2017 10 / 09 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11 next month
スポンサーサイト  --/--/--  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 | スポンサー広告  | Page Top↑
『執事達の恋愛事情』の創作になります。

お誕生日だった、執恋おともだちのナナコさまへ
捧げるお話になります。

いつも仲良くしてくれてありがとうござます。
お誕生日おめでとう!!


そんな気持ちを込めて、
ナナコさんが溺愛する
樫原さんのお話を書きました。
ちょっと明るくて甘い・・・お話だと思います。

掲載許可頂いたので、
こちらでもUPさせていただきました。

昨日1日は、ナナコさまに
独り占めしていただきたくて、
パス付き記事で公開してました。
やっぱり捧げた方に
一番最初に読んでもらいたいから♪

なので、パス付きなど、
紛らわしい事をしてしまって
気にしてくださった方々、
本当に申し訳なかったです。


このお話はすっごく長いです。


これだけ長かったら
前後の2つ記事にすればよかったけど(笑)

お誕生日の捧げ夢なので、
途中で切りたくなくて、
1つの記事でUPします。




以下、創作になります。

捧げ夢ですので、
ヒロインの名前はナナコさんです。



↓↓↓↓
↓↓↓↓





****** Special Day ! *********

HAPPY BIRTHDAY NANAKO!





今日は、義兄さんと姉さん、
そして樫原さんと4人で
お花見を来ている。



九条院家から、
車で30分ばかりのところ。



桜並木が出来る川原を歩いている。



突然、仕事を途中で切り上げてきた義兄さん。

仕事が休みだった姉さんと、
午後から授業がなくて、
部屋でのんびりしていた
あたしを連れ出して、
お花見に行くと言い出したのだ。



(多分、あたしが誕生日だからかな?)



義兄さんはあたしに甘い。


だから、多分仕事を早めに切り上げて
お花見に行こうって、
昼から休みにしちゃったのは、
今日は一日、
家族団欒したいからなんだと思う。



(多分、本当に忙しくて抜けれないのなら、樫原さんがそれを許さないよね)



あたしは、隣を歩く
樫原さんをちらっと見る。



その横顔は前を歩く義兄さんと
姉さんに注がれている。


今日は、あたしの専属執事はついてきてない。


義兄さんが、

「せっかくの家族団欒だから、家族だけで!」

と言い張り、あたし専属の中岡さんは
お留守番になった。



(でも・・・樫原さんは違うんだね)



思わずくすっと笑ってしまう。


中岡さんは違うけど、義兄さんの中で
樫原さんは家族なんだね。



義兄さんと姉さんが並んで歩く。
その後ろをあたしと樫原さんが歩く。



こうやって、2人づつで歩くと、
義兄さんと姉さんは夫婦だからいいとしても、
あたしと樫原さんは、・・・なんていうか。


微妙な距離だよね。




でも、こうやって樫原さんと
2人っきりで歩けてるのが
本当は嬉しかった。



だって、あたしは樫原さんのことが
好き・・・。



正確に言ったら二人っきりじゃないけど、
義兄さんと姉さんは2人の世界で、
ラブラブな感じだから、残された二人ってことで。



(樫原さん・・・)



いつもは、中岡さんが傍にずっとついてて、
もちろん、義兄さんの専属である
樫原さんは義兄さんの傍にずっとついている。



だから、あんまり2人っきりになることがない。



それが今日は・・・・。





「ナナコお嬢様?どうかなされましたか?」





ふと声が聴こえると思ったら、
樫原さんがこっちを見つめていた。



(やだ、あたし、考え事をしながら、ずっと見つめてたんだ)



思わず頬が赤くなる。



「な、なんでもありません!」



樫原さんがカッコよすぎて
見惚れてたなんて、言えるわけない。


思わず見つめられた樫原さんの顔が
瞼に残って、あたしは
ドギマギしてしまいそうなのを
必死でごまかした。



「えー、えっと、ど、どこら辺で休憩するんだっけ?」


目をあわすことが出来ない。


だって、樫原さんがカッコよすぎて。
樫原さんと話をするとき、あたしはいつも
ちょっと緊張して、どもってしまうことがある。


それがまた恥ずかしい。



(ああ、ちゃんと話したいのに!)



いつもこうやって、樫原さんの前で
ぎくしゃくしてしまうあたし。


常に傍にいる中岡さんは
あたしの気持ちがわかってるから、
くすっと笑って助け舟を出してくれる。


でも、今日は中岡さんがいないもんだから、
あたしは、1人でドギマギしちゃって、
なんていうか、ほんと恥ずかしい。


好きって気持ちが強すぎて、
一緒にいると緊張しちゃうよ。


樫原さんがあたしの方を見て、
少し目を丸くした後、ふわっと笑った。
いつもの・・・柔和な笑顔だ。



「もう少し先に、お花見が出来るよう、場所取りしております」



「場所取り?」



九条院家でも、お花見のために
場所取りなんかするんだ・・・・。


思わずそう思ってしまった。

それが顔に出たのか、
樫原さんがくすっと笑って
言葉を続けた。


「今日は慎一郎様の気まぐれでお花見に決まりましたので、慌てて場所取りなどもしたんですよ」


「そうなんだ。びっくりしちゃった」



「ナナコお嬢様のお誕生日なので、慎一郎様ははりきっていらっしゃるのですよ」


「そ、そうなの?嬉しいなぁ」

なんか、すごくわかる気がする。
義兄さん・・・確かに今日張り切ってるわ。
その義兄さんの妹バカな様子に
あたしは自分のことながら、
くすっと笑ってしまう。


多分、その笑いの意味を
樫原さんもわかるんだと思う。
同じタイミングでくすっと笑った。


「そうですよ。屋敷に帰ったら、またプレゼントの山がナナコお嬢様のお部屋に到着いたしますから」


「あはは。想像つくところが怖いよ」

極めつけだ、というように
もったいぶった様子で
樫原さんが続ける。

もう、想像できちゃうところが、
あたしの義兄さんたる所以だわ。


「それに、今日のディナーは全てナナコお嬢様のお好きな食べ物です」

「わあ、すごい!あたしの大好きなものか~楽しみだな」



どきどきしながら、樫原さんと話をしている。
なんか・・・・慣れないけど、
こんな感じ、好きだな。


今日はすごく普通に話せてる気がする。
そんな自分がいるのが不思議だった。


いつも・・・好きすぎて、
一緒にいるとどきどきするから、
こんなに近付いたことなかった。


でも・・・こうやって話せるなら、
今度から、もっと樫原さんを見かけたら
話せるように、近くに行こうと思う。





一緒に歩く桜並木の下。


すごく・・・これってロマンチックだな。
大好きな人と歩く桜並木。



あたしは、とても上機嫌だった。
その様子に気づいたのか、
樫原さんがふふっと笑った。
その目がきらりと悪戯っぽく輝くのが見えて
あたしの心臓はどきっと跳ねた。


「ちなみに、今もお嬢様が好きだと仰ってたものを持ってきておりますよ」


「わ~!嬉しい!なんだろう?」


あたしの好きなもの・・・・
覚えてくれてるんだね。
そういう小さいことが
嬉しく感じる。

樫原さんのことだから、
そんなの当たり前だとは思うけど
あたしはそういうことが嬉しいんだ。

あたしの好きなものを
樫原さんが知っているように、
あたしはもっと樫原さんの好きなものを
知りたいなって感じる。


ちょっと嬉しくて、えへへって笑うあたしに
樫原さんは、もっともっと目を丸くして
演劇風に言ってくれた。

「菱餅です。慎一郎様が3月のひな祭りのことを覚えてて」

またくすっと笑う。

え!!!!!
こ、ここで、菱餅!
それも、あの菱餅!!

うわあああああ・・・・。



いきなりの菱餅にあたしは、びっくりした。
だって、実は菱餅には、色々ワケがあって・・・。

あたしの好きなお菓子を菱餅って・・・っ!


いきなりカウンターパンチを食らったかのような
衝撃で、あたしは、樫原さんの隣だとはいえ
くらくらしてしまった。


「あ!あ、あれは!あれは・・・・っ!」


思わず説明ができなくて、
言葉に詰まってしまった。
う・・・ぐ・・・うう、としているあたし。


「お嬢様?あれは、と申しますと・・・?」


そのあたしの慌て具合を
目を丸くしている樫原さん。


「な・・・・内緒です!!!!」


思わず慌てて、あたしは顔を背けた。
色々事情があって!


そんなあたしを
くすっと笑って見つめる樫原さん。

その視線が優しくて、あたしは
赤くなった頬を気づかれないように
ちょっと早足で歩き始めた。







・・・・・・・・・・・・・




去った3月を思い出す。
雛祭りのときのことだ。

その時に、義兄さんが
たまたま仕事早くあがってきて
一緒にお茶をした。


これまで家族に女の子がいなかったから
雛祭りは初めてだ~と、
はしゃぎ始めた義兄さん。


急遽、雛祭りをすると言い出して、
菱餅やら、雛人形やらを調達させ、飾り始めた。


これからはずっと雛祭りを祝ってあげるよ、
ナナコちゃんが結婚するまでね、
と義兄さんは笑った。


そしたら、姉さんが、
『雛人形を1日でも仕舞うのが遅くなると
ナナコが嫁に行くのが遅くなる』
と茶化したものだから、義兄さんは慌てて、
出したばかりの雛人形を仕舞おうとした。


しかし、はたっと考えて、にんまりと笑う。
そして義兄さんは嬉しそうに言った。


『いき遅れたらずっと一緒に暮らせるね』


衝撃発言。

ええー!!って驚くあたしの声もさることながら、
その妹を溺愛している義兄さんの姿に、
もうそこにいた人たちは思わず大爆笑だった。


ちゃ、ちゃんとお嫁にいくもん!と
飾ったばかりの雛人形を握り締めての
あたしの必死の訴えを、
義兄さんがまた悲しそうな顔で見ている。

『ナナコちゃんがお嫁に行くなんて寂しくなるじゃないか』


『そんな顔をしたって・・・・もう、困っちゃうよ』


思わぬ義兄さんの反撃に
あたしは、そこまで思ってくれるなら、
って譲りそうになったけど(?)
よく考えたらそれもおかしいものだから、
思わず困ってしまった。


そしたら、樫原さんが、
『とりあえず、人形は夕食までの間は飾って
3日の夜、寝る前に片付けましょう』
と提案してくれたものだから、
あたしはほっとした。


義兄さんは
残念そうな(!)顔をしていたけど。


義兄さんが邪魔したって、
あたしはちゃんとお嫁さんになって
九条院家を出るんだ。


(うん、一番大好きな人と結婚してね!)


ちらっと樫原さんを盗み見した。
・・・その一番好きな人っていうのは
樫原さんのことなんだけどね。


そう思いながら、あたしは決意表明として
菱餅を食べながら、義兄さんにそう告げた。


あたし、好きな人が出来たら、
九条院家からお嫁に行くから安心してね、と。


そしたら、そんな日なんて想像すると寂しい・・・と
義兄さんが少し暗い顔をした後、
急に思いついたように言った。



「ナナコちゃん、侑人と結婚すればいい!」


「そしたら、ずっとこの九条院家で暮らせるじゃないか、ね、侑人?」



えっ・・・・!!!!!!


!!
!!!
!!!!!!


あまりのびっくりするような提案に
あたしは度肝を抜かれた。

ついでに樫原さんへの気持ちが
もしかしてばれていたのか?と
思いっきり、あわあわと焦った。


ちらっと樫原さんを見ると、
樫原さんは苦笑している。


苦笑しながら、こっちを見ている。
め、目があっちゃった!


(うわぁ・・・すっごく気まずい!)



でも、次の瞬間、にこにこ笑ってる義兄さんに
姉さんが、つかさずツッコんだ。


「ナナコと侑人さんの気持も考えないで、あなたったら」


それをナイスフォローというべきなのか。
思わず、あははは・・・と真っ赤な顔で
苦笑したまま、あたしは
顔を上げることができなかった。



「それもそうだね、強引だったな」

と、相変わらず自分が言った
(爆弾)発言に気づかない義兄さんと、
それを笑う姉さんに樫原さん。


「でも、それっていい提案だろ?」


諦めず、賛同を求める義兄さんに、
樫原さんが苦笑してる。


「そうですね、慎一郎様」



その言葉に、少し笑いが含まれてる。


そ、そうですねって・・・・・!!
樫原さん!!!!!


あたしは、思いっきり赤くなってしまった自分が
図星すぎて恥ずかしくて・・・・。



それになんだか、この話題で
樫原さんが笑っているのが、
少し辛くて・・・・胸がちくちくした。





それで、菱餅を食べた。


目の前にあったから。

何かしなくちゃ、もうどうしようもなく
パニくってたので、菱餅を食べた。


必死で食べた。1個、2個、3個・・・。


あんまりにも、いきなり食べ始めたあたしを
義兄さんと姉さんもぽかーんと見ていたけど、
姉さんは何か気づいたように、くすっと笑った。


こんなことさせてる原因を作った義兄さんは
「おや、ナナコちゃんはそんなに菱餅が好きなんだ?」と
目を丸くしてびっくりしていたけど。


樫原さんは・・・わかんない。


恥ずかしくて、菱餅を一生懸命食べてて
見ないふりをしてた。




その日、あたしは菱餅を4個も食べてしまった。
さすがに食べすぎだった。


菱餅の食べすぎで夕食が食べれなくて、
夕食のディナーのときに、
シェフが作ってくれた雛祭りコースというべき
豪華なフルコースもあまり食べれなかった。




・・・・・というわけで。


その日以来、あたしは、菱餅が大好きすぎて
しょうがないって、屋敷の皆から思われてる。


3月のお雛祭りの後も、よくお茶の時間に
菱餅が出てくるようになった。


そのたびに、あたしは、
(そこまで菱餅は好きじゃないんだけどな・・・)と
もう既に言えなくて、とりあえず、食べた。



なんか、思い出すと
すごく恥ずかしいんだけど。


菱餅って出されると、
すぐにこれが浮かぶ。




あたし・・・菱餅は・・・・。





・・・・・・・・・・・・・・・・・





菱餅の話題が出て、慌てたあたしは、
ちょっとだけ足を早めて、
1歩、2歩先を歩く。



その後ろに樫原さんがいる。



(菱餅攻撃が終わったと思ったのに、また久しぶりに・・・・!)



もうー、あの思い出が恥ずかしすぎて、
あたしとしては、消し去って欲しいところだったけど、
でも、樫原さんは多分、あたしの好物だと思って
準備してくれたんだよね?


(そりゃぁ菱餅は嫌いじゃないよ?)


誤解されたらいやだな。
樫原さんは、あたしが菱餅好きだと思って
きっと準備してくれたんだと思う。


でも・・・・・。


なんかさっきまで隣を歩いていたのに、
こうやって1歩、2歩先を歩いていると
樫原さんが隣じゃなくて後ろにいる。


そして、絶対あたしのことを見つめているはず。
だって、背中に視線感じるもん!


振り返るのにも、勇気がいる。


さっきのあたしの「ナイショ!」って慌ててのを
絶対に面白がっているはず。


・・・もう!
振り返って何を言えばいいかわからなかった。





でも。


ただ。
こうやって樫原さんと一緒にいられる時間。
傍にいられる時間。
隣を歩いていられる時間が貴重で。


いつか、ずっと樫原さんの傍にいれたらいい。
樫原さんが大好きだから。
こうやって隣を歩く恋人になりたいと
心から思っているんだから。


(恥ずかしがってる場合じゃないや)
せっかく一緒にいるのに、
こんな機会、滅多にないのに
素直になれないのは、いやだ。



あたしは、覚悟を決めて、
くるっと振り返った。


いちお、振り返る前に覚悟を決めて。


だって、樫原さんがあたしのことを
微笑んでみていたら、
あたしはその微笑に心を奪われて、
ぽわーんってなって、
一瞬心をなくした様に
見つめてしまうかもしれないから。






そして。
くるっと振り返ったら。






案の定、樫原さんが、
こっちを見ていた。

ううん、見つめていた。



その顔がとても優しい顔をしてて。
これまで、みたことがないような表情。
何か言いたげな気がするよ?




「・・・・樫原さん?」




一瞬、樫原さんの視線が
あたしの瞳を強く刺す。




(え・・・?)




そして、次の瞬間、樫原さんが
一気に赤くなった気がした。



(あれ・・・・?)



なんか、いつもの樫原さんじゃないみたい。

でも・・・・なんか頬が赤いし、
自分の口を手でふさいで、
天を仰いでいる。
そして、目を合わせてくれない。
なんだか少し取り乱しているみたい。
焦ってる様子だよ。



あたし、ヘンなことしちゃったっけ。
えーっと、菱餅のことをナイショっていって、
それで先に歩いて、振り返った・・・だけだよ?



「樫原さん、どうしたの?」



あたしの問いかけにも、
樫原さんが答えない。


ヘンなの。
多分、あたしの顔には、
沢山のハテナマークが飛び交っているはず。



「ねえ、樫原さん?」

「樫原さん・・・・?」



思わず立ち止まって
樫原さんを見つめる。


目をあわさず、
少し頬を赤らめていた樫原さんが
口をふさいでいた手をそっとはずして、
あたしのほうを見た。



その瞳がとても優しくて、
射抜かれたように、
あたしはどきっとする。




「ど、どうしちゃったの、樫原さん?な、なんか、いきなりびっくりさせちゃった?」



思わず、ドキドキしすぎて、
どもっちゃったあたしは、
樫原さんに負けずに、
自分の頬が赤くなるのを感じる。


いきなり、樫原さんの雰囲気が変わったから。
すごく・・・なんか、今までより
とても優しい感じがする。



少し慌て気味のあたしを不審に思うどころか
樫原さんは、急にくすっと笑った。


そして言う。



「お花見の場所取りした場所も綺麗ですが」
あちらの方にも、すごく綺麗な桜があるんですよ?
観にいってみませんか?



そう聞こえた。



綺麗な桜か~。


お花見の場所取りした場所に座ったら
多分、そこから歩いて桜を愛でるってことはないし。
それに、樫原さんが誘ってくれたのが
とても嬉しかった。


「それに・・・慎一郎様と奥様を2人っきりにさせてあげたいんです」
めったに2人っきりで外出などままならない2人ですからね。




前を歩く義兄さんと姉さんの姿。

それを暗に指差して、樫原さんが
(内緒ですよ)という仕草をした。
あたしは、にっこり笑った。



「そうね。樫原さん、行きましょう」


自然にそう言えた。


その答えを待っていたかのように、
樫原さんがいきなり、あたしの手を握ってきた。


「!!」


驚くあたしを横目に、
樫原さんが、こちらです、と手を引き出した。
一足先を歩く樫原さんの表情は見えない。



いきなり繋がれた手に、
感覚が全て集中する。


(す・・・すごくドキドキするよ)


それに、あたしの手を
引いて歩いてるから。
ちょっとだけ遅れ気味に歩く
あたしが見るのは
樫原さんの執事服の背中。



肩に桜の花びらが1つ舞い落ちる。



あたしは、歩きながらそれに手を伸ばした。
そして、そっとその花びらを取る。



それに気づいた樫原さんが、振り返る。



あたしは指でつまんだ桜の花びらを
ひらり、と見せて落として、微笑んだ。



「ありがとうございます、ナナコお嬢様」


いつもの柔和な笑顔だけど、
どことなく、いつも
お屋敷で見てるのとは違う顔。


樫原さんって、こんな顔もするんだ。
すごく優しそうで・・・・。
じっと見つめられると、
いたたまれなくなる。
恥ずかしさとか、照れ、とか・・・・。


樫原さんって、プライベートの時は
どんな顔をするんだろう。
いつも、執事の仕事をしてる時しか
みることがないから。

普段、仕事終わって部屋とかで
どんなことをしてるんだろう。

よく気がつけば、あたしは
樫原さんのことを全然知らないことに気がついた。

多分・・・樫原さんは有能な人だから
あたしについては、色々知っているはず。
屋敷のお嬢様だから。

でも、あたしは樫原さんのことをあまり知らない。
その事実に気がついて、
少しショックだった。


(でも・・・多分これから知っていけばいい)


素の樫原さんのことを
あまりよく知らなくても、
でも、十分にわかることは多いよ。


とても気配りが上手で、
甘やかしてくれる人で、
そして、優しい目をしてて、
とても動作が優雅なの。


仕事ができて、すごく大人って感じ。
スマートで、そつなく物事をこなす。
入れてくれる紅茶はいつも美味しい。
柔和な笑顔で、たまに冗談を言う。
あたしのことをたまに
じっと見つめていたりする。


九条院家に始めてきた日、
樫原さんがにこって笑ってくれた時に
あたしは樫原さんに一目惚れをした。


こんなに優しそうに笑って
そして、あれこれと心配してくれて
あたしの気持ちをこんなによくわかってくれる人、
どこにもいないって思った。
すごく頼りがいがあって・・・・。
なんか、とても惹かれてしまうの。

その日から、あたしは樫原さんを
お屋敷の中で見かけるたびに
ドキドキしっぱなしだ。


あたし、樫原さんより12も下で、
そんな子どもだから、
相手にされないだろう、って思いながらも、
いつも、樫原さんに想いを寄せることを
とめることができない。


いつか、きっと、今よりもっと
大人になったら、樫原さんに
自分から気持ちを伝えられたらいいな、って
そう思っているぐらい。


今はまだ・・・・樫原さんからすると
妹レベルだろうけど、いつか、きっと・・・!

そう、あたし、あきらめないもん。
いつか、きっと樫原さんに似合う
素敵な女性になる。




あれこれ考えながらも、
握られた手の温かさや
今、この瞬間にあたしはすごく・・・
樫原さんの存在を感じていた。



「あちらをもうしばらく歩いたところにある桜です」

指さす先は、桜並木のピンク色で埋まってる。
あの2人に内緒で、
あたしと樫原さんで観にいく桜の木。


とても綺麗だという。


でも・・・・綺麗な桜より、
あたしは、樫原さんと一緒に、
2人だけで見れるのが嬉しいよ。


本当は・・・今まで
こうやって二人っきりになると、
息が苦しくなって、
沢山喋れないって思ってた。


でも、それは違うってわかった。
2人っきりになると、
それだけで幸せで、
何も喋れなくていいと思うんだ。


そのことを初めて知った。


ただ、一緒にいれることが嬉しくて。
ただ、繋がれた手が嬉しくて。


あたしは、ただ、樫原さんと
手を繋いでいる自分が、
一緒に入れることが幸せだと感じて、
何も言えなかった。


手が温かい。
でも、繋がれた部分が熱い。
樫原さんの手、大きいな。


あたしの手を包み込んでしまってる。
目指す方向へ手を引いてくれてるけど、
その包み方は、どこまでも優しくて。



「お嬢様、少し目を閉じてください」

「え?」

「目を閉じても手は握ってますから大丈夫ですよ?」


そういって樫原さんが微笑む。
その微笑がとても素敵で、
あたしの胸はドキドキする。


胸の鼓動の速さを落ち着けるように
あたしは、そっと目を閉じた。


瞼には、今まで見ていた桜並木と
樫原さんの背中。


瞼を閉じても、手のぬくもりだけで、
どこに自分が歩いていくのかがわかる。


瞼を閉じても、安心して、手をひかれるまま
歩いていくことができるよ。
樫原さんのことが好きだから。


目を閉じていたのは一瞬だったけど、
でも、瞼を開けたときに見えた景色は、
とても・・・・思っていた以上に綺麗だった。






「うわ・・・・!すごい・・・!とっても綺麗・・・・」





水面に流れ込むように枝垂れている桜。
その根元に群になって咲く水仙や菫の花。
薄紅の世界に、水仙の黄色と菫の紫色。
水面は空を映して、水甕色をしてる。
そこに、はらはらと落ちてくる
白くて・・・ほんのり紅がさした桜の花。



思わず見惚れるようにしていたあたし。
その横で見守っててくれる樫原さん。
手はまだ繋がれたまま。





「ナナコ」



不意に声が聴こえた。


!!!!


樫原さんの口から出てきた
あたしの名前の呼び捨て・・・・
ちょっと切なげで、どきっとした。


気づくと、樫原さんが
あたしのすぐ横に立っている。
少し・・・・距離が近い。


なんだか、真剣な顔をして、
あたしを見つめている。


「ナナコ・・・・・・・・/////」


あたしの名前の次に、
何か言ったはずだけど、
急な春の突風で、
思わず桜吹雪が舞い落ちてきて
びっくりしたあたしは、
その続きが聞き取れなかった。



「え?今、聞こえなかった」



ん?って顔をした
あたしの顔を覗き込むように、
ふっと樫原さんが微笑む。


なんか、とても真剣なことを
言ったように思えたんだけどな。



髪の毛が風でなびいて、
乱れてしまった。
すぐ傍で立つ樫原さんの執事服に、
あたしの髪の毛がかかる。



「あ・・・ごめんなさい」


そう言って、樫原さんの
執事服のボタンに絡んだ
あたしの髪の毛を取ろうとした瞬間。




樫原さんが腕を伸ばして、
あたしをぎゅっと抱きしめた。




耳元で、樫原さんが囁く声が―――。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ちょっと過去の時間に戻るのなら














私、樫原侑人がナナコお嬢様のことを
いつから好きになったのだろうか。


それは、私自身もわからない。


ただ、雛祭りの時に慎一郎様が
ナナコお嬢様と自分のことを指した時
思わず心臓が、どくっと跳ねるのを感じた。


今まで、そういうことを考えたことが無かった。


執事長として。
自分が専属で仕える
慎一郎様の奥様の妹君。


自分よりも一回りも下の女の子。



彼女は私のことを、
すごく澄んだ瞳で見つめてくる。
そして、恥ずかしがり屋の猫のように
声をかけようとすると、真っ赤になって
するっと逃げてしまう。


すぐに、自分の専属の中岡の後ろに。
隠れながらも、私のほうを見つめている。


中岡が可愛がっているのはわかっていた。
だから、あえて
自分が出る幕ではないと思ってた。



彼女のことを、いつも
心のどこかで気に留めてはいた。



ただ、その気にとめている彼女が
ここまで自分自身の心の中に住んでいるとは
まったく思わなかった。



九条院家のことは全てお見通しの私でも、
私の心の中にいつの間にか住み着いた
ナナコお嬢様への恋心は
長らく気づかぬままだった。



それが、あの雛祭りの雛人形のことで
慎一郎様が言った言葉。



その言葉は思わぬほど私の心を揺り動かした。



心の中を沢山の思惑が浮かんでくる。




1つは、いつか彼女が誰かに愛され
九条院家を去ってしまう日がくるということ。



2つめは、それを私自身がとても恐れていること。



3つめは、もしもの話でありながらも、
私とナナコお嬢様が恋人になっても、
それはそれで・・・・おかしくないということ。
そして、それはもしかしなくても、
祝福されるであろうということ。



4つめは、その言葉で赤面して何も喋れなくなった
ナナコお嬢様が、もしかして、ではなくて、
私のことに心を寄せてるのではないかという確信。



最初の2つは危惧するべきことで、
後の2つは自分にとって嬉しい解釈。



もし、彼女が私のことを好きならば・・・
彼女のことを自分のものにしたい。



初めて、そう思った。




最初、その想いが自分の中に生まれたとき、
正直にいうならば、戸惑った。



なぜなら、彼女は私よりずっと年下で。
自分が仕える屋敷の主人の義妹。



これまで、沢山の女性が私の前に現れ
そして消えていった。
愛した女性がいるのか?と言われると
それは、今までの私の中ではいない。
命短く美しい花のように、ただ、
枯れるまでの短い時間を過ごすだけなら。
何度でもあったが。



心に決めた相手、や、
心の底から愛する相手、などは
いなかった。

私の心にずっと居座ってしまって
心を占領してしまうような恋などしたことなかった。


なぜなら、私はこの職務が好きで、
そして、自分の主人である慎一郎様と
出逢ってしまっていたから。


天職だと思う。


彼の世話をし、彼の片腕となって手腕を振るうことに
魅力を感じてて、それ以外の楽しみや幸せまでも
手に入れようとは思ってなかった。



そういう自分が、今、
1人の女の子に執着し、手に入れたい、
と感じていることが不思議だった。


同時に戸惑った。



もはや、この想いが消せないものであること。
堂々と私の心の中心に居座っていること。
彼女に愛されたいという自分が存在すること。
そして、彼女に愛されたいと想う自分がいるということ。


(ナナコが見つめるのが自分であって欲しい)



雛祭りの慎一郎様の言葉は、
軽く、夏実奥様にいなされて
終わってしまった。


その言葉のもつ力は、
とても強いものであったけど。



私と結婚すれば慎一郎様の言うとおり
九条院家から出ることなく
ずっとここで暮らしていけるよ。
君はその選択をどう想う?



そう、試しにナナコに言ってみたかった。
彼女がどういうか、知りたくて。


でも、一番好きな人と結婚するんだって
宣言するナナコを前に、私は、
ただ微笑むことしかできなかった。


その微笑が、じりじりと私の心を
刺すように痛かったことを知っているのは
私だけ。



(ナナコは好きな人がいるんだろうか?)



思わず浮かんでくる疑問に、自分で苦笑する。
情けない。
そんな一言さえ聞くのが怖いと想う自分がいる。


ナナコをひそかに観察してて、
多分・・・・、ナナコのこの態度は、
私を意識しているのだろう、
だから私のことが好きなのかもしれないと感じる。

しかし、自分の推測が正しいのか
もしかして、自分の都合の良いように
解釈してるのかの判断が、私にできない。


なぜか、ナナコに関しては、
計算できないから。
私心が邪魔をするから。
冷静な判断ができない。




答えを怖がったり、妙に期待したり、
ナナコと出逢ってから、私の中には沢山の感情が
自分の中に眠っていることに気がついた。



(いつか、ナナコと2人きりになれたら・・・・)



そう想いながら、ひっそりと
彼女に気づかれずに見つめる私は、
年甲斐もなく、ただ、1人の男だった。


これまで、本気で誰かを愛したことがなく、
うまく人間づきあいをしてきた自分自身が、
ここで1人の女の子に心を絡めとられてしまうとは。


どうしても、自分自身では
コントロールできないものがある。
この恋心もそうだし、ナナコの心も。
自分とナナコのこれからも。


人間の心は執事の仕事のように
手腕を振るって、自分の望む方向へ
もって行くことはできない。
予測することはできたとしても。






樫原侑人、29歳。




ナナコへの恋心があることを認めたことは
これまでの人生で一番の不覚だ、と想う。


しかし同時に、
運命の相手と出逢った幸せを感じた。







・・・・・・・・・・・・・・・・・





いつものように仕事をし、終わる一日だった。


(今日はナナコの誕生日だ)


数日前から、心の中のカレンダーには
大きく赤い丸印をつけていた。
実物のカレンダーにつける必要はない。
だって忘れるわけないのだから。


今日の仕事は早めに片付けて
ナナコの誕生日祝いをするために屋敷へ帰ろうと、
相変わらず、義妹のナナコには甘すぎるほど
甘い慎一郎様が、言い出すのを待っていた。



たまに・・・・慎一郎様が手放しで
ナナコのことを甘やかすのを見て
私の心の隅で、少し嫉妬することがある。


恋心に気づくまでは、
それを私が慎一郎様を大事にして
主人と執事として慕っているからだと思っていた。

しかし蓋を開けてみれば、実は
自分がナナコに心を奪われているからだった。


それに気づいてからは・・・・。



たまに複雑な気持ちになる。




慎一郎様は義兄として、
ナナコを十分に愛することができる。


義兄なので、男として
ナナコを愛しているわけではないと
わかりながらも、それでも、ナナコが誰かから
無条件で甘やかされているのをみるのは
正直、いい気持ちはしない。



それは、ナナコの専属である中岡もそうだ。
何かあると、ナナコは、中岡の背中に隠れるように
すぐに中岡に頼る。

それは、専属執事としてついているからだ、
と分りながら、中岡に軽く嫉妬する自分がいる。


ナナコを好きだと気づいてから、
本当に私は色んな自分を発見する。
それに振り回されて、
いやになることもあるけれど
何かの拍子で、屋敷にいるとき
ナナコが笑っている姿をみかければ、
その気持ちは綺麗に消えていくのがわかる。



ナナコがこの屋敷にいるだけで、
同じ空間にいるというだけで、
それだけで、満足できる。


たった、それだけで。



・・・・それだけで満足していたのに。


・・・・・・・・・・・・・・・・・





ナナコの誕生日だからということで
仕事を早めに(無理やり)片付けた
慎一郎様から言いつけられ、
たまたま仕事が休みだった夏実奥様と
ナナコと、自分の4人で、近くの川原へ
お花見に出かけた。



慎一郎様と奥様が2人仲良く先を歩く。


その後ろをナナコと私が。



(家族団欒を楽しみたいから)
という一言で中岡は留守番になった。


私も・・・・家族なのか、と、
なんだか心が温かくなった。


たまに、慎一郎様のこうやった鷹揚で
そして育ちのよさからくる思いやりが
私の心を満たしてくれる。
私を、ただの執事ではなくて、
人間として、特別扱いで大事にしてくれる。
だからこそ、これまで専属として使えてきた。



ナナコと歩く桜並木。

この並木がずっと続けばいいと願う。



取り留めない会話をしながら、
私は隣を歩くナナコを盗み見する。


春の風に散らばる髪の毛をかき上げる指。
桜の綺麗さに目を奪われて上気した頬。
少し緊張した様子でありながら、
私と一緒にいることを嬉しいと表現している。


今日でこの子はまた1つ年を重ねる。


いつまで経っても、
自分との12歳の年の差が埋まることはない。
でも、1つ年を重ねるたびに、
彼女はとても美しくなる。

だんだんと大人びていき、
そして、今では私だけではなく、
歩くたびに誰か男の目を惹くほどだ。

1つづつ年をとるたびに、
彼女が大人の女性になるのを
喜んでいる自分がいる。
彼女が大人になるたびに
だんだんと12歳の年の差が
気持ちの分だけ埋まっていくと思うから。


私と一緒にいるのを緊張しているのが
少し嬉しくて、思わず意地悪をしてしまう。


菱餅を今日のお花見のお菓子に
持ってきた、などと。


彼女が雛祭りの日に何も言わず
ただ菱餅を食べるのをみていて、
私は、もしかしたら、
ナナコも自分のことを・・・と気づいた。


慎一郎様の言葉に真っ赤になって
うつむいたまま、
ずっと菱餅を食べていたのだから。


その動揺の具合が・・・・
妙に心に残ってて。


案の定、話の中で菱餅の話題を振ると
ナナコが真っ赤になって慌ててしまった。


ふふ。
本当に分かり易すぎる。
その真っ赤になった理由は、
私に関係しているんだろ、ナナコ?


恥ずかしがって、
少し早足で歩いてしまったナナコ。
その後ろで、私はくすくす笑いながら、
ナナコの華奢で小さい背中に呟いた。



ナナコ、あなたのことが好きです



春の突風や、花見をする人々の声で
自分が呟いた声が聞こえるとは想わなかった。


でも、私がそう呟いた時、
ナナコが急に振り返った。


それも、大輪の花のように、
ふわっと美しく笑いながら。

(聞こえてしまってたのか)


一瞬で、思わずそう思って、
私はいつもの自分ではないように
焦ってしまった。



そして、すぐ、
聞こえたわけじゃないってことが分かる。
でも・・・・顔が赤くなるのが分かる。


こんなことで恥ずかしく感じるなんて、
まだまだだな、私も。
そういう自分に苦笑する。


「ど、どうしちゃったの、樫原さん?な、なんか、いきなりびっくりさせちゃった?」

そう言いながら、
私の顔を覗き込むナナコ。
心配そうな表情がとても可愛い。


(気持ちを知られてもいいじゃないか)
どのみち、私は
ナナコのことが好きなのだから。
いつかは・・・ナナコの恋人に
なりたいと想っているのだから。


そして、このことは
私1人だけの気持ちではないはず。

きっと、ナナコも・・・・。



そう想うと、妙に肩に力が入っていた
自分に気がつく。
初めて、本当の恋、だからか?


なんでも器用にこなす自分が、
こう、ナナコに対しては、
こんな不器用なところがあるなんて
新発見だ。



・・・・だからこそ、ナナコのことを
好きでしょうがないのかもしれない。

この矛盾が、なんだか心地よかった。




「樫原さん・・・・?」

愛しい彼女が自分の名前を呼ぶ。
いつか、その口から、
「侑人」と呼ばせたい。


そう、多分、ナナコだったら
照れながらも、とても可愛い、
その声で、私に囁いてくれるだろう。


(多分・・・それは遠からぬ未来かな)


確信している自分自身に、苦笑する。
自信があるくせに、
なにかを恐れている自分の矛盾。


欲しいものは必ず手に入れる。
ナナコも。この恋も。


今日は、いい日だ。
ナナコの誕生日だし。
そして、こんな桜が綺麗な場所で、
彼女に愛の言葉を告げることができるのなら
毎年春が巡ってくるたびに、
私とナナコは、今日の、
この良き日を思い出すだろう。



まだ恋人同士になる前に、
2人で歩いた桜並木での想い出を。



心を決めた。
今日こそ、ナナコに言おう。
まだ早い、と思っていたけど、
多分・・・今日はいい日だから。


こういう風に賭けをするように
決断してしまう自分がいることにも気がつく。
全て、ナナコのせいだ。
こんな私にしたのは。

でも、それでも、いい。


2人っきりになりたくて、
ナナコを別の場所に誘う。


その手を握って歩き出す。
きっと、今日初めて握った手だけど、
これからは、何度も繋いで歩くはず。


小さくて可愛い手。



この手を引いて、
どこまでもナナコを連れて去ってしまいたい。
今すぐにでも。



下見で見つけた、特別な場所。


桜や他の春の花が綺麗な場所に
ナナコを連れて行く。


そこに咲き乱れる春の花の
色彩豊かさに目を奪われるナナコに
私の心は釘付けだ。


その仕草や、その姿、1つ1つが
心の中で何度も焼き付けられる。
花よりも綺麗で美しいナナコしか
私の目には映らない。



「ナナコ」


これから話すことは
特別なんだ、とわかってもらうために
いつも心の中で呼んでいる名前を口にする。

口に出した途端、その名前の響きが
どれほど自分の胸を締め付けるか気づく。
この名前すら、愛しすぎる。



今、ここで彼女に告げよう。
私の気持ちを。



多分、私が告げることで
この恋が始まる。
ナナコは・・・・私のことを好きなはずだから。



春の風の勢いに、桜の花びらが乱舞する。
その中にいる私たち二人。
ナナコの桜色をした唇に目を奪われる。



「ナナコ・・・・・、私はあなたのことが好きです」
だれよりも。



そう付け加えた瞬間、強い春風に
自分の愛の言葉が連れ去られた。


2人しかいないこの場所に、
ただ、桜吹雪の風だけがいて、
私たち2人の恋に悪戯をした。



「え?今、聞こえなかった」


いきなりの風で乱れた髪の毛を
耳元で押さえながら
ナナコが尋ねる。


こんな時に聴こえなかったなんて。

タイミングの悪さに
思わず苦笑してしまう。

でも、まぁ、1回で聴こえなくても
これから何度もいう言葉であるから、
なにも困ることはないのだけど。


それに、こういう風にしていて
聴こえないのなら、
抱きしめて、その耳元で聴かせてあげよう。


こっちを覗き込んでくるナナコが
可愛くて仕方ない。


2人っきりになってこれだから、
恋人になって、もっと近い距離でいることができたら
私は、多分・・・・ナナコのことが可愛すぎて
甘やかして甘やかして・・・・離れられなくなる。


ドラッグのようにナナコに溺れる自分が
容易に想像できるところが不思議だった。


多分、誰にも彼女を見せたくない、
独り占めしたいと想うようになって
彼女を独占してしまうのは、
恋人同士になったら、すぐだろう。
思わず、そんなことが頭に浮かんでしまう。

この恋が私にもたらす効果。
それは、予想外のことばかり。
なんでも思い通りに事を運んできた
自分の手に、負えそうにないような、この恋。


多分、この恋は「私」を、
「いつもの私」ではいさせてくれないはずだ。


それでありながらも、
こういう自分自身も・・・悪くないと想う。
この目の前にいる、可愛くて愛しすぎる子に
振り回されて、溺れてしまうのも。



この愛らしくて、小さくて、可愛い存在を
抱きしめることができるのなら。
自分のものにしてしまえるのなら。


「あ・・・ごめんなさい」

ナナコの髪の毛が、風に吹かれて
私の執事服のボタンにかかる。


ボタンに絡んだ髪の毛をはずそうと、
ナナコの指が私の胸元に伸びてくる。


意識せず触っているのだろうけど、
髪の毛をボタンから外しながら
ナナコの指先が私を触る。


その指先に
私の気持ちが、少しづつ乱されていく。



思わず、たまらなくなって
私はナナコを抱きしめた。

さっき、聴き逃した言葉を
もう一度告げたくて。



え?


びっくりした声が聞こえる。

ナナコの身体を自分自身の身体で包むように
ぎゅっと抱きしめる。


ずっと本当はこうしたかった。


ナナコのこと、好きで、
ずっと触れたかった。



(ナナコ、私はあなたのことが好きです)


正攻法に自分の気持ちを伝える。
これ以外の言葉が、あるだろうか。

一緒にいたい。

その言葉だけでは、伝わりきれない
想っていることは全て。




(ナナコのことが好きだ)



それだけ。


好きだと伝えることで
この恋が、2人の運命が
最初の鍵を与えられて
動き出すのが分かる。


ねえ、ナナコ、わかるかい。

今、ここから私たち2人の恋が始まる。

私のことを好きだと言ってほしい。
傍にいたいといってほしい。

その言葉を聴けたのなら、
きっと、私は一生君を離さないのだから。


耳元で囁く愛の言葉。
言葉にならない言葉。



ナナコ、私のことを好きだといってくれ。
ナナコ、ナナコ、ナナコ


何度も、名前を繰り返す。


ずっと驚いたように固まっていた彼女が
少し笑う気配がした。
そして、私の背中に腕が回されて、
しがみついてくる。


(樫原さん・・・・あたし、樫原さんのことが好きだよ)



初めて抱きしめた
ナナコの身体から伝わる鼓動の音。
この音を、ずっと・・・忘れはしない。
何度、これから先、抱きしめたとしても。


胸の中で小さく震えるナナコ。
春風に舞う彼女の髪が
優しく私に触れてくる。
さわさわ、と微かな音が聴こえる。


少しだけ顔を上げると、
そこに広がるは、桜吹雪の中、
ゆったりと流れる水面。
水面に浮かぶ薄紅の桜の花びら。


愛してるよ、ナナコ。


この言葉だけで十分。

樫原さん・・・・って
私の名前を呟く声が
抱きしめた身体ごしに響いてくる。


季節が巡り、また春がきたら
ここに、この場所にまた2人で来よう。
約束だ。

今日のような綺麗すぎて
幸せすぎて泣きたくなるような日々は
多分・・・これからもずっと続いてくるけど。


今日は、とても特別な日だから。


ナナコ、誕生日おめでとう。


心から愛してる。



この気持ちを伝えられて良かった。
これからは、ずっと君の傍にいるよ。












******** Special DAY ! Fin . ***********

HAPPY BIRTHDAY NANAKO!
















◇あとがき◇

いつも仲良くさせていただいている、
執恋お友達のナナコさん(『It‘s lovers』)の
お誕生日祝いとして捧げます。

ナナコさんが大好きな樫原さんで書きました。

どちらかというと、誕生日祝いなので、
恋人設定で2人で誕生日祝いをしている話を
書こうと思っていたのですが、
丁度ナナコさんの住んでいらっしゃる場所の
お花見の時期のことも考えて、
桜を題材に使って、誕生日と絡ませました。


いやぁ・・・・樫原さん。


なんか、書いていると、
めちゃくちゃヒートアップしてくるんですがっ!
書きながら照れるというより、
もっとこんなことを言わせたい、とか
こんな風に言ってほしい、っていう思いが
広がりすぎて、お話が長くなりました。

あたしの話は、SSじゃないな・・・。
これじゃぁ、立派に
前編後編にすれば良かった。


文の量が半端ないです。


もっともっと、甘く甘く・・・・
恋人同士の糖度高い話も好きなんですが、
片思いから両想いになる瞬間の
あのときめきを書きたくて。


樫原さんのキャラを大事にしたいと思いながら、
なんだか・・・(どうなんだろ?)
ちょっと菱餅のこととかで
ギャグに走りそうだと
心配させてしまってすいません。

真面目に書いてます、あの菱餅は。


ちなみに、あたしは菱餅好きです。
雛祭りからの話題をひいて、
この4月の話なんで、
ちょっとネタ詰めすぎですね。

いつもより、長めのお話。
それも、甘い・・・というより、
なんていうんだろう。
切甘、というより、甘、かな。
激甘ではないと思いますが(笑)


ここまで読んでくださった皆様、
ありがとうございます。
誕生日祝いのお話なので、
すごく個人的なお話になってるかとは思いますが、
読んでよかったよ~とか思ってくださるなら、
本当に嬉しいです。

いつも、いつも、ありがとうございます。





14.APRIL.2009 つぐみ

 | GAME:【執/恋】創作  | Page Top↑

Blog状況

最近の記事

カテゴリー

訪問者数

メールフォーム