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『執事達の恋愛事情』の創作になります。
いつも、ブログに遊びに来ていただいてる
きょう様に捧げます。

真壁とのラブラブな甘い話になります。
(多分・・・あたしの甘さの定義が当たっていたらw)


リク内容は『ヒロインの卒業祝いをする真壁』
とのことでした。


なので、時間軸はいっきに1年飛び越して
白凛学園を卒業する頃のお話です。

話が長くなったので、前編・後編と分けて
UPします。後編は来週初め頃。


多少のネタバレがあります♪
卒業後の設定を考えるのが、
妄想だとはいえ、楽しかったです(笑)


以下、創作になります。
どうぞ、ご注意してお読みくださいませ♪


↓↓↓↓




***** Graduation  ~ All for you ~ ******

FOR KYO!









あたしが九条院家にやってきてから
2度目の春がやってきた。


今日は、白凛学園の卒業式。
そう、あたしは、今日で白凛を卒業する。


ずっと、この日を待っていた。
あたしの執事で・・・・、
恋人の真壁さんとの約束があったから。



(今日が最後だね、この制服も)


あたしは、制服のリボンを愛しそうに撫でた。


早く制服を脱ぐ日がこればいいと思ってた。
でも、いざ、こうやって制服とお別れの日が来ると、
なんだかとても寂しいというか切なくなる。



明日からは、高校生じゃない。



卒業した後は、しばらくイギリスへ
留学することが決まってる。


4年ほど・・・・イギリスの大学へ行く予定。



もちろん、専属執事の真壁さんも一緒に行く。

日本を離れることを決めたのは、あたし。


九条院家での生活が大好きだけど、
でも、もう高校も卒業するなら、
自分と真壁さんしかいない環境にしたかった。


日本にいる間は、他の誰かの目を気にする必要が
あるかもしれないから。


だから、2人でいても誰にも何もいわれない環境へ。

そう思って、白凛を卒業したら、
海外へ行こうと決めていた。


イギリスに決めるときは、真壁さんと一緒に決めた。

あたしが興味のある分野を学ぶために。


でも、一番考慮したのは、真壁さんの意思。
一生、あたしの傍にいると誓った真壁さんは
あたしが住むところしか住めないから、
真壁さんが住みたいと思う国を選んだ。


それでイギリスに決めた。




今日の式が終わったら、
すぐ準備して、1週間後には日本を発つ。


義兄さんがイギリスでの滞在先は準備してくれた。
九条院家と懇意にしている一族の屋敷に
しばらく滞在した後、九条院家の別荘として
新たに購入したマナーハウスに移る。

まず、現地の生活になれるまでは、
真壁さんと一緒に、知人の屋敷にホームステイをして、
半年ほどで、九条院家のマナーハウスでの生活。




(本当に2人っきりになれるまで、あと半年か)



半年、って、6ヶ月。
長いと思うけど、でも苦にはならない。


だって、それだけ待てば、
真壁さんと一緒に、人の目を気にせずに
付き合える生活になるんだもの。


これまでずっと、我慢していた。


まずは白凛を卒業するまで、と。
大人になるまで、真壁さんはあたしのことを
奪うのを待つと誓ってくれた、あの日。


心を通じ合わせたあの日から、
あたしはその日が来るのを、心から楽しみに、
いえ、ずっと夢見ている。



まずは、卒業すること。
これが、ずっとこれまでの目標だった。






6ヶ月なんて、すぐだ。







・・・・・・・・・





「きょう、卒業おめでとう!」
「きょうちゃん、卒業おめでとう」



姉さんと義兄さんが卒業式に来てくれた。


2人ともこなくてもいいよ、って言ったのに、
義兄さんは無理に仕事を片付けて、
(そしていつも通り樫原さんも一緒に)
卒業式に来てくれた。


中岡さんも、仕事が休みだったらしいのに
お嬢様の卒業式ですから、と勤務以外で来てくれた。


あたしの専属執事でもある真壁さんもいるから、
卒業式に来てくれたのは、
姉さん、義兄さん、樫原さん、中岡さん、真壁さん・・・・。


こんな5人も来てくれるなんて、
あたしは少し恥ずかしかったけど、
でも嬉しかった。


ずっと、お父さんもお母さんもいなくて。
中学校の卒業式に来てくれたのは
姉さんだけだったから。

それが、あれから3年の間に
姉さんが結婚して、九条院家での生活が始まり、
今、あたしの家族は・・・・こんなに沢山いる。



それが、ただただ、嬉しかった。



沢山の人に囲まれて、
こうやって高校の卒業式を迎えられるなんて
思ってもなかったから。


思えば、九条院家のお嬢様になるなんて、
本当に想像することもなかった。
姉さんが、財閥の御曹司と結婚するなんて・・・。


そして、あたしもお嬢様になって、
専属の執事をつけてもらって、
毎日使用人達にかしずかれる生活をするなんて。


この白凛学園にきた時も、正直、とても戸惑った。
でも、あたしには、支えてくれる専属執事がいて、
九条院家の沢山の優しい人がいてくれて。




(あたし、すごく幸せだよ・・・)




義兄さんと姉さんが記念写真を写す、と
あっちがいいだの、こっちがいいだの言っている。
樫原さんは、白凛の文字が入るように
カメラを片手に、義兄さんと姉さんに
写真を写す場所を指差している。

そして、中岡さんがその横で
またいくつか花束を持っている。
なんだか、沢山・・・・。
多分、隆也君や誠吾君、瞬くん、
その人たちからの花束なんだと思う。


思わず、白凛学園の入り口で
卒業式の花吹雪のなか、あたしは少し涙ぐんだ。


その様子を見て、
傍で片時もはなれずついている
真壁さんがくすっと笑う。


そして、少し前に立って、人目から
あたしを隠すようにして、
さっとあたしの目に浮かんだ涙を
指でぬぐってくれる。


「泣くのはまだ早いぞ、きょう」


優しくあたしの顔を覗き込んでくる。


執事服が、相変わらず真壁さんはかっこいい。
こういう格好しているのに、
たまに誰も見ていないのを確認して
恋人して接してくれる真壁さんが大好き。


「だって、嬉しくて」


その答えに、真壁さんの表情が、
その瞳が、もっと優しくなる。


「感激して涙ぐむ姿は可愛すぎるから、早く泣きやめ」


からかい混じりの声で、そうあたしに呟く。
そして、少しだけ、あたしの髪の毛を撫でた。

その手が優しくて、あたしは一瞬、
ここが白凛で、周りが卒業式で
沢山の人がいることを忘れてしまう。
思わず目を閉じた。


「だって、今日が来るのを、すごく楽しみにしてたんだよ?」


真壁さんが、執事の仕事のように
春の風に散らばるあたしの髪の毛を直すフリをして
髪の毛や服を整えるように触る。


そしてあたししか聴こえない優しい声で言う。



「俺だってそうだよ、きょう」



しんみりする気配がして
ゆっくり目を開けると、
目の前に真壁さんの顔がある。
その瞳は、あたしをじっと見つめている。



「卒業おめでとう」



今日聞いたお祝いの言葉のなかでも
これが一番嬉しかった。


あたしの大好きな人。
ずっとあたしの心を掴んで離さない人。
たった、それだけの言葉なのに、
あたしの心はすごく満たされていく。




「これまで、長かったな」


スカートの裾や、あたしが持っている
証書を受け取りながら、真壁さんが
そう呟くのは聴こえる。


(ようやく、あたし、卒業だね)


卒業する、という意味を、
真壁さんも、もちろん覚えている。


これまで意図的に止めていた、
あたしたちの仲が、
今まで以上になるということ。



17で真壁さんに出会ったとき、
真壁さんは22だった。
今度あたしは19になる。


出逢ってから春が2回来た。
この春がすぎたら、あたしの誕生日が来る。
そして、誕生日をすぎたら、
真壁さんのお誕生日が来る。


ずっと5歳の年の差は変わらない。


でも、この5歳は大きくて。


あたしたちが気持ちを確認しあったとき、
真壁さんはあたしが大人になるまで
手を出さない、と約束した。


高校を卒業するまでは・・・・と
真壁さんが少し切なそうに、
あたしをぎゅっと抱きしめて
約束してくれたのを思い出す。


大人な真壁さんに似合う女の子になりたくて、
あたしは精一杯背伸びしたけど、
でも、もう、そんな必要はなくなる。


あたしは、真壁さんのものになるし、
彼を独り占めする大人の女性になる。


あたしはもう大人だよ。
真壁さんのことが好きでしょうがないから、
真壁さんに奪って欲しい。


何度そう心の中で言ったか。


あたしに手を出さない真壁さんに
じれることはよくあった。
真壁さんにそのことで迫ることも。


でも、いつも真壁さんは、
あたしを優しく包んでくれた。


焦らなくていい。
大人になるまで待つ。
時がたてば自然にそうなるから大丈夫だ。
美味しいものは最後に取っておく性分だと
笑うこともあった。


(卒業したら・・・・あたしは真壁さんと・・・)


これまで長かった、って言葉が
真壁さんも実は我慢してたんだ、って
すごく伝わってきて。


これまでそんな素振りはあんまり見せなくて
ただ、あたしだけが求めているような、
あたしだけが焦っているような感じだったのに。



こんな日にそういうなんて、ずるいよ。



でも・・・・嬉しい。




真壁さんもきっときっと、
今日まで指折り数えて待っていたんだね。



そう感じられて、あたしは嬉しかった。
少しだけ恥ずかしくて、はにかんでしまった。


「・・・・その顔は俺と2人っきりの時だけにしてくれ」


苦笑するようにこっちを見つめて
笑う真壁さんがいる。

そういう独占欲さえ、あたしの心を
時めかせる。




「きょう!こっちで写真を写しましょう」

夏実姉さんがあたしたちを呼ぶ。

そっちの方を向くと、にこにこ笑顔の義兄さんに
カメラを構えた樫原さん。
そして、手を振っている姉さんの傍に
沢山の花束を抱えた中岡さんがいる。


「はーい!」


嬉しくて元気よく返事をしたあたしを
真壁さんが、微笑みながら見つめていた。



「お嬢様、あちらへ」


さりげなく手をとってエスコートしてくれる。
桜の花吹雪がさっと押し寄せる。

白凛のホールから校門までの間の桜並木。
とても綺麗。
思わず見惚れてしまう。
あちらこちらで、卒業を祝う同級生と
その家族が楽しそうに話をしていたりする。



(ようやく、卒業だもんね)


あたしの手をとり、真壁さんが、
姉さんたちの輪の中に連れてくる。



「お嬢様。記念撮影の前に。」

優しく微笑みながら、
髪のついた桜の花びらを取ってくれた。


その花びらをあたしに見せて、
そっと花びらを下に落とす。

その仕草がとても優しくて、
あたしは真壁さんを見上げて微笑んだ。
真壁さんもすごく優しい目で
あたしのことを見てる。


その様子を見ていた義兄さんが、

「真壁がこんなにも、優しそうなのは初めて見たよ」

なんて、にこにこしながら言うもんだから。


「っ・・・!だ、旦那様!」


「あら?真壁さんはいつも、きょうには特別優しいわよ?」


夏実姉さんが含んだ言い方をして、
こちらを見る。


真壁さんは少し慌てるし、
あたしは、くすっと笑った。



あたしと真壁さんの事情を知っているのは
樫原さんと中岡さんだけ。
その2人も、なにか思い出し笑いのように
くすくすと笑ってる。


姉さんには、真壁さんとの仲を言ってないけど、
さすがに妹のことだから、勘付いてるみたい。


そんな中、真壁さんが顔を赤くして
うつむいていた。
眉間に皺が入ってるし。
多分恥ずかしいのを隠そうとしてるのね。


久しぶりに見た真壁さんの赤面した顔。
その様子がとても可愛くて、
頬を緩む自分をとめられなかった。






・・・・・・・・・・・・・・・・・・




卒業式を終えて、白凛をでた後、
あたし達は、九条院家へ帰った。

今日の夜は、あたしの卒業祝いと称して
うちのシェフが腕を振るった豪華なディナーだ。


本当は、フレンチレストランへいく予定だったけど、
せっかくのお嬢様の卒業のお祝いのディナーを
作らせてもらえないなんて・・・・と、九条院家の
シェフが嘆いていたというのを聞いて、
あたしから、義兄さんに頼んで、
今日のお祝いは屋敷でしてもらうことになった。



あたしの卒業のことを、
こうやって屋敷の人たちも喜んでくれているのが
とても・・・・不思議で嬉しかった。


式から帰ってきたら、入り口に使用人達が
一列に並んで出迎えてくれた。
沢山のお祝いの言葉を添えて。


その姿に、あたしは、また感動してしまった。





・・・・・・・・・・・・・・




自室のウォークインクローゼットで、
ディナーで着る服をどうしようか迷ってると
真壁さんが入ってきた。


もう、最近はノックをしない。


恋人同士だから、というのもあるけど、
ノックをしない分だけ、ただの専属執事以上に
もっと距離が近付いてるような気がするから。


屋敷に来たときに、わざわざ真壁さんに
ノックするように頼んだことを思い出す。


あの時は、こういう仲に、
この人となるとは思わなかった。




「お嬢様、本日のお召し物はお決まりですか?」


その他人行儀な喋り方に苦笑する。


ここはクローゼットで誰も見てないよ、あたしたちを?


あたしは、真壁さんの首元に両手を伸ばして
抱きついて、甘えた。
それを合図に、もちろん、真壁さんだって、
あたしの腰に手を回して抱きしめてくれる。


この腕の強さが好き。
あたしよりも、すごく高い背を
少し屈めてくれることも。


その執事服から香る、真壁さんの香水も。



「本当に、きょうは甘えっこだな」



くすっと笑う真壁さん。
甘えられるのが本当は好きなくせに。



あたしは、返事の代わりに
真壁さんにキスをした。
その余裕のある言葉を塞いでしまいたくて。



「っ・・・・・!」


いきなりあたしから、
ディープキスをしてきたものだから、
真壁さんが少し驚いて、たじろぐのがわかる。



でも、そんなの気にしない。



わざとだもん。



いつも、真壁さんがサプライズで、
形勢逆転するように、今日はあたしが。



真壁さんの唇を味わうように吸う。



沢山、好きすぎて、こんなキスだけでは
あたしの気持ちが伝えられないけど。


最初は驚いていて反応してこなかった真壁さんが
キスされながらも、ふっと笑う気配がして、
優しくキスを返してきた。



その優しさが、その激しさが嬉しくて。




あたしたちは夢中でキスした。



唇を離すのが嫌で。
食べてしまいたいくらい。



キスが、好きで好きでたまらない。


ううん、真壁さんが、
好きで好きでたまらない。



真壁さんのキスはどうしてこんなに、
美味しくて甘くて、そして
夢中にさせてくれるんだろう。




長らくキスをしているうちに、
力が抜けてきて、ふらっとする。
それさえ許さない真壁さんの腕。
あたしをしっかり抱きしめてて。



いつも、こうやって沢山、めちゃくちに
キスした後、最初にギブアップするのは
あたしの方。


頭がとろけそうになって、
キスができなくなっちゃって。



うっとりしているのはあたしだけじゃなくて
真壁さんもそうだけど、
なんだか負けた気がして悔しいのは
ちょっとだけある。




でも・・・それさえも許せる。



キスの後、真壁さんが
あたしのことをとても、とても、
愛しそうに抱きしめてくれるから。



こうやってしてくれるところも好き。



「きょう、好きだ」


「お前のことを愛してる」


何度も耳元で繰り返されて、
髪の毛を撫でられる。



こんな風に大事にされて、
あたしは、とても幸せだと思う。



「真壁さん・・・・」


「なに?」


「約束・・・・覚えてる?」


真壁さんがくすっと笑う。


「お前こそ、覚えてたのか?」


意地悪だ。
あたしがどれだけ、今日、
この日を待ち望んでいたか
わかっているくせに。


「真壁さんこそ、覚えてたの?」

少し頬を膨らませてみる。
拗ねるフリをしても、この人には効かないって
わかってるけど、でも甘えたいから。


「ああ、覚えてるよ」
「ずっと待ち望んでいたから」


そういって、真壁さんが抱きしめた
あたしの髪の毛に顔をうずめる。
そして、ゆっくりと指を髪の毛にくぐらせ
更に強く抱きしめる。


「ねえ、真壁さん?」

「どうした?」

「もう1つ、約束覚えてる?」

「もう1つ?」

「うん」


少し考えるフリをしているのがわかる。
すぐに答えてしまうのが悔しいからでしょ?


もう、真壁さんが思っていることが
だいぶわかってきた。
たまに、驚かされるけど。

でも、気持ちが通じるように
なってきてるのは知ってる。


「覚えてるよ」


「どんな約束?」

わざと聞いてみる。
忘れてるはずはないけど、
確認したかっただけ。


それに・・・・こういう時間、
こういう会話が好きだから。
真壁さんに無条件に甘えられて、
そして、甘やかされる。



くすっと真壁さんが笑う。


そうやって笑ってごまかすなんてずるいよ。




「いちいち確認しないと不安なのか?」


悪戯っぽい口調で、そう問い詰められる。
その核心に、あたしはどきっとする。



「確認なんかしなくても、俺がきょうのことで忘れることなんて1つもないよ」


そういって、真壁さんが少し身体を離した。
そして、あたしの横顔を、手の甲で優しく撫でる。


「いつ、どんな表情をしていたか」


その手で、指で、あたしの唇を押さえる。
その感触が気持ちよくて、あたしは目を閉じた。



「いつ、この口からどんな言葉が出たか」



その指が、あたしの髪の毛をかきあげて、
耳元をあらわにする。


「いつ、俺の言葉できょうがどれだけ歓んだかさえ、覚えてる」


ゆっくり、またあたしにキスをしてくる。
額や頬、鼻先や、唇、そして耳朶。


真壁さんの唇が触れる先々で、
あたしの感覚が、すごく敏感になって、
震えるような刺激が伝わってくる。


真壁さんの少し抑えたような息遣いが聴こえる。
抱きしめられている身体から伝わる鼓動の音。
身体ごとに響いてくる、低くて、甘い声。



こうやって、あたしのことを
ここまで夢中にさせてくれる。
それが、ずるいと思う。
ずるいと思いながらも、それに溺れてしまう。



「真壁さん・・・・大好きだよ」


「わかってる」



こういう余裕な返事でさえ・・・愛しい。
真壁さんが降らすキスの嵐に
あたしは身をゆだねた。





・・・・・・・・・・・・・・・・




夕食の席は、すごく豪華だった。
いつも、九条院家のシェフが作る料理は
美味しいのだけど、
今日はいっそう腕を振るってて、
見栄えもさることながら、色使いや、
その味、そして、全てあたしの好物が並べられるという
すごい待遇だった。


「わあ、すごい!今日の料理は・・・・本当に感動するわ!」


思わず笑みがこぼれてしまう。
そんなあたしを、部屋の隅で立っているシェフが
嬉しそうにみているのがわかる。


「ありがとうございます。とても美味しいわ!」


にっこり笑ってお礼を伝えた。


その様子を見て、夏実姉さんも義兄さんも笑ってる。
傍に控えて給仕をしている樫原さんも、真壁さんも。


こうやって義兄さん夫婦と食事を
一緒にするって、滅多にない。
というのも、義兄さんの仕事が忙しいから。
夏実姉さんも九条院家の奥様としての仕事もあって、
なかなか3人揃っての食事は少ない。


でも、今日は特別だから。


そういって、いつもはバタバタと仕事をこなしながら、
合間に食事をしている義兄さんも、ゆっくりと
一緒にディナーを楽しんでくれている。


義兄さんと姉さんは、新婚生活1年を越すのに
いまだにラブラブで、その様子がとても羨ましい。
食事をしながらも、2人が会話の途中で
アイコンタクトをとっているのも。



こういう2人みたいに、
あたしも真壁さんと人目を気にすることなく
好きだと伝え合える仲になりたいな。


そう思って、真壁さんのほうをちらりと見たら、
真壁さんが、あたしだけにわかるように微笑んだ。


そういう小さいことが、いちいち嬉しい。


義兄さんからの卒業祝いは、
イギリスの九条院家のマナーハウスだ。
これは、もう事前に決められて、
既に現地で購入されて、あとは内装だけらしい。


姉さんからは、あたしがずっと欲しくてたまらなかった
靴デザイナーのブランドで、今期デザイン、
洒落た靴が10点あまりと、
その靴をおそろいの服一式だった。


全て、そのデザイナーのブランドライン。
少し大人っぽくなるように、って笑っていた。



もう制服は卒業だから、また慎一郎さんに
服を買ってもらいなさいね、と笑っていた。
その笑顔を見て、義兄さんも同意して、
樫原さんになにやら言いつけていた。


「なにが欲しい?なんだって叶えてあげる」


これが義兄さんのあたしへの口癖だ。
二人揃って、ううん、義兄さんのほうが特に
あたしに甘いんだから。


イギリス行きが1週間後に控えてて、
その準備もあるし、荷物も
あちらに送らなくてはいけない。


そんな中であっても、
姉さんからのプレゼントはとても嬉しかった。
だって・・・・真壁さんが好きそうなイメージの服が
すごく沢山あったから。


もう、そろそろ、
あたしは女の子じゃなくて
女性になる。
だから、それらしい格好をしたい。


そう思っていたのが、無意識のうちに
姉さんに通じていたのかしら。







・・・・・・・・・・・・・・・




夕食のディナーを終えて、
あたしは、自室でのんびりしていた。

さすがに、今日は卒業式だったから
朝から準備やら、緊張したりとかで、
疲れたな。


制服は既にランドリー係に回されてる。
鞄もきれいに磨かれて、しまわれる準備がされてる。
部屋の机の傍にある本棚の教科書も、
全て綺麗にまとめられていた。



(真壁さん、仕事が速いなぁ)



思わず、変なところで感心しちゃう。


その手際のよさが、あたしが卒業するのを
実はすごく心待ちにしていたような心を
現している気がして、あたしは、少しにんまりとした。



不意にドアが開いて、真壁さんが入ってきた。


「真壁さん。もう荷物まとめたりとか早いね」


「1週間後にはイギリス行きですので、早めにそちらは片付けさせていただきました」



かしこまって答える真壁さん。


「1週間後には、もう日本にいないなんて、不思議ね」


そのあたしの言葉に真壁さんがくすっと笑う。


「明日からの1週間は、慎一郎様のご命令によりお嬢様の出発準備になります。さっそく服を購入したりと、なかなか忙しいですよ」


「ふふ。やっぱり服を買いに行くんだね」


義兄さんはあたしに甘い。
そして、あたしのことをお人形さんのように
沢山の服と遊び道具を与えて、
本当に呆れるくらいに甘やかす。


ディナーのときに服の話が出たから、
多分こうなるだろうと思ったけど、
でも、ショッピングで真壁さんと2人で
街に出られるのは、正直に嬉しかった。


2人だけの時間が・・・もっと欲しいって
いつも思ってるから。
それに、真壁さんが気に入ってくれる服を
あたしも着たいから。



「お嬢様。なにか本日の御用はありますでしょうか?」



「んー、そうだなぁ」


あたしは少し考えるフリをした。
だって、すぐに「何もない」っていうのって、
それで会話が終わっちゃうから。
せっかくの夜だし、今日はもう少し長く
真壁さんと一緒にいたかった。

別に理由がないのに、もったいぶるような
返事をしているあたしに、真壁さんがくすっと笑った。


「もし、本日の御用がないようでしたら、私からお嬢様に1つお願いがあります」


「え?なあに?」


いつもは、ここで夜の挨拶をして
おやすみなさいのキスなのに、
今日は意外なことを真壁さんが言ったので、
あたしは目を丸くした。


「私からのお願いといいますのは」

「うん?」


「お嬢様のこれからの時間を私に下さい」


「えっ・・・・!そ、それって・・・?」


思わずびっくりしてしまった。


これからの時間って・・・
もう時計は深夜、日付が変わるまで1~2時間だ。
もしかして、真壁さん・・・・?


「ええ。わかりました。これからの用はありませんので、今日のお仕事は終わって下さい」


少し期待して、あたしは目を輝かした。
そんなあたしの頬を真壁さんが、
ちょんとつついた。


「っ・・・・!」



「なに期待してるんだ?」

思わぬ仕草にあたしは、もっとびっくりした。
その様子を見て、真壁さんが笑う。



「出かけたいところがあるんだ」



「え?出かけるって・・・?」



「さあ、準備して。出かけるぞ」

質問攻めのあたしに答えず、
真壁さんはあたしの背中に手を回して、
ウォークインクローゼとに連れて行った。


ぽかーんとしているあたしを横目に、
勝手にクローゼットから服を選ぶ。


・・・そこに並んでいる服のほとんどは
真壁さんが好きな服だ。


最初は、引っ越してきたときに
義兄さんが沢山買ってくれた服ばかりだったけど、
真壁さんと恋人同士になってから、
だんだんとあたしのクローゼットの服は
真壁さん好みになっていった。


たまに2人で出かけたり、
休日を一緒にすごしたりするときは、
こうやって真壁さんがあたしの服を選ぶことがある。


こういう、真壁さんのあたしのプライベートに
踏み込んでくるところが、恋人同士って感じがして、
実はそんなに嫌じゃない。

だって、真壁さんが選んでくれる組み合わせは
真壁さんが大好きなあたしになるんだから。



「よし、これとこれだな。さあ、着替えて。着替えたらすぐ出発だ」



クローゼットから選んだ服を
真壁さんがあたしに押し付けた。
そして、クローゼットを出て行こうとする。



「ま、待って!真壁さん!!この服って・・・」



その声で振り返った真壁さんが、
悪戯っ子ぽく瞳を輝かす。



「なに?着替えを手伝って欲しい?」



え!?


思わずその言葉に、
あたしは真っ赤になってしまった。
着替えを手伝うって・・・・!!



「冗談だよ」


真っ赤になって、口をぱくぱくさせてる
あたしを見て、くすくすと真壁さんが笑う。


「早く着替えろ。俺も着替えくるから」



そう言って、するっと扉の向こうに消えた。


1人残されたウォークインクローゼットの中のあたし。
いきなりの展開で、びっくりしてしまったけど、
とりあえず、出かけるというからには、
まず着替えなくちゃ。


真壁さんが選んでくれた服に
あたしは、するすると着替え始めた。







********* Graduation 前編終了 **********

後編へ続く。




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