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『4月の雨、夜語り』第3夜は
九条院慎一郎と夏実さんのお話
『雨の日は隣にいて』です。


ヒロインの姉の夏実さんの視点から、
九条院慎一郎に出会ったときのお話を
語ってもらいました。

ヒロインが九条院家に来ることに
なったところからはじまるプロローグ。

そもそも、九条院慎一郎と
姉の夏実さんが結婚しなければ、
ヒロインがお嬢様になることもなかったわけで。


慎一郎と夏実さんの出会いを、
あたし風に想像してみました。


お話が長いので、その1、その2と
分割しております。
1つの記事で読まれたい方は、
『雨の日は隣にいて』←こちらへ


以下、創作になります。
ご興味のある方のみ、お読み下さい。



↓↓↓↓
******* 雨の日は隣にいて *******






初対面の慎一郎さんの印象?


んー、そうだなぁ。


なんか、仕事はできるんだけど、
お金持ちのぼんぼん?(笑)
あ、でもすごく優しくて紳士だったわよ?



出会いを詳しく話して欲しいって。




何度もこれまで話してきたじゃない。






しょうがないなぁ。










その日。


出逢ったのは、
ちょうど今ぐらいの時期かな。


仕事が終わって。


雨が降ってきて、雷がなりそうだから、
いつもだったら走らないのに、
急いで帰ろうとしてた時に私のヒールが
道路の段差に引っかかって折れてしまったの。


ヒールの折れた靴でどうしようと思って
会社からちょっといったところで、
困っていたら、すっと差してくる傘があって。


「濡れますよ、大丈夫ですか?」


って慎一郎さんが立ってたの。


それが出会い。

え?


それからの話?




んー。

慎一郎さんは、綺麗に
まっすぐぴしっとしたスーツを着て、
にっこりと微笑んでたわ。




顔は知っていた。


だって私の会社の系列元の社長だもの。


でも、関わったことも、
仕事を一緒にしたこともなかった。
ただ遠くからみたことがあっただけ。



「だ、大丈夫です」




そう言って、傘を断ろうとしたら、
少し目を丸くして


「怪しいものじゃないですよ」


って、少し怪訝そうな顔をしたの。
断れたのが意外、って顔だったから、
私はそっちの方にびっくりしたわ。


「僕は九条院慎一郎です。あなたは、第一秘書課の***さんでしょう?」
困ってる様子だったので声をかけたんです。



思わず名前を呼ばれて驚いた。



「なぜ、私の名前を?」


あたしの質問に慎一郎さんは笑って答えた。


「秘書課の中でも、すごく有能な方がいらっしゃるということで、お名前とお顔はうかがっていましたので」

思わず、その言葉にどっきりとした。
まさか、そんな端の人間まで、
顔を知ってるなんて、という驚き。

そして、自分が有能だということを
他が評価しているということに。



「怪しい者じゃありませんし、それにこの状態では歩けないでしょう」


そう言って、慎一郎さんは
駐車場から出てこようとしていた車の
ドア近くに立っていた、
執事服をきた男性に向かって
車を回すように、と指示したの。



樫原さんね。



「外は激しい雨ですし、この靴だと・・・歩けないでしょう」
おうちはどちらですか?


にっこり笑ってたずねてくるんだけど、
でも、そんな初対面の人に、
いくらなんでも、会社関係で
顔は知っているとはいえ
あまりの展開にあたしは、びっくりしすぎて
言葉が出てこなかったの。



珍しかった。
だって、いつも「しっかりしている」っていうのが
他人からのあたしの定評だから。

仕事が出来て、同僚の倍量の仕事をこなし
そつない社交性。
そして、問題処理に関しても一流。
語学も一流。頭脳明晰。
それが、外にいるときの私の顔。
仮面のようなもの。



でも、なぜか、そのとき
仮面をすっと被ることが出来なくて、
思わず戸惑ってしまった。




傘を差されているとはいえ、
濡れた道路からはねる水しぶきで
靴は濡れてくるし、土砂降りだ。
本当にどうしようもなくなって。



「えっと・・・」


困っていると、慎一郎さんが
にこっと笑ったの。


「この靴だと帰宅が大変だ。お宅まで送りますよ」



そう言って、ゆっくりと手を伸ばして、
あたしの手を取ってくれた。


思わず、その手馴れた
エスコートにびっくりしたんだけど、
次の瞬間。


「だ、大丈夫です!」


と、あたしはその手を振り払った。


そしたら、慎一郎さんは
一瞬びっくりした顔をして、
くすっと笑った。


大丈夫じゃありませんよ?
外は激しい雨だし、第一
その靴で歩くなど危なくて仕方ありません。
僕の会社の方が、そんな危ない帰宅をするのを
見過ごすなんて、到底できませんから。
それに、女性が困ってるときは
助けるのが男ってものでしょう?



幸い車がありますから、
それに乗って自宅まで帰られたら、
濡れなくてすみます。
・・・急いでいた様子でしたし。




ちょっと困った顔をして、
そう言ってくる慎一郎さんを前に
あたしの脳内では、
ものすごい勢いで計算が始まってた。


こんな雷が鳴りそうな雨の中・・・・。
早く帰らなくちゃ!
でも、この靴では・・・・。


確かに危なくて、電車を使っても
自宅まで1時間あるのに・・・・。
途中で靴を買うにしても、
こんな雨の中・・・・。


思わず、少し考えてしまったあたしを
慎一郎さんが
じっと見つめてたのがわかった。
あたしの答えをじっと待っている。


ここで断るのは、
失礼かもしれない・・・・。


それも会社関係の、
それも、上司の上司にあたりもする。



あたしは、一瞬で色々考えた後、



「申し訳ありませんが、よかったら、自宅まで送ってくださいませんか?」


と慎一郎さんに言ったの。


そしたら、慎一郎さんが
少しびっくりしたような顔をしたけど、
次の瞬間、すごく嬉しそうに、
子どものように笑った。


あたしは、その笑顔が
ものすごく印象的だった。



こんな、子どものように
無邪気に笑う男の人、
初めてみたから。



それに。


あたしの言葉を、
あたしが了解してくれるのを
一生懸命じっと待っている様子が・・・・。


あたしが勝手に想像していた
“九条院慎一郎”とは違ったから。





そうして、あたしは
慎一郎さんの車に乗り
自宅に送られた。



それが、あたしと慎一郎さんの出会いだった。




雨の日にヒールが折れて
歩けなくなっていたのを助けてくれた。
自宅に送ってもらった。


ただ、それだけなはずだった。




・・・・・・・・・・・・・・




車の中で、慎一郎さんが
あたしにあれこれと聞いてきた。


自宅はどこなのか?から始まって
家族の話や、あたしの折れてしまった
ヒールの靴を褒めてくれたり。


どんな学校を卒業したのか、
どんな趣味があるのか。
どんなことが好きなのか、
仕事は気に入っているか。


何でも、あたしのことを知りたいのか
沢山の質問をしてきたけど、
不思議とそれは嫌じゃなかった。


今、ちょうど会社で進めている事業のことで
今日はたまたま会社に顔をだした、のだとか。
自分の話もよくしてくれた。


僕はドジだから、
専属執事の樫原がいないと
何もできないんだ、って。


初めて会った相手に対してなのに、
ものすごくオープンに話す人だなって思った。


雨で渋滞している街の中を
初めて話す相手と2時間近く
リムジンに乗っていた。


不思議と
緊張はしなかった。



ただ。

なんで、今日は急いで帰ろうとしていたの?
と聞かれて、思わず
いつもは聞かれても誤魔化すんだけど、
なぜか、慎一郎さんには素直に
妹が雷を怖がるから、と答えた。




私の家族は父母がすでに他界してて、
10歳年が離れた妹がいるんだけど
彼女が雷をすごく怖がるから、と。




それを聞いた慎一郎さんが
少し目を丸くしたあと、優しく
「妹さん思いなんですね」と言った。



妹思いか・・・・。



どうだろう。
たった一人の妹を庇護するのは、
ずっと私の役目だったから。


妹思い、という言葉だけでは
一言で表せない。


当然であり、
義務であると思っている。

義務、なんていう言葉は
ふさわしくないのかもしれないけど、
でも、私が働いて
この子を学校卒業させるまで、
がんばらなくちゃという、
親代わりの気持ちがあったことは確かよ。




だから、曖昧に笑って流した。





でも、雷がなりそうな雨の日に
すぐに自宅に帰らなくてはいけないのは
妹のためだけじゃない。




もう1つ。
早く自宅に帰る理由は言えなかった。




これは私だけの秘密だから。





リムジンの窓から覗く雨降る街は
沢山の人が黒い傘の下で
ただ下半身だけが動いているような
そんな膨らみが道を歩いているように感じられる。



それをじっと見つめていた。



車の中で静かな時間が流れる。
渋滞だから、と助手席に座った執事さんが
そう声をかけるのが聞こえた。



お時間は大丈夫ですか?
心配そうに慎一郎さんが訊いてくる。


妹の下校時間まで、まだもう少しあるし
今日は友達の家に行くと話してたから
多分遅くなっても大丈夫ですと答えた。


誰かと一緒にいれば、
妹の雷恐怖も、まだ治まりやすいから。



車の中にいても、
雨が激しく降り続いているのがわかる。
遠くで、雷がなっているような気がする。


稲妻がビルの合間からみえる
雲の中を、少しだけ光った気がした。




(こんな雨の日は・・・外にいたくない)



思わず憂鬱になってしまった私を、
慎一郎さんは何も言わず
微笑んで見つめていた。




・・・・・・・・・・



次の日、あたしは、
慎一郎さんに会社経由で
お礼の手紙を出した。


昨日は大変助かりました。
ありがとうございました。


ただ、それだけの
社交辞令のような文章。



そうしたら、すぐさま返事が来た。


渋滞に巻き込まれた車の中でも
一緒に話ができる相手がいて
とても楽しかった。
今度、ぜひ、あんなトラブルでなくても
話ができる機会が欲しい。
今度、昼食を誘ってもいいだろうか。



・・・・・私、本当に
社交辞令みたいなお礼しか
書いてないよね、と、思わず
自分が送った手紙のことを思い出した。


(なんだか、気に入られたみたい?)


びっくりした。


確かに話は弾んでいたけど、
でも途中から雨のせいで
憂鬱になってしまって、
最後の辺りとかは、
黙ったままだったけどな。



それに、慎一郎さんは
九条院グループの総帥で
跡継ぎで、本来だったら、こうやって
私と手紙のやりとりをするような時間は
ないと思うんだけど。



会社経由で届いた慎一郎さんからの
思わぬ返事で、私の部署は、
ちょっとした騒ぎになった。



どこで知り合ったの?
個人的に仲がいいの?
どんな人なの?



色んな質問が同僚から飛んでくる。



それが面倒くさくて。

会社では、仕事をバリバリこなすのが
好きだったから、他のことに
煩わされたくなかった。


私生活と社会生活は
きっちり分けていた。



ただ雨の日に車に乗せてもらって
(それも、予期せぬトラブルで)
別に彼と知り合いになりたかったわけじゃない。


思わぬ出来事に
私は少し戸惑っていた。



現在、恋人として付き合っているような
特別な相手はいない。


それどころか、恋愛をしたい、
という気持ちは、そこまで無かった。


今している仕事が楽しかったし
帰宅したならば、
笑顔で迎えてくれる
可愛い妹がいてくれるから。



順調な仕事、円満な家庭環境。
充分な収入、自分の趣味に費やされる余暇。



妹が二十歳になるまでは。
私が親代わりで、
この子の面倒をみなくてはいけない。


たった一人の妹だから。

たった一人の家族だから。


それだけで私の生活は満たされてた。




確かに・・・・
車の中に2時間も
渋滞で閉じ込められて
沢山話をした慎一郎さんは
・・・・好感が持てる人だった。


育ちの良さから来る鷹揚さや
穏やかそうで、優しそうな話しぶり。
かといって、しっかりし過ぎているわけじゃなくて
なんだか柔らかい感じ。



こんな男の人は、
今まで私の周りにはいなかった。


会話も洗練されていた。
どんな話題でも、きちんと押さえていて、
教養があって、知的ではあるけど、
それをこれ見よがしに匂わせたりはしない。



魅力的な人、だと思った。



いかにもモテそうな感じだけど、
仕事が忙しくて、
それどころじゃないのかしら。


話した感触は、すごく良い人で
周りの女の人が
放っておかないだろうってわかる。



昼食を共に、の真意がわからなかった。


自分から誘わなくても、
あの人だったら、
沢山声をかけられそうだから。




だから、昼食の誘いは、
今手がけている仕事で忙しいから
昼は出先が多くて、
予定がわからないのでと断った。









断ったけれども・・・・。




それから何度も
慎一郎さんから手紙が来た。


それも社内のメールからじゃなくて、
ちゃんと手紙として、紙で。



最初の1回を断ったあと。
一週間後にまた手紙が来た。


それもまた断った。
これで2回目。

でも、また次の週、手紙が来た。
3回目。



・・・考えたけど断った。


3回断ったから、
もう来ないだろうと思っていた。




でも、その数日後。


・・・・・会社経由であたしの
デスクに届けられる。
九条院のマークが押された白い封筒。


それも封筒だけじゃなくて、
何かしら小さなプレゼントもついてくる。


出張でどこそこへ行ったから、と
昼食の誘いだけじゃなくて、
慎一郎さんの近況報告までかかれてて、
本当にちょっとした文通になっていた。



ため息をついた。


なんかすごく、
気に入られちゃったみたいだけど・・・・。


でも、こうあからさまに、
同僚や上司にわかる形で
届くのは嫌だと思った。
もう同僚も冷やかすのをやめたのか、
意味深な目では見てくるけど、
訊いてはこなかった。



キャリアアップのために
御曹司に近付いた、なんて
そんな噂を立てられたくなかった。


ただ、私がずっと断り続けているのを
もったいない、と言っている人たちが
少なからずいるというのを
仲のいい同僚が教えてくれた。


本当にため息が出てきた。





雨の日に送ってもらってから
1ヶ月が経つ。




この1ヶ月の間に、
昼食を誘われたのが4回。



さすがに3回断れば
観念するかな、と思ったら
4回目が来て、
もうそろそろ断れないなと感じた。



一度逢うだけあって、
会社経由であれこれと送られると
困ります、と返事をしよう。



そう思って、
4回目の誘いをOKした。




・・・・・・・・・・・・・・・



その返事を書いた次の日。
すぐさま、会社のあたしのデスクに
慎一郎さんからのカードと
チョコレートが届いた。



カードには、
また逢えることになって嬉しい、
というメッセージと、
当日の時間が書かれてた。



チョコレートなんて・・・・恥ずかしい。
外国の男の人じゃないんだから、
こんなチョコレートなんて!


あまりにもストレートな行動に
私は少し当惑しながらも、
その迅速さに
思わず笑ってしまった。



(よほど、私と昼食がしたかったの?)


そこまで喜んでくれるとは
思っても無かった。


それにこうやってしてくれる男性に
今まであったことがなかった。


まあ、逢うだけ逢って、
一度逢えば、多分満足して、
こんな手紙攻撃が来ることは
ないだろうと思った。






******** 雨の日は隣にいて その1 *****




その2は、こちらから。
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