2017 10 / 09 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11 next month
スポンサーサイト  --/--/--  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 | スポンサー広告  | Page Top↑
〔夜語り〕第三夜『雨の日は隣にいて』のその3になります。

お話が長いので、分割しております。

1つの記事で読まれたい方は、
『雨の日は隣にいて』 こちらからどうぞ。


その1その2、 はこちらから。


以下、創作になります。
ご注意下さい。




↓↓↓↓↓

********* 雨の日は隣にいて その3 *******


















夏実?



夏実、どうかした?
大丈夫かい?





耳元で声がして、目を開ける。


目の前に慎一郎さんがいた。



ああ、そうか。
待っている間に
着いてたんだ。


多分、窓にもたれて眠っていた私を
樫原さんが気を使って
寝かせてくれたのかもしれない。




「遅くなってごめん。顔色がすごく悪いけれど・・・」
気分悪い?



すごく心配そうな顔をして、
慎一郎さんが私の顔を覗き込む。



「顔色が真っ青だ」
すぐに休めるように、と慎一郎さんが
樫原さんに連絡して、
近くの九条院グループ系列の
ホテルへ行くように
指示をするのが聞こえた。




「大丈夫よ」
そういって、少し微笑んでみる。



憂鬱さや、落ち込んだ気持ちは隠せないけど、
でも、あまりにも心配そうな慎一郎さんが
すぐ傍で寄り添ってくれてるのが申し訳なくて。




「大丈夫。ちょっと昔のことを思い出しただけだから」
だから、少し気分が悪くなっただけ。



「・・・どんなこと?」
心配そうに慎一郎さんが、私の顔を覗き込む。







なんか・・・・こんなことを話すのが
気が引けて、私は黙ってた。




そしたら、慎一郎さんが口を開いた。


「雨が降ってるからかい?」


「え?」


思わず、慎一郎さんの顔を見た。
真剣な眼差しで、
彼は私を見つめていた。



「・・・・夏実はいつもそうだ。雨が降ると、慌てて家に帰るけど、それだけじゃなくて、いつも、そういう顔をする」
気になっていたけど、ずっと訊けなかったんだ。




そう真剣な眼差しで伝えながら、
慎一郎さんが私の隣に座って、
手を握ってくれる。


その手が温かくて。



思わず、私は
慎一郎さんの肩にもたれかかった。



気分が悪いだけじゃなくて。
ただ温もりが欲しくて。


(・・・気づかれてたんだ、私が心の中で秘密にしていること)






この人にだったら、話せるかもしれない。













「・・・・・雨の日になると、すごく哀しくなるの」


「うん」


慎一郎さんが、
私の肩を少し抱きしめる。


私は目を閉じて、
少しつづ語りだした。



「亡くなった母は雨の日になると具合が悪くなったの。」



だから、雨が降らなければいいって、
小学生だった頃の私は雨の季節になったら
沢山の照る照る坊主を下げた。



「母が亡くなって・・・・火葬をした日もひどい雨だった」


その日、すごい雷が鳴っていて、
まだ小さかった妹が
癇癪をおこしたかのように
大声で泣いていた。



その日以来、雷がなると、
妹がとても怖がる。


だから、雨が降ると、
1人で怖がってるかもしれない妹を思って、
すぐに家に帰るの。


父が亡くなったのも、
雨の日だった。
雨の日にスリップして、
交通事故で死んだの。


だから、雨の日になると、
そんな思い出が沢山出てくる。


哀しくて、辛い想いがこみ上げてくるから。



雨が私の大事な人たちを
奪っていった気がするの。





ぽつりぽつり語る私の手をを
慎一郎さんは優しく包んで
話を聴いてくれた。





そして語り終わった私を、
ゆっくりと抱きしめた。




















「夏実、これまで辛かったんだね」


優しい言葉が、
不意に私に降ってくる。


「そんなに1人で抱え込まなくてもいいんだよ」
優しく微笑む。



「これからは僕が君の傍にいるから」



その慎一郎さんがとても優しすぎて
なんていったらいいかわからなかった。



慎一郎さんの優しさが、
すごく伝わってきて、
心を満たしてくれるのがわかる。



ずっと誰にもいえなくて、
誰にも見せれなかった、私の心の中。



仮面の下の、奥に眠っていた
本当のあたし。



本当はとても淋しくて、
悲しくて、誰かに頼りたくて。
ずっと、心の中では
雨が降っていた。













すぐには、多分、
こう思えないかもしれないけど・・・・。
雨の日は哀しいことだけではないよ。



そう、慎一郎さんが話し始めた。


え?



前置きをして、慎一郎さんが語る。
その瞳がとても真剣で、
そして、私をじっと見ている。







「僕と夏実が出会ったのも雨の日だ」


これからは、雨の日は
亡くなった両親のことじゃなくて、
僕とであった日の雨を思い出せばいい。



あの日、雨が降っていなければ、
僕らは出会うことがなかったんだよ。



そう。



雨が降っていなければ
夏実が急いで帰ろうとして
ヒールを折ることもなかっただろうし、
ヒールを片手に困っている夏実に
僕が傘を差すことも無かった。



一緒に車に乗っていて
渋滞で車が進まないのが
初めて嬉しく感じられたんだ。



もっと雨が降って、道が混めばいいと。



そしたら、もっと君と長い時間、
一緒にいられるから。



あの雨の日に、
夏実に出逢ったことが、
僕にとっては、僕にとっては
一生忘れられない思い出だ。



雨の日の想い出は
僕と一緒にいることで、
これから沢山いい思い出を作っていける。



僕は君を心から愛してる。



2人でいるうちに、
晴れの日もあるけど
雨の日もある。



いつも、僕は君の傍にいるよ。


君が雨の日の思い出に
苦しめられてるのなら、
その傍で手を握っている。



そして、楽しい雨の日の思い出を
僕と一緒に作っていこう。



そんな日々が続いていくうちに、
きっと、夏実が雨の日になって
とても哀しい想いをするのが、
減っていくはずだ。


きっと、いつか、雨の日でも
笑っていられるようになる。



一生、君の傍にいたいんだ。
君を守りたい。




君を幸せにしたい。



だから僕と結婚して欲しい。











私は、目から鱗のような、
慎一郎さんのプロポーズに驚きながらも、
その言葉1つ1つに胸を振るわせた。



慎一郎さんが
私の目を見つめて、優しく笑う。


その瞳を見つめていたら












その時。
不意にわかった。




なぜ、私がこの人に惹かれるのか。



何でも、心の中に抱えているものを
この人の前だったら
打ち明けることができるのか。





こうやって優しいからじゃない。
話を聴いてくれるからでも。
私のことを気に入ってくれるからでも。





この人、妹と同じ瞳をしてる。



誰かを愛したいって目。





ずっと不思議だった。
この人に見つめられると、
とても愛しい気持ちになるのが。



誰かを強く、「特別」な誰かを見つけて
その人だけを守って、愛していくことを
望んでいる人間の目。


そして、誰かの「特別」として
心から愛されたい人間の目。



この瞳は、私がいつも見つめ返す
妹の瞳とよく似ていた。



私と妹は違う。




妹は愛したい人間だけど、
私は愛されたい人間。



そして、慎一郎さんは、
誰かを愛したい人間だ。


妹と同じ・・・・。


強さを持った人間。



誰かを愛せる強さを持っている人。





(あなたは、自分の特別な人間に、私を選んだんだね)



だから、こんなに・・・・
全力で私のことを愛してくれる。



私は、この人とだったら、
沢山愛されて
きっと、幸せになれるだろう。



きっと、雨の日の悲しい思い出も
この人とだったら、乗り越えていける。


出逢ったあの日のように
私に傘を差してくれた慎一郎さんは
私のこれから一生も、
ずっと傍にいてくれて、
私を守ってくれるはず。













そう、確信した。








抱きしめられている腕から、
少しだけ頭を上げて、
慎一郎さんを見つめる。


「慎一郎さん」


「なんだい、夏実?」


「今の、プロポーズ?」


「そうだよ」


さっきまでの真剣な目線が
少しだけ緩んで、
いつもの優しい目に戻った。
愛しそうに私を見つめる。




私は初めて・・・
慎一郎さんの優しく、
私を見つめる視線を
同じように返すことができた。


今まで、好きな気持ちはあったけど
でも、どこか自分でセーブしていたから。


でももう、それは無しにしよう。


この人を愛していこう。


そう決めたから。





「九条院家に妹も一緒に連れてきてもいい?」


私のその言葉の意味に気がついた
慎一郎さんの顔に、ぱあっと
喜びが走るのがわかる。


「もちろんだよ」


だって、夏実のたった一人の妹なんだ。
僕にとっても大切な家族になるよ。




「嬉しい」




そう呟いた私の言葉は、
また抱きしめてきた
慎一郎さんの胸の中に消えた。










・・・・・・・・・・・・・・・




そう。


それから、すぐに慎一郎さんと婚約して、
入籍の日取りを決めたの。


迷いはなかったって?


あるわけないじゃない。


私が一度決めたことは
必ず実行するってことは
妹の****だったらよくわかってるでしょ?



だって、半年、ううん1年も
ずっと慎一郎さんのプロポーズを
保留にしていたのよ。




私の気持ちが決まった時点で
慎一郎さんがすぐに段取りを整えて、
九条院家に私と、*****が
引越しして来れるように手配をしてくれた。


その準備の手際の良さって言ったら
本当に早かった。



慎一郎さん、家族がいないから、
****のことも大事にしてくれるし。



本当にいい人と結婚したと思ってる。




不思議ね。


全然、結婚したい気持ちとか
なかったのに。
こんなにいい人に巡り会えた。





今?




雨の日は・・・・慎一郎さんが
できる限り傍に居てくれる。



雨が降っているときは、
必ず電話してくれるの。
1人で淋しがってないかって。


でも、あの日以来、
そんなに哀しくなくなったの。
ううん、哀しくないっていうのは嘘だけど、
だいぶ・・・・やりきれるようになってきた。


慎一郎さんが言ってくれた。
私たちが出逢った日も雨だったって。


雨だったからこそ、出逢えたって。


だから、雨の日は
前より哀しくない。


それに、*****だって変わったわよ。



前は雷が鳴るたびに、
私のベッドに来たくらいなのに、
今では、専属執事がついているものね。


中岡くんに話しておいたから。


****は雷をとても怖がるから、
雷の夜は傍についていてあげてねって。



前は私が傍に居たけど、
でも、今の****なら、雷の夜は
私より中岡くんの方が嬉しいでしょう?





ふふ、隠さなくてもいいのよ。



そんな慌てなくても。
全部わかってるんだから。






私が雨の日に一緒にいられる相手を
見つけたように、****も、
そういう相手に出会えて・・・・。





本当にすごく嬉しいわ。



そう、私が幸せなように
****にも幸せになってもらいたいのよ、
姉として心から望んでいるのよ。




多分・・・・。

私が慎一郎さんって、大事な人を見つけたように
*****にも、きっと大事な人が出来る。


もう見つけてるだろうけど。







誰かを好きになることは
怖いことじゃないわ。

沢山の幸せを産んでくれる。


それをおしえてくれたのは
慎一郎さんよ。



だから、****にもきっと
心から大事に思う相手がいつか出来るわ。




きっと。


ええ、きっと。



****なら、見つけられるわ。






だって、誰かを
好きになる強さを
持っているもの。











******* 雨の日は隣にいて*********






























◇あとがき◇



思いっきり想像して書きました。

いつも、夏実さんは立ち姿もなく
たまにセリフで出てくるだけ。
でも、主人公とはとても仲が良くて。
慎一郎とも、すごく愛し合ってます。

慎一郎が大好きなつぐみは、
その慎一郎の話を書きたくて。
それで、夏実さん視点で、
慎一郎について語ってもらいました。

もともと、ブログに遊びに来てくれてる
お友達からも、慎一郎の話が出て、
その時にも、ぜひとも夏実さんとの話を
書いてみたいと思ったのですが、
思わぬ形で、夜語りのお話として
出すことが出来ました。

書き始めたら、
すいすい書けました。


夏実さんって、どんな人だろう。
あたしが想像するに、
仕事がきっちり出来て
有能で、そしてそつがない人。
そして、妹も大事にしている。

そういうカンペキな女性が、
慎一郎と結婚するのは、
すごくよくわかるのですが、
でも、カンペキだからといって、
欠点がないわけじゃないし、
カンペキだからといって
恋に落ちるわけじゃない。

お互いに惹かれあうものがなければ。


このお話で出てくる慎一郎は
優しくて、そしてあたしの理想です。
包み込んでくれるような優しさ。
それを描きたかったです。

書きあがってみて、
静かな雨の後のようなひっそり感や
温かさが感じられるような
作品になったのではないかと思います。


誰かを好きになるということの怖さ。
大事な人を失ってしまう悲しさ。
それでも、誰かを愛したい、
愛されたいと想う気持ち。


ちょっと切ないお話かもしれませんが、
気に入ってくださるといいな。

ナイトメアの次の日なんで、
少し和んで欲しくて。
誕生日の今日、
心優しいお話をお聞かせいたしました。


25.APRIL.2009 つぐみ

 | 【執/恋】創作ー分割  | Page Top↑

Blog状況

最近の記事

カテゴリー

訪問者数

メールフォーム