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『執事達の恋愛事情』の創作、
連載しております
「ダンスのお相手は?16」の分割になります。
その1、その2で、1つの記事を2分割してます。


1つの記事で読まれたい場合は、
こちら『ダンスのお相手は?16」


以下より、創作になります。


↓↓↓
********* ダンスのお相手は?16 *********




++++++++++++ 真壁直樹のみる景色 ++++++++++++



凛と背筋を伸ばして、
彼女が部屋から出て行くのを
俺は見つめていた。



その背中を。
その後姿を。



(このまま戻ってこないかもしれない)


そう、俺の中で声がきこえる。


じりじりと焦げるような想い。
何かに堰きたてられるかのような想い。


俺はその声を消すかのように
じっと目を瞑った。



気持ちを抑えるために
深く息を吸い込み、吐き出す。





そして考える。



例えば―――-



俺と彼女が「執事」と「お嬢様」として
出逢わなければ、
ここまで彼女のことを好きになることは
なかったんだろうか?



「執事」という職務を全うすること。


これが俺の一番の信条であり、
いつもそれを目指してきた。

そして、その目標が叶えられ、
九条院家の執事になったのが去年の春。




俺は想い出す。




彼女がこの屋敷をはじめて訪れた日のことを。


ただ、俺は何も考えてなかった。

その時、現れた女の子が
俺のご主人様になり、
そして、恋に落ちるなど。



「屋敷のお嬢様と執事の恋愛」なんて、
執事のシナリオとしては、
本当に低俗じゃないか。
執事たるもの、主人に滅私奉公であるべきだ。


そう想っていた俺自身を覆すほどの
俺の中に宿った激しい恋。



俺にはわからない。

俺が執事だったから、お嬢様の彼女に恋に落ちたのか。
それとも、ただの男として、彼女に恋に落ちたのか。



その区別の線をどこで引くのか、
俺にはよくわからない。



最初はきちんと区別しようと想った。
しかし、それはできなかった。


俺は執事で、俺は俺だから。



ただ、わかることは、
執事だからお嬢様を愛している、とは違う、
もっと激しくて、彼女の全てを奪うほどの愛を
俺が感じていること。


その気持ちをもてあましていること。



そして、彼女のためなら、
執事の職を追われてもいいというほど
想っているということ。





俺たちはどこへ行くんだろう。

たまに不安になる。

このままずっと、執事とお嬢様であるしかないのか。




このままずっと。



「ずっと傍にいる」コトができるのは、
彼女がお嬢様で、俺が執事だから。


この立場、この関係なら、
多分・・・彼女が死ぬまで一緒に
傍に寄り添えるだろう。



しかし、それまでの長い時間を
俺は彼女の「執事」として傍にいることが
できるのだろうか?


現に俺は、もう「お嬢様」としての彼女ではなく、
1人の「女」として、彼女のことを欲している。
そして、自分も1人の「男」としてしか、
彼女に接することができない。

いつか、この恋が終わってしまったら・・・。
その日を想像するだけで、
俺は氷水を被せられたかのように
自分自身の血の気がひくのがわかる。


俺は彼女の傍にはいられない。
どれだけ俺が彼女を愛し続けていても。
「男」として傍にいることができなくなった日は、
「執事」としても、傍にいることはできないだろう。

どれだけ、俺がそれに抗ったとしても。



執事であるからこそ、
傍にいられている事実。


「執事」ではなくて、「男」として
彼女の傍にいることを望む俺自身の矛盾。




なにが、執事だ。
なにが、滅私奉公だ。



俺は心の中で、自分自身を哂った。



彼女の部屋の窓際に飾られた
百合の花とコスモスの花を見る。


毎朝、この2つの花を生けることが、
俺の仕事の始まりだ。


百合のような匂いたつような
凛とした大輪の美しさ。


コスモスのような小さくて
風に乗って揺れる儚い美しさ。


どちらも、俺が思い描く彼女そのものだった。



好きな花だと教えてくれた時から、
この2つの花は俺の中で特別になった。


これまで、「執事」という職務だけを
遂行してきた俺の人生に
彼女は、沢山のプレゼントをくれた。


いや、彼女に出会ってから、
俺の毎日は、色彩豊かな絵のように
とても豊かで、そして切なくて
愛しくて、そしてむせかえるような
幸せで、・・・・苦しい。



綺麗に咲き誇る花の色や香り
俺だけを見つめる視線、
柔らかい身体、そして、
愛情を注げる存在。



彼女を失うなんて
いや、彼女が現れていない、
俺のこれまでの人生に戻るなんて、
到底考えられない。




そっと、部屋の窓から下を覗く。



屋敷の車が玄関先に回されているのが見える。


本来なら、お嬢様専属執事として、
俺は彼女が誕生日パーティへ行くのを
玄関先まで送るのが・・・・職務だ。

しかし、今の俺にはそれができなかった。


執事失格だ。


俺は・・・・私的な感情と執事としての職務を
混合している自分自身に腹を立てた。


ただ、「行くな」、とはっきりと本気で止められなかったのは
まだ、「執事」の俺の理性が残っていた証拠だ。


それだけが救いだと想った。


窓の下の車に、彼女が樫原さんのエスコートで
乗り込むのが見える。


彼女がこちらを振り返るのではないか、と
ひそかに期待している自分がいる。


でも、彼女は2階の自分の部屋の窓から
下の覗いている俺には気がつかない。


その姿をじっと見ている自分が苦しくて、
窓を叩きそうになった衝動を抑えるために
そっと窓際を離れた。



そして、傍の壁にもたれて、
眼鏡をはずす。


ゆっくり目を閉じて、今見た景色を
どうにか頭の隅にやってしまおうと、
懸命に努力した。


彼女が樫原さんと行ってしまう。



俺のいないところで、
俺以外の男と一緒の時間を過ごす。



しょうがないことだ、とわかりながらも、
どうして心が痛むことを押さえられないのだろう。
それがどうしようもなく押さえられない。



俺がもつ嫉妬の炎だ。



いつまで、俺はこの自分自身の炎を
自分の中に留めておけるのだろう。


彼女が雨の中で倒れた夜、
俺はこの炎で彼女を焼き尽くそうとした。


・・・しかし、できなかった。



彼女の全てを手に入れたい。
心も、身体も。


そう、強く願う心を
俺は、もう留めておける自信がなかった。
この我慢がどんな形であれ終わるのは
時間の問題・・・・。


ゆっくりと息を吐く。


この衝動が彼女を壊さぬよう、
俺は、1人で炎でいたぶられるしかない。




もう一度、窓から外を覗いた。


車は・・・・、
もう屋敷内から出て行ってしまっていた。





急に、この部屋に俺1人だけ
閉じ込められたような孤独感が襲う。


彼女は、窓の外の世界に行ってしまった。
その喪失感が俺の心を徐々に侵食していく。
まだ、きちんと失ったわけではないのに。


ガラス1枚、窓の外の世界。
その内側に残された自分。


俺は思い出す。


彼女が熱を出して眠っていたときのことを。
早く良くなって欲しいと
必死で手を握り締めた夜のことを。

心配しながらも、
俺はとても、幸せだった。

無条件に彼女の傍についていることができて。
そして、その手を握って
夜を過ごせることができて。
2人だけの、世界だったから。



彼女が夢で見たという“俺たち”は
廃墟のような部屋で静かに
抱きしめあって眠っていたという。
その幸せそうな姿がとても切なかったと
彼女は言った。



現実にあたしたち2人が、
2人だけでいられる世界なんてないのだから。


この言葉が俺の心をえぐる。


俺はいつだって、お前を閉じ込めたいと想ってる。
俺だけしかいない世界に。


お前だってそうだ。


俺に閉じ込められてしまいたいと想っている。
閉じ込められることを歓んでいるのはわかってる。



しかし、今・・・・。


この部屋に、
“閉じ込めた”はずの彼女はいなくて
閉じ込められた俺しかいない。



俺、1人しか。


彼女はこの部屋を出て行ってしまった。



(待ってて欲しい)



そう言い残して部屋を出て行った彼女。


彼女は戻ってくる・・・戻ってくると信じている。


だけど、どうして
俺しかいない部屋の静まり返った空気が
こんなにも色褪せて
さびしく感じられるのだろう。


これまで、独りでいても寂しく感じることは
なにもなかったのに。



彼女が俺の全てを奪っていったようだった。









夕暮れで空が染まる黄昏。




俺は、彼女の部屋の壁にもたれながら
虚ろなまま、じっと、窓からの光が消えてしまうまで
彼女が出て行った扉を見つめていた。






誰かが呼びに来るまで。





********ダンスのお相手は?16-1 ********




『ダンスのお相手は?』16-2 はこちらから。



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