2017 09 / 08 last month≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫10 next month
スポンサーサイト  --/--/--  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 | スポンサー広告  | Page Top↑
企画「4月の雨、夜語り」の第一夜のお話、
『僕の好きな人』の分割分、その2になります。

1つの記事で読まれたい方は、
『ぼくの好きな人』←こちらまで


以下、創作になります。

******* ぼくの好きな人 (その2) *******

















「どうしたの、瞬?考えごと?」


はっと気づくと、
僕は思わず周りを見渡した。
ここは・・・空港だ。
一瞬で現実に引き戻される。




「お嬢様、すいません」



「ん?なんで謝るの?」



にっこり笑いながら、
お嬢様がパスポートを見せた。

少し首をかしげる仕草が
とても可愛い。



最近は、たまに、僕はお嬢様が
僕より年上だということを忘れて、
本当に可愛い人だな、と
見惚れてしまうことがある。


ひとりの女の子として・・・・見つめてしまう。


それに、身長が伸びた僕は、
自然とお嬢様を少し見下ろすようになる。


僕よりも20cmも
背が低くて華奢なお嬢様。


出会った頃は視線が同じ高さだったのが
今はこうやって少し上からなのが
なんだか寂しいと思う。


お嬢様の目をまっすぐに
見つめられないからだ。


少し上の方から
お嬢様の目を覗く。


お嬢様が僕を見るときに
ちょっとだけ顔を上げる仕草が
いつも、とても可愛いと思う。



「ほら、早く行こう。ウォルフさん、待っているよ、きっと」



そう、僕とお嬢様は、
今ドイツへ入国したばかりだ。


しばらく前まで、
九条院家に滞在していた客人、
ウォルフ様に招かれて、ドイツに来た。



ウォルフ様のことを思い出す。


ウォルフ様は、お嬢様の写真に恋をして
それでわざわざ日本まで
お嬢様に逢いに来られた
とても情熱的な方だ。


僕を「小さなナイト」と呼んだ彼。
僕がお嬢様に
心を寄せていることを知っている。


そして、僕もウォルフ様がお嬢様に
ひたむきで一途な恋心を
抱いていることも知ってる。


もっとも、ウォルフ様の愛は堂々としてて
日本に滞在している間は、朝昼晩問わず、
お嬢様に愛の言葉を送っていた。

お嬢様は軽く受け流していたけれども。





(お互い姫に苦しい恋心を寄せる同士だね、瞬君)



そう笑いながら、綺麗な日本語で喋った
ウォルフ様を想いだす。


(もっとも、私は姫のことを運命の相手と想っているから、いつかは姫をさらうよ)


派手にウインクをしたことも。


(姫の御心を我に与えられるのならば、私は姫を永遠に愛し、守りとおすことを誓おう)



(それは、小さなナイトくんも同じような心境ではないのかい?)



(だから、このように必死に学んでいるのだろう?)




ウォルフ様は僕を理解してくれる人だった。


彼の僕への問いかけが、
いまだに忘れられない。



執事としての仕事を、
沢山の知識を身につけようと、
毎日頑張っていたときに
ウォルフ様からかけられた言葉だ。



そう、僕は今でも
お嬢様のことを諦めてはいない。


一度も、この思いを断とうと
思ったことはない。




「?どうしたの瞬?」



「なんでもありません」


僕はにっこり笑った。


お嬢様と一緒にいると、
僕はよく弟扱いのようにされる。
それが・・・・
最初は気にならなかったけど、
最近は少し気になる。




だって、僕も1人の男だからだ。



でも・・・・弟扱いでも、
お嬢様の一番傍にいられて、
そしてこんな風に笑いあっていられるなら、
それでもいいと思う。


どんな形であれ、
お嬢様の一番傍にいたいと
望んでいるのは、この僕なのだから。




「さあ、早く行きましょう」
「ウォルフさんに会うの、懐かしいわね」



空港の出口方向を見つけて
お嬢様がくすりと笑う。


多分、ウォルフ様のことだから、
盛大な迎えをってことで、
出口付近で派手に待っているだろう。


そう、ウォルフ様なら、
両手一杯の薔薇でも抱えてでも
お嬢様を熱烈に歓迎するだろう。


まだ見えない空港の出口。


初めて、2人で海外旅行だ。
それが例えウォルフ様の
屋敷からの招待だとしても、
こうやって2人で海外へ行くことができる。



「瞬、今、何想像した?」


少し遠くにある出口を見つめている僕に
にやって笑ってお嬢様が訊く。



「ウォルフ様が多分・・・盛大な歓迎を空港出口でしてくれるだろうってことです」


その先で相変わらずな
ウォルフ様がいるという確信で
僕とお嬢様は目を合わせて、くすくす笑う。



「さあ行きましょう、あたしの小さなナイトくん?」



横目でお嬢様がそう言いながら
歩き出した。





小さなナイト。


久しぶりに聞いた言葉だ。
その名称は、ウォルフ様が僕につけてくださった。



「・・・覚えていらっしゃったんですね」


まだ少年だった僕が
執事として、1人の男として
一生懸命にお嬢様を守ろうとしている姿を
ウォルフ様は、そう表現した。


「ええ、そうよ。忘れないわ」


当然じゃないの、って笑みで
お嬢様が僕を見返す。
その瞳が柔らかく笑っていることに
僕の瞳は釘付けだ。


「だって、あたしの大事な執事さんにそう言ったのよ?」


ふんわり笑いながらそう言う。
まるで、春の風に吹かれる野の花が
優しく揺れたように。


その笑顔に見惚れる。


もう、何回でも。
毎日でも見ている笑顔なのに。

それでも、毎回毎回
僕はこの笑顔が見たいと願う。



「・・・・でも、もう、小さな、っていう部分は要らないわね」


ちょっと考える仕草をして、
お嬢様が立ち止まった。

そして、じっと僕の方を見つめる。


「3年前に出逢った頃と、だいぶ違うもの、瞬って」


「そうですか、お嬢様?」


思わず、僕が成長しているのを
お嬢様が気づいているんだと、
嬉しくてにっこりした。

「ええ。だいぶ変ったわ。前はもっと頼りなかったのに・・・」


そう言って、少し切ったあと、
しっかりとお嬢様が
僕に向かって言った。


そして、上から下まで僕を見た後、
少し首をかしげて笑った。


「瞬は、あたしの立派なナイトよ」
小さな、は、もういらないね。

「いつもあたしの一番傍にいてくれる」


その言葉に、僕の胸はどきんっとする。


僕がナイトなら、
貴女はプリンセスだ。


ナイトがプリンセスに
忠誠の愛だけではなく
その身体も心も、命すら、全てを捧げ
誓いを一生遂行することを
お嬢様はわかってるのだろうか。



そしてプリンセスはナイトに・・・・




そして、久しぶりに
顔が真っ赤になるのが
自分でもわかる。


恥ずかしくて赤くなるっていうのは、
僕の小さい頃からのクセだ。


すぐに赤くなる。
恥ずかしいときも、嬉しいときも。


子どものようだ、と自分でも思う。



だから、この3年の間、
もう年下で頼りないって思われないようにと
できるだけ、こうやって赤面しないように
少し気をつけてきた。


でも、今、お嬢様の言葉で、
思わず僕は頬が赤くなるのを
止められなかった。



そんな、赤くなった僕の頬に
お嬢様の手のひらが触れる。



少し手のひらが冷たい。



え・・・?



びっくりして、お嬢様をみると、
優しく微笑んでいた。

「瞬がいてくれて、あたし、いつも守られてるって思うもの」
ありがとうね、瞬。


少し恥ずかしそうに
囁くお嬢様の声の1音1音。
その音と、自分の心臓の音の
音が重なる。



僕はお嬢様に見惚れてしまった。


僕より背が低くて、華奢で。
そして・・・・抱きしめたくなる。


本当は、今すぐにでも。


思わず伸ばしてしまいそうになる腕を
僕は必死で我慢する。



「それにしても、ほんと、ウォルフさんびっくりするはず」
「だって、瞬、すごく見た目が変ったもの」


そんな僕の我慢にも気がつかず、
お嬢様は歌うように楽しそうに話す。



「なんか背も伸びたし、顔も3年前始めてあったときみたいなお人形さんみたいな顔じゃなくて、もっと、なんか、男っぽくなった」



小さい子どもの頬を包むかのように
この人は僕の両頬を包んで
にっこり笑う。



今の僕は、もう出会った頃のように
少年ではないのに。


時は移って、僕はもう少年ではないのに。
彼女の中では、まだ僕は“少年”だ。


無防備に笑いかけてくる
親しみにあふれて、温かい笑顔。


その笑顔は罪だと思いながらも、
そこを好きになった僕は
それさえ、全て許してしまえる。


「ウォルフさんが男性でも美しいように、瞬もすごく美形よ」

「あたしのお友達で、瞬があたしの大学に付いてくるのを楽しみにしている子もいるんだから」



僕が相槌を打たなくなったのさえ
気づかぬように、お嬢様は
1人で楽しそうに話し続ける。


「瞬は自分がとても素敵な男性になったってことをもっと自覚した方がいいわ」



そして、いきなり振り向いた。

悪戯っ子のように瞳が輝く。
こういう表情をしているときのお嬢様は
とても機嫌がいい。


「ああ、でも、瞬は恋人を作るの、禁止よ?」


にっこりと笑う、その笑顔は、
いつだって僕を虜にする。


僕がナイトなら、
僕の恋人は、一生涯、
プリンセスである
貴女しか、いない。
僕の一生は貴女のものだ。



「だって、瞬はあたしの傍にいつもいなくちゃ」


3年前に告白したときの、
僕の気持ちは「好き」だった。



でも、今の僕の気持ちは
「愛してる」。





そのことに、
いつか、お嬢様は
気づいてくれるだろうか。


今の僕はもう子どもではなくて
本当に、1人の男として
お嬢様の傍にいるということに。




「毎日瞬の入れてくれる美味しいコーヒーに、それにお話の相手、それがあたしのお嬢様生活をどんなに楽しくさせてるかわかる?」



僕は毎日お嬢様への愛を、
想いを託す。


彼女が飲むコーヒーや紅茶に。


僕からの愛を伝えてと。


それがお嬢様に届くのは
いつだろうか。



「だから、瞬はずっとあたしの傍にいるの、わかった?」


お嬢様が僕にだけにする束縛。
執事だから、じゃなくて、
僕の人生そのものも
束縛して欲しいと望んでいる。


お嬢様が僕に望むのなら、
僕はお嬢様が死ぬまで
傍にいたい。


傍にいて、
お嬢様の笑顔を守りたい。
そう、お嬢様の幸せを
この手で守りたい。


「瞬がいるだけで、あたしの生活はすごく幸せだもの」


そう言ってにっこりお嬢様が笑った。


僕は・・・、はからずしも、
傍にいることで、お嬢様を幸せにしている。


これが一番の僕の望みだった。


その一番の望みが叶えられているのに、
ワガママだとわかりながらも、
僕は願ってしまう、
自分の恋心を止めることが出来ない。



もっともっと、僕はお願いごとを
してもいいのだろうか。





―――いつか、この気持ちをまた
お嬢様に伝えることができたら、いい。



そう、その日がまた来たのなら。


僕はためらわずに
お嬢様に伝えよう。



僕の全てを賭けて。




一言だけでいい。


これまでの気持ちを込めて。


ずっと傍に居たいという気持ちよりも
もっともっと、僕を支配する言葉。


ただ、僕の心から
溢れ出るほどに
募っている、この気持ちを。




「あなたを愛してます」



僕の大好きな人よ。



いつか、僕に気がついて。



そして、僕に愛を囁かせて欲しい。





その日が来るまで。




そう、その日が来るまで。
















*********** 僕の好きな人 ************































◇あとがき◇



古手川瞬とヒロインの3年後のお話でした。

初めて書きました、瞬のお話。
執事エンドで終わったことを
前提に書いてます。



3年前の、執事エンドで
瞬の告白を断ったあとの2人の関係。
瞬の気持ち。


こうなって欲しいなという想いを
込めて書きました。



企画「4月の雨、夜語り」でないと、
このお話は生まれてきませんでした。


執恋のオールキャラでの夢を書こうという
目標があったからこそ、書きました。



書いてみて思ったこと。


最初に瞬を書くと決めたときに
すぐに浮かんできたのが
タイトルの「僕の好きな人」でした。
もう、タイトルからして片思いですよね(笑)


出来れば、3年後まで時間軸を飛ばさずに
書けたらいいなと思っていたのですが、
15歳の瞬より、もう少し大人になった
瞬のラブストーリーが書きたくて。


3年の間に、少年だった瞬は
1人の男に成長すると思います。
そうなった時には、
きっと年上・年下だった
瞬とヒロインの関係が
微妙に変るんじゃないかと思って。



書きあがってみて、
意外と優しくて、甘くて、
そして少し切ないお話に
仕上がったと思ってます。


瞬のひたむきさ、
そのまっすぐで優しい心とかが
あたしは好きでした。


瞬の告白はレポで全文取ってあって
今回、これを書くにあたって、
それを参考にしました。




誰かを思う気持ちは、
とても温かいもので
でも、それをひとりで
抱えていても寂しいだけな気がする。



告白のときに、
瞬はこう言っていました。



あたしは、瞬の告白が好きです。


プレイ中はそこまで、だったんですが、
14日目の告白のときの言葉が
柔らかいんだけどストレートで
温かさが伝わってきて。


だから、瞬には少しだけ
特別な想いを抱いてます。


多分、時間がたって、
瞬がもっと成長して、
1人の男として、ヒロインと
あまり年の差を感じさせないくらい
お互いが成長したら、
ぜひとも恋人になって欲しい。
そう思ってます。



未来に繋がる話を書きたかった。


きっと、きっと、
瞬の恋が実ることを祈って。




23.April.2009 つぐみ

 | 【執/恋】創作ー分割  | Page Top↑

Blog状況

最近の記事

カテゴリー

訪問者数

メールフォーム