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大木隆也の誕生日祝いに書いたお話です。

長いので分割にしています。
こちらは、その2になります。

その1その3

1つの記事で読まれたい方は
こちらからどうぞ。


以下、創作になります。
ご興味のある方のみ、
お読み下さい。




↓↓↓




***** 夜の遊園地 その2 *******


















「大木さん、ごめんなさいね」


あたしはにっこりと笑った。



あたしが今いるのは、
隆也君のお父さんとお母さんの
住んでいる家。



九条院家の敷地の外れに
使用人の人たちが住む建物がある。
住み込み・・・っていうのかな。



隆也君は祖父の代から
庭師として九条院家に仕えてきたと
聞いたことがある。


それで樫原さんに尋ねたら、
隆也君の家族が住んでいるお家を
教えてくれた。



「お嬢様、それで、隆也の何を・・・・?」


少しいぶかしげに
心配そうに訊いてくる
隆也君のお母さん。



「あ、心配するようなことじゃないないです」



あたしは、素直に話すことにした。




来月、5月の12日って、
隆也君の誕生日じゃないですか?

あたし、隆也君にサプライズで
なにかプレゼントをしたいと思って。
彼だったら・・・・
植物が好きだから、
彼が好きな花とか木でも、
なにか、あげたいな、って思って。


その・・・・隆也君の好きな植物とか
親しい友達にも聞いたんですが
特にないって言ってて。


あ、それはそれでいいと
思うんです。
隆也君らしいし。


ただ、なにか、
ちょっとでも
気に入ってるのとかを
知っていたら、
教えていただきたいなって思って。



それか、これまでの
隆也君の中で、
なにか思い出に
残るような花とかあれば・・・。




「おしえていただきたいです」





・・・多分、屋敷の「お嬢様」が
自分の「執事」について
こうやって誕生日だからといって、
あれこれと訊いてくるのは、
びっくりだったみたい。



目を丸くしている
隆也君のお母さんに
あたしは慌てて付け加えた。


「た、隆也君はあたしの専属で毎日良くしてくれます。一番傍にいる、執事・・・だからこそ、隆也君のことを知りたいっていうか・・・・」




なんだか、すごく
言い訳がましく感じて
あたしは、最後まで
言い切れなかった。



でも、気持ちは伝わったみたいで、
隆也君のお母さんは、
にっこりと笑ってくれた。



その笑顔が、
隆也君の笑顔に似てると思う。
親子なんだ・・・。
そんなところにも
あたしは目がいっちゃう。




「お嬢様がそのように、うちの隆也を思ってくださっているのは、母親としてとても嬉しいことです」


思わぬ感謝に、
あたしは少し気が引けた。


恋人・・・だから、こうやって
隆也君のことが知りたいんだけど・・・・。
でも、ここでそれを言う訳にはいかない。



「大木さん・・・。あたしは・・・」


「お嬢様。隆也は確かに植物に関しては、どれも好きです」
でも特に好きだ、
という花もなかった気が・・・。


庭仕事にしても、隆也はどの花も
贔屓目に他より多く植えたり、
というのは、なかったですね






・・・・ここでもやはり。
やっぱり、隆也君の
好きな花は訊き出せなかった。


ううん、特に好きな花っていうのは
ないのかもしれない。





(んー、作戦変更かな)




そう思って、いつも考えるときの
隆也君みたいに、
あたしは斜め上を見て
少し口を曲げながら、考えた。



その表情を見て、
隆也君のお母さんがくすっと笑う。



え・・・?




「どうかされました?」



「いえ。今の表情が少し・・・・隆也に似ていたもので。失礼しました、お嬢様」



あ・・・・。



あたし、隆也君と一緒にいるうちに
彼のクセが移ってしまってるんだ。
少し恥ずかしくなって
頬が赤くなっていくのがわかる。



それで。
うつむいたら。



「隆也の思い出の花・・・・・そうですねえ」




もしかしたら、あの花かしら・・・・?




隆也君のお母さんの口から出た
花の名前は意外だった。










隆也君の思い出の花、ってことで
お母さんが思いついたもの。




ちょっと待っててくださいね、って
出て行った後、
しばらくして持ってきたのが
整理されていない写真束だった。



忙しくてなかなか
写真の整理ができないものだから、
溜めてるんですよ。



そう苦笑しながら
隆也君のお母さんが
あたしに箱から出した
写真束を見せる。



あと、どこにいったかしら、と
アルバムも持ってくる。



(隆也君・・・・結構写真が多いんだ)



やっぱり一人息子だからかな?



見せてくれるアルバムをめくっていく。


どれも子どもの頃の隆也君が、
今みたいに明るくて陽気で
しっかりした笑顔を向けている。



(やんちゃ坊主って感じ)


沢山泥まみれな隆也君や
自転車で遊ぶ隆也君とか。
とても可愛い写真が多い。



(こんなの、見てていいのかな?)



ふと、隆也君に内緒で
彼の小さい頃の写真を
見せてもらってることで
ドキドキしてしまう。


可愛い子ども時代のことを
知ることが出来た嬉しさのドキドキ。


でも、内緒で見てしまってるドキドキ。


隆也君の過去をなんだか
覗き見したようなドキドキ。


可愛い隆也君の姿にドキドキ。




でも、ぱらぱらめくっていくうちに気づく。




隆也君の写真のほとんど、
その背景は九条院家の庭だ。




木登りしている写真。

おうちの前の玄関先に座ってる写真。

花壇の横をお母さんに手を引かれてる隆也君。




(本当に九条院家で育ったって言ってもいいね)



さすがに住み込みで
3代だなと感心していたら、
1枚だけ、ちょっと違った写真があった。





「この写真・・・・?」




他の写真は、日中の庭での写真や
それか部屋の中での写真なのに、
その1枚は、なぜか夜の写真、
それも野外での写真だった。




「これは、隆也が9歳の誕生日の時の写真です」




え?



「ここは・・・・遊園地?」



隆也君の後ろに写ってるのは
電気で照らされてる観覧車。



でも、立っているところは、
遊園地の入り口かな?



なんか電気消えてて
営業終了って感じだよ?





切符売り場の前で
隆也君が一人立っていて
そして、手になにか握ってて
そのままカメラを見て笑ってる。




「これって、遊園地、閉まってませんか?」


あたしが指したのを見て、
隆也君のお母さんが苦笑した。



「この写真、本当はその日遊園地に行こうって言ってたのに、なかなか仕事が終わらなくて」



住み込みで働いている
隆也君のお父さんとお母さん。
たまたまその年は
隆也君の誕生日の5月12日が
日曜日だった。


いつも住み込みで働いてて
家族みんなで
休みになるってこともなかったけど、
その日は・・・・誕生日だったから、
すごく隆也君は楽しみにしていた。


それで隆也君が行きたがっていた
遊園地に、誕生日の日、
家族で行く予定だったとのこと。


それが、当日。


屋敷に急な客人が泊まりに来て
お父さんとお母さんが
屋敷での仕事に借り出され。
結局、隆也君のその年の誕生日は
家族で遊園地に行くことは出来なかった。


でも、ずっと楽しみにしていた
隆也君が、別に不満を
いうこともなかった。


それが余計に可哀想に想えて、
その日の夜、もう深夜になっていたけど、
隆也君を連れて、夜の遊園地に来た。


閉園後だったから、
中には入れなかったけど、
いちお記念にって
入り口の前で写した。





とのことだった。







「あの子は、そういう子なんです。昔から」



そうにっこり笑った
隆也君のお母さんの笑顔は
隆也君にやっぱり似てる。




「心が大きい子なんで、めったに怒ったりすることがないんですよ。マイペースで、駄々をこねたりせず、一生懸命で、一途ですごく気も長いし。」



確かに。


それは、あたしがよくわかる。



だって、あたしのすごいワガママも
隆也君は怒ることもなく
呆れることもなく、
諌めたり、無視することなく、
全て受け入れてくれて、
それを叶えてくれる。



隆也君は本当に心が広くて。
そして、自分のペースがあって
イライラで乱れたあたしに
ひきづられることはあんまりない。



たまにそのマイペースさが
嫌になることもあるけど
でも、本当に包んでくれる心の広さがある。




「この写真のときも、隆也は別に遊園地は来年でも、次にでも行けばいいって笑ってたんです」



写真の中の小さな隆也君は、
にっこりとこっちに向かって笑ってる。



隆也君のお母さんは、
そのときのことを思い出しているのか、
少し穏やかな顔をしてる。



多分・・・・隆也君のお母さんは、
隆也君がそう言った気持ちを
わかっていたんだろうな。



あたしは、もう一度写真を見る。




こっちを見て笑ってる隆也君。





でも、その笑顔は・・・・。



たまに隆也君が頑張りすぎて
ちょっと一生懸命すぎるときに
見せる笑顔に似てる気がした。



(きっと・・・遊園地に遊びたかったんだよね、家族で)



隆也君のことだから、
お父さんとお母さんの
仕事を理解してて、
ちゃんとお留守番
できるコだったと想う。



誕生日の約束を破られて
多分悲しかったはずなのに。
こうやって笑顔で笑って
写真に写ってる



隆也君が、小さいながらも、
今の隆也君と同じような
強さを持ってる気がして
あたしは、ちょっと微笑んだ。



そうだよね。
隆也君はこんな人だ。




隆也君は、自分の中の弱さとか
寂しさを見せないだけの
強さを持っている人。



だからこそ、
あたしは好きになった・・・・。





思わず胸が熱くなった。





あたしが微笑んだのを見て
隆也君のお母さんが、付け加えた。


「隆也は、実はこの日、私にプレゼントを準備してて・・・」


え?


「5月12日。そして日曜日、となれば、お分かりになられますか?」


え・・・・?
えっと・・・。
5月の日曜日・・・・って。



お母さんにプレゼント準備・・・・?





あ!


「もしかして、母の日ですか?」



その言葉に隆也君のお母さんが
にっこりと微笑んだ。


「その年の誕生日は、母の日と重なってて」


それで、その時に、
隆也が私にこの花をくれたんです。



カーネーションの花。
赤い花だ。



写真の中の隆也君は、
2輪ぐらい手に握っている。


なんかリボンみたいなのが
茎で結ばれてるけど、
セロファンなどはなくて、剥き出しだ。




これは隆也が初めて
自分が育てた花でした。

私たちの目を隠れて、
隆也はこの花を育ててて、
誕生日の日に、私にプレゼントして
驚かせようと想っていたみたいです。



庭師の家に生まれて、
隆也には、小さい頃から
屋敷の仕事を見せてきましたが、
隆也は木を植えたりするのは
好きだったけど、
なかなか花は
自分から植えようとは
しませんでした。



まあ、それよりもわんぱくで
木登りばかりして、
木を折っているような子でしたから。





そういって隆也君のお母さんは
くすっと笑った。




そのわんぱく坊主の隆也が、
初めて花を自分で植えて、
そして、その花を切って、
私へ母の日のプレゼントに
してくれたんです。


このことは、大事な思い出です。






そういって、隆也君のお母さんは
懐かしそうな瞳で、
アルバムの写真を指でなぞった。



写真の中の隆也君が
握っているカーネーションの花。


あんまり大きいわけじゃないし、
剥き出しで握っているので、
ちょっと茎が折れたようにも見えるけど・・・・。




(きっと、隆也君、お母さんに喜んでもらいたかったんだな)



隠れてプレゼントを
準備していたって
あたしと同じコトを
考えちゃうんだ、隆也君。



思わず、そのことで
あたしは、ひとり笑った。




こういう思考回路が似てるって、
悪くない。
むしろ、・・・・とても嬉しい。



(ちょっと、最近あたしの行動を疑ってるけど・・・)



あたしがサプライズで
誕生日祝いをする気持ちも
きっとわかってくれるはず。




「もしよかったら、この写真を貸してくれませんか?」






ちょっといいアイディアが浮かんだ。









・・・・・・・・・・・・












あたしは、隆也君のお家を出て
九条院家の母屋へ歩いていた。



ポケットの中には、
さっき、隆也君のお母さんから
貸してもらった写真が1枚。



隆也君の家を出る前に、
あたしは、ちょっと昼寝をするから、って
隆也君を休憩にさせた。


多分、遊戯室でくつろいでるか
自室で隆也君も昼寝してるはず。



あたしは、ちょっと考えたいことがあって
それで、庭の木が沢山植えられてる
一角に来て、そこにちょこんと座った。




ここは、月桂樹の木下で
かなり香りがいい。


昼間より夜のほうが
よく香るんだけどね。




誠吾君のお気に入りの場所と
教えてもらったことがある。



彼がいつも座っているように、
少し座りこなれた場所があるから、
あたしは、屋敷に背を向けて
そこに座った。



そして、ポケットから
写真を取り出す。




その写真は、
まだ小さい隆也君の写真。
夜の遊園地の前で
手にお花を握って
こっちを見て笑ってる写真。



隆也君のお母さんに話を聞いて。



写真を見ていて。






自然と心の中で
プレゼントは決まった。






隆也君がお母さんにあげた
カーネーションにしよう。
それも真っ赤なの。



で、プレゼントする場所は
もちろん、遊園地で。




この写真の年のリベンジじゃないけど。



多分、誕生日の日に遊園地に
行きたかったって想い出は、
隆也君の中であると思う。



それを叶えて
あげたいっていうか。




・・・・・すごく想像の中の世界なんだけど。




隆也君の誕生日を
2人、遊園地で過ごす。
プレゼントは、
あたしが育てたカーネーション。



うん、悪くない。



想い出の上書き、っていうか。
なんていうんだろう。




あたしが思うに、
隆也君はあの日、
すごく悲しかったってより、
多分「こんなものかな」って
諦めたんだと想う。




あの隆也君のことだから、
ものすごく泣いたりとか
そんなことはしなかったはず。




「まあ、こういうこともあるさ」と。



でも、手に握り締めたカーネーションは
その日、家族で遊園地にいけなかった
ちょっとだけ悔しさや
寂しさを表していると想うの。






だから・・・・。




5月12日をどう過ごすか。




あたしが隆也君に何かとても
喜んでもらえそうなこと。



隆也君にしてあげたいってことが決まった。






誕生日の日に
遊園地で笑って
想い出を作る。




それだけ。






「よし。」

人知れず、呟いた。






******夜の遊園地 その2 ******

その3はこちらから。




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