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いつもブログに遊びに来てくださってる
きょうさまからのリクエスト夢です。

リク内容は『ヒロインの卒業を祝う真壁』

時間軸は、白凛を卒業する頃なので
1年飛んでます。
長かったので、前編後編にわけました。
こちらは、後編になります。

前編はこちらから。

携帯で全文が1つの記事で読めない場合は、
その1その2に分割しております。
(カテゴリー:創作ー分割)


以下、創作になります。


↓↓↓↓






********* Graduation 後編 ***********




「真壁さん、どこにいくの?」


あたしは、真壁さんが選んでくれた服を着てる。

選んでくれたのは、赤紫色のワンピース。
シンプルな襟元のカットに
膝丈ぐらいのデザイン。


でも、背中もぐるっと開いてて。
カクテルドレスのような雰囲気。


それも、真壁さんが出してくれたストッキングは
ガーターベルトのようなもので、
思いっきりこのワンピースとあわせると、
すごく・・・・女っぽすぎて、
あたしは、着替えながらも、
この服を選んだ真壁さんにドキドキした。


(こ・・・こんな服を着て欲しいのかな?いつも・・・)


なんか、とてもセクシーで、
あたしはどぎまぎした。


真壁さんって・・・たまにすごく。
ううん、たまにじゃなくて。
2人っきりのときは大胆でセクシーなのが
好き・・・なんじゃないかなって感じる。


(こういうの、着ているだけで、あたしがドキドキだよ)


こんな服を着て、あの真壁さんの隣に立ってて
たまに抱きしめられたり、
キスをされたりすることを想像するだけで
あたしは、もういっぱいいっぱいだった。



着替えが終わったら、
すぐに私服になった真壁さんが来た。


選んだ服を着たあたしをみて、
ふっと笑った後、
(似合ってる)と一言だけ耳元で囁いた。


その一言で、ものすごく恥ずかしくなって
かーっと頬が赤くなるのがわかる。

今まで、こんな・・・・夜のお出かけ用みたいな
服を着て、真壁さんと夜のデートはしたことがない。


この服のセクシーさもさることながら、
それにあわせるかのように
ドレスアップした真壁さんの姿にも
すごく時めいてしまった。




・・・・・・・・・・・




2人で、屋敷を出た。

車は・・・屋敷の車じゃない。
真壁さんの車だ。


もちろん、運転は真壁さんがしている。
何回かしか乗ったことがないけど、
イタリアのスポーツ車らしい。
ハンドルが外国仕様だ。
複雑な名前で、あたしは一度聞いたけど
忘れてしまった。


スタイリッシュなデザインで、
これを真壁さんが持っているってコト自体で
驚いたけど・・・・。


でも、もっと驚いたのは、運転をしている
真壁さんがとってもかっこいいこと。
眼鏡ははずしてる。


ビリヤードしている時の球を
狙っている時の強い目線とは違う。
もっと、きりっとして、全体的に・・・・
すごく“仕事ができる”って感じがいい。



もちろん、真壁さんは仕事ができる人だけど。


こうやって眼鏡を外した横顔を見つめるのが
なんだか不思議だった。



でも、嬉しい。


眼鏡を外してるってことは、
なんか、1枚距離がめくれたような、
そんな近さを感じるから。



キスされているときに・・・・特に。



(眼鏡がなかったら、真壁さんの睫とか触れるんだよね)



キスするときに少し傾ける頭。
あたしの頬にかすったりする
真壁さんの睫の先。


その感触を思い出して、
1人、幸せな気持ちになった。

真壁さんのキスはいつも・・・
あたしを幸せにしてくれる。


にっこりと笑うあたしを、運転している真壁さんが
横目で見るのがわかる。


あたしの左手は、真壁さんの右手に
そっと包まれるように握られている。


運転しているときにこうやって手を繋いでくれる
その甘い関係が、あたしをとても時めかせる。


「なに、笑ってるんだ?」


「ん?えーっと、運転する真壁さんがすごくカッコいいなって思って」


素直にそう告げると、少し真壁さんが
赤くなって、照れるのがわかる。

なんでだろう。

真壁さんって、たまにこうやって
ちょっとしたことで、照れたりするんだよね。
いつも、無表情に近いポーカーフェイスなのに
それが崩れるときがある。


そういう瞬間が、
あたしは・・・・たまらなく好きだ。
もっともっと、あたしだけにしか見せない
表情をみてみたいと思う。


(恋人の特権だよね)


照れ隠しなのか、黙ってそのまま正面向いて
運転している真壁さん。
その横顔をじっと見つめた。



今日はこれからどこに行くんだろう?



屋敷を出る前に、いつもは玄関先から出るから
瞬君とかフットマンがいるし、
樫原さんや中岡さんが出かける前に
見に来ることはあるけど、今夜はそんなことなくて、
屋敷の駐車場へ直行して、そこから車に乗った。



(今夜はおでかけ、というより、お忍びのデートみたい)



誰にも声をかけられず、さっと屋敷を出た。
それも運転手もいなくて、車にはあたしと真壁さんだけ。


たまにデートするときはあるけど、
でも、その時も「お嬢様」と「執事」として、
出かけて、街中だけで恋人同士なだけ。
堂々と2人で屋敷を出発して、ってことはなかった。
いちお、人目を気にしてて・・・。



だから初めてだ、こんなお出かけ。



真壁さんは行き先を教えてくれない。
車は環状線に入って、夜の街を走る。
ネオンの光が、線のように見える。


車のオーディオからは
静かにジャズのサックスの音がする。
たまにクラシックの曲も。


(これって、真壁さんが好きな曲なのかな?)


カーラジオじゃない音楽に、
あたしは少し耳を傾けながら、
おとなしくしていた。


(どこに行くんだろ?)


目的地を教えてくれなかった。
何度も聞くのも野暮だし、
どっちにしろ、どこへ行くにしろ、
真壁さんと行くんだったら。



あたしは・・・・どこでもいい。



一緒にいられる時間が幸せだから。
こうやって、何も喋らない時間も好き。


一緒の空間にいて、それが心地よくて。
くっついているだけで安心する。



繋がれた手から伝わってくる温かさとか
気持ちとか、優しい気配とか。

色んな時間があるけど、
こうやって2人っきりで過ごす時間はとても特別。


そして、すぐ終わってしまう気がする。


(でも、もうこれからは、もっともっとこんな時間が増えるよ)



あたしは高校を卒業した。



イギリスに行ったら、
これまでの生活時間とは
めっきり変わるはずだから
もっと真壁さんと一緒に入れる時間が増える。


慌てなくても、もったいぶらなくても、
こういう2人だけの甘い時間が
あたしたちを待っててくれるっていうのが
心に余裕をくれた。



助手席でシートにもたれたまま、
ずっと外をみつめていたり
かすかに流れてくる音楽に耳を傾けていたら
朝からの疲れが出てきたのか、
少し眠くなってきた。


車の振動も、繋がれた手の温かさも
傍に真壁さんがいてくれる安心感もあって。


あたしがうつらうつらになってきたのを
真壁さんが見て取ったのか、
信号が赤になって車が一時停止したときに、
繋いでいた手を少し解いて、
あたしの額や目の辺りに手をかぶせた。


「少し眠っておくといい。まだ着かないから」


「・・・うん」


「着いたら起こすから、少し寝てろ」


瞼の上におかれた手からの温かさや
ほんのりと香る真壁さんの香水の匂いとか、
傍で見守ってくれている安心感とか。


一緒に傍にいて、デートなのに
眠っちゃうなんてもったいない。


そう想いながらも、この真壁さんの優しさが
とても気持ちよくて・・・。
こうやって、一緒にいる時間に
眠ってしまうことが贅沢で、嬉しくて。


色んなのが、あたしを眠りに誘う。


真壁さんが、またあたしの手を握る。
その温かさに安心して、
あたしは、ゆっくりと目を閉じて、眠った。







・・・・・・・・・・・・





夢を見た。


桜吹雪の中、
あたしと真壁さんが一緒に歩いている夢。


少し大人びた服を着たあたしと、
いつも通り、格好よくてセクシーな真壁さん。


繋ぎあった手が嬉しい。
傍にいられることが嬉しい。
この人を好きになって嬉しい。
この人があたしのことを好きになってくれて嬉しい。




伝えきれない気持ちが
沢山、つながれている手から、
真壁さんに伝わるといいな、って
そう願っているあたしがいた。


つないだ手が嬉しくて、
それを見て微笑むと、
真壁さんも微笑む。


何も喋らずに、ただ手を繋いで
ゆっくりと歩いている。


なんでもないことなのに、
思わず涙が出てきそうになる。


夢なのに、ちゃんと桜吹雪には
薄紅色がついていて。


真壁さんがあたしのほうを見つめている。


(この手を離さないでね)

そう想って、ぎゅっと繋いだ手を
真壁さんが笑う。
その微笑がすごく優しくて、
あたしは、胸が詰まる。


このまま、この人が微笑む姿を
ずっと見ていたい。
そう想って、少し切なくなった。

ずっとずっとあたしのことを好きでいてね。


好きって気持ちが
リングになって、
あたしたちを
囲ってしまえばいい。


祈りに似たような願いがぐるぐると
あたしの心でリフレインしていた。


ずっと、あたしも貴方のことが好きだよ。


ずっとずっと・・・・。












(きょう、好きだ)






不意に、真壁さんが囁く声が伝わってくる。
声なんて聴こえないはずなのに。



初めて、あたしのことを
好きだといってくれたときの
・・・・低くて、甘い声。



あの時の真壁さんの声、


片時も忘れたことがない。
ううん、ずっと一生忘れない。


その言葉が耳元で、ずっと。










・・・・・・・・・・・・・・






ふっと目を覚ますと、
こっちをじっと見詰めている
真壁さんと目が合った。


車は停まってる。



「っ・・・・・!」



夢がとても鮮明だったせいか、
あたしは、思わず、ここはどこだろう?と想った。
目をぱちぱちさせているあたしをみて、
真壁さんがくすくすと笑う。


「どうした?夢でもみていたか?」


すごく鮮明な夢で、現実みたいだった。


「・・・・うん。夢見てた」


「どんな夢?」


こっちを見つめる真壁さんの視線が優しい。
思わずどきどきしてしまう。
さっき、夢の中で響いていた真壁さんの声が
まだ耳に残っているから。

思わず恥ずかしくなって赤くなるのがわかる。



「・・・・真壁さんとあたしの夢」


ちょっと頬が熱い。


「どんな夢だったんだ?」


「んー・・・・それはちょっと」


もったいぶることないし、
別に話してもよかったんだけど、
あれだけ純粋な気持ちを、言葉にして
情景を語るのが恥ずかしい。


あたしが言いにくそうにしていたら、
真壁さんがその様子を見て、意地悪そうに笑う。


「俺に言えないような夢でも見てたのか?」


「え?!」



「例えば、俺に抱かれてる夢とか?」



にやって笑ってこっちを見つめる真壁さんの
爆弾発言に思わず噴きそうになった。


「!!!!!」
「ち、違うよ、違う、違う!!」




思わず、動揺のあまり、
あたしは何度も繰り返し否定した。


「否定が多すぎて、あやしすぎるぞ」


そういって真壁さんがあたしをからかう。


「違うよ、そんなんじゃなくて!!」


「じゃあ、どんな夢?」


ぐっと身を乗り出してきて、
あたしの方へ顔を近づけてくる。
その近さにドキドキして、
あたしは頬が赤くなるのがわかる。


あたしがドキドキするってわかってて、
この人はこういうことをするんだから。
これは逃げられない、と観念したけど、
顔を見ていうのが恥ずかしすぎて
あたしは横を向いて、渋々話した。



「・・・・真壁さんと一緒に手を繋いで歩く夢」
「なんかすごく、幸せな夢だったの」


真壁さんが、あたしの横顔を
見つめているのがわかる。
その瞳が優しいことも。
優しいけど、黙って続きを促していることも。


大げさにため息をつくフリをして、
あたしは続けた。


「夢の中でも、あたし、真壁さんのこと好きだったんだ」


なんか、あの夢の中の気持ちを
全部言ってしまうのが、少し惜しくて。


だって・・・・、いかにも、あたしが
ものすごく真壁さんのことを
すごく好きなんだ、って夢だったから。


こんなに好きになっている自分が不思議だけど、
でも、こうやって好きにならせる真壁さんが・・・
もっとずるいと思う。
そして、こうやって確認させることが。


どこまでいっても、
あたしの100%が真壁さん色で
染められてる気がするもん。


なんか、あたしだけ好き、ってワケじゃないけど
ここまで好きなんだ、って夢の中でも
実感させられて、ちょっとだけ悔しかった。


なんかなぁ。
嬉しい悔しさ・・・・?


ちょっと拗ねるように真壁さんを見たら、
もうその瞳が笑ってて、
あたしが続きを言うのを許してくれた。



そして、ぐっと顔を近づけたと思ったら



「よく言えました。ほら、ご褒美だ」


一瞬だけ、あたしの唇をついばむように
ちゅっと奪った。


「!!!!!」


いきなりのキスでびっくりして
目を白黒させるあたしを、
真壁さんがくすっと笑う。


「も・・・、もう!ご褒美って、そんな子どもじゃないもん、あたし」


ついつい、動揺のあまり、
憎まれ口を叩いちゃう。
でも、それさえも、真壁さんは
くすくす笑いながら聞いてる。


ずっと真壁さんのペースだよ。
悔しいけど・・・・。

でも、こうやって笑う真壁さんは好き。


あー、もうどうしてこんなに好きなんだろう。
本当に嫌になっちゃう。
ふてくされたいけど・・・・
でも、なんだか幸せで、そんなことできない。


百面相しているあたしを見て、
真壁さんが手を伸ばして、
あたしの頬を軽く手の甲で撫でた。



「さあ、目的地に着いたから、降りて」

「え?」


あたしは慌てて車の窓から外を見る。


なんか、駐車場ぽいところだけど、
外套が1本、2本あるばかりで、
暗くて・・・砂利道が続いてるのしか見えないよ。

戸惑うあたしを、先に車から降りた真壁さんが
回ってきて、扉を開けてくれる。



「どうぞ、足元にお気をつけ下さい、きょうお嬢様」

執事の時のように、軽く腰を折りながら、
真壁さんが一礼しつつ、開けたドアを押さえてる。

ここはどこだろう。
わからないけど、とりあえず車から降りる。


「どこなの、ここ?」


あたしの質問に、真壁さんが他人行儀な
執事の微笑を浮かべて

「しばらく先を歩きますと、見えてまいります」

とだけ、畏まって言う。


その執事の仮面がなんだかおかしくて。
あたしはちょっとだけふざけて、
真壁さんの頬に両手を伸ばす。



「真壁さん。今は恋人同士の時間だよ」
「だから、こんな執事みたいな口調はやめて」

眼鏡もしてないんだし・・・。




少し拗ねるように言うと、
真壁さんの顔がふっと笑った。

あたしは、その顔が好きでたまらない。
この笑顔を見るたびに、
ドキドキしてしまうの。


だから、一瞬周りを見回して、
誰もいないことを確認したあと、
少し背伸びして、
両手で挟んだ真壁さんの頬を
引き寄せるように、自分からキスをした。


真壁さんがゆっくりとあたしを抱きしめる。


十分にキスをした後、
ゆっくりと唇を離すと、
真壁さんが微笑んでた。


「本当に、きょうは我慢がならないんだから」


「それは、あたしのセリフだよ」
だって、真壁さんだって、人目を盗んでキスするじゃない。


思わずそう言いながら
軽く睨む真似をすると、
真壁さんの瞳が面白そうに輝く。


「あれは、きょうがキスして欲しいって目で見つめてるからだ」




「っ・・・・!」



思わぬ反撃で、あたしは、一気に赤くなった。

・・・確かにあたしは、真壁さんとのキスが好き。
でも、こんなって見透かされてるのって、
とても恥ずかしい。


「あ、あれは・・・・っ!」

思わず言い返そうとして、言葉に詰まる。



そのあたしの言葉尻を捕らえて、
真壁さんがもっと言葉で攻めてくる。


「あれは?ん?」
「じゃあ、きょうは俺とキスしたいって思ってはないけど、キスされてるのか?」

「っ・・・・!!!」



一気にまた言葉で攻められて、
あたしはもっともっと顔が赤くなるのがわかる。


わかってるくせに、
こんな風に意地悪するなんて、
真壁さんはずるい!



思わず何も言えなくなって
拗ねてしまったあたしに、
真壁さんがにっこり微笑みながら
最後の一押しをした。


「俺はいつだって、きょうとキスしたいと思ってるけどな」
人が見ていたって、本当はな。


そうやって囁く。


その囁きも、言葉も、
全部、危険な魅力だから!



「っ!!!!!」



そ、それはだめだよ!!と
思わずドキドキするあまりに
叫びそうになったあたしを
真壁さんが、くすくす笑う。



「さあ、行こう」


笑いながら、歩くように促す真壁さん。



もう、本当にいつも真壁さんのペースで
あたしはやられてばっかり。

もう、なんか、やりたい放題されて
あたしは、なんともいえなかった。


本当に、こんな・・・真壁さんの一語一語に
振り回されて、ドキドキしちゃってる。
そんな自分が悔しいけど・・・嬉しい。


でも、そういうことを認めちゃったら
もっともっと真壁さんのペースになるから!



あたしは、少し拗ねてるフリをしながら、
真壁さんの差し出した手を握る。


さっきのやりとりで、やられっぱなしだったのを
拗ねてるんだよ、って
わざと顔をあっちの方向に向けるけど
頬が緩むのがわかる。


だって、こんな・・・なんか恥ずかしいけど、
こんなやりとりを真壁さんとしていること自体、
ものすごくドキドキする。

なんで、真壁さんって、
ひとのことを、こんなにドキドキさせるのが
上手いんだろう。


「足元、土が緩んでいるかもしれないから気をつけろ」


そんなあたしの事情を全部お見通しなのか、
面白そうに笑う真壁さんが、
慣れないハイヒールで歩くあたしの手を
ゆっくりと握って、エスコートしてくれた。





・・・・・・・・・・・・・・・・


暗い砂利道の横は、高い木が生えてて
その木々の中を歩いていく。
外套が少ししかなくて、
道がほの暗い。

でも、真壁さんがしっかりと
手を握っててくれるから、
安心できた。


しばらく歩いて
着いた先は教会だった。

先に見える光が教会だと気づいて
あれ?ってびっくりして止まった
あたしを、真壁さんが振り返った。


「どうした?」



「あ・・・・うん。教会だなんて、びっくりした」
「あたしてっきり・・・」


(てっきり、九条院家の別荘かなんかかな、って思ったんだ)

2人っきりで、卒業式の後の夜だから・・・、
あの日の約束での「奪う」をするのかな、って
だから、2人っきりで車に乗って、
どこか行くのかな、って。


「てっきり・・・・?」

繰り返して聞いてくる真壁さん。



・・・それは言えない!


「もう・・・!言わなくてもわかってるくせに!」


ほんのちょっぴり、ううん、期待していた。


思わず赤くなる頬を押さえられなくて、
あたしは、真壁さんの顔を見れなかった。



期待はずれだった、わけ、じゃないけど、
でも、今日こそ・・・?って思っていた気持ちが
思わず出てきちゃって、
あたしの声に少しだけ
拗ねた感じが混じってしまった。

なんだか責めるように言ってしまう。



「・・・・あの日言ったじゃない。あたしのこと・・・・」


最後まで言うのが恥ずかしくて、
目を伏せたあたしに、
真壁さんがくすっと笑う。


「奪うのは、まだ早いよ」



「っ・・・!」

!!!


す、全てお見通しだったんだね。
もう、真壁さんの言葉だけで
それがすぐわかって、
1人勘違いしていたことが、
余計に恥ずかしくなった。


思わずあわあわしてしまう、あたしに
真壁さんがさらに続ける。


「そんなこと、期待していたのか?」


その声に、少し笑いが含まれてるけど
でも、確実に真壁さんは
あたしが勘違いしたのを喜んでいるはず。


だって、嬉しそうだもの・・・!



「っ!!・・・だ、だって・・・」



あたしだけ期待していたんだ、っていう恥ずかしさと
それが全部真壁さんに筒抜けだったのが
もう、本当に恥ずかしくて、
固まってしまったあたしに、
真壁さんが繋いでいた手を軽くひっぱって
抱き寄せた。




「きょう、こっちにおいで」



その瞳がとても優しいことは・・・知ってる。

ぎこちなく、あたしは真壁さんのところに寄り添う。
なんか、すごく恥ずかしいもん。


自分だけ、真壁さんを求めているようで。



意地っ張りじゃないけど、
でも、なんか気恥ずかしくて、
いつものように、真壁さんの胸には
飛び込んでいけなかった。


いつも、こうやって抱きしめられるのが好きで
こうやって真壁さんが言ってくれたら、
一目散で、ぬいぐるみを抱きしめるかのように
ぎゅーって抱きつくのに。


遠慮がちに真壁さんによりそう。


いつもは腰に回す手も、
なんだか回しきれなくて、
そのまま、ただ真壁さんに
もたれかかったのを
くすっと笑われた。


そして、両腕も一緒に
軽く抱きしめられる。
羽交い絞めのように。


拗ねてるわけじゃないけど、
なんだか恥ずかしい気持ちと、
少し切なくて、あたしは
抱きしめてくれる真壁さんの胸に
自分の横顔を当てた。

シャツに当てた耳から、
真壁さんの心臓の音が伝わってくる。


抱きしめたあと、真壁さんは
しばらく、何も言わなかった。
ただ、あたしを抱きしめてくれてた。


真壁さんの規則正しい鼓動。
それを聞いていたら、
少し気持ちが落ち着いてきた。


今日はやっぱり何もないんだね。



ちょっと残念な気持ちと、
少し切ない気持ち、
それから真壁さんが好きで好きで
こうやって抱きしめられてる幸せが
だんだん、あたしの中で募ってきた。


身動きせずに、しばらくじっと
抱きしめられていたら、
不意に真壁さんがため息をつきながら
言葉が漏れてくるのが聞こえた。



「俺だって、お前のことを奪いたいよ、今すぐに」


その声は、とても切なそうだった。
それを聴いて、あたしも、すごく胸が
締め付けられるような気がした。


あたしもそうだよ。
早く、真壁さんに奪われたいって思ってて。


今日の卒業式まで、ずっと我慢してたから。
だから、・・・・今日を迎えられたのが嬉しかったの。
1人、勘違いしちゃったけど、
でも・・・気持ちは一緒だよね?


軽く抱きしめていた腕の力を
少し強くして、真壁さんが静かに囁く。

「でも、俺たちにはこれから先、まだまだ長い時間があるんだ」



「うん」

このことは、今までに何度も話してきたこと。
焦らなくてもいい、時がたてば・・・。
いつも真壁さんはそう、あたしに言いながら
多分・・・自分にも言い聞かせてきたんだと思う。


「一気にそれを進めるより、今の俺たちの仲を十分に味わおう」




「・・・うん」


あたし、真壁さんが言ってること、
真壁さんの気持ちわかるよ。
十分に伝わってるから。

そう思って真壁さんの腕から少し顔を上げたら、
こっちを見つめている真壁さんと目が合った。


「あたしは、・・・大丈夫だよ。まだ待てる。真壁さんは?」


ふっと笑った。



「大丈夫じゃないから、こうやって自分に言い聞かせてる」


その言葉の意味で、
あたしが少し目を丸くすると、
真壁さんがゆっくりと目を閉じた。


眼鏡をかけてない真壁さん。
その顔がすごく・・・綺麗。
でも、切なそうに見える。


そう見えるのは、
真壁さんがあたしのこと、
好きだからだよね・・・・?


「真壁さんが大丈夫じゃないなら、あたし・・・」


そう呟いたあたしの言葉に、
真壁さんが目を開ける。


その瞳の色は、切なそうでもありながら、
あたしのことを大事そうに・・・、
愛しそうに見つめていた。


「我慢できるさ。もうしばらく」
あと、半年だ。


そう呟いた真壁さんが、
あたしを抱きしめていた腕を解いて、
片方の手をあたしの横顔に当てる。
そして、ゆっくりと撫でた。

じっとこっちを見るように
目をそらさせないようにして、
言葉を続ける。


「それに・・・イギリスに行って2人っきりの生活が始まれば、いやがおうでも、そういう関係になる」



!!
いやがおうでもって!




「っ・・・!!ま、真壁さん!!」



あたしは、すごく・・・。
わかりきってることなのに、
でも、改めて言われると、
なんだか、すごく・・・・
スゴイコトを言われてるような気がして
心臓がどくっと跳ねた。



真壁さんの口から出る言葉が
心臓を貫くような
ものすごい衝撃で
あたしの中を走るのがわかる。


恥ずかしくなって、見つめきれなくなったあたしを
真壁さんの綺麗で細い指で絡めとるように、
顎を、上に向けさせ
そして、自分の方を見つめさせる。

もう一方の腕は、しっかりと
あたしの腰に回されて、
逃げられない。


「考えてみろ。今でも十分、毎日我慢してるんだ」


瞳の色が一瞬、すごく曇った。
でも、強く、あたしを見つめている。
言葉の中に感じられる、一抹の苦しさが
あたしにも伝わってきた。



真壁さん・・・・。



「まだ九条院家にいる間は、他の使用人や旦那様や、色んなことが規制になって、お前との約束だけじゃなくて、俺を止めるものがある」


細めるようにした瞳の奥には
なにか、くすぶるものが見えるような気がした。


そうだよね。
日本にいる限り、
本当の意味で、
2人っきりにはなれない。



「それが、あと半年後には無しだ。俺とお前しかいない生活になる」


切なげに細められた目が、
じっとあたしを見つめる。
そして、ゆっくりと
あたしの耳元へ顔を近づけてきた。


首に真壁さんの息がかかる。
その熱さに、あたしはそこから
痺れていきそう。
感覚が、全てそこに集中するかのように
あたしは、何も考えられなくなった。



「・・・・それがどういう意味かわかるよな?」


少し息を呑むように、
声がワントーン低くなって
あたしの耳元で囁いた。



耳元での声が、
じーんとあたしの頭の中を
ゆっくりと侵食していく。



あたしはそれが意味することを
すぐに感じて、返事ができなかった。


ドキドキしすぎで、もう限界値だ。


固まってしまったあたしを見つめて、
真壁さんが、すっごく近い距離で
くすっと笑う。


そして、もっと扇情的に囁く。
耳元に寄せられた真壁さんの顔。
その瞳が近すぎて、
あたしは見つめあうことができなかった。


激しく・・・心臓が高鳴るから。



「一度、お前の身体も全て奪ってしまえば、それからは何度だって」



「っ!!!!」


言葉1つ1つが激しく、
あたしの中に入ってくる。
思わず、吐息が漏れてしまう。
その言葉が、とても気持ちよくて。



「これから何度でも出来ることなんだ。だから焦るな」



「2人っきりの生活が始まったら・・・」



真壁さんの瞳が、とても魅惑的に
そして誘うかのように
こっちを見つめている。


その瞳から目が離せない。


真壁さんが、とても扇情的だ。



「俺はお前のことを好きにする」



その衝撃的な発言に、
あたしは一瞬目を見開いた。


でも、その目を見返す真壁さんの瞳は
真剣で、そして揺るがない意思だと伝えてくる。


じっとこっちを見つめる。
その声、その瞳の真剣さに、
あたしの心臓が鐘のように、
すごい勢いでなり始める。



「・・・・・うん」


うなづくだけで精一杯だった。


ものすごい勢いで、
あたしの中で血がぐるぐる回る。



好きにするって・・・・。
その言葉の意味が、
すごく・・・誘惑的で、
あたしは、くらくらとした。



・・・思わず息さえできなくて、
あたしは目を閉じた。



なんか、もう目を開けてらんない。




真壁さんの言葉の刺激が強すぎて、
あたし・・・・、それだけでふらふらになりそう。



怖いくらいに真壁さんの言葉1つ1つが、
その気持ちが伝わってきて、
そして、そこから逃げることができない。




その真剣さが
身をさすように沁みてきて。
嬉しさと同じくらい、
あたしは幸せすぎて。



真壁さんがあたしの頭を
撫でるように抱き寄せ
そして、髪の毛にキスをする。



「だって、お前が可愛すぎるからいけないんだ」


背の高い真壁さんに抱きしめられ、
そして胸に押し付けられ、
真壁さんの唇が
あたしの髪の毛に何度もキスをする。




「!!!!」



本当に、手放しにキスをするような。
小さな子どもを抱きしめて、
どこもかしこもキスをするような。


そんな愛情表現が、
あたしの心を溶かす。


何も言えなくなったあたしを、
真壁さんがずっと抱きしめる。
優しく包み込んで、・・・囁く。
そして、甘いキスをする。
あたしの髪の毛や
額や頬や耳にも。
唇にも。


ほの暗い道の中、
真壁さんの唇の感触と
抱きしめてくれる腕の強さだけが
ここに存在しているかのようだった。


しばらく、2人で立ち尽くしていた。





・・・・・・・・・・・・・






「きょう、おいで」



長らく真壁さんに抱きしめられてて、
頭がぼーっとなっているあたしの手を
真壁さんがゆっくりとひく。


(あんなに沢山キスしたりしたのに、真壁さんが普通な感じなのが不思議だな)




そんなことをぼんやりと考える。



思わずそういう顔でみてしまったら、
真壁さんがくすっと笑った。



そして「可愛いよ、きょう」って囁く。


なんか、すごく・・・
今日の真壁さんは
あたしに甘い。


その甘さが心地よくて
ずっと浸っていたかったけど、
でも、真壁さんが手をひくから、
あたしも目の前の教会へと歩き始めた。






・・・・・・・・・・・・





「ここは、九条院家の繋がりで管理している教会なんだ」



そう言って、真壁さんはポケットから出した
鍵で、扉を開ける。



「今日は特別に鍵を借りてきた」


教会はライトアップされて
窓のステンドグラスの色が、キラキラしている。
赤や緑や青、そして黄色の光を放つ硝子。


ドアを開けて、そこに広がるのは
赤い絨毯に、そして左右に広がる木製の座席に、
正面には神様の台座。


真壁さんがゆっくりとあたしの手を引いて、
正面の台座までやってきた。



そして、あたしと向き合う。


「きょう、ここにいて」



そう言って、真壁さんがあたしを、
台座の前に立たせる。


この位置って・・・・、
花婿と花嫁が立つ場所。


思わず、これから起こることを予想して
あたしは胸が高鳴るのを押さえられなかった。


期待で思わず息をとめて
真壁さんを見つめる。


そんなあたしを、
真壁さんがくすっと笑った。



この笑い方は・・・多分すごく喜んでる時のものだ。
でも、ほんのり赤くなってるかな、真壁さん。




思わずそう思った時、
真壁さんがあたしの正面に立って、
少しだけ抱き寄せた。


そこには、とても優しい目をした
真壁さんがいた。

しばらく見詰め合っていたら、
真壁さんが不意に話し出した。






「俺は・・・・これまで、誰かを好きになるとか、愛するとか、あまりよくわからなかった。」


一言一言、区切るように
真壁さんがしっかりと話す。



いつもよりも、慎重に話しているのがわかる。
あたしは、真壁さんの顔を
食い入るように見つめていた。



真壁さんも、あたしから目をそらさない。
しっかり見つめたまま、
あたしに語りかける。




「それが、きょうに出会って、・・・・その気持ちが変わったんだ」
こうやって激しく誰かを愛することが
自分にできるなんて、思ってもなかった。
執事の立場を忘れてまでも、なんてな。



そういって、
真壁さんが少し照れくさそうに
目を伏せて告げる。




その言葉の意味が、あたしの心を
とても温かくさせる。




あたしだってそうだよ。




真壁さんに出会うまで、
こうやって誰かをここまで好きになって、
もっともっと一緒にいたいとか、
大事にしたいとか、思ったことなかった。


一番大事な人だからこそ、
その人の前で素直でありたいとか。


いつもそれができてるとは限らないけど、
でも、あたしは真壁さんに出会って、
本当に変わったの。


こうやって真壁さんのことを好きになって
あたしは・・・・とても、
それだけで幸せなんだ。




――――真壁さんの言葉に、胸が熱くなる。


もっと続けて欲しい、と
あたしは、じっと真壁さんを見つめ続けてた。




そんなあたしに、
少しだけ切なそうに目を細めて
真壁さんが語りかける。


「執事であろうと、ただの1人の男であろうと、俺はお前の傍にいることができて、いつも感謝してるんだ」

「神なんて信じてはいない。でも、お前とめぐり合わせてくれた運命には感謝してる」



真壁さんの口から、神さまが
出てくるとは思わなかった。


思わず、あたしは、目を丸くしたけど、
でも、真壁さんのしみじみと語る様子が
あたしの心臓を鷲づかみにする。



「前にも誓ったけれども・・・・、今日また、この場所で、誓うよ。一生お前の傍に居ることを。そして、お前だけを愛し続けることを」


誓いの言葉・・・・。



だから、今日、この場所に
あたしを連れてきたんだね。
ちゃんと、神様の見ている前で、
自分の気持ちを証明するために。


そして、誓いが本気であることを
あたしに改めてわからせるように。


あたしは、真壁さんの真意がわかって
なんだか、とても泣きそうになった。


・・・・・幸せすぎて。
こんなに想われていることが。



「・・・・約束、覚えててくれたんだね」




あの日した約束が、2つ。

一生あたしの傍に恋人としていること。

そして、大人になったら、
あたしのことを奪うこと。





あたしは、胸がとても切なくなって
思わず、泣きそうになった。



覚えててくれた、だけの嬉しさじゃなくて、
こんなに愛されている自分がいるという幸福に。





「忘れるわけないじゃないか」



しみじみと言う真壁さんの声が
心に染み渡る。




真壁さんがあたしの横顔に手を添える。
あたしは、目を瞑って、その手に頭を傾けた。
真壁さんの口からでる、言葉1つ1つを
永久的にあたしの中に留めておきたい。





じっとあたしを見つめていた真壁さんが
ジャケットのポケットから、
きらりと光る何かを出した。



そして、それをあたしに見せてくれる。



それは、綺麗なプラチナの硬質な輝きをもつ。
デザインはシンプルなんだけど、
きらきら光るのは、多分ダイヤか、
なにか。白い光を放つ宝石が埋まってる気がする。



ブレスレットのような・・・・
それよりももう少し長くて大きいものだった。



「アンクレットだよ」


思わず真壁さんの指に巻きつく
アンクレットをあたしはじっと見る。


文字が彫られている。
あたしと真壁さんの頭文字。
そして、名前の近くに埋め込まれた
小粒のダイヤの光。


あたしと真壁さんの頭文字が入ってるなんて、
正直、びっくりした。
ペアリングとか・・・真壁さんはしないような
タイプの男の人だと思っていたから。



でも・・・・なんだか嬉しい。



あたしが2人の頭文字を見て
嬉しそうにしているのをみて、
真壁さんが少し恥ずかしそうに微笑む。





そして裏を返した。



・・・・そこに英語で文字が刻まれていた。


「本当は、エターナルラブとか、そういう文字にしようかと思ったんだが・・・、俺とお前の仲なら、多分この言葉が一番いいんだと思う。」



ALL FOR YOU.
全てを貴方へ。




意味を教えてくれる真壁さんが
少し赤くなっているような・・・・、
そして、少し照れくさそうなのが伝わってくる。


その様子が、あたしはとても嬉しかった。




・・・そうだね。
真壁さんらしいよ、これを選んだのは。


「ありがとう、真壁さん」


このプレゼントがとても嬉しくて、
あたしは、にっこり微笑んだ。




あたしが微笑んだのを見て、
真壁さんが少しほっとしたように見つめてくれる。




横顔を包んでくれる
真壁さんの手が温かい。


そして、いつものように
あたしに愛の言葉を囁く。
その瞳はあたしからそらされることはない。





「俺の全てはお前のものだよ」

俺の身体も心も、俺の感情の1つ1つ、
そして俺の一生、
全てお前に捧げたい。
お前のことを愛しているから。






そういって、真壁さんが膝をついて
あたしの足首に
プラチナのアンクレットをつけてくれた。



そして、膝をついたまま畏まって
あたしの手をとり、顔を見上げて告げた。



じっと見つめられる。


あたしたちが心を通じ合わせた、あの日のように。



「真壁直樹。一生、きょうお嬢様の恋人として仕えさせていただきます」


そう告げる真壁さんが・・・・
とても嬉しそうで、優しそうで。



あたしは、胸がいっぱいになった。


取られている手をひっぱって、
真壁さんをぎゅっと抱きしめる。





「うん。一生、ずっと傍に居てね。」

「あたしの恋人として」



いきなりひっぱられて、予想外だったのか
少し驚いた様子だった真壁さんが、ふっと笑う。



そして、あたしの背中に
ゆっくりと腕をまわし、
ぎゅっと抱きしめた。



「言われなくても、そうするつもりだ」


当たり前だよ、って調子で切り返してくる。
さっきまでの、少し畏まったところとか
もう全然なくて。



いつも通りの真壁さん。


・・・こうやって、余裕がある口ぶりでいうところも、
いつも先手を取っちゃうところも、大好き。



本当に好きで、好きでたまらない。



あたしも、真壁さんをぎゅっと抱きしめた。



「頼まれたって、真壁さんを放してあげないから」


だってあたしの傍に一生いるって誓ったから、ね?



そうやって、少し冗談交じりで
本音の本音を告げると、
真壁さんが、柔らかく笑う。




それは俺のセリフだよ。



そう呟くのが聴こえた。


でも、聴こえなかったフリをして、
あたしは、ぎゅーっと真壁さんに抱きつき
彼の胸元に自分の頭を押し付けた。



キスをするより、
今はこうして、ただ抱きしめられていたい。



「ねえ、真壁さん」


「ん?」


「あたし、真壁さんに何をあげられるかな?」



こうやって、アンクレットとか誓いとか、
真壁さんはあたしに沢山くれるのに、
あたしは真壁さんに何を返せるんだろうか。




そう言って真壁さんを下から見上げると
真壁さんが、すごく・・・優しく笑った。




「きょうは、俺の傍に居てくれるだけでいいんだ」
ただ、それだけでいいんだ。




そう言って、真壁さんが愛しそうに
あたしの髪の毛を撫でる。



その言葉がとても・・・・嬉しくて、
あたしは、また真壁さんに抱きついた。



ぎゅーってする。


沢山ぎゅーってしても、
あたしが今、
どれだけ真壁さんの言葉に
心を震わせたか、
伝えることができない。




こんなに嬉しい言葉を言われたのは
本当に初めて。


思わず涙が出てきたのを
あたしは、そのままにした。


きっとそのうち、気づいた真壁さんが
あたしの涙にキスをしてくれるから。

その優しささえ、
あたしはもう既に知っている。


真壁さんが、あたしを抱きしめる。
あたしも真壁さんを抱きしめる。





ずっと・・・・





「誰か」の「特別」になりたいと想っていた。



街で、てらいもなく見つめあう恋人同士とか。
映画の中で抱きしめあってキスをするヒロインたちとか。
見つめ合う義兄さんと姉さんの姿とか。



色んな恋人同士を見るたびに、
あたしにも、こういう恋を
することがあるんだろうかと思っていた。


誰かに恋焦がれたり、
そして誰かに激しく愛されたりとか。
自分の人生に、はたして
そういうのはあるんだろうか、と思ってた。


運命なんてあるのかな?ぐらいの感覚だった。





でも、運命の恋は突然訪れて。



あたしの全てをさらっていった。




そして、あたしは真壁さんの隣にいる。




ふとした瞬間に、あたしは、
真壁さんの「特別」になっている自分に気がつく。


そして、真壁さんがあたしの「特別」であることにも。


誰かの「特別」であること。
そして、あたしの中に「特別」な人がいるということ。




それが泣きたいくらいに嬉しかった。




「特別」な相手、真壁さんのことを思うと
あたしの心の中は、すごく温かい気持ちで
満たされる。



その気持ちは、
あたしの心を満たすだけじゃなくて、
温かい水のように、心から外にも溢れて、
真壁さんに向かって、まっすぐと注がれる。


この見えない温かさが、
愛なんだと思う。

あたしから溢れるものだけじゃなくて、
真壁さんから、
あたしに伝わってくるもの。



このすごく温かくて、
あたしを包む込んでくれるような
甘くて、そして痺れるような、
少し痛いくらいの感情も、
愛だと思うの。


(真壁さん、大好き)



そう呟いた言葉が、
真壁さんの耳に届いたのか。




(俺も、きょうのことが好きだ)


そう呟く声が聴こえた。



こんなにも誰かを心の底から
好きになることができて幸せ。



あたしは神様に感謝した。



自分が心から好きな人に
同じように心から愛される幸せを。


こうやって今大好きな人といられることを。


大好きな人を抱きしめられる幸せを。


感謝してもしきれないほどの
幸せをあたしは与えてもらってる。



傍に居るだけで幸せだ、って言葉、
それこそ、あたしのセリフだよ、真壁さん。


幸せになるために
人が生まれてきたのなら、
あたしは、もう充分に
幸せだといえるよ。




あたしが幸せなくらい、
あたしを抱きしめているこの人を
幸せにしたい。



沢山、沢山、これからも
一緒に幸せを作っていこうね。


これからもずっと一緒にいる、
と誓った言葉は、きっとプロポーズ、だ。




これまでは、お嬢様と執事としての関係が
あたしたちの中に含まれていたけど、
もう、それも今日で卒業。



多分・・・・遠からぬ未来で、あたしは、
真壁さんと結婚する。
あたしもそう望んでいるし、
真壁さんも、そう望んでくれてるから。


次にもらうプレゼントは、
お互いの誓いをこめた指輪だと思う。




その指輪があたしの指におさまるまで、
しばらくは、アンクレットだね。
このアンクレットが指輪に変わるまで。


あたしたちはもっともっと
仲を深めていけるはず。



これからも、2人で手を繋いで、きっと、
ずっと長い道でさえ歩いていけるよ。




そして、いつか、この夜のことを
また思い出す。


そのあたしの隣には、
きっと真壁さんがいる。


今と変わらない優しい瞳で
あたしのことを見つめているはず。
あたしも、今と同じように
うっとりと真壁さんを見上げるだろう。

大好きだって気持ちを込めて。


そう、ずっと傍にいてね。


真壁さん、大好きだよ。










********* Graduation all for you Fin. ***********






























◆あとがき◆


きょうさまへのリク夢でした。

リクをもらったのは、実は結構前で
ほんとうだったら、卒業式シーズンに合わせて
書きたかったのですが、今頃のUPになりました。

「卒業祝いをする真壁とヒロインが変わらぬ誓いをする」

というのがテーマです。

まず、このお話の前提としては、
真壁シナリオのスペラブ・シークレットナイトの
エピソードを知っていることがなくては、
多分話が通じないだろうなぁ。

最初、きょうさまからリクを頂いたときに
「卒業祝い」とのことだったので、
思わず、真壁シナリオ=卒業=「奪う!」で
これまた裏なんだろうか・・・・と
内心どきどきして訊いたところ、
「奪う」の話じゃなくてー、ってことで
安心してお引き受けしました(苦笑)

きょうさまとも、拍手コメントを通じてお話して
奪う=ようするに身体の関係を持つ、のは
恋人同士なら、時間がたてば、
そのうち、何度でもできるようになることだから
そういうのは、この卒業祝いの話で書かなくても、と
合意の上(!)、このような寸止めになってます(笑)

確かに、それはそうなんですよね。
気持ちとしては焦っちゃうけど、
これからもずっと一緒にいる相手ならば
焦って距離を縮めなくても、
その時その時の関係を十分に楽しむのは
大事じゃないかなって思います。

一旦、身体の関係になったのなら、
それはずっと続くのですから、
今は今で、今ある関係を大事にするのも
いいんじゃないかな、って思います。

ずいぶん、真壁は苦しそうでしたが(苦笑)

好きだから奪いたい。
でも、好きだから大事にしたい。
奪うのはいつでもできるから。

そういう葛藤をわかってもらえたら嬉しいです。

とりあえず、裏突入ではなかったので
期待してくださった方々・・・
申し訳ないです・・・・(><)


まぁそれにしても。
この真壁はだいぶ甘いですね。
こんな甘い真壁を書けるなんて
あたし自身、思ってもいませんでした。
これを書きながら、ものすごく自分自身
(や・・・やばいよね!!)と悶えてました。

時間軸を1年飛ばして。

こういう真壁とヒロインの恋物語も
ありかな~と思ってもらえれば嬉しいです。


大好きな人がいて、
その人を幸せにしたいと思うほど好きで。
生まれてきてよかった、と思えるほどの恋。

読んでくださった方が
幸せな気持ちになるといいな。


長いあとがきになりました。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
いつもいつも・・・・、本当にありがとうございます。


19.April.2009.つぐみ
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