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風紋  03/05/2008  
風紋〈上〉 (双葉文庫)風紋〈上〉 (双葉文庫)
(1996/09)
乃南 アサ

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『風紋』 乃南アサ

久しぶりに、乃南さんの作品を読みました。
前に読んだのは、確か10年以上前だから、読んだのも覚えてないし。
(たしか、『窓』だったかな)本当に久しぶり。

確かどこかの書評で、乃南さんの作品で、『風紋』と『晩鐘』が
続きものの話だということを聞いたことがあるから。
続き物を書いた、ってことは、それだけ、元の作品に力があって、
そして、その登場人物のその後の生活を描くだけの、
力のある作品なんだろう、と思った。
1つの作品で話が終わりきれなくて、その後の、何年後かのことも
書かせてしまう、っていうのは、それだけ、そこから溢れるもの、
語るべきことがあったからだと思うから、
続編を作ってしまう作品っていうのは、実は好きだったりするのです。

『風紋』を読みながら思ったこと。
非常に緻密で、そして観たまま全て情景を想像できるほど
表現された日常生活の場面が、時にはしつこいほどに、
描き出していること。文量もさることながら、ここまで細かく
この作品を描いているって、非常に作家の力量があるなぁと感じました。

『風紋』のストーリーは、ある日突然起きた殺人事件の話。
犯罪被害者の家族の目を、母を殺された娘の目で描き出し、
残された家族が、傷つき、お互いに心がバラバラになりながらも、
再出発を切らないといけない葛藤や苦しさを描き、
一方では、犯罪加害者とされる容疑者の妻の目から、
犯罪者の家族となった日からの転落を描く。

一人の人間が殺された、という事実には、殺された人間、
そして殺した人間、二人がいて成り立つものだけど、
その殺人は、その二人の周囲の人々、家族の運命をも変えていく。
暴力のような、流れに逆らうことができず巻き込まれていく人々の姿が
この作品では中心として描かれている。
事件は、被害者・加害者だけで終わるものでもなく、その周囲まで、
そして、その事件の余波により、加害者の家族もまた傷つけられ、
被害者となりうる。

読んでいて苦しい作品でした。
母を殺された娘の真裕子が、繰り返し繰り返し、
この事件で、どうして母が殺されたのか、そしてこの事件が
裁判になって、容疑者が裁かれても、そこにはもう母の姿はなく、
死んだ人が忘れられていく事実。
一方の容疑者の妻の香織の視点からは、ある日いきなり夫が
容疑者として捕まり、生活が暗転し、どん底に突き落とされ、
幼い子供を2人抱えながら、これからの将来が見えず、
段々と堕ちていくこと。

どんな結果に終わっても、結局はたくさんの人が苦しみ、
そして、傷つけ、巻き込まれていく。
この非情な事実がとても苦しかったです。

只今、続編の『晩鐘』を読書中。
こちらでは、容疑者とされた松永の息子、大輔の視点から
犯罪加害者の家族として残された人々の人生が描かれている模様。
続編も読み終わったら、この物語の結末が見えてくるかな。

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