものみたいに
扱うんだよね。



それはそれで嫌じゃないけど。



隆也君はすごく逞しくて。
頼りになるし。
すごく体つきもいいし。



だから、あたしは余計に
隆也君に触りたくなったり
もたれたり、甘えたくなったりする。



でも、それは、あたしの部屋とか
隆也君の部屋だけのこと!
こういう外で、それも車に行ったら
お屋敷の運転手さんもいるんだし。




「ねえ、抱っこして車まで行く?」



「隆也君!もう!」
行きません、絶対!!




恥ずかしすぎるよ、隆也君。




隆也君の手を振り切って
あたしは歩き出す。
その後ろを隆也君がついてくる。
ちゃんと手を繋いでくれる。


もう。本当に。
ちょっと赤くなりながら、
頬を膨らますあたしを
隆也君がくすくす笑う。




たまにこうやって、
ちょっとイジワルだったり
からかったりするんだよなあ、
隆也君って。



そういうところも、嫌いじゃないけど。




でも、あまりにもストレートな
愛情表現で、あたしは
負けちゃう。

いつも、いつも。



それに負けちゃうのが
悔しい気持ちもあるけど、
でも、こういう隆也君が好きだから。




そして、わかるの。


隆也君も、こうやって
ストレートに表現して
その愛情を恥ずかしがりながら
受け止めているあたしのことを
好きだってこと。


あたしがストレートすぎる表現に
少し恥ずかしがりながらも
嬉しがっていることを
わかってるから、
隆也君は、こうやって
愛情を告げることをやめない。




(どっちもどっち?)



そう思うと、少し笑いたくなる。



あたしの愛情表現は、
隆也君よりストレートじゃないけど。



でも。



あたしは、あたしなりに
隆也君のことを大事に思ってる。
隆也君のストレートさには
負けるかもしれないけど。



でも、今日のあたしの
隆也君への愛情表現は
結構すごいものじゃないかな、って思う。









時計の針は11:40.





あたしと隆也君は、
それぞれ
ほんわかした気持ちで
藤棚の下を歩いた。




車まですぐそこ。
繋いだ手が温かい。








・・・・・・・・・・・・






車に乗り込む前に
運転手さんと目が合う。



(あの目的地までよろしくお願いします)



そう会釈した。



いつもは助手席に座る隆也君に
もう、今日は仕事終わりの時間だから、
一緒に後ろに座ろうよ、っていう。




そしたら、一瞬戸惑った顔をしたけど、
でも、嬉しそうな顔で頷いてくれた。



2人で、後部座席の
ふかふかなソファに座る。
あたしは、隆也君の肩に
頭をもたれさせる。



隆也君は、さすがに車の中だから
運転手さんが見てるわけないけど、
でも、いつもみたいに
髪の毛を撫でてくれはせず、
そっと、あたしの手を
自分の手で包み込む。



その幸せにあたしは目を閉じた。





(もう少しで、0時だ)




藤棚から遊園地までは
車で10分もかからない。
それに、今は夜中だから、
交通量も少ない。




ちゃんと0時少し前に
遊園地前に着くようにって
お願いしていた。



早く着きすぎてもだめ。
0時を越してもだめ。




そうお願いしていたから、
あたしたちを乗せた車が、
遊園地近くで、わざとぐるぐる
時間を潰しているのがわかる。



(0時前に、車がついたら、すぐさまプレゼントだね)




むふふ、ってあたしは
自分の計画ににっこりする。




そんなあたしに隆也君は
気がつかないで、握った手を
愛しそうに撫でてくれてる。










乗ってからしばらくして。



車が停車した。








「え?」

隆也君が少し驚いた声を出す。




あたしは反射的に車の時計を見る。





23:58.



すごくちょうどいい時間。


「え?ここ、まだ屋敷じゃないのに」




驚いた隆也君が、
運転手さんに話しかける。

それを制していて、あたしは
隆也君を後ろから掴んで、



「いいから!」

にっこり笑った。



え?


隆也君があたしの顔を
唖然とした顔で見る。





「とにかく、降りよう」


ね、隆也君。




そういって、
あたしはいつも
開けてもらっている
車のドアを開ける。




開けたドアから、
さっと初夏の夜の風が吹き込む。




少し肌寒い、けど、
ちょうどいいぐらいかな。



勝手に一人で先に
車から降りたあたしを
隆也君がびっくりして、
追いかけるように
車から降りてきた。





車が停車したのは、
遊園地の入り口。






遊園地の電気は消えてる。
ひっそりしてる。




計画通り。





よし、入り口までダッシュだわ。
0:00までに切符売り場の
入場門に行かなくちゃ。




車を降りたあたしは、




「隆也君、行くよ!」




そう呼びかけた後、
入り口に向かって
一人走り始めた。








あたしが走ったら、
絶対隆也君は
追いかけてくるから。




それで切符売り場まで
隆也君を誘導しなくちゃ!









お嬢さん、ちょっと待って!





そう呼ぶ声が
後ろから聞こえる。






夜の暗さで
足元がよく見えないけど、
でも、目指す場所はわかってる。









あたしは、少し急いで走って、
樫原さんと約束した入り口の
切符売り場の後ろに回って
あのプレゼントの花束を持つ。





そして、後ろ手に隠した。




息を整えて
隆也君を待つ。






遊園地を後ろにして。
入り口で。





あたしが預かった写真の
小さい頃の隆也君の様に。




後ろ手には
カーネーションの花束。






あたしよりも、普段は足が速いのに
いきなりのことでびっくりした隆也君が
急いで走ってきた。









お嬢さん!






走って近寄ってきた
隆也君の顔が
すごく焦っているのがわかる。



そして、少し額に汗をかいて
ちょっと怖い顔をしている。






走ってきた隆也君は
あたしを逃がさないようにするためか、
両手で後ろに
花束を持ったあたしの
その両手を
がっと横から捕まえた。








ちょ、ちょっとなんで走るの?
そして、なんで、ここ・・・・?!








そう隆也君が言った瞬間。














オルゴールのような音が流れて
いきなり、暗かった遊園地の明かりが
ぱっとついた。





(間に合った!!)





オルゴールの音が
0時をおしえてくれる鐘の音。






ぐぉーんって響く音がして、
0時とともに点灯された
観覧車がゆっくりと
回り始める音がわかる。








「え?」




目を丸くして、
あたしの後ろの
遊園地を見つめる。




目をこれ以上ないくらい
まん丸になっている隆也君に
あたしは。




「お誕生日おめでとう!!!」



少し大きな声で言って、
後ろに隠していた
カーネーションの花束を
隆也君に、はいって差し出した。





「隆也君、19歳だね」
おめでとう!!!











にっこり笑って花束を渡す。





隆也君が呆然とした顔で
あたしの顔を
まじまじと見つめている。




押し付けられるように
目の前に出された
花束を受け取るものの
まだ、実感がわかないのか、
目をぱちぱちしている。





「サプラーイズ♪♪」


その様子がとても可愛くて。




「隆也君。今日5月12日はお誕生日でしょ?」
だから、サプライズに
誕生日祝いを、準備しましたー!!





思わず笑いがこみ上げてくる。




サプライズな誕生日祝いが
どうにか成功して、
あたしは、すごく上機嫌だ。




にこにこ笑っているあたしの顔を
じっと見つめていた隆也君の頬が
急に赤くなった。




「お嬢さん・・・オレっ・・・・!」



ようやく実感してきたのか、
感極まってるような隆也君。



「ありがとうございます!!!!」



すごい角度で隆也君が頭を下げた。
やだ、こんな時まで
執事の口調はやめてよ。




そうにっこり笑った
あたしの顔を
また隆也君は
まじまじと見つめている。





今、この状況を
把握できてないのは
ありあり。





でも、自分の誕生日祝いで、
こういう状況っていうのは、
少しわかってきたみたい。





だって、だんだん・・・・
嬉しそうな顔に
なってきたから。






「今日は、隆也君の誕生日だから」



驚かせてごめんね。
サプライズにして
驚かせたかったから。
隆也君の誕生日の0時に
一番最初にお祝いを
言いたかったんだ。





だから、これまで色々
秘密裏に動いてきて、
隆也君を心配させたけど・・・・。



でも、隆也君の誕生日を
すごくステキにしたかったの。



今日・・・・、
遊園地まるごと貸切、じゃないけど
観覧車だけ動かしてもらってるんだ。



あとで一緒に乗ろうね。





あたしの言葉に、
隆也君は驚き顔で
口をぱくぱくさせながらも、
うんうん、って頷いた。




その様子が可愛い。




このサプライズは・・・・
隆也君にとってまったく
予想もしてなかったことで
すごくびっくりして、
そして多分・・・
すごく感動してくれると思う。





そう、あたしには
伝わってきた。





えへへ、って笑うあたし。



隆也君がようやく
驚きが納まったのか、
遊園地をみたり、
あたしをみたり、
ドキドキしている様子で
落ち着かない様子。





隆也君は、目をキラキラさせながら、
少しその目を伏せるようにして
受け取ったカーネーションの花束に
目をやる。




「そのカーネーションは、あたしが育てたんだよ?」



「えー?ど、どこで?」




あたしの言葉に
びっくりした隆也君。



隆也君の目を盗んで、実は
これ、九条院家の庭で
育ててたんだ。


もう、これを育てるために
隆也君の目を盗むのが
大変だったんだよ。




苦労話をするように、
眉をひそめて、
大変だった~って告げるあたしに
少し隆也君が慌ててる。




冗談だってば。
少しだけのことなのに、
隆也君の反応が可愛い。





「こ、これ、お嬢さんが育てた花なんすかっ・・・!」



隆也君が顔を真っ赤にして
にこにこ笑っている。
すごく嬉しそう。



種明かしは、とても楽しい。
あたしは、こんなにも
驚いてくれてるのが
ドキドキしながらも嬉しかった。




隆也君が真壁さんと
執事修行している間にね。
こっそり育ててたの、今日のために。




にっこりと笑って告げたら。
その言葉で、また
隆也君が目を丸くする。




樫原さんに協力してもらったんだよ?
お花を育てることも。
今日のこの遊園地も。




その言葉で、隆也君が
一瞬口を呆然と開けて
驚いていたのが。



いきなり大笑いし始めた。




「えー!!オレ、全然こんなこと知らなくて!!!」




なんだよー!それ!!って
大笑いしている隆也君。


サプライズなんて
知らなかったぜ!
それも、こんなに見事に騙された~!


もうずっと様子が変で!!





あたしも、その笑いに
釣られて笑う。



オレ、ものすごく心配したじゃん!



そう言いながら、
隆也君が大笑いしながら、
花束と一緒に、
あたしのことをぎゅっとして
一気に抱き上げた。




「きゃ!!」



いきなり、抱き上げられてびっくりした。



「もう!ほんと、なんでこんな嬉しいことしてくれるの?」



ものすごく嬉しそうな口調で、
隆也君が抱き上げたあたしを、
ぐるぐると回す。



「た、隆也君!あ、危ないよ~!!」



そういいながらも、
隆也君はめちゃくちゃ
大笑いしてて、下ろしてくれない。



しばらく、ぐるぐるとされた後、
隆也君が下ろしてくれた。



でも、抱きしめるのはやめない。



「ああ、もう本当に、****大好きだ!」



そう言いながら、隆也君が
あたしをぎゅっと抱きしめる。
隆也君はぎゅっと抱きしめて、
しばらくそのまま。




さっきまでの大笑いした
嬉しさとは違って、
しみじみと嬉しさが
こみ上げてくる。




あたしは、隆也君の
少し強い抱擁で
つぶれそうな花束を、
ちょっと体を離して、
すぐ傍の遊園地の
切符売り場のところへ置いた。



そして、隆也君の背中に手を回す。



あたしからもぎゅっとする。





「隆也君。お誕生日おめでとう」


さっきも言ったけど、
何回だって言わせて。
だって、今日、この日に
一緒にいれること、
それがすごく嬉しいから。



誕生日おめでとう、って言葉を
何度も言いたいから。





「大好きだよ、隆也君」




隆也君が少し腕の力を緩めて
あたしの顔を覗き込む。



「****、ありがとう、こんな誕生日祝い・・・」
オレ、本当に嬉しすぎて、
なんていったらいいか。



こうやって祝ってもらえるなんて
思ってもなかったから。




そう言う隆也君の目が
すごく嬉しいって色をしてて、
あたしは、その目を見れただけで、
気持ちがいっぱいになった。



「あたし、隆也君に最高の誕生日を演出したかったんだ」


だから、ここ最近、
態度がおかしかったり
そっけなくしていたりしたのも、許してね。



そう可愛く告げたら、
隆也君は赤い顔を
しながらも、めって睨んできた。




「だめ、許さない」



「え?」



意外な言葉で
あたしは目を丸くする。

でも、次の瞬間、


「本当に心配したから、ごめんなさいって思うんだったら、そっちからキスして」



その言葉で理解する。


隆也君は頬を赤らめながらも、
すごく目をキラキラさせて、
あたしの顔を覗き込んでくる。



とても嬉しがっている隆也君に
あたしは胸がいっぱいになって、
すぐさま、隆也君の首に
自分の腕を巻きつけてキスをした。


ちゅーって長く。
そして強く。



そのキスに答えるかのように
隆也君があたしの唇を吸う。
目を閉じて、
あたしは、その感触を味わう。



今、あたしたち、
すごく大好きだよ、って
キスをしてると思う。



離れた唇に、瞼を開ける。
そこには、少し目を細めて、
愛しそうに、あたしをみる
隆也君がいる。




「まだ怒ってる?」


その優しい目に
見つめられたら。


じゃれあいたくて、
“怒ってる”というだろうと
わかりながらも、
あたしはあえて訊く。




「もう少し。足りない」



やっぱり。
あたしの隆也君に
対する勘は外れない。



そう言った隆也君が、
今度は自分からキスしてきた。



両頬を包まれて、
少し上を向かされて
隆也君の唇に
あたしの唇が包まれる。




舌があたしの中に入ってくる。
そして、口の中を優しく撫でる。
軽く唇も甘噛みされる。



下唇も、上唇も。


何度も唇を吸われる。
角度を変えて、どこからも
あたしの唇を味わおうとする。




このキスが大好き。



唇だけじゃなくて。
閉じた瞼にも。
鼻先にも。
おでこにもキスされる。




目を開けると、
やっぱり
優しそうな隆也君がいて。






「これは、許してあげる、のキス」



沢山の言い訳で、
沢山のキスをくれる。



「これは、こんなステキな誕生日祝いありがとうのキス」



とろけそうなほど、
沢山キスをされて、
あたしはぼーっとしてくる。



それでも、このキスの感触や
気持ちよさだけは、ダイレクトに
あたしの脳に伝わってくる。




(隆也君、もっとキスして)



そう呟いた声を
隆也君に届いたのか、
くすっと笑う気配がする。




だめだよ。これ以上したら。
だって、****、もう限界だろ?





そう言って離された唇が寂しくて。
あたしは、隆也君の胸の中に
自分を埋めた。



この広い胸にあたし自身を
埋め込みたい。


そのままの意味で。


抱きしめられてるだけでは
物足りないから。
もっと密着してくっつきたい。






密かにそう願う。






ぎゅって抱きつくあたしを
隆也君が抱きしめてくれる。





ありがとう。
こんなステキな誕生日祝い。
オレ、初めてだよ。
こうやって誕生日の日の0時を
恋人と一緒に迎えられるなんて。




あたしだって。
今、こうやって隆也君と
過ごせるのが嬉しいよ。




ひとしきり、ぎゅって
抱きしめられてて。
その温かさに酔いしれる。



隆也君の胸、すごく暖かいや。












「ねえ、隆也君」


「ん?」


こっちを見つめる瞳は
限りなく優しい。
すごく、大きな海を
眺めてるときみたいな
そんなゆったりした気持ちになる。




「観覧車、乗ろう?」



あたしたちは、
まだ遊園地の入り口。



抱きしめあうあたし達の後ろには
きらきらと夜の空に輝く
観覧車の光。




星のように、
赤や青や黄色、緑色の
カラフルな光で、
ゆっくりと回っている。





「ああ、乗りに行こう」




少し興奮が収まった隆也君が
あたしの手を繋いで、
遊園地の入り口をくぐる。




もう片手には、
あたしがプレゼントした
カーネーションの花束を
しっかりと握っている。






今日は切符無しで入れるんだ~。





そんなたわいもないことを喋りながら。






隆也君がしっかりと
あたしの手を握ってくれて、
観覧車のところまで歩く。




他の遊具は電気ついてないけど、
道のりは優しく外灯がついてて、
それに照らされた道を歩く。





急いで歩いて観覧車まで
歩いていくのが惜しくて。
一緒にこうやって
歩いている今が愛しくて。






あたし達はこころなしか、
ゆっくりと歩く。













どんなにゆっくり歩いても、
観覧車が近付いてきた。







観覧車の入り口で、
係りの人らしき人が
一人待っていた。



ごめんなさいね、こんな夜遅くに。



そう言って会釈をしたら、
その人もにこやかに
会釈を返してくれた。



そして、観覧車の扉を開けてくれる。




あたしと隆也君は乗り込んだ。





「いってらっしゃいませ」
降りられるときは
お声をかけてください。








そう一言告げられて、
あたしと隆也君は
夜の空のお散歩へ出かける。










観覧車の動きが伝わってくる。



観覧車がゆっくりと上がり始めた。











「すげえな・・・・」



二人揃って、
観覧車の窓から
夜景を眺める。




0時を過ぎているからか、
明かりは少なかったけど、
上っていくにしたがって、
遠くにある港や橋の
ライトアップとかが見える。
道路の黄色い光とか。



それをじーっと
2人で魅入っていて。


ふと気がついて、
お互いが無言なことに、
顔を見合わせて笑う。



「こんな綺麗な夜景のプレゼントもありがとう」



そう言って隆也君が、
窓に手を当てて、
外を眺めるあたしを
後ろから抱きしめた。



そのまま、首筋や肩に
隆也君の温かい息が吹きかかって、
その生暖かさにこそばゆいあたしが
身を捩って笑う。



すると隆也君が
悪戯っこのように、
ぎゅっと後ろから
抱きしめた腕を弱めず、
くすぐったくて笑うあたしに
もっともっと、くすぐったいことをする。




「やだよ、隆也君」




そう言いながらも、
動物みたいに、あたしの匂いを
嗅ぐ真似をしたり、
息を吹きかけてくすぐったいことをする
隆也君がとても好きで好きで。
こんな風にスキンシップしてくる
隆也君がとても可愛いと思う。




こんなただ、一緒にいるだけで
すごく好きだって思う。



こんな幸せな時間が
続けばいい。





じゃれあっているうちに、
どんどん観覧車は上がっていった。












不意に隆也君が尋ねた。




「でも、なんで、今日、ここだったんだ?」




その言葉がものすごく純粋に
質問だったから、あたしは少し笑った。




「隆也君、覚えてないの?」



「え?何を?」




あれ?
なんか・・・・ん?



隆也君があまりにも普通に、
今日この遊園地を選んだ理由が
わかってないから、
あたしは、思わず
ポケットに入れていた
あの写真を出した。




「これだよ」



差し出された写真を見た隆也君が
次の瞬間、すごく目を丸くして驚いた。



「え?この写真!?」



「これ、隆也君のお母さんから借りてきたの」



「えー?!」



ものすごくびっくりしている隆也君に
あたしはプレゼント選びで
隆也君のおうちに行ったことを話した。





かくがくしかじかで。







「あたし、隆也君のこの写真を見て、絶対この遊園地で、0時にサプライズの誕生日祝いをしたかったの」






だって、この写真の隆也君、
少し悔しそうな顔をしてると感じたんだ。
そして、淋しそうだったから。



そういって、写真を一緒に見ていると、
隆也君があたしの顔をじっとみて、
じっと・・・・穴が開くほど見た後、
ふんわりと頬を赤らめて笑った。







「参った」




「え?」




「なんでオレがそんな気持ちだったって思ったの?」



「え?だって、たまにするじゃない、隆也君、こんな顔」




「え?」



え?って言われても。
たまにしてるよ、隆也君。



どんなとき?


そう訊かれて、すぐには
思い浮かばなかったけど。




「んー。初めてのお茶会で失敗して反省してるとき、とかに見たかな」



あの時も、笑って
また頑張るって言っていたけど、
でも、この写真みたいに、
ちょっとだけ悔しそうな
顔をしていると感じたんだ。




それに。



この日、誕生日の約束をしていたのが
だめになって、やっぱり
普通に考えても子どもだから、
がっかりしたんだろうなって思ったの。





そう告げた、あたしを
隆也君が、ぎゅっと抱きしめた。



「・・・・さっき、オレが****のことをよく見てるって言っていたけど、それ、オレが****に言いたいよ」




「え?」



「確かにオレ・・・・この時、少し悔しかったし、がっかりしてた」



でも、誕生日に家族で揃って
遊園地に行くなんて、
うちの家庭環境じゃあ、
かなり色々都合しないといけないわけで。


無理なことだっていうのも、
子どもなりにわかっていたから、
実はそこまで諦めるのは辛くなかった。


でも、ま、それでも、
遊園地に来たかった気持ちはあったから
こうやって記念撮影って言われて
入り口に立たされて写されると、
やっぱり諦めていたけど、
少しだけ悔しいって思ってる気持ちが
写ってるや。




また来たらいいって、わかってたから、
駄々をこねたり、っていうのは
なかったけど。





ああ、でも、この母の日のプレゼントを
この遊園地で渡そうと思っていたのに
時間が遅くなって。




結局母の日に渡せなかったのは、
結構ショックだったかなあ。








そう言って隆也君は
自分の写真を見て微笑んだ。



そして、あたしを見つめる。


その瞳は、いつものにこやかさとか
優しさとは、違って、もっともっと・・・・
大事なものをみる瞳だった。




「オレ、実はこの時思ってたんだ」



「ん?」



いや、俺が大人になったら、
大好きな子を連れて、
ここに来ようって。


後ろに写ってる観覧車、
あれに乗りたいって思ってた。


この写真を写されたとき、
電気ついて光ってるのが
観覧車だけで、
それがとっても綺麗で。


子どもながらに、いつか、
この観覧車に乗りたいって思った。


夜、きらきら光ってる観覧車に乗って
遠くの街まで見るんだって。
好きな子と一緒に見るんだって。




その夢が叶えられて―――
とても嬉しい。







そう真っ直ぐに
あたしの瞳を見て告げる。




「ありがとう、俺の夢、叶えてくれてありがとう」




にっこりと笑う
隆也君の笑顔が眩しい。




思わぬ言葉で、
あたしは胸が熱くなった。
その言葉だけで
胸がいっぱいだよ。



こうやってサプライズな
誕生日祝いをして
本当に良かった・・・・と
心から思った。




思わず、隆也君の
素直さでじーんとくる






お礼の言葉で
涙が出てきそうになったから
あたしは、慌てて話をそらせた。






「お花・・・」



「ん?カーネーション?」



「うん」



座席に置かれたカーネーションの花束。
赤くて、綺麗にラッピングされている。



「あたし、初めて自分で育てたお花をプレゼントするんだ」


隆也君が好きなお花を探すの、
大変だったよ。
瞬くんや誠吾君に訊いたり。



そういって笑った。
そのあたしの笑顔を
隆也君が眩しそうに見ている。



あたしね。


いつも隆也君からお花をもらうばかりで。
毎日部屋に生けてくれるでしょ?
あれ、すごく好きなんだ。




あたしは、隆也君みたいに
植物とかお花とか詳しくないから、
そういう話をすることが出来なくて。



隆也君が大好きな
植物とかお花を
もっとあたしも
好きになりたいと思ったの。




だって、そうやって
あたしも好きになったら
あたしと隆也君で“好き”の
共通点が増えるわけじゃない?




だから、今回の誕生日プレゼントは・・・・
物じゃなくて、想い出っていうか、
“想い”を大事にしたものにしたんだ。




お金で買えるものは
いつでも買ってあげれるから。



そう告げたあたしを、
隆也君が、また
ぎゅーって抱きしめる。




そして、なにも言わずに、
観覧車の座席に座った
自分の膝にあたしを座らせて
横抱きにして抱きしめる。





「****、そこまで考えててくれたんだ」



「うん、そうだよ」
だって、大好きな隆也君のことなんだもん。




「****はオレにとって最高の恋人だよ」





何も言わなくても。
抱きしめてくれている身体から
隆也君の気持ちが伝わってくる。





好きだ。
大好きだ。
そんな気持ち。




「カーネーションの花、気にいってくれた?」



そう尋ねると、隆也君は優しい目で笑う。



「ああ、本当に嬉しかった」



隆也君の世界に近付きたくて。


もっと隆也君の“好き”を知りたくて。


隆也君に日ごろの感謝と
あたしの愛を伝えたくて。


隆也君の喜ぶ顔が見たくて。




(あたしの願いも叶ったかな)





あたしは、幸せな気持ちになって、
隆也君の抱っこに身を任せたまま、
甘えてた。



2人で何も言わずに、
しばらく夜景を楽しむ。
















「ねえ、隆也君」


「ん?どうした?」


「あのね。瞬君が教えてくれたの」



―――あたしは、
数日前に瞬君に
聞いたことを話した。



「カーネーションの花言葉、何か知ってる?」



「え?知らないっすよ?」


その少し敬語というか、
ちょっとびっくりした声にあたしは笑う。




「知りたい?」



わざとイジワルに言ってみる。


もちろん、それは、隆也君を
からかいたいんじゃなくて、
もっともっと、甘い時間を
二人で過ごしたいから。



「え?」



「知りたいなら、教えてあげる」



にこっと笑う。



隆也君はちょっと
びっくりしていたけど、
不意に笑顔になって、
くすくす笑う。



あたしの仕掛けた
ゲームに気がついたんだ。




「知りたい。教えて」



あたしもくすくす笑う。




「じゃあ、教えてあげるから」
耳貸して。





隆也君が笑いながら、
あたしの口元に自分の耳を寄せる。






その耳元で、あたしは囁いた。




「カーネーションの花言葉は―――---」
















言い終わった後、
隆也君の顔を覗き込むと、
案の定、真っ赤になっていた。




えへへ、小ネタ成功♪



「っ・・・・・・!!」



真っ赤になって、
少し慌てる様子の
隆也君が可愛い。
思わず、笑ってしまう。




隆也君、慌ててる、可愛い~!



そういって笑うあたしを
真っ赤な顔をした隆也君が
軽く睨む。



膝に抱っこされたまま、
至近距離で睨まれても。



その真っ赤な顔で睨まれても。



ただ、あたしはその甘い時間で
こうやってじゃれあってることが幸せ。




隆也君がこの花言葉で赤くなったのが
あたしとしては、とても嬉しかった。




いつも、隆也君の言葉で
隆也君の率直で
ストレートな愛情表現で
赤くなっているのはあたしの方だから。



思わず得意げな
顔になったあたしを
隆也君がぎゅっと抱きしめる。





え?




「ね。今の言葉、もっぺん言って」



思ってもない反撃。



目をキラキラさせながら、
おねだりしてくる。



「もっぺん。今度は耳元じゃなくて、オレの目を見て言ってよ」



「っ・・・!」





あたしが一瞬にして言葉に詰まる。
顔が赤くなったのを見て、
隆也君が、今度は反対に笑う。





「ね。もっぺん言って」




え!あ・・・・あの花言葉は
さすがにちょっと恥ずかしくて、
あたし、耳元ぐらいでしか言えないよ?!




そんなあたしの言葉にも
耳を貸さず。



ねえ、ったら。
何度もねだってくる隆也君。






「お願い」




そう目を見つめて言われて。
返事をするのを待っているのを見たら。




もう言うしかなくて。



赤くなっている自分の頬を
とめることが出来ない。




聞こえてたはずなのに、
もう一回言わせようなんて、
隆也君ったら!!!





そう思いながらも、
そんな隆也君を好きだと思うし、
そして、こうやって
目をキラキラさせてる
隆也君をもっと
喜ばせたいと思う自分がいる。







「カーネーションの花言葉は」








花言葉は?









隆也君の目があたしの目を
じっと見つめてる。
その瞳の色は、かぎりなく甘くて
そして優しい。











『あなたを熱愛する』、だよ。













そう真っ赤になりながら、
小声で目を見ながら告げたあたしに
隆也君が、キスをした。






(それは、オレのセリフ)




そんな呟きも一緒に聴こえる。








観覧車がゆっくり回っていく中、
夜景がちょっとづつ変わっていく。
その変化が綺麗で、
ずっと見ていたいけど。





でも、今あたしが
一番感じていたいのは、
隆也君のキスだけ。





隆也君に抱きしめられている強さだけ。
隆也君の味や匂いや、その全て。





沢山のプレゼント、
ありがとうな。






そう隆也君の声が聞こえる。





あたしこそ。



隆也君がいてくれるから、
毎日幸せで。
毎日沢山のプレゼントをもらってるよ。




だから今日は。



最高の誕生日を
隆也君にあげたい。




傍にいるよ。
もちろん、今日だけじゃなくて
明日も、その次の日も。




来年の誕生日だって。






ハッピーバースディ、隆也君。




今年一年が隆也君にとって
とても幸せな年になりますように。





そう呟いたあたしの声は、
キスで隆也君の中に溶けていった。






















******** 夜の遊園地 Fin . *********

Happy Birthday ! Dear TAKAYA !



















◇ あとがき◇

大木隆也の誕生日祝いに書いたお話でした。

ものすごく・・・長い!!
呆れるほど長い!!
そして、前半はずっと
大木を騙して秘密裏に
誕生日祝い作戦(笑)


大好きな人の誕生日を
最高の演出したい!って
はりきるヒロインが
せっせと隆也のために~って
頑張るお話になりました。

最初書き始めたときは、
誕生日祝いにデートぐらいな
気持ちだったんですが、
書いているうちに、あたしの方こそ
(隆也の誕生日をスペシャルにしたい!)と
このように、ボリュームあるお話になりました。


夜の遊園地のデートで。
夜の雰囲気ではあるけど。

でも、大木らしさが出ていたら
いいなって思います。

前半は少し切なく。
後半は甘く仕上がるようにしました。



恋をして。

相手と同じものが好きになりたくて。

相手の思い出とか、
自分がいない時の
彼のこれまでを思ったり。

もっともっと相手のことを
知りたいという思ったり。

好きだからこそ知りたくなる。

好きだから喜ばしたくなる。

そして喜んだ顔を見て
自分も幸せな気持ちになる。


そんな太陽の下で
キラキラと光って
影さえ見えないようなお話を
書きたかったです。

大木だったら、
そんなお話をあたしに
書かせてくれます。

大木の明るさが大好きです。



大木隆也さま。
お誕生日おめでとう!



12.MAY 2009.つぐみ
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