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『4月の雨、夜語り』1日目の夜です。

ご参加くださってる皆様、
本当にありがとうございます。

今日から1週間、
夜語りと称して、
少しばかり、色々な恋のお話を
お聴かせしたいと思います。


1日目の夜語りは、
古手川瞬のお話です。


アプリの中では一番年下の15歳の彼。


執事エンドを迎えたという設定の下。


時間軸を3年飛ばして、
3年後の古手川瞬と
ヒロインを描きました。


あたしが考えてる3年後の瞬。


きっとウォルフのように
かっこいい男になってると思います。



少し切ないお話かもしれません。
瞬のもつ、温かさや純粋さが
伝わるといいな。



携帯からで途中で切れてしまわれる方は
分割も作っています。
(その1)(その2) から、どうぞ。



以下、創作になりますのでご注意下さい。
どうぞ、ご興味のある方はお読み下さい。
↓↓↓↓








******* 僕の好きな人 ******



僕は、九条院家で
お嬢様の専属執事をしている。
専属になってから3年。


お嬢様がこの九条院家に
いらっしゃったのが17歳のころ。
僕はまだ15歳だった。




執事に憧れて九条院家にきて、
まず雑用係として、
フットマンをしていた頃。



旦那様が結婚されて、
奥様と、その妹である
お嬢様が九条院家へいらっしゃった。


2歳年上のお嬢様は、
とても気さくな方で
九条院家で同じ年頃の僕ら、
隆也さんに誠吾さん、そして僕とは
敬語もなく、楽しく話をしてくれる方だった。


まだ九条院家に着たばかりで新人な僕は
しょっちゅうドジをして、
隆也さんに注意されたり
誠吾さんとつるんで遊んだり。


そんな時、いきなり執事長である
樫原さんからお嬢様の専属執事に、
とお話があった。


お嬢様が指名してくださった。


まさかこんなに早く執事になれるなんて
思ってもなかった僕は、とても嬉しかった。




お嬢様は僕の夢を叶えてくれた。



そして、まだ何もわからないまま、
僕は執事になった。









幼い頃、僕に優しくしてくれた執事さんの姿が
ずっと僕の中にあって、ああなりたいと
思い描いていた。


その夢に近づけたと喜んだ僕は
一生懸命だった。


褒められることもあれば、
沢山の失敗もした。



僕の欠点は、すぐに興奮気味に
話を大きくして、自分の力量を超えたことを
やり遂げようと張り切るところだと思う。


そんな僕だから、
専属執事になりたての頃は、
お嬢様にいっぱい迷惑をかけた。


フットマンだった頃のように
言われる命令しかこなさずに
自分の頭で考えて行動することが
できなかった僕の失敗を
樫原さんや中岡さんが教えてくれた。



でも、その度にお嬢様は僕を叱るのではなく
苦笑しながら許してくれる。



時には、浮かれて現実をみていない僕を
叱咤激励することもあった。


この人のためにも、
僕は立派な執事になりたいと思った。







その気持ちが、次第に・・・。









僕はお嬢様に惹かれていった。





お嬢様を幸せにしたいと思った。



最初は執事として。



でも、よくよく思い返せば、
それは、1人の男として
お嬢様を大事にしたかったから。




初めての執事としての大仕事で
ウォルフ様と山科様を迎えての
お茶会が終わったあと、
僕は自分の中にあるお嬢様への気持ちを
まっすぐに伝えた。




好きだと思ったからには、
伝えなくてはいけないと思ったから。





しかし、お嬢様の返事は、
僕の気持ちが重い、とのことだった。













・・・・・・・・・・・・・・・







あれから3年。
季節が流れた。



あの告白後も、
僕はお嬢様の専属として
傍に置かせてもらっている。



今振り返るなら、あの頃の僕は
まだ子どもで、あの時必死だった告白も、
僕が入れたカプチーノを、
お嬢様が喜んでくれたら言おう、
なんて、自分の中での
小さな賭けをした結果だった。



気持ちを重い、と断られて。



最初は少し落ち込んだけど、
でも、気持ちを伝えたかったのは僕の方で
それをお嬢様が
どう捉えてもしょうがないと思った。


それに、伝えることに意味があった。
僕は自分にそう繰り返した。





それに、執事として傍にいられるだけで
幸せだと思ってる。
これ以上の幸せを求めるのは
ワガママだという気持ちも・・・あったから。



僕はお嬢様のことを幸せにしたいと思ってる。


その気持ちは今も変らない。



その「幸せ」の形がどうであれ、
僕はお嬢様に笑っていてもらいたいんだ。


お嬢様が幸せであるなら。
その幸せを必ずしも
「僕が1人の男として」作らなくても。




僕はお嬢様の傍にいられるだけで幸せだ。


だから、お嬢様が
いつも笑っていられるように。
お嬢様が幸せであるように、
僕も頑張ろうと、思った。




だからまずは、
きちんとした一人前の執事になること。








執事になった時点で、
僕が一人前にできることは、
ただ2つだけ。


美味しい珈琲をいれること。


あともう一つは、色んな雑学を
よく覚えられること。



お嬢様が恥じない執事になりたい。
いつか、お嬢様が自慢に思うような
立派な執事になりたい。


そして・・・・、お嬢様に似合うような
1人の男になりたい。




この想いと、お嬢様の傍に居られる幸せが
僕を支えた。






沢山のことを一生懸命学んだ。
尊敬する執事長の樫原さんに
面倒を見てもらいながら。




コーヒーだけでなく
紅茶も美味しくいれられるように
真壁さんにも。


真壁さんは、執事としての
色々な雑学もおしえてくれた。


中岡さんは、僕に仕事全般を
おしえてくれた。
順序良く仕事をこなすこと。
きちんとお嬢様の
スケジュール管理をすること。
臨機応変にお嬢様にあわせること。




対外的な処理も、中岡さんは教えてくれた。




3人の先輩執事に囲まれて、
僕はとても幸運だったと思う。






この3年の間で、僕はだいぶ変わった。
執事として・・・・それなりに一人前に
仕事をこなせるようになった、と
樫原さんからも褒められた。



真壁さんは相変わらずだけど、
中岡さんは、僕がこの3年の間で
だいぶ成長した、と笑ってくれる。




いつの間にか、兄貴分だった隆也さん以上に
中岡さんが僕の面倒を見てくれていた。


仕事が終わってからは
隆也さんや誠吾さんと一緒に
つるんでいることが多いけれど、
執事の仕事をしている間は、
10歳も年が上の中岡さんが
僕の兄貴分みたいなものだった。






この3年の間に・・・・。


変らないこともあったけど、
変ったことも沢山あった。






まず身長が伸びた。



一番のチビだった僕は
17歳になった途端に、15cm背が伸びた。
165センチだった僕は180cmに。



誠吾さんも、隆也さんを追い越し
ひょろっと身長が伸びた僕は
最初バランスが取れなかったけれども、
隆也さんの勧めで、筋トレを始めた。


少しづつウエイトが増えていって、
15の頃より10kg増えて、60kgになった。


180cmに60kg。


屋敷の中でも背は高い方だ。





もともと色素が薄くて
茶色っぽかった髪の毛は
だんだんとレッドブラウンから
ライトブラウンに変わった。


顔立ちも少し洋風、と
言われていたけれど
この3年でだいぶ精悍になったといわれる。



日本人離れしている、
と言われる顔立ちは
西洋の血を引いていたという
見たことがない祖父の血が
僕に出てきたのだろう。



「人形のような可愛い男の子」、
と言われてた僕は
この3年のうちに、
だいぶ男らしくなった。



もう「可愛い」「男の子」とは言われない。






たまに鏡で自分の顔を見て、
3年前の僕から、ずっと成長して、
どことなく、不思議な気がする。





でも、この3年で変わったのは
僕だけじゃない。





お嬢様は、とても綺麗な女性になられた。



僕たちが出会ったのが3年前。



僕は出会った頃のお嬢様の年を越したように
お嬢様は20歳になられた。



17歳だったお嬢様は、まだあの頃は
やんちゃで明るくて元気な感じだったのが
この3年の間に、しっとりとした
大人の女性に変わられた。




前みたいに大きく口を開けて笑うことは
少なくなったけど、
何かの拍子で、笑うときの
お嬢様の笑顔がとても艶やかで
そして、その笑った眼元がすっきりしてて・・・・
僕はその傍で、見惚れてしまう。



僕も3年の間で
だいぶ変わったけど
お嬢様も変身された。



お互いに成長したんだと感じる。



でも、お嬢様にとって僕は
相変わらず年下の男の子だ。



それも、「小さな男の子」。




変わったものは外見だけで、
僕とお嬢様の関係は
3年前から変わらない。



お嬢様は僕を「瞬」と呼び、
僕はお嬢様を「*****お嬢様」と呼ぶ。



お嬢様は僕のことを弟扱いする。
一番の話し相手のように、
お嬢様は僕に色々とお喋りをする。



僕はお嬢様の話を沢山聴く。


聴きながら、お嬢様の気持ちを
もっともっとわかりたいと思う。



お嬢様のことを一番知っているのは
僕でいたいから。



お嬢様は僕の前では、
とても気楽に振る舞い
そして、気を許してくれる。




そんな姿を見るたびに、
僕の心は3年前の、あの日に戻る。






・・・・たまに思うことがある。







僕が、今―――。



今の僕がお嬢様に
この気持ちを伝えたらどうなんだろう、と。


3年前、気持ちを伝えたのが、
この3年後の僕だったら、
お嬢様はどう答えただろうか、と。



3年前の僕の気持ちは、
お嬢様には「重かった」。


確かに3年前の僕は無鉄砲で、
そして、ただ、自分の気持ちを
お嬢様に押し付けるだけだった。


そして、その気持ちは
まだ子どもだった僕が自分の中に
とどめて置けないから、
だからお嬢様に一緒に持ってもらおうと
告げたものだったと、今では感じている。


だから、お嬢様の「重い」は正しかった。




でも、この3年の間に僕は・・・・



少なくても成長した。



自分自身の気持ちを
自分の心で持てるほど。




気持ちを隠せるほど。




でも、いくら隠しても、
あふれ出す想いがある。


一人の男として、
お嬢様のことを守りたい。



ご主人様というだけではなく、
ひとりの女の子、いや、女性として
お嬢様を守りたい。


いつも、そう思ってる。



いつか、この気持ちをまた
お嬢様に伝える日が来るだろうか。





僕の好きな人。





僕の、大好きな人。




僕が、心から愛する人。






いつも心の中にいて、
僕を温かい気持ちにさせてくれる存在。


可愛くて、強くて、そして温かい。




傍にいるだけで、
お嬢様のもつ、そういう優しさが
僕に伝わってくる。






















「どうしたの、瞬?考えごと?」


はっと気づくと、
僕は思わず周りを見渡した。
ここは・・・空港だ。
一瞬で現実に引き戻される。




「お嬢様、すいません」



「ん?なんで謝るの?」



にっこり笑いながら、
お嬢様がパスポートを見せた。

少し首をかしげる仕草が
とても可愛い。



最近は、たまに、僕はお嬢様が
僕より年上だということを忘れて、
本当に可愛い人だな、と
見惚れてしまうことがある。


ひとりの女の子として・・・・見つめてしまう。


それに、身長が伸びた僕は、
自然とお嬢様を少し見下ろすようになる。


僕よりも20cmも
背が低くて華奢なお嬢様。


出会った頃は視線が同じ高さだったのが
今はこうやって少し上からなのが
なんだか寂しいと思う。


お嬢様の目をまっすぐに
見つめられないからだ。


少し上の方から
お嬢様の目を覗く。


お嬢様が僕を見るときに
ちょっとだけ顔を上げる仕草が
いつも、とても可愛いと思う。



「ほら、早く行こう。ウォルフさん、待っているよ、きっと」



そう、僕とお嬢様は、
今ドイツへ入国したばかりだ。


しばらく前まで、
九条院家に滞在していた客人、
ウォルフ様に招かれて、ドイツに来た。



ウォルフ様のことを思い出す。


ウォルフ様は、お嬢様の写真に恋をして
それでわざわざ日本まで
お嬢様に逢いに来られた
とても情熱的な方だ。


僕を「小さなナイト」と呼んだ彼。
僕がお嬢様に
心を寄せていることを知っている。


そして、僕もウォルフ様がお嬢様に
ひたむきで一途な恋心を
抱いていることも知ってる。


もっとも、ウォルフ様の愛は堂々としてて
日本に滞在している間は、朝昼晩問わず、
お嬢様に愛の言葉を送っていた。

お嬢様は軽く受け流していたけれども。





(お互い姫に苦しい恋心を寄せる同士だね、瞬君)



そう笑いながら、綺麗な日本語で喋った
ウォルフ様を想いだす。


(もっとも、私は姫のことを運命の相手と想っているから、いつかは姫をさらうよ)


派手にウインクをしたことも。


(姫の御心を我に与えられるのならば、私は姫を永遠に愛し、守りとおすことを誓おう)



(それは、小さなナイトくんも同じような心境ではないのかい?)



(だから、このように必死に学んでいるのだろう?)




ウォルフ様は僕を理解してくれる人だった。


彼の僕への問いかけが、
いまだに忘れられない。



執事としての仕事を、
沢山の知識を身につけようと、
毎日頑張っていたときに
ウォルフ様からかけられた言葉だ。



そう、僕は今でも
お嬢様のことを諦めてはいない。


一度も、この思いを断とうと
思ったことはない。




「?どうしたの瞬?」



「なんでもありません」


僕はにっこり笑った。


お嬢様と一緒にいると、
僕はよく弟扱いのようにされる。
それが・・・・
最初は気にならなかったけど、
最近は少し気になる。




だって、僕も1人の男だからだ。



でも・・・・弟扱いでも、
お嬢様の一番傍にいられて、
そしてこんな風に笑いあっていられるなら、
それでもいいと思う。


どんな形であれ、
お嬢様の一番傍にいたいと
望んでいるのは、この僕なのだから。




「さあ、早く行きましょう」
「ウォルフさんに会うの、懐かしいわね」



空港の出口方向を見つけて
お嬢様がくすりと笑う。


多分、ウォルフ様のことだから、
盛大な迎えをってことで、
出口付近で派手に待っているだろう。


そう、ウォルフ様なら、
両手一杯の薔薇でも抱えてでも
お嬢様を熱烈に歓迎するだろう。


まだ見えない空港の出口。


初めて、2人で海外旅行だ。
それが例えウォルフ様の
屋敷からの招待だとしても、
こうやって2人で海外へ行くことができる。



「瞬、今、何想像した?」


少し遠くにある出口を見つめている僕に
にやって笑ってお嬢様が訊く。



「ウォルフ様が多分・・・盛大な歓迎を空港出口でしてくれるだろうってことです」


その先で相変わらずな
ウォルフ様がいるという確信で
僕とお嬢様は目を合わせて、くすくす笑う。



「さあ行きましょう、あたしの小さなナイトくん?」



横目でお嬢様がそう言いながら
歩き出した。





小さなナイト。


久しぶりに聞いた言葉だ。
その名称は、ウォルフ様が僕につけてくださった。



「・・・覚えていらっしゃったんですね」


まだ少年だった僕が
執事として、1人の男として
一生懸命にお嬢様を守ろうとしている姿を
ウォルフ様は、そう表現した。


「ええ、そうよ。忘れないわ」


当然じゃないの、って笑みで
お嬢様が僕を見返す。
その瞳が柔らかく笑っていることに
僕の瞳は釘付けだ。


「だって、あたしの大事な執事さんにそう言ったのよ?」


ふんわり笑いながらそう言う。
まるで、春の風に吹かれる野の花が
優しく揺れたように。


その笑顔に見惚れる。


もう、何回でも。
毎日でも見ている笑顔なのに。

それでも、毎回毎回
僕はこの笑顔が見たいと願う。



「・・・・でも、もう、小さな、っていう部分は要らないわね」


ちょっと考える仕草をして、
お嬢様が立ち止まった。

そして、じっと僕の方を見つめる。


「3年前に出逢った頃と、だいぶ違うもの、瞬って」


「そうですか、お嬢様?」


思わず、僕が成長しているのを
お嬢様が気づいているんだと、
嬉しくてにっこりした。

「ええ。だいぶ変ったわ。前はもっと頼りなかったのに・・・」


そう言って、少し切ったあと、
しっかりとお嬢様が
僕に向かって言った。


そして、上から下まで僕を見た後、
少し首をかしげて笑った。


「瞬は、あたしの立派なナイトよ」
小さな、は、もういらないね。

「いつもあたしの一番傍にいてくれる」


その言葉に、僕の胸はどきんっとする。


僕がナイトなら、
貴女はプリンセスだ。


ナイトがプリンセスに
忠誠の愛だけではなく
その身体も心も、命すら、全てを捧げ
誓いを一生遂行することを
お嬢様はわかってるのだろうか。



そしてプリンセスはナイトに・・・・




そして、久しぶりに
顔が真っ赤になるのが
自分でもわかる。


恥ずかしくて赤くなるっていうのは、
僕の小さい頃からのクセだ。


すぐに赤くなる。
恥ずかしいときも、嬉しいときも。


子どものようだ、と自分でも思う。



だから、この3年の間、
もう年下で頼りないって思われないようにと
できるだけ、こうやって赤面しないように
少し気をつけてきた。


でも、今、お嬢様の言葉で、
思わず僕は頬が赤くなるのを
止められなかった。



そんな、赤くなった僕の頬に
お嬢様の手のひらが触れる。



少し手のひらが冷たい。



え・・・?



びっくりして、お嬢様をみると、
優しく微笑んでいた。

「瞬がいてくれて、あたし、いつも守られてるって思うもの」
ありがとうね、瞬。


少し恥ずかしそうに
囁くお嬢様の声の1音1音。
その音と、自分の心臓の音の
音が重なる。



僕はお嬢様に見惚れてしまった。


僕より背が低くて、華奢で。
そして・・・・抱きしめたくなる。


本当は、今すぐにでも。


思わず伸ばしてしまいそうになる腕を
僕は必死で我慢する。



「それにしても、ほんと、ウォルフさんびっくりするはず」
「だって、瞬、すごく見た目が変ったもの」


そんな僕の我慢にも気がつかず、
お嬢様は歌うように楽しそうに話す。



「なんか背も伸びたし、顔も3年前始めてあったときみたいなお人形さんみたいな顔じゃなくて、もっと、なんか、男っぽくなった」



小さい子どもの頬を包むかのように
この人は僕の両頬を包んで
にっこり笑う。



今の僕は、もう出会った頃のように
少年ではないのに。


時は移って、僕はもう少年ではないのに。
彼女の中では、まだ僕は“少年”だ。


無防備に笑いかけてくる
親しみにあふれて、温かい笑顔。


その笑顔は罪だと思いながらも、
そこを好きになった僕は
それさえ、全て許してしまえる。


「ウォルフさんが男性でも美しいように、瞬もすごく美形よ」

「あたしのお友達で、瞬があたしの大学に付いてくるのを楽しみにしている子もいるんだから」



僕が相槌を打たなくなったのさえ
気づかぬように、お嬢様は
1人で楽しそうに話し続ける。


「瞬は自分がとても素敵な男性になったってことをもっと自覚した方がいいわ」



そして、いきなり振り向いた。

悪戯っ子のように瞳が輝く。
こういう表情をしているときのお嬢様は
とても機嫌がいい。


「ああ、でも、瞬は恋人を作るの、禁止よ?」


にっこりと笑う、その笑顔は、
いつだって僕を虜にする。


僕がナイトなら、
僕の恋人は、一生涯、
プリンセスである
貴女しか、いない。
僕の一生は貴女のものだ。



「だって、瞬はあたしの傍にいつもいなくちゃ」


3年前に告白したときの、
僕の気持ちは「好き」だった。



でも、今の僕の気持ちは
「愛してる」。





そのことに、
いつか、お嬢様は
気づいてくれるだろうか。


今の僕はもう子どもではなくて
本当に、1人の男として
お嬢様の傍にいるということに。




「毎日瞬の入れてくれる美味しいコーヒーに、それにお話の相手、それがあたしのお嬢様生活をどんなに楽しくさせてるかわかる?」



僕は毎日お嬢様への愛を、
想いを託す。


彼女が飲むコーヒーや紅茶に。


僕からの愛を伝えてと。


それがお嬢様に届くのは
いつだろうか。



「だから、瞬はずっとあたしの傍にいるの、わかった?」


お嬢様が僕にだけにする束縛。
執事だから、じゃなくて、
僕の人生そのものも
束縛して欲しいと望んでいる。


お嬢様が僕に望むのなら、
僕はお嬢様が死ぬまで
傍にいたい。


傍にいて、
お嬢様の笑顔を守りたい。
そう、お嬢様の幸せを
この手で守りたい。


「瞬がいるだけで、あたしの生活はすごく幸せだもの」


そう言ってにっこりお嬢様が笑った。


僕は・・・、はからずしも、
傍にいることで、お嬢様を幸せにしている。


これが一番の僕の望みだった。


その一番の望みが叶えられているのに、
ワガママだとわかりながらも、
僕は願ってしまう、
自分の恋心を止めることが出来ない。



もっともっと、僕はお願いごとを
してもいいのだろうか。





―――いつか、この気持ちをまた
お嬢様に伝えることができたら、いい。



そう、その日がまた来たのなら。


僕はためらわずに
お嬢様に伝えよう。



僕の全てを賭けて。




一言だけでいい。


これまでの気持ちを込めて。


ずっと傍に居たいという気持ちよりも
もっともっと、僕を支配する言葉。


ただ、僕の心から
溢れ出るほどに
募っている、この気持ちを。




「あなたを愛してます」



僕の大好きな人よ。



いつか、僕に気がついて。



そして、僕に愛を囁かせて欲しい。





その日が来るまで。




そう、その日が来るまで。
















*********** 僕の好きな人 ************































◇あとがき◇



古手川瞬とヒロインの3年後のお話でした。

初めて書きました、瞬のお話。
執事エンドで終わったことを
前提に書いてます。



3年前の、執事エンドで
瞬の告白を断ったあとの2人の関係。
瞬の気持ち。


こうなって欲しいなという想いを
込めて書きました。



企画「4月の雨、夜語り」でないと、
このお話は生まれてきませんでした。


執恋のオールキャラでの夢を書こうという
目標があったからこそ、書きました。



書いてみて思ったこと。


最初に瞬を書くと決めたときに
すぐに浮かんできたのが
タイトルの「僕の好きな人」でした。
もう、タイトルからして片思いですよね(笑)


出来れば、3年後まで時間軸を飛ばさずに
書けたらいいなと思っていたのですが、
15歳の瞬より、もう少し大人になった
瞬のラブストーリーが書きたくて。


3年の間に、少年だった瞬は
1人の男に成長すると思います。
そうなった時には、
きっと年上・年下だった
瞬とヒロインの関係が
微妙に変るんじゃないかと思って。



書きあがってみて、
意外と優しくて、甘くて、
そして少し切ないお話に
仕上がったと思ってます。


瞬のひたむきさ、
そのまっすぐで優しい心とかが
あたしは好きでした。


瞬の告白はレポで全文取ってあって
今回、これを書くにあたって、
それを参考にしました。




誰かを思う気持ちは、
とても温かいもので
でも、それをひとりで
抱えていても寂しいだけな気がする。



告白のときに、
瞬はこう言っていました。



あたしは、瞬の告白が好きです。


プレイ中はそこまで、だったんですが、
14日目の告白のときの言葉が
柔らかいんだけどストレートで
温かさが伝わってきて。


だから、瞬には少しだけ
特別な想いを抱いてます。


多分、時間がたって、
瞬がもっと成長して、
1人の男として、ヒロインと
あまり年の差を感じさせないくらい
お互いが成長したら、
ぜひとも恋人になって欲しい。
そう思ってます。



未来に繋がる話を書きたかった。


きっと、きっと、
瞬の恋が実ることを祈って。




23.April.2009 つぐみ

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