2007 10 / 09 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11 next month
スポンサーサイト  --/--/--  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 | スポンサー広告  | Page Top↑
2007年10月まとめ  10/31/2007  
2007年10月の読書記録

それぞれ、読書記録とリンクさせてます。

1日 『鹿男あをによし』万城目学
2日 『鴨川ホルモー』万城目学
3日 『一瞬の風になれ』佐藤多佳子
4日 『少女七竈と7人の可愛そうな大人』桜庭一樹
5日 『裁縫師』小池昌代
6日 『少女には向かない職業』桜庭一樹
7日 『サンカクカンケイ』小手鞠るい 『イッツオンリートーク』絲山秋子 『あなたの呼吸が止まるまで』島本理生
8日 『天国はまだ遠く』瀬尾まいこ
9日 『木漏れ日に泳ぐ魚』恩田陸
10日『きみの友だち』重松清
11日『玻璃の天』北村薫
12日『クジラの彼』有川浩
13日『七姫幻想』森谷明子
14日『青い鳥』重松清
15日『夜明けの縁をさ迷う人々』小川洋子
16日『塩の街』有川浩
17日『遮光』中村文則
18日『スコーレNo.4』宮下奈都 『漢方日記』中島たい子
19日『ランナー』あさのあつこ
20日『チョコレートコスモス』恩田陸 『Run!Run!Run!』桂望実
21日『雪の華』伊藤たかみ
22日『ぼくの双子の妹たち』白石公子
『建てて、いい?』中島たい子
23日『クドリャフカの順番 十文字事件』米澤穂信 『朝一番、やる気がふくらむ言葉』中山庸子
24日『氷の海のガレオン』木地雅映子
25日『包帯クラブ』天童荒太
26日『失われた町』三崎亜記
27日『氷菓』米澤穂信
28日『地に埋もれて』あさのあつこ
29日『よろづ春夏冬中』長野まゆみ
逃亡くそたわけ』絲山秋子
遠まわりする雛』米澤穂信
30日『風に舞いあがるビニールシート』森絵都
31日『階段途中のビッグ・ノイズ』越谷オサム


以上、40作を読破。

一ヶ月を通してみての感想。

2007年10月は良質な本ばかりを読めた、と思う。
『スコーレNo.4』とか、新人作家にしては上質で読めて幸せだった。
森絵都の直木賞受賞作『風に舞いあがるビニールシート』、
これには参った。予想もしていない展開で、定番といえば定番なんだけど、
収録されている作品中の表題の短編にやられた。
不意打ちで泣いてしまったのは久しぶり。

あと、もう一つ大きな読書出来事としては、
3人の作家が自分のお気に入りにインプットされたこと。
万城目学に桜庭一樹、そして米澤穂信。
若手な3人の作風が凄く気に入った。
万城目学はまだ2作しかないから、今後期待。
桜庭一樹の本は昔の作品より、最近の作品が好き。
米澤穂信は、古典部シリーズ最高。はまってます。

読書ブログを運営してみて2ヶ月。
1ヶ月目に比べたら、2ヶ月目の今月は、
あれこれと勧められるままに読んだ本が多かった。
そして読んだあとに、勧められた事を感謝するのが多かった。
偏見を持たずに、あれこれと読んだのが良かった。
新たに出会った作家が多いのも、非常に良い。
ダヴィンチにも、本の雑誌にも助けられた。
感謝、感謝。
良い読書が出来た1ヶ月だった。

40作はがんばったな。これだったら2007年の元旦の目標、
一年間で100冊は、かるくクリアできそうな調子。
9・10月で、読破70冊。
その前までにも読んでいるから、既に100冊イってるね。


2007年10月のベスト5は下記のよう。(リンクは自分の記事)



No1、「少女七竈と7人の可愛そうな大人」桜庭一樹

No2、「鹿男あをによし」万城目学

No3、「遠まわりする雛」米澤穂信

No4、「氷の海のガレオン」木地雅映子

No5、「スコーレNo.4」宮下奈都
「階段途中のビッグ・ノイズ」越谷オサム


1位の「少女七竈と7人の可愛そうな大人」は、装丁も素敵だし、
話自体もとても好みだったので、本屋で買ってこようと思ってる。
買ってもいい、と惚れこむほどの作品。
読むと、哀しくて切なくて、ほろ苦い初恋の味がするんだよね。

「鹿男あをによし」は作品としてまとまってて、誰かにお勧めしても
はずれない、っていう出来なので、2位。

勿論、古典部シリーズにはまったからには、そこから1冊って訳で、
3位に「遠まわりする雛」を入れてみた。

4位の「氷の海のガレオン」は異色な作品だからこそ、
忘れずにいれておこう。伝説の作品、っていうお触書は本当だった。
こんな作品読んだことない!って思うぐらいな
衝撃的な、作品だった。
絶版なのが惜しい。図書館とかではおいているはず。
文庫化されたらしいけど、手に入るのかな~。

5位に2作いれたのは、どちらも落とせない作品だから。
スコーレは、文章自体、作品の構成が上質で、読後が良い。
階段途中は、懐かしい記憶を呼び覚ましてくれる作品。
映画化に向いてる作品、だと思う。



少女七竈と七人の可愛そうな大人少女七竈と七人の可愛そうな大人
(2006/07)
桜庭 一樹

商品詳細を見る


鹿男あをによし鹿男あをによし
(2007/04)
万城目 学

商品詳細を見る


遠まわりする雛遠まわりする雛
(2007/10)
米澤 穂信

商品詳細を見る


スコーレNo.4スコーレNo.4
(2007/01/20)
宮下 奈都

商品詳細を見る


階段途中のビッグ・ノイズ階段途中のビッグ・ノイズ
(2006/10)
越谷 オサム

商品詳細を見る
スポンサーサイト
ブックレビュー | 各月の読書記録  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
階段途中のビッグ・ノイズ階段途中のビッグ・ノイズ
(2006/10)
越谷 オサム

商品詳細を見る

『階段途中のビッグ・ノイズ』 越谷オサム

ロックンロール。

ただ一言。

ストーリーは、ばりばりの青春学園物。
麻薬で先輩が捕まったことにより、廃部の危機に立たされた
軽音部が、田高マニア(学園祭)で演奏することを目標に奮起する話。

主人公は4人。
兄が全盛期の軽音部に所属し、田高マニアでの演奏を見て以来、
音楽を志し、いつかは田高マニアに出演することを夢見る
サードギター兼ボーカルの啓一。
田高マニアに憧れて入学したものの、衰退した軽音部に失望し、
様子を伺っていた血の気が多いベースの伸太郎。
中学時代のバンドで挫折した、ギターを愛するプレイボーイの勇作。
そして熱血指導の吹奏楽部に嫌気が差し、片思いを成就するために
軽音部に流れ込んだドラムの徹。

それぞれ、色々事情があって、軽音部に居場所を見つけ、
一人で演奏する音楽の楽しみじゃなく、バンドで演奏する楽しみで
熱中する様は、読んでいて面白い展開だった。

軽音部を廃部にさせないための約束。
顧問がいるときにしか部活動できない。
半年以内に部の成果をみせること。

その約束のために、冴えない国語教師の加藤を加え、
夏は暑くてしょうがない屋上への階段で演奏する4人。
防音毛布のために、暑さで死にそうになりながら、
夏の練習を耐え、死にそうになったりする。
暑さの余りの伸太郎の水泳教師への怒鳴り声は凄かった(苦笑)

その分、屋上への扉が開いた時の情景は凄く心地よかった。
気持ち良い風が、物語自体をも良い方向へ運んでくれそうな。

読み終わったあと思ったのだけど、
自分が高校生だった頃、って間違いなくロック世代だった。
自分の高校でのイベントでも、バンドとかロックだったし、
KISSとか、グリーンデイやツェッペリンやレッチリとか
クイーン、ローリングストーンズ、オアシスなんて、
結構、皆聞いてるもんだった。
同じ学年のあるクラスが学園祭で、WE WILL ROCK YOUを
40人全員で並んでストンピングでショーをやったこともあった。
学園祭とかでの音楽って、ロックが普通で、
ギターのソロやヘッドバングとか、観客である自分達も
熱狂的にそれを歌ったり、踊ったり手を叩いたりしてた。

あの時の雰囲気や息遣いや、色んな感情が一気に蘇る作品だった。
眩しいな~。

眩しかったのか、あの頃の自分。

高校生の頃は早くこんな世界から出てしまいたいと思っていたけど、
同時に、出るのが怖い気がしていた。
無限に色んな道が、未来が広がっていて。
高校なんて、そんな広い世界へ出る前の猶予期間のように、
ただ、其処に行くまでの中間地点のような場所だと思っていた。
広い世界は、ただ広くて訳わからなくて、怖くも感じたけど、
3年間と決められた期間はあっという間に過ぎて、卒業した。

あの3年間であたしは何を遣り遂げられたんだろう。
ただ先に行くことを急ぐあまりに、その場にいたことを、
その場にいる、其の時の時間を大事に、
中間地点をなにかに変えることは出来たんだろうか。
少なくても、この作品の主人公の4人のように、
高校生であることを強みにして、何かを成し遂げよう、
と思ってはなかった。

形にして何かを成し遂げることは出来なかったけど、
中間地点でもがきながら、次の道に進むまでの時間を
友だちと共有したことは覚えている。
目線はずっと先の、卒業後に広がる道しか見てなかったかもしれないけど。

あの時の焦燥感。
そして何かを熱狂的に掴もうとしていた、もがいていた自分。
この音楽良いね、って言う前に、隣も、その隣も
無言で音楽を共有して、手を叩いたり、
踊ったり、歌っていたあの頃。
自由で、なにかに溶け込むかのように熱中していた。
眩しくて、太陽のように強く光っていて
きらめきのような、興奮の渦にいるような。

そんな気持を思い出させてくれるのが、
あたしにとって、あの頃聞いていたロックだ。

ロックンロールに殉ずる4人の話を読んでいたら、
無性にあの頃の空気が蘇ってきて、
自分もロックンロールしたくなった。


余談だけど。

今はダンスやR&Bが主流なのかな。
自分の周りにいる若い子、特に女の子とか、聞く音楽の好みは
殆どがB系。R&Bは聞くけど、ロックなんて全然知らないという。
レッチリってなに?って気かれた日には、のぞけってしまった。
じぇねれーしょんぎゃっぷ、って奴?
聞いたほうが良いよ、レッドチリペッパーズは。
ロックはいまどきの若者に廃れてしまったのだろうか。
それとも、一部の若者にだけは聞かれているんだけど、
主流じゃなくなったのか。

学園祭やライブ会場での、激しい音楽のウェーブに乗せて
ギターやベースの音に熱狂していたあの頃を思い出すと、
ちょっと寂しくなった。
今でも、あたしはロック好きなんだけどな。



ブログランキング・にほんブログ村へ
 | 越谷オサム  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
風に舞いあがるビニールシート風に舞いあがるビニールシート
(2006/05)
森 絵都

商品詳細を見る


『風に舞いあがるビニールシート』 森絵都

森絵都の直木賞受賞作。
同時に受賞した三浦しをんのファンなので、
森絵都とダブル受賞か~と、少し惜しい気がしていたけど、
この作品を読んで、森絵都がこの作品で直木賞を獲ったのがわかる気がした。
作家の力量が無駄なく詰め込まれた短編集。
それに比べると、三浦しをんが“まほろば駅前”で受賞したのが、少し不可解。
三浦しをんに限って言うならば、別の作品で受賞して欲しかった。

それはさておき。

短編集であり、6作収められてる。

『器を探して』菓子コーディネーターの秘書を務める主人公が
クリスマスイブの日に美濃焼きの器を探す話。

『犬の散歩』捨て犬の里親探しのボランティアをしている主婦の話。

『守護神』夜間大学に通う主人公がレポ代筆の神様と言われてる
伝説の女性ミシナミユキと対峙する話。

『鐘の音』25年前、仏像の修復師を志していた主人公が
ある寺の仏像に出会った話。

『ジェネレーションX』自分より若い取引先の男と一緒に仕事をするうちに
自分の忘れていた青春を思い出す中年男性の話。

『風に舞いあがるビニールシート』国連難民高等弁務官事務所に勤務する
主人公が、元上司で元夫であったエドが勤務地で死亡したことにより、
自分とエドの結婚生活を振り返り、その死を乗り越えようとする物語。

どの話も、よく構成を練られてて、味付けもよくまとまっていた。
ある種、よく出来すぎていると思えるような作品をずらりと並べてる
感じさえもある。それが直木賞を獲るヒケツなのかもしれないけど。
ただ、たんに森絵都がここまで書ける、という力量が
読んですぐに伝わる6編である。

自分が一番印象的だったのは、表題にもなった
『風に舞いあがるビニールシート』。
UNHCRの職員としてフィールドワークの仕事にこだわるエドが
妻である里佳に語った言葉が忘れられない。

色んな国の難民キャンプで、ビニールシートのように軽々と
吹き飛ばされてしまうものたち、それは、人の命だったり、
尊厳だったり、ささやかな幸福だったり、もみくちゃに飛ばされる。
暴力的な風が吹いた時、真っ先に飛ばされるのは、老人や女性や子供、
そして生まれて間もない赤ん坊達で、自分はそれに手を差し伸べずにはいられない。
だから、自分の子供を育てる時間や労力があるならば、
すでに生まれた彼らのために、それを捧げるべきだ。
それは、責任、もしくは贖罪である。

あくまでもフィールドでUNRCHの職員としての責務をまっとうすることを
生きる道として選んだエドと、その彼を愛し、彼を連れ去るフィールドを
敵のように憎み、そして彼と家庭を持ち、幸せになりたかった里佳。
熱烈に愛しながらも、すれ違ってしまう二人が悲しかった。
愛しぬくこと、そして愛されぬくこともできなかったと、
元夫のエドの死さえ、自分自身の悲しみをも控えてしまう
里佳の苦しみが痛かった。

人間それぞれ生まれてきて、その人が選ぶ、自分自身の生き方、
自分なりの“幸せかたち”がある。
それと共に、“自分が為すべきこと”というものもあるものだと思う。
エドと、里佳の、“幸せのかたち”と“自分が為すべきこと”は
違っていた。それが最大の不幸だと思った。
相手を尊重しているからこそ、譲れないものがある。
二人が結婚という形でなしえたものは、二人で過ごした時間だけで、
そこから何も発展することなく、一度交わった二人の人生が
またそれぞれのあるべき道に戻っていったのは、自然の成り行きだと思った。

愛し合っているからこそ、相手を自分の領域に引き込みたい。
自分の思う“幸せのかたち”に閉じ込めたいと思う。
なぜなら、それが自分の“幸せのかたち”だから。
しかし、それは相手にとって幸せなんだろうか。

この『風に舞いあがるビニールシート』を読んで、
自分がすぐに思い出したのは、映画『追憶』である。
映画でも、主人公の二人が惹かれあい、そして結婚するが、
結局、二人の結婚生活はうまくいかず、別れてしまう。
お互いが、お互いの幸せの形に収まる事が出来ず、
自分らしく生きたいと思った結果、子供を産んだ日に別れて
それぞれの道を行くことを決意する話である。
どんなに愛し合っていても、一緒にはいられないことがある。
『追憶』を観るたびに、この哀しさと決断するほろ苦さが
胸にせまってくる。この寂しさを、エドと里佳にも感じた。

エドと里佳の結婚生活で、一番印象に残っているエピソードは、
二人が離婚し、エドがコソボへ戻る日、
二人が最後に過ごした朝のことだ。
二人で最後に訪れた旅行先のバナナワニ園で買ったワニ人形を
眠っているエドが左手に握り締めているのを里佳が、
こっそり抜き取って、代わりに自分の右手を滑り込ませる。
眠っているエドが目を覚ますまでの間、どうか、忌まわしい風で
ビニールシートを飛ばす風を思い出して、エドが苦しみませんようにと、
祈りながら迎えた朝のシーン。

丁度、その辺りを読んでいたときに、自分は
ご飯を食べながら読んでいたのだけど(行儀が悪い!)、
思わず、目から涙がボタボタと落ちてきて、文字通り
号泣してしまった。ご飯を食べながら、いきなり泣いてしまったのは
後にも先にも、この時だけだ。自分でもびっくりした。
でも、泣かずにはおれないほどの、激しい衝動が
自分の心を揺さぶったほど、印象的なシーンだった。

私事な感想で申し訳ないんだけど、この本、
あのシーンを読むだけでも価値があると思う。
なんであんなシーンに、って思う方もいらっしゃると思うのだけど、
それでも、ここ最近一番印象に残った読書経験は?と問われると、
この表題の『風に舞いあがるビニールシート』のある場面で
ご飯を食べながら、いきなり泣いてしまったことをあげるだろう。

なぜ、あんなに泣いたのか。
自分にも、以前、同じようなことがあったから、かもしれない。
里佳にかなり感情移入して読んではいなかった、けど、
あのシーンを再び、そこだけ出してきて読んでも、心が揺さぶられる。
エドと里佳の間にあった愛情が、そこに現れてると思うからか。
あのシーンが忘れられない。



ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 森絵都  | TB(1)  | CM(2) | Page Top↑
遠まわりする雛  10/29/2007  
遠まわりする雛遠まわりする雛
(2007/10)
米澤 穂信

商品詳細を見る



『遠まわりする雛』 米澤穂信


<古典部シリーズ>の最新作、第4作目。
最初に3作目を読み、惚れこんで、今年の読書信条に反して、
1・2作目を文庫で購入してしまった。
そして、1・2・3作を読んだ時点で、最新作の4作目を
これまた読まなくちゃいけない、そして読みたい!!読みたい!!と
またまた、読書信条に反して、購入してしまった…、4作目。

以下、私の今年の読書信条。

買わなくていいなら買わない。
図書館で借りれる分は借りる。
なるだけ買わない、所蔵本を増やさない心構えをする
買う本は、年間5冊以内に収める覚悟で。

以上。

既に信条を立ててから、買ってしまった本は3冊。
三浦しをんの『きみはポラリス』『強い風が吹いている』
森見登美彦『有頂天家族』。
ここ最近、本って発売されてから2~3年で買わないと本屋から
消えてしまうのですよ。冗談じゃなくまじで。
重版なしで発売後数年で絶版とか普通。
だから、買う本は「買ってまで手元におきたい本」に限る。
ただでさえ、所蔵本をおくスペースがない部屋に住んでいるのだから
出来るだけ荷物は増やさない。それゆえの読書信条。

だけども、つい負けちゃったんだな、これが。

長々と書いたけど、それ位、私が
この『遠まわりする雛』が読みたかったってこと。
思わず本屋に電話して取り置きしてもらって、買いに走ったほど。

この作品は、これまでの3作と違って、短編連作になってる。
そして、時間軸も入学してからの1年間を横切る。
入学したての頃の話から始まった話は、夏休みの話や
お正月、バレインタインデーを挟んで、3月の雛祭りの話で終わる。
これまでより恋愛色が強い、ってレビューであったんだけど、
古典部4人の恋模様がどうなるのかと、ドキドキしながら読んだ。

恋愛の行方も気になるのだけど、
一番読んでいて興味深かったのは、折木奉太郎の心情だった。
入学したての頃から1年経つ間、奉太郎の気持が段々と変わっていく。
それが成長というものなのかな。
灰色の高校生活が、少しづつ薔薇色の傾くのかと思いつつ、
あんまり変わらない奉太郎に、安堵したり。
一年間の時間軸を横切るからこそ、奉太郎の気持の変化が
よく理解できる。特に一番最後の表題では。
上手く描いてるな、と思った。

奉太郎、だけじゃない。
他の3人の心も成長してて、どんどん変わっていく。
バレインタインの話で里志の話はとても印象的だった。
里志は、今までそんなに好きじゃなかったけど、
これを読んで好きになった。
なぜ里志が摩理花の告白を遠ざけるのか。
その心境の歯がゆさ、そしてその理屈が妙に身に染みる。

奉太郎も里志もそうなんだけど、なんか不器用で、
器用に割り切れない分、それをきちんと見ようとしてて、
そして身動きが取れなくて、動き出すキッカケをまっているような。

ミステリーとしてみるならば、安楽探偵的な要素がたっぷりの
「心あたりのある者は」が上質な仕上がり。
1冊を古典部の一年間の時間の流れとしてみるならば、
一番最後の「遠まわりする雛」が最上だった。
自分としては、時間軸の1冊としての気持で
読み始めたので、一番最後の表題に1票。

一番最後のシーンが良かった。
心が震えるような情景だった。

奉太郎らしい。
すとん、と答えが心の底に落ちてくる時がある。
わかるべきして、わかる時が訪れる時の明快な光。
彼らしい反応で、そして、自然な流れ。
千反田えるとのやりとりで、
心を打ち明けているのも彼女らしい。

見事な締めだった。


ブログランキング・にほんブログ村へ


紹介したい本 | 米澤穂信  | TB(1)  | CM(3) | Page Top↑
逃亡くそたわけ  10/29/2007  
逃亡くそたわけ (講談社文庫)逃亡くそたわけ (講談社文庫)
(2007/08/11)
絲山 秋子

商品詳細を見る




『逃亡くそたわけ』 絲山秋子

なにやら映画化されるらしい。
ついでに、最近文庫化されたね。

絲山作品の中では、一番これが好きかもしれない。
『袋小路の男』では絲山作品なんて肌に合わない、って思ったけど、
それから、この苦手感を克服するつもりで、別の作品を読んでいたら、
なんとまぁ、この『逃亡くそたわけ』はかなりのお気に入りになった。

ストーリーは簡単に言うと、ロードムービー。
(あ、これじゃぁ映画の種類か)
躁うつ病の花が、うつ病のなごやんを巻き込んで、
福岡の百々地にある精神病院から脱走して、南下する話。
脱走してスグに西新にいってみたりする。
その後、なごやんの車で国東半島を回り、
大分を抜けて阿蘇に寄った後、宮崎により、鹿児島を目指す。
読み終わったあと、地図がついてて嬉しかった。

九州で学生生活を送ったことのある自分としては、
慣れ親しんだ土地の言葉、激しい福岡訛りで喋る主人公のセリフが
とても心地よかった。「そうくさ」なんて、久しぶりに聞いたよ!
読んで思い出す方言の数々がオンパレードというか。
懐かしい。懐かしいし、なんか、主人公のセリフだけ、
方言の平仮名で書かれているのが可愛いし、その響きが読んでスグ反響する。

逃亡の旅ではあるんだけど、お金を100万も下ろしちゃった
なごやんが、時折地元の名産を食べるシーンがあって、
大分の「だご汁」にはじまり、熊本の「いきなり団子」や
宮崎の「地鶏」とか、(あ~!!美味しいよね~)と、
自分の食記憶がメラメラとしました。
いきなり団子、いまだに謎の名前だと思っていたのだけど、
あれって、「いまだかつてない味」って意味でつけられてたのね(笑)
普通に食べていて、「いきなり」芋が出てくるから、
いきなり団子だと思っていたよ。
それにしても、あれを「いまだかつてない味」って評した熊本人って(笑)

阿蘇の大観望で景色を望むシーンは良かった。
自分も学生時代に何度も大観望にいったことがあるからこそ、
知っている場所が、作品中に出てくると、凄く嬉しい。
大観望、広いし、気持ち良いし、秋冬に行くと、寒いんだけど、
空気が澄み切っていて、広いよな~って感動するんだよね。
今度、熊本に行く時は大観望まで足を伸ばそう。
草千里より、やっぱ阿蘇といえば大観望でしょ。

読みながら、まじで地元贔屓の血が騒ぐ!というか、
(ああ~、あのルートを通っているわけね)と、
実感を帯びた感覚で読んでしまう。
まじ、九州人には読んでもらいたい一作。

映画化されるのが楽しみ。
大観望が映画のシーンで使われたのって、
確か前に『ユリイカ』で観た気がするんだけど、
自分が実際に慣れ親しんだ場所が映画のシーンで使われると
凄く変な感じ。まぁ、親近感を感じて嬉しいと思うこともあるけど。
この作品の映画化、楽しみです。

東京かぶれの名古屋出身のなごやん、良い味だしていたしな。
キャラ立ちしてるというか。
名古屋嫌いなくせに、名古屋名物のシキシマのお菓子、
「なごやん」を自慢しちゃうところとか、可愛い。
誰になったんだろ~、キャスティング。

ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 絲山秋子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
よろづ春夏冬中  10/29/2007  
よろづ春夏冬中 (文春文庫 な 44-4)よろづ春夏冬中 (文春文庫 な 44-4)
(2007/10)
長野 まゆみ

商品詳細を見る


『よろづ春夏冬中』 長野まゆみ

春夏冬中、と書いて、「あきない中」と読む。
久しぶりの長野まゆみ作品。
読んだのは、10年ほど前に何度か。
確か、「少年アリス」を初めて読んだのが
キッカケだったと思う。
彼女の初期作品も何冊か読んでいるのだけど、
硬質たる少年美の世界に馴染めなくて、
結局そのまま遠ざかっていた。

この作品を読んだキッカケは、ただ単に装丁が可愛いな、と
思ったから。このイラストとか凄く好き。
あと、どこかで見齧った情報で、この本が
忘れ物を届けに来てくれる不思議な青年の話、みたいのを
覚えていたので、それで自分勝手に解釈して、
(あ~、骨董品店とかの忘れられた物を扱うお店の話かしら)
なんて、ドキドキして興味を示したのが、運の尽き。
読んでみたら、殆どが、ボーイズラブなお話だった。
今で言う、BL系な小説ってことですな。

BL系が嫌とか言うわけではなく、
ただ単にもの凄く驚いた。初期作品ではそれとなくの
少年達の愛が、10年以上経つと、作風がきっっぱりBL系になってて
隠そうともせず(?)、ばっちりそれ系だったのが。
あきらかに進歩(!)してる。
初期作品とかは、ほんと「ほのかにBL系?!」と
疑問符をつけれるような、それとなーい感じだったのに。
明け透けに男たちの愛情の縺れや、肉体関係やら、
不自然でもなく、普通に出てくるのが参った。
心づもりして読んでいなかった分、衝撃波を受けました。

内容の傾向はさておき。

1冊に14の短編入り。
それぞれ不思議なお話が多いのだけど、それぞれBL系な香り。
自分が勝手に想像していた忘れ物を届ける少年の話は、
一番最初に収録されていた『希いはひとつ』だった。
引越しをした主人公に、少年が不意に現れて、
前の部屋の忘れ物です、って主人公が忘れている昔の宝物とかを
運んでくる話。何度も通ってくるのが気味悪いけど、
もう自分でも忘れてしまった子供時代に大事にしていたものと
再会したりする、そういうストーリーでした。なかなか悪くなかった。

10年以上ぶりに読んだ長野まゆみ作品ではあるけど、
昔に比べて、凄く読みやすくなった気がする。
前は、確か漢字が多く、一行一行が、意味の凝縮版って感じで
孤島の雰囲気だったのだけど、なんとなく平仮名が増えて、
柔らかい印象を受ける文章になっているのが一番印象的だった。

自分が持っていた『長野まゆみの作品』っていうと、
色の名前も、赤、とか青、とかじゃなくて、茜色、とか、群青、とか
一捻りした、独特の感性で使われる漢字の世界が広がっていて、
それが彼女独特の作風だった。
写真集『空の名前』とか『色の名前』とか、そっちで扱われるような
普段使いではない言葉が多く使われてて、それがなんとも繊細で
そして感受性豊かでありながら、独特の世界観というか。

それが、今回この作品を読んで、変わっている点が多いので、
昔のあの硬質な独特の世界観が懐かしく思いながらも、
大衆よりのような、柔らかく読みやすい文体に安堵した。
この感じで書いている方が、読み手の幅が広がると思う。

意外にも意外。
長野まゆみが作家として、書き手として成長したのか、
それとも時代に合わせて、書き方を変えたのか。
昔のイメージから脱皮した、変化し、進化した作品で、
そういう意味で読むには、すごく興味深い作品だった。
といっても、ここ最近の長野まゆみの作品を読んでいないから、
どこくらいの作品から転換期だったか知らないので、
自分勝手でいい加減な解釈による読書だけど。

たまには、以前読んでみて、あんまり興味を持たなかった
作家の作品をあらためて読んでみるのも良いかもしれない。




ブログランキング・にほんブログ村へ


ブックレビュー | 長野まゆみ  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
地に埋もれて  10/28/2007  
地に埋もれて地に埋もれて
(2006/03)
あさの あつこ

商品詳細を見る


『地に埋もれて』 あさのあつこ


あさのあつこの『バッテリー』を図書館で借りて読んでいるんだけど、
なかなかシリーズ3作目が返却されてこなくて、読み終われない。
むー。

あさのあつこといえば、バッテリーではあるんだけど、
意外と時代小説を書いたり、普通にミステリーも書いているらしい。
ダ・ヴィンチでも、紹介が載っていたりして、
バッテリー以外のあさのあつこ作品を読んでみようと思っていたので、
おりしも、藤色の素敵な装丁の「地に埋もれて」を借りてきた。

ストーリーの出だしは、二人藤の下に埋められていた優枝を
謎の少年が掘り出した所から。
生き埋めにされて、恋人と心中するつもりだった優枝が
掘り出された後に気がついたのは、
相手は死んでおらず、自分だけが埋められて
殺されそうだったということ。少年は優枝に、復讐しろ、という。

まぁ、生き埋めから助かり(心中で殺されるのを助けられたってことかな)
優枝はそれから、心中を誘った恋人のことや、何年も前に疎遠になり
連絡を取っていなかった父親や、そして子供時代に自分を捨てた母との対面。
あれこれと、心中未遂をするまでに、どうにか逃げてきた
色々な人生の問題が降りかかってくる。

自分が思うに、この本は、優枝が母を許せるか許せないか、という
子供と母親の葛藤を描いた作品じゃないかと思う。
勿論、それだけじゃなくて、優枝が郷里を離れなくてはいけなくなった理由や、
本当に他人を信じることが出来ず、誰も愛せなくなってしまった経緯や、
そして謎の少年、白兎がどうして優枝の元に現れて、
そして優枝の心中未遂を助けたのか。

優枝は思う。自分の母親が、父を激しく求め、
そして満たされぬことに身悶えする女だったということを。
穏やかに緩やかに優しすぎる男と生きていくことが出来なかった母が
幸せか不幸せかはわからない。それは、できるかできないかということだから。

母は、それが出来なかった。

求めることが満たされないままの自分を
受け入れることが出来ず、ひどい裏切りを何度も繰り返し、父を試し、
そして試しつかれて、離れることでしか幸せを求められなかった不器用な生き方。

その母の生き方に傷つけられながら生きてきた優枝が、
こんな母を許せるのか、最期に対峙するシーンが印象深い。
母を乗り越えて、親を乗り越えてのが、子どもとして
生きていく通過儀礼とわかりながらも、自分の内なる傷をどう癒すのか。

話の終焉を迎えると、心中未遂がメインな話ではなく、
ある家族の物語だということがわかる。
まぁ、そういう話の有り方もあり、なんじゃないかな、と思う。



ブログランキング・にほんブログ村へ

ブックレビュー | あさのあつこ  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
氷菓  10/27/2007  
氷菓 (角川スニーカー文庫)氷菓 (角川スニーカー文庫)
(2001/10)
米澤 穂信

商品詳細を見る


『氷菓』 米澤穂信

先日読んだ<古典部シリーズ>第3作目の
『クドリャフカの順番』が大層気に入ったので、
文庫落ちしてる第1作目の『氷菓』と2作目の
『愚者のエンドロール』を買ってきた。
一目惚れをしたとはいえ、一気に文庫を2冊も買ってしまうなんて
あたしらしくない。予算オーバーする本代を浮かせるために
図書館で借りる方針に切り替えたのに。
(ついでに、借りるのなら出来るだけ買わない方針貫いてる)

<古典部シリーズ>第1作目の『氷菓』は、
高校1年生の春から夏休みまでのお話。
主人公の折木奉太郎がどうして古典部を知りえたキッカケと共に、
古典部4人が入部した経緯など。
古典部の部誌である『氷菓』の謎、
そして、その昔古典部に所属していた千反田えるの叔父の謎。
33年前、古典部だった叔父の関谷潤が
どうして高校中退になったのか。
そこに隠された謎を解くお話がメインかな。

事件らしい事件といえば、33年前で既に過去のもの。
過去にあった事件を調査して、そして真実を解き明かしていく展開は、
実は自分の大好きなミステリー型なので、かなり気に入りました。
クリスティでも『象は忘れない』とか『5匹の豚』とか、
過去の事件の回想に関するものは、非常に好き。
過去に何があったのか、その当時隠されてしまった真実を
掘り起こすっていうのが、たまんないのよね。

流石に30年以上も前の出来事を探るために、
それぞれ4人が視点を変えて、どういう事件があったのかを調べるのだけど、
丁度おりしも入学したのが2000年、そして事件があったのは、60年代後半。
学生運動が盛んであり、高校生といえども、生徒の権利を主張する
運動が盛んで、古典部がある神山高校でも、生徒と教師側の対立があったこと。
『優しい英雄』『静かな闘士』と称えられ、伝説でありながら、
『犠牲』であったと言われた関谷潤。
どうして彼が高校中退することになったのか。
そして、その彼が学校を去る前に自分の意見を押し通して、
古典部の部誌を『氷菓』という名前にしたのか。

この1作目の『氷菓』こそ、古典部の古典部らしき原点を照らしてて
33年前の事件に対する仮説を立てる点や、資料を探す点、
時代背景を含めるところなど、非常に理がつまっていた。
謎が全て解き明かされる時、心から哀しい気持になった。
関谷潤がどうして英雄であり犠牲であったのか。
氷菓、とつけることが唯一の自己主張だったのか。

謎というのは一度解けてしまったら、
(ああ、こういうことがあったからか)と、特別に其処で起こった
出来事が非常事態のものだとは感じないものだ。
しかし、日常的な小さな出来事が重なり合って、
最終的にそれを時間を置いてみたとき、気が付く。
原因が隠されている場合、結果だけをみて、それが難事件だと思うが、
原因が見えてしまえば、それは当然導きだされる結果だとしか言えないように。

この『氷菓』は悲しい結末だった。
でも、悲しいなりに決着が付いて、汚名が晴れたというか、
時間がたたなければ解決できない問題があると思うような事件だった。
古典部シリーズの1作目がこんな事件であり、
ある意味、折木奉太郎の輝かしい探偵役デビューだよな。

それをあれこれと工夫して灰色の脳みそを悩まさなくても
資料を結びつけて導き出される結論から推論を推し進め、
きちんと裏を取れる辺りが、凄い。
折木奉太郎、本当に省エネ主義なんだろうか?なんて
少し笑ってしまった。
それにしても、部長の千反田えるの『気になります』の言葉を
どうしても避けることが出来ないホータローって
やっぱ恐妻たる姉の影響かしらね。



ブログランキング・にほんブログ村へ

紹介したい本 | 米澤穂信  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
失われた町  10/26/2007  
失われた町失われた町
(2006/11)
三崎 亜記

商品詳細を見る


『失われた町』 三崎亜記


本の雑誌で見かけた1ページどりの広告に興味を惹かれ
借りてきてみた。作者、若い!

消滅する町について関る人々の物語。
30年周期ごとに町が1つ失われる。
町の消滅には、一切の衝撃も神童も、音も光も伴われない。
ただ人だけが消滅する。
その町は、“町の意思”によって、住んでいる住人を飲み込み、
そして、町に関る人々を引きずり込むべく触手を伸ばしてくる。
それを人々は“汚染”と呼んだ。

連作短編仕様になっており、それぞれ主人公が違う。

消滅した町の調査員であった茜。
そこで知り合った和弘が町の汚染のため記憶をなくしていることを承知で
彼と一緒に生きていく決心をする、エピソード1。

30年前に消えた町での唯一の生存者であり、
消滅体性ゆえに管理局で働く白石桂子。
次の町の消滅を阻止するために動きながらも、
特別汚染対象者として、生きていくために、
絶えず忍び寄る町の汚染と戦い、触手を遠ざけながらの人生で
愛する人がいるわけでなく、孤独な彼女が
公園で野宿するカメラマンと出会う、エピソード2.

妊娠していた妻を町の消滅で失った英明が、
妻の分離者であった本体と暮すようになり、
そして子供を授かるものの、町で消滅した妻に引き摺られ、
町の汚染により、本体も消え行くエピソード3.

などなど。

ストーリーは月ヶ瀬町という町の消滅した時間を基準に
消滅した時間から、そして30年後の次の町の消滅までに戦う人々を描く。
どの話でも登場する白石桂子は、月ヶ瀬町の消滅よりも前、
それより30年前に消滅した倉辻町での唯一の生き残り。
今度こそ、町を消滅させない、と、消滅阻止に関る人生を選んできた
何人もの人々の物語であった。

町の消滅でかけがえのないものを失っているから。
時には理不尽なことが人生に降りかかるけれども、
それを誰にも止めることはできない。
でも、大事なものが失われるその瞬間まで諦めずに
精一杯「生きる」ことを考えて生きたいと思っている。

生きる、ということについて真摯なテーマに
喪失感をからめて描かれている作品だった。
個人的には白石桂子とカメラマンの脇坂の運命の恋、
「澪引きの海」と「舵取りの呼び音」のエピソードが好きだったけど、
でも、消滅するのを防ぐため、月ヶ瀬町から必死で
外部へコンタクトを送ってきた潤と由佳の繋がりも心に残った。
人がいる分だけ、繋がっている思いがある。
大切な人が残した思いを引き継ぎ、そしてそれを胸に生きていく。
なにかを成し遂げるために。
結果が結論じゃなく、其処に至るまでの過程をどう生きるか。

SFのような話かと思ったら、中身はまるっきり人間の生き方について
真面目に取り組んで書かれた話だった。

泣く時は潔く泣くと決めて目を開けたままポロポロとなく茜や、
町の消滅に引き摺られ消えていく母に対して、
自分達が終わらせるから、と語る娘。
自分のような存在を二度とつくらないためにも、
消滅の連鎖を断ち切るために生きていく、最期のその日まで、と誓う桂子。

明日失われるかもしれないとしても、
その瞬間まで自分が為すべき事をして、生き続けようという決意と、
そして望みはきっと誰かがつなげてくれるという希望。
刹那的な気持でいうのではなくて、着実に人生を一つ一つ掴んで
真摯に生きていこうというテーマが一冊を貫いており、
読みながら、自分でも思っていなかったほど、胸を打たれてしまった。

ほんというと、本の雑誌で広告を見たときにも、
前にどこかで同じように広告を見たときも、
こういう作品だとは思っていなかった。
ただ軽い、ミステリーや、日常的な作品で、今流行りぽぃような
ただ発売当初騒がれて数年後には消えるような作品だと思っていた。
侮るなかれ、初対面の印象ごときで。

読み始めて数ページで、これは思っていた印象とは
違う作品だ!とわかった。意外と食わず嫌いで、
自分の勝手な印象で遠ざけてる作品ってあるもんだなぁ。
これは読んで良かった。かなり良かった。




ブログランキング・にほんブログ村へ


紹介したい本 | 三崎亜記  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
包帯クラブ  10/25/2007  
包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)包帯クラブ The Bandage Club (ちくまプリマー新書)
(2006/02/07)
天童 荒太

商品詳細を見る



『包帯クラブ』 天童荒太


映画化されるとのことで、本屋の平積みで見かけていたので、
読んでみようかな、と覚えていた作品。
天童作品は、ほんと久しぶり。
ずーっと前にベストセラーになりドラマ化された
『永遠の仔』しか読んだことない。
図書館にあった本の装丁は、映画化決定された後の奴じゃなく、
ちくまプリマー新書、ってシンプルな緑色の装丁。
小説版の派手な装丁がイメージに合ったから、
新書版の、あの定形型な装丁には意外な気がした。

傷ついた少年少女たちは、
戦わないかたちで、自分たちの大切にしているものを守ることにした・・・。
今の社会で生きがたいと感じている
若い人たちに語りかける長編小説

新書の裏表紙に、こう書かれていた。

ストーリーは、主人公の笑美子、通称ワラが、入院中のディノと
出会うところから始まる。
手首の怪我で包帯を巻いていたワラが、ディノが傷ついたという言葉で
傷つけてしまった時にいた場所に包帯を巻くところから始まる。

なにかしら傷つけたられた時の場所に包帯を巻く。
目には見えないけれども、そこには、傷ついた心が流した血があるから。
そこに包帯を巻くことで、他人には見えない心の傷を
少しでも手当てすることが出来る。
心の傷を、誰かに話して、そして一緒に“手当て”することで
少しは傷が癒えると思う。

最初のうちは友だち同士で、それぞれ、傷を受けた場所に
包帯を巻いていたのだけど、それが反響を呼んだことで、
自分達の存在意義をかけて、倶楽部活動として、
包帯クラブを立ち上げ、ホームページで活動内容を公にしたところから、
事件は発生していく。

文頭で、ワラが述べている言葉。

自分たちのなかから、色々と大切なものが失われている。
きっと大事に握っていなきゃいけないものを、少しづつ、毎日のように失っている。
そして、失ってしまった人たちは、知らず知らずのうちに、
今度は持ち去ってゆく側に回っている。
わたしと、わたしの仲間はそれに気づいて、
戦うことにした…、いや、違う。
大切なものを守ろうとして、懸命に戦っているつもりでいると、
いつのまにか、別の大切な部分が失われている。苦い経験から、それを学んだ。

この言葉で全てが現れてると思う。

心が傷ついた時、それは自分だけにしかわからず、他人にはわからない。
しかし、自分だけにしかわからないからこそ、
自分で自覚しなければ、それは“ないもの”となってしまう。
傷を見ないふりをすることはできる。
でも、そこで失われる、なにか大事なものがあるんじゃないだろうか。
大事ななにかを零れ落ちないように、必死に守っていくことで
なにか、自分を損なわれずにいられる、ということもあるだろう。

其処に至るまでの心境、狭い街に閉じ込められ、
ここで一生を終えるのだろうかという閉塞感や、
母子家庭であまり愛情を感じられない生活に
実は自分がとても傷ついているということや。
自分自身のために戦いを宣言したワラが、仲間を巻き込み
そして、ひとつのムーブメントをおこす。

これを読みながら、ずっと思っていたのは
心の傷をどうやって自分自身で向き合っていくかということ。
誰かに話して、慰めてもらって、それで癒えるものでは、
けしてないものではあるけれども、それで救われることもあるということ。
私自身は、包帯クラブの活動に対しては疑問視しているのだけど、
だけど、私はダメでも、他の人からしたら、包帯クラブのような活動が
なにかしらの道導になり、救われる人もいるかもしれない。
誰かに話をして共有することで癒される傷もあれば、
自分自身でしか対峙できず、話すことも出来ず、
ひたすら向き合うしかない傷もある。
共感されることを望まない傷の場合もある。

あんまり、自分の肌にはあわなかった。
でも、ただただ思うのは、この作品を読むことで、
今の現代社会で生きづらい、どうにもこうにも、
損なわれていることに対する辛さを抱えている人にとって
その感覚を、誰かと共有して、そして「認められる」ことによって
前向きになれるかもしれないということ。
万人向きで、いかにも「これは感動します!」とか
「泣けます!」「共感しました!」とお勧めする作品じゃないけど、
でも、多分こういうことを「必要」とされている人にとっては、
この本の存在がありがたいんじゃないかなぁと思った。


ブログランキング・にほんブログ村へ

ブックレビュー | 天童荒太  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
氷の海のガレオン  10/24/2007  
氷の海のガレオン氷の海のガレオン
(1994/10)
木地 雅映子

商品詳細を見る



『氷の海のガレオン』 木地雅映子


衝撃的だった。

伝説の作家のデビュー作。
ある人達にとっては特別な作品になるタイプの作品。
13年前に発表され、群像新人文学賞を獲ったものの、
それから1冊も発表していない木地雅映子のデビュー作。

いや、「発表していなかった」と過去形で語るべきか。

最近、木地雅映子の最新作にして2作目、『悦楽の園』が
発表された。まさに13年ぶりの新作。
11月号の『ダ・ヴィンチ』で紹介文が載っていたのを読み、
俄然読んでみたくなり、図書館で借りてきた。
この本、書庫所蔵になっていてビックリした。
ま、13年も書いていなかった作家の作品だから、
殆ど読み手もいなかっただろうし、書庫にあっただけでも良かった。

「ダ・ヴィンチ」をチェックしてなかったら
絶対に巡りあわなかっただろう本。
ましてや、読書ブログをつけてなかったら、
本に対するアンテナがここまで伸びてなかったと思う。
巡りあえた偶然とタイミングに感謝。

『氷の海のガレオン』の物語は、平たく言えば、
「早熟な思春期をおくる少女の葛藤」(ダヴィンチ曰く)。
確かにそう、そんな物語。
ただ、“葛藤”という言葉だけでは表すことが出来ない、
そして交じり合う地点が見えない、
自分と取り巻く世界と、自分の感覚世界との齟齬の狭間にいる
少女、杉子と、そしてその家族の物語。

「普通」ってなんだ?
「友だち」ってどういう定義で使ってるの?

杉子は、自分を取り巻く“社会”から自分が逸脱していることを
感じている。感じてはいるけれども、そちらには近寄れず、
そしてそこからはじかれていることを感じ、疎外感を感じながらも、
抗って生きるしかない自分自身を知っている。
ヒリヒリするような鋭利な感覚でもって、世界を認知している
杉子の視点から描かれる、この、私も属している“社会”は
色んなカモフラージュや、「決まりごと」がある。
杉子はそこに馴れ合うことをするくらいなら、
「死」だと思っている。

思春期独特の逸脱した無意識の世界観や、あの混沌とした世界を
見せられ、そして、そこには容赦ない厳しさがある。
通過儀礼、だけでは語れない。
繊細でかつ豊かな世界を保つ自分自身の強さを、
まだ11歳の杉子はもち続けようと世界に対して宣戦布告をして
その決意は潔く、後悔や偽りという文字はない。
しかし、自分の言葉自体が周りの“社会”とは違うことで
自分自身が何者にも届かないかもしれないという不安と
理解されない苦しみをも同時に抱えている。

他人と違うことを恐れるな。
馴れ合うことが嫌ならば、生き延びて自分で自分を守れ。

自分の感覚ぐらい自分で守れ、と、どこかの詩人は言った。
この言葉がしっかりとはまるほど、杉子の生き方は強いけど、
同時にもろく、“あちら側”の世界に引き込まれていく不安定さがある。

こんな物語が書けるなんて、この感性を描けるなんて、
著者こそ、多分“杉子”自身なんだと思う。
こんな作品、初めて読んだ。と思うほどの衝撃だった。
こんな作品を描ける作家がいるという驚きと共に
心から感じた個人的なこと。

それは、かつて「少し変わった子」として生きていた自分が、
いつの間にかこちら側の世界、“社会”に取り込まれていること。
その取り込まれたことさえ気が付かずに生きていることを知った。
抗うことさえ昔のような。自分と切り離して、単なる物語で読める、
そんな作品ではなかった。失ったもの、自分の感性を呆然と思い、
そして、自分が既に失われていた、という事実に震えた。

既にハードカバーでは絶版の作品。
2年前に文庫化されたらしいので探してみようと思う。
是非、手元におきたい作品。
先日自殺した二階堂奥歯の作品『八本脚の蝶』でも
この『氷の海のガレオン』が出てくるらしい。
二階堂奥歯のバイブルだったとか。
『八本脚の蝶』も読んでみよう。



ブログランキング・にほんブログ村へ

こころの糧になる本 | 木地雅映子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
朝一番、やる気がふくらむ言葉―自分がきらきら輝き出すスピリチュアル・バイブル (知的生きかた文庫―わたしの時間シリーズ)朝一番、やる気がふくらむ言葉―自分がきらきら輝き出すスピリチュアル・バイブル (知的生きかた文庫―わたしの時間シリーズ)
(2003/01)
中山 庸子

商品詳細を見る


『朝一番、やる気がふくらむ言葉』 中山庸子

中山さんのエッセイは、まぁまぁ好きなんだけど、
タイトルや、副題が恥ずかしくて、
そして自己啓発・スピリチュアル系の棚に置かれているのを
本屋で探すのが恥ずかしくて、実は1冊も持っていない。

ちなみに、この本の副題は
「自分がきらきら輝き出すスピリチュアル・バイブル」。

勝手にバイブルなんて決めるなよー。とか、
なんでもかんでもスピリチュアルってくっつけるな。とか、
きらきら輝き出すってなんだよそれ。みたいな、
ツッコミは山ほどあるのだけど、それは私の感じたことであって
それが対外的な評価ではないので、さておき。

本の価値は副題じゃない(きっぱり言うぞ)
本の価値は中身だ。
手にとって読み始めてしまえば、副題なんて気にならなくなる。
(多分…、内容が気に入れば)

この本を図書館で借りてきたキッカケは、
「朝の時間を使うこと」を書いているから。
そして、名言集、みたいに、短い言葉で、
なかなか洒落た言葉があるのが気に入ったから。
(そうじゃなければ、読んだとしてもブログには記事かかん)

書かれていたエッセイで気に入ったのは、
「素敵なものは毎日使い、素敵なことを毎日作ろう」という章。

コレクターの存在は承知のうえで、著者が、美しいもの、良いもの、
それらを毎日でもつかった方がいいと提案している章。
それらを出来るだけ身近において、触れて、身につけて、手入れしてこそ
「良いものの良さ」が自分自身を幸せにし、助けてくれるから。

これに大いに賛成なのね。

あたしは、良いものとか美しいものや上等なものこそ、
溜め込んだりせずに、毎日使うべきだと考えている人間なので。
裏を返せば、自分が妥協できないもの、思い入れがないものを
ずっと使うことが出来ない。出来るだけ『良いもの』を使っていたいって
思うから、物を買う時に、やっぱり高いものを買っちゃうことがある。
良いもの=高いものではないけど、概して、良いものは高かったりもする。

あと、買い物だけじゃなくて、例えば、日常生活で使う
1つ1つの道具とかも、できるだけ厳選したのを使いたい。
麻が好きで、あの肌触り感をこよなく愛しているので、
シーツカバーは勿論麻生地だし、ディッシュクロスも麻。
リバティプリントの美しいプリントが好きで集めているし、
そして時にはその集めた布を使って、装丁したり、
ボトルカバーを作ったりする。

良いものや、自分が好きなもの、美しいものって、
身近において使うことで、幸せな気持にさせてくれるんだよな。
見るだけで幸せを感じるし、そういうものを持っていることが嬉しくなる。
幸せを常におすそ分けしてくれる存在になるというか。

それゆえ、こんなことが書かれているので
このエッセイが気に入った。
「まさにそのとおり!」とうなずきながら読んでしまった。

あと最後に。
気に入ったのが、言葉を2つ。

「すぐすれば すぐ済みます」

「欲しいものと必要なものがあるから
方法を考えるのです
だから あなたは欲しがっていいし
必要としていいのです」

1つめの言葉の方が短い分、ずっしりくるかも。
シンプルな分だけ覚えやすくて、唱えやすい(笑)
忘れそうな時に唱えてみよう。
仕事に対しても、生活の1つ1つの用事にしてもいえることだよね。


ブログランキング・にほんブログ村へ

ブックレビュー | 中山庸子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
クドリャフカの順番―「十文字」事件クドリャフカの順番―「十文字」事件
(2005/07)
米澤 穂信

商品詳細を見る


『クドリャフカの順番 「十文字」事件 』 米澤穂信

2007年11月の『ダ・ヴィンチ』で、
<古典部シリーズ>最新刊の著者インタビューが載っていた。
なにやら、『「人が死なない」青春ミステリー』らしく、
インタビューのなかで、北村薫など“日常の謎”を描くミステリーが
好きで、このシリーズを書いているというのを読んで、
すごく興味を持ったので、まずは既刊されてる作品から読もうと
図書館で探してみた。

<古典部>シリーズは、伝統はあるが先輩はいない古典部に入部した
1年生4人の物語。省エネ主義の折木と旧友で快楽趣味な福部、
福部に片思いをしている漫画好きな摩耶花と、
ミステリアスな魅力をたたえる部長の千反田える。
この4人が高校生活の中で出くわす「日常の謎」を解いていく。
…、といっても、もっぱら謎に興味津々な部長千反田の希望により、
省エネ主義の折木が探偵役をやるらしい。

シリーズ1作目は『氷菓』。
伝統ある古典部の部誌にまつわる謎とき。
そして2作目は『愚者のエンドロール』。
夏休み中の話で、文化祭に出品されるはずだった自主映画の謎。
そして3作目が今回読んだ『クドリャフカの順序』。
こちらは、文化祭の3日間に起こった出来事を描いている。
んで、新刊として出たのが4作目『遠まわりする雛』。
なにやら、但し書きでは4人の入学直後からの1年間を描いた
連作短編らしい。

いきなり自分の図書費都合上(!)、図書館で借りれた
3作目の『クドリャフカの順序』から読んでしまったのだけど、
面白かった!夢中になってはまる、っていうエンターテイメント性が
面白かったわけじゃなく、あたしが大好きな北村薫の作品に通じる
日常生活に転がっている謎、気づかなければ気づかない謎を
心地いい結果に落ち着くのが良かった。
まぁ北村作品もほのぼの、だけじゃなくて、きちんと世間一般に存在する
悪や人々の悪意、良識のないことも出てくるし、
それがアクセントとなって、作品の品を保っているし、
「きちんと地についた」感がある。

こちらの古典部シリーズの方は、「高校」という特殊な空間で
もの凄い悪意、とか、誰かを傷つけるような悪意に満ちているところから
少し感傷的に、ノスタルジックに守られているような世界を舞台にしてて、
それが凄く心地よかったです。勿論、そんな「学校空間」なんて
ノスタルジーならぬファンタジーの世界であって、
ありえないのではあるけど、そういう幻想を描かせてくれるところが、
この古典部シリーズの魅力ではないかと思った。

実際に自分自身が、学校生活で苦しんだり、
割り切れない思いがあったり、居心地が悪かったぶんだけ、
ここで描かれる幸運にも良い関係を学校で得ることが出来ている
彼ら4人の関係にたいして憧憬を抱くというか。
実際に自分にありえなかったものを、ここで夢見ることが出来る、
かつて自分から失われてしまった、ついにみることなく卒業した、
獲得することがなかったモノに対するノスタルジーを感じる。

複雑な思いをするのだけど、夢物語、という言葉だけで
4人の関係を見るんじゃなくて、こんな時期もあったな~とか、
学生時代の独特な空気感を感じられて、
読んでいる間、とても幸せを感じた。

今度、文庫化しているシリーズ1作目と2作目を買ってこよかな。
とりあえず、1作目と2作目を読んだあとで、最新刊の4作目を読もう。
まだ主人公の4人は1年生だけど、これから高校3年で卒業するまで
古典シリーズは続くらしいので、これから先に続く
“生きている”シリーズを愛せるって、ことが幸せに感じられる。
楽しみだしね、次回作はどうなるだろう~とか期待するし。
できるだーけ、長生きするシリーズであって欲しい。


ブログランキング・にほんブログ村へ

紹介したい本 | 米澤穂信  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
建てて、いい?  10/22/2007  
建てて、いい?建てて、いい?
(2007/04/06)
中島 たい子

商品詳細を見る


『建てて、いい?』 中島たい子

先日の『漢方小説』が気に入ったので、
中島たい子の別の作品を図書館で借りてきた。
こちらも主人公は独身の30代女性。
(彼氏いないし、結婚予定無し)

ストーリーは主人公がタイトルどおり、
独身女性が家を建てる決心をして、
そしてそれを敢行する話。
建てていい?なんて質問系なのは、
家を建てる関して、外野がウルサイから。

家を建てるキッカケになったのは
見合い相手がたまたま建築設計士だったから。
そして、どこかに自分が落ち着く場所が欲しかったから。
自分の場所が欲しかった、って理由で
おうちを建てるには、かなり資金的にも大きいし、
支払いとか、これから一人で生きていく人生には
リスクが高いような気もするのだけど、
でも、払った分だけ、自分で自分の居場所を確保できる。

自分だけの家。
自分サイズの家。
一人で生きていくって堅い決意を持っているわけじゃないけど
でも、多分その可能性が高い、ならば、
この人生をキチンと自分で作っていこうっていう
意思が現れていると思う。

それにしても、主人公が家を建てる決心をするにあたって、
ハウスメーカーを見学にいく場面があって、
そこで、アンケートを書かされるものの、
入居者予定の欄に、独身女性、という項目が無くて
戸惑う面がある。全て家族仕様なのか、って驚くところや。
世間一般で『家』というと、家族で住むのが一般的で
他の仕様などなくて、家は家族で住むものとしてみなされてて、
そこに女一人で、なんて視点はないこと。
けして差別ではないのだけど、頭からすっぽり抜け落ちてて
そんな生き方をする人の存在は、(プラス家を作るなんて状況は)
普通はあまり考えられていないという現状。

一人で生きていくのは大変だ、という人は多いのだけど、
大変なのは、少なからず周りの環境が対応していないからじゃないか。
なんて考えてしまった。
一人で生きていくのは生きていきにくい世界。
最近「おひとりさまの老後」たる本が発売されてるけど、
それも読んでみたいな、って思った。

あと、面白いなって思ったのは、建築士がいう言葉。
家を建てる相談をしてくる人っていうのが、
『土日は家族で家で楽しく過ごす』っていう人、
家を建てたらずっと家にいなくてはいけない、って思う人が多いってこと。
せっかく家を建てるなら、って自分の生活にあった未来予想図じゃなくて、
こうしたい、っていう理想の生活を語ってしまうものの、
実際家を建てたとしても、ライフスタイルが変わるわけじゃなく、
結局はそう意気込んでしまった人の家ほど、電気がついているのをみないこと。

家を建てる、ってそんなに家族中心な理想を掲げないといけないような
雰囲気なんだろうか。私は結婚してないから、そこら辺がわからないや。
少し想像はつくけど。

ストーリーの内容はそれくらいにして。

これを読んで思ったこと。
家を建てるって楽しそうだ。
楽しい、ってもんじゃなくて、自分サイズの家が持てるって
設計とか、あれこれ考えるだけでワクワクしてくる。
実家の一軒屋を建てる時に、もう物心付いていた頃だったから、
親があれこれと設計士と相談していた姿を思い出す。
まだ子供だったから、どんな家に住みたい、っていうような
ことよりも、自分の部屋が持てるかどうかが問題だった。

今、ちょっと大人になって、一人暮らしをしたりしていると、
「自分の家」っていうのを考える。
自分が住みたい家。自分の生活にあった家。勝手の良い家。
自分の趣味が生かされて、少なからず自分の好みの風貌の家が欲しいと思う。

今、私が自分用の家を建てるなら(家族仕様想定じゃなくあくまでも自分用)、
まず庭は欲しい。大きい木を何本か植えられるスペース。
そして日当たりの良いところに植物用の棚、ハウスが欲しいな。
あと、キッチンを広めにとりたい。
室内で撮影も出来るように、小窓とか、少し洒落たスペースが欲しい。
本も多いから、収納が出来るスペース、本棚が欲しい。
書斎とか良いな。そこで読書できるように。自宅内ミニ図書室か。
あと、靴も好きだから、靴が収納できるクローゼット。
外国のクローゼットのように3畳位のクローゼット部屋があると良い。
集めている人形のために、陽が余り当たらない北側の部屋も欲しい。

書き出してみると、あれこれと自分もそれ相当なりに、
自分の身にあった住宅、スペース、居場所を求めてるなぁ。



ブログランキング・にほんブログ村へ

紹介したい本 | 中島たい子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
僕の双子の妹たち  10/22/2007  
僕の双子の妹たち僕の双子の妹たち
(2004/06)
白石 公子

商品詳細を見る


『僕の双子の妹たち』 白石公子

読書ブログを通して知った本。
この作家の作品も初めて読んだ~。
知らない作家の作品を読むのは最初躊躇うけど、
ブログで紹介されていた文章を読む限り、
面白そうだ、と、自分に合いそうな匂いがしたので
手に取ってみた。

ストーリーは、両親を事故で亡くした
主人公の『僕』と双子の妹、実のりと穂のかの物語。
失われた両親の影を感じながら、残された家族が再生していく物語。
両親を不慮の事故で失って、数ヵ月後から、それから1年以上後まで
断続的に3人を巡る物語が続く。

顔は美形だけど、中身は頼りない郵便局の配達員である僕。
年上の教授と不倫をしてて、両親の事故の時に逢引をしてて、
死に目に会えなかったことに、罪悪感を感じている実のり。
壊れてしまった「家族」をもう一度取り戻すため、
兄と双子の姉妹、実のりに執着心を見せる穂のか。
美しい兄妹として賞賛される三人。

家族としての繋がりをいきなり両親の事故で
関係性が崩れてしまった後、その不在感を抱えながら、
残されたものには、きちんと日常は訪れる。
ご飯を食べて、同じ家で眠り、生活をする。

ストーリーは、特に問題をあからさまに浮き彫りにするような
激しい語り口ではないのだけど、どこか柔らかいなかにも
頼りない寂しさが漂っていて、それが僕と双子の妹たちの
心の中に消えない悲しみであるような気がしてくる。
大事な人が突然居なくなってしまった不在感から
残された三人がそれぞれバラバラになってしまうのを
ふさいでくれたのは、祖父の料理だった。

一緒におうちでご飯を食べること。
これは「家族である」ってことの1つの印な気がする。
美味しい料理があるからこそ、
「今日もちゃんと家に帰ってご飯を食べよう」と
誰か一人でご飯を食べないように、それぞれが気をつけて、
そして一緒にご飯を食べて、喜びを分かち合う。
ご飯を食べる、って、ただ単純なことで、
そんなに効果がないように思えるかもしれないけど、
内なる『家族』を失いつつあった三人が、
祖父の料理がキッカケで、形を取り戻しつつあるのが、
流石だなぁと思った。ご飯を一緒に食べること、その力を知ってて
そこを描いているのは、家庭的な視点だなと思った。
女性的である、というより前に、
きちんと『家族であること、あり続けること』の絆を
食べ物で表現しているのが、とても印象に残った。

ストーリーは、祖父の料理だけじゃなくて、
僕の昔の恋人が再会し、、復活の予感がしたり。
それ以外に死んだ父の愛人が訪ねてきて、僕が恋をしたり、
不倫相手と泥沼になってしまう実のりや、
兄や双子の実のりを失いたくないと過剰に縛りつけようと、
精神的に追い詰められていく穂のかの姿も描かれている。

ただ、全編を通して感じたのは、失ったものの痛みを抱えて
傷を悼む物語ではなく、残されたものが喪失感から抜け出し、
新しい生活を歩むまでの道が、温かい目線で書かれているということ。

最後の章で、主人公の僕が、亡くなった父に向けて、
「出せない手紙」を書いている。その手紙を読むと、
季節が一周して、そして時間が経つことでしか癒されないこと、
そしてわかることってあるんだな、と思う。

ストーリーの話はこれくらいで。

装丁がステキだった。紫の花、大きな花弁でパンジーかな。
ボタニカルアートで描かれているのが繊細な印象で
素敵。この装丁、物語の雰囲気をよく伝えているなぁ。


ブログランキング・にほんブログ村へ

紹介したい本 | 白石公子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
雪の華  10/21/2007  
雪の華 (ハルキ文庫)雪の華 (ハルキ文庫)
(2006/10)
伊藤 たかみ

商品詳細を見る


『雪の華』伊藤たかみ

初の伊藤たかみ作品。
ブログを始めてから、あちらこちらの読書ブログ訪問が癖になり、
そこのお勧め本を必ずチェックしてしまう。
そのチェック表のお陰で、今まで読んだことがない作家の作品にも
手を伸ばすことが出来ているから、やっぱり読書ブログを作って正解。

2004年の作品なんだけど、テーマは共感覚。
感覚神経、嗅覚・触覚・視覚・聴覚など、が混線しているような
状態なのが共感覚、と主人公が説明している。
この作品の主人公、優は、匂いを嗅ぐと必ず「形」がついてくる。
人間や物においてもそうで、友人霧島には、霧島の「形」が
彼を見ることで一緒に“見える”。
共感覚って今話題のテーマなのかしら。
神経症の部類だろうか、と思ったのだけど、まだ調べてはおらず。
気になるな。

ストーリーは、高校生時代、仲が良かった霧島と京子の話。
主人公の優と霧島、そして京子は、仲が良い3人を装いながら、
微妙な三角関係で、結局京子は霧島を選んだ。
京子は既に死んでいるのだけど、彼女が死ぬ間際にかけた電話の相手、
七海を巻き込んで、死んだ京子がどんな人間だったのか、
本当に交通事故で死んだのか、それとも自殺したのか、
そして、死ぬ間際に霧島に妊娠をほのめかしていたことから、
それは真実だったのか、そして子供の父親はだれなのか?
という疑問から始まる。

一番身近にいて、そして恋をしていて、相手のことを
少なからずはわかったつもりだったのに、死んだ後、
京子のことをあれこれと調べているうちに、自分が知らなかった
京子の一面が見えてくるのがリアルで怖い。
誰しも、「見たいようにしか見ていない」ということだな。
折しも、それはテーマに繋がるんだけど。

死んだ京子と同じ「形」を持っている七海が現れたことから
なぜ同じ「形」なのか、そして、それが何を指しているのかなどなど。
共感覚が前面にでたストーリーだった。

あたしとしては、この作品の中で気に入ったのは、
京子が抱いていた複雑な思いって奴かな。
ある事件がきっかけで、霧島と付き合うようになった京子は
霧島を愛しながら憎むという2側面を持っていて、
その矛盾に苦しみながらも、矛盾を解決することが出来ない。
相反する二つの思いが入り混じって、それで選んだ結論が
一番京子を幸せにしてくれて良かったな、と思った。

タイトルの「雪の華」は、京子の「形」のこと。
雪の結晶のような形で指先で触れただけで
溶けてなくなってしまいそうな形。
「形」というのは指紋のようなもので、
二つと同じものが存在しないという。

共感覚の世界の語りではあるのだけど、それが病気とか
いらない能力とか、それが迷惑とかじゃなくて、
あたしとしては、普通に「ああ、共感覚ね」って読みながら、
こんなのがあったら、匂い+形(視覚)でくっついてるわけだから、
普通の人間として、他の人間に接する時に、その相手の個性とか、
その人自身っていうのを、より明確に認識できる指標になるな、と思った。
見た目は一緒だけど、「形」が違うから、ちゃんと判別できると言うか。
見た目で騙されない(!)というか。

面白い能力だと思った。
病気という観念で見るより、その人の感受性、個性というような。
ただ、自分は感じるからわかるけど、それを相手に説明するのとか、
相手と、自分の持っている感覚を共有できないって点では
なにかしら不便かもしれない。
わかりあえないもどかしさを一番に抱えることなのかな。

それにしても。
図書館で借りてきたのでハードカバーの方を読んだのですが、
このアマゾンの文庫本のカバー、あまりにもろまんちっくすぎねー?!(笑)
この表紙だと買うほうが恥ずかしいなぁ。


ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 伊藤たかみ  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
RUN!RUN!RUN!RUN!RUN!RUN!
(2006/11)
桂 望実

商品詳細を見る


『Run!Run!Run!』 桂望実

『本の雑誌 1月号』のレビューで知った本。
ついに、本の雑誌まで読むようになってしまったか、自分…。
椎名誠が嫌なわけじゃなくて、本の雑誌の存在を知った時に、
(なんてマニアックな雑誌を作ってるんだ!)って思ったのに、
色々読書生活を続けていく上で情報収集をしていたら、
本の雑誌に突き当たってしまい、こんなことになるなんて、と
自分なりに驚いている。
書評の雑誌だから仕方ないか。
日本で発売されてる書評の雑誌って少ないのよね。

この本は、箱根駅伝にまつわる話。
タイトルどおり、走ることについて書いた本。
まさに、Run!
三浦しをんの『強い風が吹いている』を読んで、
箱根駅伝について書かれた小説とか、
意外とアンテナ巡らして探してる。
そして、そのアンテナにひっかかったのがこれ。

主人公の優は、今までの陸上人生で試合に負けたことはなく
天才の名を欲しいままにしてきた。
陸上推薦で大学に入った優は、陸上部に所属するものの、
箱根駅伝でさえ踏み台で、将来はオリンピックで金メダルをとることしか
狙っていない。そしてそれを公言してはばからない。
高慢で、ただ走る才能でしか相手を評価できず、
人間らしい感情や、友人関係なども意味がないと思ってる。
ただ、才能のまま走ることだけが優にとって意味を持っている。
それが、兄の自殺によって、自分自身の出生の秘密に気づいた優は
走りが、そして生き方が段々と変わってくる。

読みながら、最初の方は優の才能至上主義が鼻について
(なんだこいつ・・・)って思いながらすすめていたんだけど、
段々と箱根駅伝が近づくにつれて、優が変わっていく姿が良かった。
勿論、人間はすぐにこれまでの人生や考え方を変えることなんて
出来ないし、劇的な瞬間なんてそんなにないのだけど、
徐々に氷が溶ける様に、色んなことを感じて、
理解していく優の精神的な成長が手に取れるようにわかった。

箱根駅伝が終わり、優が競馬場へ出向くシーンでは、
痛いほど優の気持が伝わってきて、号泣してしまった。
辛い、とか悲しい、とかじゃなくて、
ただただ真実が突き刺さる。そして真実と向き合う厳しさや
それが自分の人生から色々なものを奪っていく力や、
それに抗いながら、自分の人生をもう一度作っていく決意の固さが
胸に突き刺さった。
運命なんかに負けるなよ、って優が競馬たちに呟くシーンが痛い。

この作品で描かれてるのは、走ることの喜びや箱根駅伝という
大きなイベントのことだけじゃない。
たすきを繋いでいくという箱根駅伝を通じて得られる友情の姿も
描かれてはいるんだけど、一番のメインテーマは家族。
優の家族、走ることに対しての執着心を見せる父や、
兄を溺愛している母、そして出生の秘密の重さからか自殺してしまった兄。
家族とどう対峙するか、自分の行き方とはなにか、
どうして自分が生まれたのか、と優がひたすら自分の人生を取り戻すために
強く生きていく姿がメインテーマだと思った。
誰かから決定される人生を歩いていくのは、それは自分の人生じゃない。
自分がどう生きていくか、そしてどう生き延びていくか模索し、
戦い続けること自体が「生きていく」ことなんだと教えてくれた。


ブログランキング・にほんブログ村へ


紹介したい本 | 桂望実  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
チョコレートコスモス  10/20/2007  
チョコレートコスモスチョコレートコスモス
(2006/03/15)
恩田 陸

商品詳細を見る




『チョコレートコスモス』 恩田陸

去年発表された作品かな。
発売当時、確か恩田陸ブームが自分の中であったんだけど、
なぜか「演劇物」と聞いて、恩田陸が演劇が好きだったことを思い出し、
なんとなく、舞台のような台詞回しを想像しちゃって、
勝手なる偏見で手に取らなかった作品。

しかし、つい先日、この作品が実は漫画『ガラスの仮面』に
インスパイアされて書かれた作品としり、俄然興味が湧いた!
オマージュ作品ですね。
『夜のピクニック』もオマージュ作品だったらしいけど、
原作は読んで否。恩田作品を気に入ったなら、オマージュされた作品の方も
チェックしてみるべきね、とは思っていた。
それゆえ、こちらは本末転倒な『ガラスの仮面』の導きで
読むキッカケになった。

ストーリーには二人の主人公。
子役時代から天才と称され、若手女優として才能を開花している響子。
勿論、『ガラスの仮面』の亜弓の如く、芸能一家出身。
そして、もう一人の主人公は、演劇指導を受けたことなく、
ただ本能のまま、演技に惹かれる「北島マヤ」こと、飛鳥。
大学の演劇サークルに属した飛鳥の初舞台での
アレンジも奇抜で機転が利いてて面白かった。
あとは、ある大劇場のコケラ落としとして予定されている
舞台の配役を巡るオーディションでの火花も凄かった。
オーディションに呼ばれなかった響子が闘志を燃やして
オーディション会場へ乗り込んでいく熱意が鬼気迫る様子。
才能はあるものの、演劇することに対して
自分自身を知らず、才能のままに走ってしまう飛鳥。

あの名作『欲望という名の電車』での一人芝居を二人でやる
舞台での女優達の戦い。定番中の定番の「欲望という名の電車」を
ここでもってくるなんて、恩田さんもベタだな~と思いつつ、
それでも、よく知っている演劇の名作をどのように作品中で
料理するのかが、実は凄く興味深くて、そこが面白かった。
4人の女優が、それぞれの切り口で、この名作を解釈し、
演技で表現する舞台方法が面白かった。

演技に夢中で、あちらの世界にいってしまった先には
何が見えるのか。そして何を感じることが出来るのか。
突き詰めていくと、演劇の奥に広がる無限の世界を
少しだけ入り口で覗いたような気になる。
演技中に、あの世界を掴み獲りたい、と
手を伸ばす先にある花を、響子と飛鳥は二人一緒に掴んで
共有できる、見える世界の果てには何があるのか。

この作品、連作になるのかな~。
終わり方が、「序幕ですよ~」というような触りだったので、
また響子と飛鳥の演劇の世界のその後が
読むことが出来るといいな。
まだまだ、触りでしょ、あれは。



ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 恩田陸  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
ランナー  10/19/2007  
ランナーランナー
(2007/06)
あさの あつこ

商品詳細を見る


『ランナー』 あさのあつこ

野球少年の物語『バッテリー』で有名な、あさのあつこの陸上物語。
あさのあつこ、って名前を聞くと、『バッテリー』って思うけど、
実際、図書館の本棚には歴史物語やらもあって、
少年少女の話だけじゃなくて、歴史物も書いてるのねって
意外な感じがするお姉さん。

三浦しをんの『風が強く吹いている』で陸上物にはまってから、
あれこれと話を聞きつけては、借りてきているのだけど、
この『ランナー』も陸上話。どちらかというと、佐藤多佳子の
『一瞬の風になれ』のようなグラウンドで走る系の陸上話。
陸上の試合に挑む、って場面が主な作品じゃなく、
こちらは陸上の才能に恵まれた主人公の、陸上以外の視点から
「はしることとは」という探求が描かれている。

碧李(みどり)は、高校生1年生。
最近親が離婚して、母と妹と一緒に引っ越してきた。
陸上部に所属していながらも、慣れない母子家庭で、
離婚のショックで傷ついた母親を支えながら、
妹の面倒を見ている。
なんか、物語は陸上部での練習とかがメインの話じゃなくて、
殆どが家族関係と、そこから逸脱して成長して羽ばたく少年を
イメージした話。碧李の妹の杏樹は実は従姉妹で、
離婚した父の弟夫妻の子だった。碧李の母の勧めで弟夫妻が
出かけた時に事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。
その罪悪感から、碧李の母は杏樹を引き取るのだが、
離婚のショックで、元夫を憎む気持の余り、元夫と血の繋がっている
杏樹を虐待してしまう。虐待を知った碧李はそれを防ぐため、
陸上部を辞めて、できるだけ妹の側にいようと決心する。

ストーリーは、碧李の視点からと、あともう一人、
陸上部のマネージャーである杏子も出てくる。
碧李の場合は、虐待が行われている壊れかけた家族像を
必死で保とうとしているのだけど、杏子の場合は、親の愛情と
そしてその家族から解き放たれたいという、縛られた立場。
家族の繋がりってなんだろう、と、碧李と杏子の家庭を通じて考えてしまう。

この『ランナー』って陸上物として売り出されてるけど、
実際は家族の話で、陸上の走り、がメインじゃないと感じた。
家族の話、特に碧李の母と、その義理の娘、杏樹の関係を通して、
家族というものを見据えているような…。
虐待をしてしまう、虐待でうけた心の傷、とか、
生々しくて、そして傷つけ傷つきあっている関係が痛々しい。

いっそのこと誰かを悪者にしてしまえば、簡単に納得が出来て、
複雑な思いで苦しむことはないのだろう。
しかし、虐待をしてしまう碧李の母もその自分の行為に傷つけられ、
それでもなお、誰かを傷つけることでしか自分を保つことが出来ない。
この悪のスパイラルをどこかで消し去ることが出来ないだろうか、って
読みながら考えていた。

世の中に、やっぱり子供を虐待してしまう親はいるわけで、
それがエスカレートして殺人になってしまうケースも多い。
どうして虐待をしてしまうんだろう、って、その親たちは
多分自分自身に何度も自問自答しているんじゃないかと思う。
してしまう、一線を越えるか超えないか、超えても戻ってこられるのか。
危うい心の暗い闇につかまってしまったのが虐待だ、とは
簡単には言えないことなのだけど、それでもなお、考えてしまう。
なぜ虐待をしてしまうのか。当事者じゃない自分は、それ以上何をも
言及するできないけれども、それでも一言は言いたくなる。

虐待なんて、この世から無くていい。
無くていいものこそ、無くならないというのは、
ほんとに、一体どういうわけだろう。


ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | あさのあつこ  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
漢方小説  10/18/2007  
漢方小説漢方小説
(2004/12)
中島 たい子

商品詳細を見る



『漢方小説』 中島たい子

初、中島たい子作品!
(ここんところ、初挑戦の作家ばかりだな)

漢方にも興味があるし、装丁も可愛いので、
是非とも読んでみたかった作品。
中島たい子さんの作品のタイトルって、少し変わっていて
妙に心に残るのが多い。『漢方小説』もそうだけど、
『建てていい?』とか。略歴を読み、映画制作などにも関っている、
らしいので、どおりで~、と納得できる文章だった。

この作品は、タイトルどおり、『漢方小説』(笑)。
主人公の私が突如原因不明の動機や下痢などの不調に襲われ、
救急車にのって病院にいったり、他の病院へも診察にいくものの、
どうしても良くならなくて、遂に5軒目の病院として、
漢方薬の治療院に通う話である。
昔通っていた漢方の治療院で、今度は主治医にカッコいい男性がつき
心をときめかしながら診察に通う行など、微笑ましかった。
女性だったら、1度はそういう経験あるんじゃないかな。

漢方薬ばんざーい、ってわけでもないストーリーなんだけど、
概して、『漢方薬入門!』みたいに、漢方薬の説明とか、
どういう風になりたっているのか、などなどが、
文章に組み込まれているので、わりかし、漢方についての雑学が増えた。
陰陽師の五行や、その昔、漢方薬の研究をした黄帝のことなど。
中国三千年の歴史にまつわる漢方について、
入門書的に、ちょろりと話を読むのに使うのは悪くない本だと思う。

途中、主人公が懇意にしている酒飲み友だちグループの
サッチャがこれまた鬱で病院に通って治療して
精神状態が悪いのも出てきて、主人公との比較のようで
病気自慢の話ではないけど、なんだか心が痛くなった。
どこか精神的なストレスで身体を病まなくては、
現代社会を生きられない、みたいな、ひずみの痛みかな。

成分に使われている植物の話や、其の他あれこれなど。
西洋医学の薬を「MVPがいるバスケットチーム」、
東洋医学の漢方を「わりと平凡な能力のバスケットチーム」と例え、
西洋医学の薬が、ある特定の症状にぴったり合う薬だと劇的に効くが
(ようするにMVP活躍)、もしその一人のMVPが得点できなかった
(ようするに効かなかった)場合は、全然効かないこと。
それとかわって漢方は、成分全てが総合的に効くように調合されてるので
取り立てて目立つ選手がいないではあるけど、
地味に全員全力で戦っているようなもの。だから、最終的に地味に勝つ。
意外と薬草系に興味があるあたしとしては、
漢方の話はすごく面白かった。

あと、東京都薬用植物園を訪れるくだりも好きだ。
植物が好きなので、それが嵩じて薬用植物園の記述なんて、
行ってみたいな~と憧れる気持ちが強くなった。
西洋医学の薬成分はそこまで興味がないけど
(化学が好きな人なら、多分そっちは涎ものだと思うけど)
漢方薬に使われてる植物達…、想像するだけで震えますね!



ブログランキング・にほんブログ村へ

紹介したい本 | 中島たい子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
スコーレNo.4  10/18/2007  
スコーレNo.4スコーレNo.4
(2007/01/20)
宮下 奈都

商品詳細を見る


『スコーレ№4』 宮下奈都

新人作家のなかでも実力派といわれる宮下奈都の作品を
借りてきた。各読書ブログでも絶賛される『スコーレNo.4』。
図書館に置いてなかったのでリクエストでいれてもらった。
1ヶ月ほど待ったけど、意外と早く手元に来て嬉しかった。

物語は、骨董品店を営む家に生まれた麻子が成長していく話。
4章にわかれてて、1章は中学に上がったばかりの頃の初恋、
2章は高校生時代の切ない片思い、3章は靴屋店員として働く日々、
そして最後の章は仕事が縁で知り合った恋の話。
だんだんと、麻子が成長していく過程が描かれていて、
その時その時の彼女の年齢による視点の違いが
浮き彫りにされてて、読み応えがあった。

家族との関係、友達との関係、恋人との関係。
特に家族との関係では、双子のように育った、
1つ下の妹七葉との関係がずっと象徴的に書かれている。
正確には11ヶ月年下で、美しい子どもで気が強く、
一度決めたことは必ず遣りとげる意思の強い七葉。
一卵性双生児のように、常に一緒にいて、同じものを見ていた
七葉との来るべきにして来た決別。
その後、姉妹として、自分と一番近い人間として生きていく姉妹の姿。
好みがすごく似ているのに、性格が違うから、
七葉のように、欲しいものを欲しい、と言えない麻子。
そんなジレンマと憧れが混ざり合った複雑な姉妹間の感情を
上手く描いているのが印象的だった。

あたしが一番好きなのは一番最後の方。
ようやく出会えた最愛の人に麻子は思う。
誰かを好きになって満たされたことはなかった。
逢えないとさびしいし、声が聞きたいけど、
自分と相手の中の潮が呼び合い、繋がっているのがわかる、と。

誰かを好きになって、その人といるのが凄くさびしい、という気持は
よくわかる。側にいるのに近づけなくて、痛烈にさびしさを感じる。
ふたりいてもひとりなんだ、という寂しさ。
それがなくて、どこか心の中で繋がっている絆を感じられる相手に
めぐり合えたというのは、とても幸運で幸せだと思う。

自分自身を中途半端だと感じ、ずっと引け目に感じていて、
だから自分は誰からも何からも愛されない、
そしてこれからもこのままでいくんだろう、と思っていた麻子が
自分自身では気づかないけど、周りに言われてみれば、
自分がどれだけ色々なものを手に入れていたか気づく。

中途半端で、という自分自身を責める、そしてやりきれない思いを
抱えている麻子に、読みながら途中、かなり共感していた。
物語の最初の方は、丹念に描かれた家族像や日常の情景を追うのに
目がいっていたけど、最後のほうは主人公の麻子の気持ちが
痛いほど伝わってきて、共感していた。

別の大きな出来事がある物語でもない。
さりげない日常の1コマばかりだけど、そこには確実に主人公の人生があり、
それを取り巻く世界があり、息遣いが聞こえてくる。

久しぶりに読んでよかったな、と素直に思える作品だった。
読むと心の中に少し温かい光が灯るような。
自分のことのようにも感じられて、この作品がとても好きだ。
宮下奈都、すごいな。



ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 宮下奈都  | TB(0)  | CM(1) | Page Top↑
遮光  10/17/2007  
遮光遮光
(2004/07/01)
中村 文則

商品詳細を見る


『遮光』 中村文則

2003年芥川賞候補になった作品。
ネットサーフィン中に見つけた読書ブログでの
お勧め本だったので、読んでみた。

話は、美紀という恋人を失った“私”の話。
これまで生きてきた中で、家族を失い、
そしてきちんとした人間関係を結べないまま大人になった私。
現実乖離をしている私は、ある日、出張ヘルス嬢の美紀と知り合う。
大きく口を開けて笑う明るい美紀と愛し合うようになった私は
初めて生きてきてよかったと思うようになる。
結婚を申し込んで一緒に生きていこうと決めた矢先、
美紀は交通事故で死んでしまう。
かくて、私がこれまで取り戻せるはずだった、“
喪失した人生”のやり直しさえも“喪失”した私は、
美紀のいない現実を否定しながらしか生きていけなくなり、
よりいっそう、現実から乖離してしまう。
美紀の死体から指を切り取り、持ち去った後、
その指と一緒に暮すこと、そのことを隠すことのみが、私に出来ることだった。


読みながら、私の抱えている息苦しさや重さ、喪失感で
鬱々としてしまいました。少しづつ狂っていく人間の思考に入り込むというか。
押しつぶされたような感覚を覚えながら読み進めていくのは
気が進まないし、好んで手に取りたい、というより、
少し自分から遠ざけておきたいような作品だった。
でも、よく考えると、そこまで感じさせる文章の力は凄い。
これが純文学か~、と溜息をつきながら読み終えた。

私はいう。

『恋人同士がやる典型さに憧れた。
美紀がいれば、私には違う人生があった。
ただ美紀を幸せにしたかった。
美紀と、よくある平凡な生活を、典型的な生活をただしたかった。
美紀の指なんていらなかったのだ。
指なんかよりも、美紀そのものが、ただ欲しかった。』と。

恋人を失ってしまったとしても、現実はずっと流れていて、
そして、一人残されてしまったとしても、否定して嘘をついても、
死んだ恋人をいくら待とうとも、何度も何度も思い出して後悔しても
死んだ恋人の体の一部を持っていようとも、帰ってこない。

著者があとがきにこう書いている。
『どうしようもない事柄、というものがある。いくら平和な国で生活しているとは
いっても、乗り越えがたい苦しみは、確かに存在する。』

乗り越えがたい苦しみ、だからこそ、文章で表し、
それを形にして、生み出す作業が必要だ。
そこに人間として生きる真髄があり、心の深いところにある感情を揺り動かす。
そんな悲しみについて書かれた作品が、この『遮光』である。

読後に襲ってくる重みがあるので、精神状態が余り安定しない時に読むのは
お勧めしないのだけど、でもこんなに鬱々としながら、そして最後まで
その力を維持しつつ走り抜けていくさまは、読む価値あり、だと思います。
泣けるから、感動できるから、というプラスの面だけで本を判断するのではなく、
マイナスな感情を喚起するものであっても。
ここに書かれているのは、人間が太刀打ちできない圧倒的な悲しみだ。


ブログランキング・にほんブログ村へ
ブックレビュー | 作家〔ナ〕行  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
塩の街  10/16/2007  
塩の街塩の街
(2007/06)
有川 浩

商品詳細を見る


『塩の街』 有川浩

有川浩の”自衛隊三部作”の陸。
陸上自衛隊関連のお話。

ある日突然、空から隕石が降ってきた。
その隕石は塩の塊で、関東地区を中心に街中に落ち、
その2次被害として、“塩害”で街に塩柱が立ち、
塩が世界を埋め尽くす塩害の時代になった。
塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させ、
無法地帯になる。それと共に、そこにすむ人々も
塩害と思われる奇病に侵されていく。
崩壊寸前の東京で、両親を塩害で失った少女、真奈と、
隊を飛び出し、隠遁生活を送っていた自衛隊、秋葉が出会う。

著者の有川浩の名前は、図書館シリーズでおなじみだったけど、
彼女の著作で、“自衛隊三部作”があるというのは、
短編集『クジラの彼』で知った。
ほほ~と思っていたら、図書館の新刊コーナーで、
この作品を見つけた。なにやら、デビュー作に当たるらしい。
第10回電撃小説大賞<大賞>受賞作ではあるけど、
他の作品の方が先にハードカバーになり、
このデビュー作は遅れて、ハードカバーになったわけ。
(そして、2007年6月に発売された)

読んでみて思ったこと。

“塩害”がキーワードで斬新だと思った。
塩害に襲われ崩壊する社会。暗に環境問題が大きく取りざたされる
現在では、想像上、ではなく、想像できる範囲の環境関連。
近未来的に思い描くことが出来る。
塩害が、実はただの塩害じゃなく、この塩害のおかげで、
人々が塩化して死にいく。
最初は手に汗をかくのが、塩をふくようになり、
段々と体の末端から塩化して、最後には塩の結晶になって死ぬ。

ここで描かれているのは塩害で社会が崩壊する全人類の危機、
という視点ではなく、塩害に侵された社会に生きる人々の愛である。
愛している人がいるからこそ、塩害とどう向き合うかいうのが
切実な問題になってくる。どのような原因で発病するのかわからない中、
相手が塩害で死んでしまったら、と恐れを抱く。
塩害で社会自体が揺らぎ、無法地帯になった現実を生き抜く
弱肉強食の世界と共に、未来の見えない不安が
恋路の行方をも覆っている。

秋庭さん、かっこよかったね~。
伝説の戦闘機乗りっていう、スキルの良さもそうだけど、
男気ある1本筋が通ったところとか。
あと、「大事な人を守りたい」という気持の強さ、
ストレートさ、とか。
塩害の原因を撃墜する危険な任務についたのは、
世界を救いたい、のではなく、
愛する人が塩害で死ぬのを見たくなかったから。
非常にストレートで、簡潔で、そして強い思い。
気に入りました。
現実にはそうそう、秋庭のような男っていないなぁ。
伝説の戦闘機乗りっていうの自体、あんまり存在してないからか。

あと、個人的に思ったこと。
あ、あたしには自衛隊とか、戦闘物の細かいやりとりを読むのが
苦痛だ・・・(汗)図書館警察はまぁまぁいけたんだけど、
戦闘機、とか、潜水艦、とか、細かい指令の決行状況や
任務についての、こまごまとした部分があんまり読み込めなくて、
想像しにくく、読みながら苦しかったです。
思い描きにくい状況を文章で読んで、
そしてイメージを掴むっていうのがなぁ。
読み込むのが苦手な分野があるってことを、
あらためて自覚しました。映画では戦争モノとか好んでは観ないけど、
別にちんぷんかんぷんではないから、いけるんだよな。

ま、それはさておき。
陸を読んだから、後は、海と空。
海上自衛隊の話、『海の底』、探してこなくては。
『クジラの彼』でスピンオフとして載せられてた話の登場人物と
出会えるのが楽しみ。

ブログランキング・にほんブログ村へ
ブックレビュー | 有川浩  | TB(1)  | CM(2) | Page Top↑
夜明けの縁をさ迷う人々夜明けの縁をさ迷う人々
(2007/09)
小川 洋子

商品詳細を見る



『夜明けの縁をさ迷う人々』 小川洋子

久しぶりに小川さんの短編を読んだ。
それも、感動的なヒューマンドラマよりじゃなく、
あちらとこちらの境界線に立つような人たちの
それぞれの物語。ダークすぎず、そして寂しすぎず、
不思議なことばかりじゃなくて。
ただただ、そこにあるような、それぞれの人間だけが
語れる特別な物語。

短編集で、それぞれ色があって気に入ったんだけど、
その中でも印象に残ったのは、『涙売り』。
自分の涙に特別な効果があるということで、
涙を売って暮している女の話。
その涙は、楽器演奏者の楽器に塗ると、
たちまち効果を発揮し、良い演奏ができる。
だから、女は最初は楽器店を通して涙を演奏家に売っていたが、
そのうち、楽器屋と決別し、放浪の涙売りとして生きていくようになる。
そんな涙売りが、ある恋をして、それから・・・って話。

涙が楽器に働く力、という設定で書かれている視点も、
小川さんらしいなぁと感心した。
あと、この短編の結末も、彼女らしい締め方。
けして哀しすぎず、そして幸せすぎず。
さりげない終わらせ方が上手い。

あと、ある指圧師が出会った『ラ・ヴェール嬢』の話も好き。
老嬢ラ・ヴェールの家で指圧師として通っていた男は、
足裏を指圧する仕事中に、彼女が話す、彼女の祖父が書いた
作品にまつわる話を聞く。淫靡で肉欲的な話ではあるんだけど、
そんな雰囲気は、全て指圧している1時間でぴったりと終わる。
それ以上それ以下でもない。
小川作品では珍しい作品だけど、でも小川さんらしくまとめられてて
作品の持つ静かな品の良さは崩れてなかった。

小川さんが書いたダークな色濃い短編集とか、
最初、自分が出会った頃の作風が少し残っていて、
実はそこに安心したりした。
『博士の愛した数式』も『ミーナの行進』も読んで、
それなりに好きではあるんだけど、
最初に出会った頃の小川さんの作品『妊娠カレンダー』や
『みだらな弔い』とかの作風が自分の中のイメージだったので
(ほのぼの系の小川作品って、知られるのだけはやめてー!)と
実は思っていたんだよね(苦笑)

『夜明けの縁をさ迷う人々』は自分が好きな小川作品だったので
久しぶりに、小川作品よんだな~!と実感しました。
時々で良いから、こんなん書いてほしい。
博士やミーナで賞を取り、ファンが増えたのは事実だから、
それがより多くの大衆に受け入れられることだと思いつつ、
もともとの小川作品の雰囲気も残してほしいと思う。
ファンの贅沢な望みですな。


ブログランキング・にほんブログ村へ
読書の秋ですねぇ。 | 小川洋子  | TB(1)  | CM(2) | Page Top↑
青い鳥  10/14/2007  
青い鳥青い鳥
(2007/07)
重松 清

商品詳細を見る


『青い鳥』 重松清

先日の『きみの友だち』が良かったので、
すぐさま、重松作品の学校ものを借りてきた。
『青い鳥』は装丁がステキ。
黒に青い鳥かごが描かれてて、
そこに住んでいる鳥は入り口が開けられてて
籠にはいない。
副題のように、青い鳥かごの下に英字がある。

My teacher cannot speak well.
So when he speaks,
he says something important.

私の先生は上手く喋れない。
だから、彼が話す時は、なにか大事なことを言う。

この作品は、国語の非常勤講師、村内先生にまつわる、
子供たちの物語だ。主人公の子供たちは何かしら
学校生活や生き辛さを抱えてて、苦しんでいる。
村内先生は、そんな子供の傍にいるのが仕事、という。
苦しんでいる子供のところへ行き、
その子の傍にいる。出会えたことを「間に合った」という。

先生は吃音で上手く喋ることが出来ない。
「カ」行、「タ」行が特にダメで、国語の先生だけど、
授業もつっかえながらで頑張っている。
そんな先生だけど、ある学校では、
「村内先生は特別な先生なんだよ」といわれてる。

連作短編を通して、村内先生はいろんな学校で
いろんな生徒に出会う。
場面寡黙症で学校では上手く喋れなくハンカチを手放せない子。
前担任をナイフで刺し、そしてカエルを殺さずにはすまない子。
交通事故を起こした加害者の子供で、罪悪感に苦しんでいる子。
いじめで自殺した生徒のいた教室。
先生いじめをしなければ学校にいられない子。
父親が自殺したことを止められなかったと苦しんでいる子。
中高一貫教育の学校から外の世界へ出たがってる子。
そして、かつて虐待で非行に走った時に村内先生に出会った
かつての生徒。

この作品を読んで、子供が本当に誰かを必要にしている時に
いてくれる先生って、自分は出会ったことがなかったけど、
村内先生のように、存在しているって嬉しいことだと思った。
どの作品を読んでも、その主人公の子供の苦しさで
息苦しくなったし、村内先生に出会って、少しづつ
心が楽になっていって変わっていくのは感動した。

連作短編なんだけど、一番心に残ったのは、
一番最後の『カッコウの卵』である。
カッコウは卵を自分では育てない。
モズやホオジロの巣に産み、自分は知らん顔をして、
他の鳥に自分の子供を育てさせる。
この短編の主人公は、親から愛されず育った子だ。
最初は児童福祉施設で育ち、その後実父に引き取られたが、
再婚先で虐待や放任をうけ、中学生では非行に走っていた主人公。
そんな主人公の傍に村内先生はいて、不良少年だった主人公の
下の名前で呼んでくれた。
卒業後、傷害事件を起こしたり、色々あったが、
今はまっとうに働いている主人公が村内先生を
偶然に仕事帰り、みかけるところから話しが始まる。

この作品だけは、主人公が学生として村内先生に出会う話ではなく、
かつて先生と関ったことがある子供が大人になってからの話。
大人になってからだからこそわかる、先生が自分にしてくれたこと。
そして、先生に出会わなければ「間に合わなかった」自分のこと。
先生と出会って、そしてそれから何かを学び、
今現在生きていること。村内先生と出会った子供たちが、
その後大人になってから、の話だから、先生に対しての思いが違う。
この『カッコウの卵』を読み返すと、
なんだか、とても哀しくて泣くし、そして主人公が出会う、
あたらしい幸せの形にまた嬉しくなって、泣いてしまう。
先生と出会っている『今』の話じゃなく、かつて傍にいてくれて、
心の励ましになった先生に再会するからこそ、
しみじみと感じる思いがある。

あたしは、これまで職業として教師になりたい、と
思ったことは一度もない。憧れることもなく、
どちらかというと嫌悪している節がある。
でも、最近重松作品を読む縁があって、
こんな村内先生の本を読むと、教師って仕事は、
本当はとても教師自身にとっても、やりがいがある仕事で、
色んな人生を見て、そして、関っていくわけで、
大変な仕事だけど、とても大事な仕事だと思う。
色んな子どもがいて、そして、苦しんでいる子がいて、
その時に傍にいる、って、ただただ簡単に思えることではあるけど、
実はとても力になっていて。

この作品、読んでよかった。
泣けるから、じゃなくて、色んな子どもがいて、
それぞれ問題を抱えながらも、一生懸命生きていて。
そんな子供のサポートで、傍にいることの大事さを教えてくれる
村内先生や、吃音で上手く喋れないからこそ、大事なこと、
大切なことを一生懸命話す気持ち。
人間がもつ温かいものが沢山詰まっている。



ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 重松清  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
七姫幻想  10/13/2007  
七姫幻想七姫幻想
(2006/02)
森谷 明子

商品詳細を見る




『七姫幻想』 森谷明子

祝☆森谷作品初読破!

どこかの読書ブログで見つけ、気になっていた作品。
万葉の時代や、平安時代などなど。
古典にでてくる七人の姫にまつわる小噺。

『ささがにの泉』衣通姫。
『秋去秋』軽皇子と軽大郎娘
『薫物合』薫姫。
『朝顔斎王』朝顔斎王
『梶葉襲』七夕姫
『百子淵』水都刃姫
『糸織草紙』糸織姫

伝説の、いえ、古ふるくに歌われた姫たちのお話。

あたしが一番好きなのは、『秋去秋』。
軽皇子と軽大郎姫は、万葉の時代、同腹の兄妹でありながら、
深く愛し合い、二人は都を追放された話。
近親相姦の話であるんだけど、読みながら切なくてたまらなかった。
どうしようもなく、身を滅ぼすことでしか、
思いを全うすることが出来ない愛が描かれていた。
軽大郎姫の切なく激しい思いが痛々しかった。
クライマックス、全てを知った軽皇子の悲しみや、
そして、二人の恋の終わりが哀しくて、やりきれなかった。
愛し合って幸せになるだけが思いをまっとうすることじゃない。
自分にしか出来ない恋の成就もある。
そんなことを思った。

うってかわって、もう1つ好きなのが『朝顔斎王』。

あたしは源氏物語が好きなので、朝顔斎王の巻きは知ってるけど、
どうしても、源氏物語に出てくる女人のなかで朝顔斎王だけは、
とりつくところがない、というか、才女でつけ入る隙が
あまり見られなくて、印象が薄い女人だった。
源氏物語で朝顔斎王とは、光源氏の従姉妹でありながら、
帝の血も引き、高貴な身分で頭も良く器用も清清しい美しさでありながら、
光源氏の恋の誘いも、さりげなくかわしてしまう才女。
光源氏の正室にもなれるほどの身分であるのに
結局は光源氏とは、季節のやりとりをする趣がある仲としての関係を貫く。
光源氏をめぐる愛憎の世界に足を踏み入れず、
高値の花で、そして手が届かぬ憧れの人として君臨した朝顔斎王。

そんな朝顔斎王をなぞらえた作品、『朝顔斎王』は
読んでいて、とても心地よかった。
主人公の朝顔の君の純粋な心に打たれつつ、
この朝顔の君と源氏の恋が、ここでは叶いますようにと思った。

其の他の作品も、なかなか読み応えがあった。
後半の話になってくると、段々と作品全体の底を流れる連鎖の糸が見えてきて、
1つ1つの話を読んでいるのだけど、でもまとまりを感じた。
一度読んだあと、もう一度、その全体を構成している小さな縁を
たどって読むのも面白いかもしれない。
1回読むときだけには気づかない小さな秘密がある本。
何度も読みたい、それも違う読み方が出来る本っていうのは、
読み応えがあるね!
それに、この作品を読んだ後、元の話を探してくるのも悪くない。
衣通姫の話とか、今度きちんと古文の原文で読んでみたいな~。


ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 森谷明子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
クジラの彼  10/12/2007  
クジラの彼クジラの彼
(2007/02)
有川 浩

商品詳細を見る


『クジラの彼』 有川浩

国防関係のお仕事をバックに、甘ーい恋愛短編ばかりでした。

『クジラの彼』潜水艦乗り。(同著『海の底』のスピンオフ)
『ロールアウト』航空自衛隊。
『国防レンアイ』陸上自衛隊
『有能な彼女』こちらも潜水艦乗り。クジラのスピンオフ。
『脱走エレジー』陸上自衛隊。
『ファイターパイロットの君』航空自衛隊。
書き出してみると、3つの自衛隊がきちんと2つづつ載ってるや。

意外とこの『クジラの彼』が美味しいのが
著者の過去の作品『海の底』の登場人物が出てくること。
ようするにスピンオフってことですね。
それも、時間差があるものだから、気になるあの登場人物が
あれからどうなったのか?!という、読者の興味・好奇心も
満足させてくれる!
スピンオフで短編とか美味しいな~、それも2作品あるし。

あたしはまだ『海の底』は読んでいないので、
短編から先に読んじゃったのだけど、早めに読もうっと。

有川浩さんの作品は、図書館で『図書館戦争』を見かけて、
その分厚さと表紙のイラストが妙に気になり、
(タイトルも大きかったし)手に取ったら最後、
これまで発表されてる、『図書館内乱』『図書館危機』まで
読んでしまいました。来月11月ごろ、図書館シリーズの最終作が
発表されるらしい…。つい先日好きになったシリーズなのに、
こんなに早くシリーズ最終作が出るって、少し寂しい。
でも、待たされながら読む楽しみもあれば、
すぐにシリーズ全作を読める楽しみもある。

この短編集のなかで一番のお気に入りは、勿論表題の『クジラの彼』。
勿論、『海の底』でも主人公だった冬原が気に入った。
こんな美形で、しかも大人で、少し変わってる男が好き。

あと、意外にも笑いつつ、切なくなった『国防レンアイ』、
こちらも好き。同じ国防の仕事についている同窓に恋をする男の話。
もう自衛隊では恋をしない!と誓った三池に尽くす伸下。
8年越しの片思いで、それまでの二人の関係が微妙で、
TVとかでやるなら、これこそ恋愛ドラマの醍醐味だろう!
っていうよな、『友だち以上恋人未満でありつつ現在奴隷』設定。
ありえねー!(笑)
片思いしている相手が、失恋した時だけ愚痴を言ったり、
悪態ついたり、そして隙を見せるのだけど、その時だけで
それにつけこんで、恋仲に持ち込むなんてこともなく。
こんな男を逃がすでないよ、と三池に何度語りかけたか。
(読みながら話しても誰も聞いてないけどさ)
腹が割れてる~と笑われて失恋した話は、
思わず自分まで吹いちゃったけど、乙女心としては
腹筋割れてることを気になる男から指摘されたら傷つくわよね~。
あんな男、フッて正解。

今回『クジラの彼』を借りてきて、内容的にも
甘い甘い恋愛話ばかりで、ちょっと恋愛モード全開で
くらくらしたけど、でも、これらの短編から有川さんの他の作品にも
興味が湧いてきたので、それは純粋な読む楽しみに
プラスαで、またまた新しい本への縁が開いたようで嬉しい。

有川さんの『塩の街』も借りてきたので、
もうちょっとしてから読もうっと。
同じ作家さんの作品にはまるのも楽しいのだけど、
手元に置きながら、じりじりと読むのを楽しみにするのも
乙なもんだな。



ブログランキング・にほんブログ村へ


紹介したい本 | 有川浩  | TB(1)  | CM(2) | Page Top↑
玻璃の天  10/11/2007  
玻璃の天玻璃の天
(2007/04)
北村 薫

商品詳細を見る


『玻璃の天』北村薫

直木賞候補になった作品。

久しぶりに北村先生(なぜか先生と呼びたくなる)の
作品を読んだ。『玻璃の天』、シリーズ作品の1つだった。
シリーズ名はわからないけど、時代は昭和初期、
戦争が本格的に始まる前。
主人公は(多分)学習院に通う花村商事のお嬢様。
そして、その傍に寄り添うのが女性運転手の別句、通称ベッキーさん。

収録されている作品は、『幻の橋』『想夫恋』『玻璃の天』。
『幻の橋』は現代版ロミオとジュリエットのお話。
『想夫恋』は箏の上手な同級生を平家物語の小督になぞらえた話。
『玻璃の天』が文字通り、綺麗な光りの天井を指したお話。

一番気に入ったのは、『想夫恋』だ。

≪峰の風か松風か、たづぬる人の琴の音か、おぼつかなくては思へども
駒をはやめてゆくほどに≫

平家物語の「小督」のくだりから。
秋の月夜に嵯峨野で松の並び立つ辺りに来ると、妙なる調べが聞こえてきた。
その部分を踏まえた一番最後のしめが気に入った。
国文らしいなぁ、北村先生。

その時代、昭和初期時代の男女のあり方、たるものや、
お嬢様の話し方指南などもステキだった。
『この方』が『貴方』って意味だなんて、最初わからなかった。
小督になぞらえた綾乃さんと、主人公の交流が乙女らしくて仕方ない。
お互いに名前を決め合って、風流な愛称で呼び合ったり、
「あしながおじさん」を書いたウェブスターの作品にでてくるように
主人公の寮生活を真似て、植樹祭を二人でしてみる行とか眩しすぎるー。
(福寿草を植えるところが可憐な少女を彷彿させる)

ウェブスターといえば、「あしながおじさん」の作者として有名だけど、
実は、其の他の作品も残している。短命な作家だったので作品数は少ないけど、
実は「続 あしながおじさん」たる作品もあり、それは「あしながおじさん」の
主人公であったジルーシャの同室の親友、サリーの奮闘記であり、
あたしは、なぜか「あしながおじさん」より続編の方が好みで
時々また読み返したりする。その話は別として。

『想夫恋』の綾乃さんの人物設定がとても印象深い。
箏の宮城道雄の『春の海』の演奏会の話や、川端康成の小説の話。
少女でありながら、理知的で情熱的で、ディートリッヒのスパイ映画に模して
ピアノを弾いてみせるところも好きだ。
音楽の才能に恵まれているというのも気に入る点ではあるけど、
秘密を抱え、恋心で燃えている一途さが心を打った。
最後の結末は、事件の結果、まではいかなかったけど、
綾乃さんが幸せになるといいな~。

あの時代の空気が伝わってくる静謐なる文章で、恐れ入った。
表題作『玻璃の天』ではベッキーさんの身の上話が出てくるのだけど、
目から鱗、というか、そんな設定の人物像だったとは。
昭和初期、日本が戦争に加担していき、戦争の色で真っ白になるまでの
あの時代の空気が流れてくる作品だった。

資生堂パーラー、あたし、まだ行ったことないんだよね~。
紹介したい本 | 北村薫  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
きみの友だち  10/10/2007  
きみの友だちきみの友だち
(2005/10/20)
重松 清

商品詳細を見る



『きみの友だち』重松清

重松清さんの作品を読んだのは、これが初めて。
実は、これまで避けて通ってきた、ような・・・。
多分肌に合わないだろう、と勝手に解釈していたからか。
思春期の子供の話とか、”温かい目線で”といわれると、
なぜかひいてしまっていた。
『ビタミンF』とか『ポケットにナイフをしのばせて』とか、
文庫本で買ったことはあったけど、多分積んだまま行方不明。

今回、この作品を手に取ったのは、実は読書ブログのお陰。
自分でブログを書きながら、沢山呼んでいる読書関係ブログを
ネットサーフィンしているうちに、この作品のレビューが目に留まった。
『きみの友だち』に感動しました、ってレビューより、
友情について考えさせられた、というのを読んで、
(一度ぐらい読んでみるか)と気が向いた。

彼の作品『疾走』は、友だちが大絶賛していたのだけど、
なぜか手に取れないまま。
勧められた本でも、自分の中のバイオグラフというか、
気が向かないと、読む気がしない。
いやいや読むぐらいだったら、「出会う」まで待つ、というのが
あたしのやり方。

『きみの友だち』のなかには、色んな子が主人公で連作短編になってる。
キーになっているのは、足を悪くした松葉杖の恵美とその弟の文彦、通称ブン。
小学生の恵美が、足を悪くして、松葉杖になり、
そして同級生の由香、腎臓を患っている、と友だちになるところから
話しが始まる。以後、恵美と由香の二人の同級生が主人公になる話と、
恵美の弟ブンと、その友だちのモトを中心とした同級生の話が交互に入っている。

恵美と由香が知り合い、ブンとモトが知り合い、
そして仲良くなっていく間、周りの同級生も、「ともだち」について
色々揉め事があったり、付き合いがあったり、いろんな事がある。

この作品で主人公になっている子達は、みんな特別な子ではなくて、
悩みもあるし、そして対人関係で悩んでいたり、上手くいかないと
立ちふさがっている子ばかりだった。

仲間はずれになりたくなくて、カメレオンのように息を潜めて顔色を
伺っている子。恋人ができた友達においていかれて、孤独を味わっている子。
苛められていた過去を必死で隠して、新しい環境で周りと上手くやっていこうと
空回りだけど頑張っている子。色んなことに才能ある友だちが、やがて一番の友だちを
みつけて、自分から離れてしまったことを気づきながら、友だちでいたいと頑張る子。

そんな一人一人の気持が伝わってきて、読みながら
人間一人一人、それぞれ悩んだり、周りの関係を考えたりするんだ、と
当たり前のことに気づかされた。

この作品を最後まで読んで、自分では思ってもいなかったけど、
号泣してしまった。特に最後の話を読みながら、
自分のことのように感じられて、友だちに対する想い、
というのに心を打たれてしまった。

恵美が写真を撮るようになったキッカケ、
そして今でも恵美が由香のことを思っていること。

友だちってなんだろう。
気軽に「友だち」って言いあっているけど、本当のところ、
「友だち」ってどういうものなんだろう。
恵美と由香、二人の仲がとても羨ましかった。
羨ましかったけど、哀しかった。
ブンとモトの仲は、微笑ましかった。
微笑ましい分、これから先、道が分かれてしまった後の
「ともだち」について考えさせられた。

自分が相手を大事に想うように、相手も同じぐらい大事に思って欲しい。
そう、恋愛だけじゃなく、友情に対してもそう思うけど、
なかなかそうはいかないことも多い。
結局は、『出会い』なんだよ、と言ってしまえば終わりなんだけど、
でも全ての出会いから、本当に心を許せて、良いところも悪いところも
好きでいられる友達って少ないと想う。

今出会っている人たちを大事にしようと想った。

ブログランキング・にほんブログ村へ
紹介したい本 | 重松清  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
木漏れ日に泳ぐ魚  10/09/2007  
木洩れ日に泳ぐ魚木洩れ日に泳ぐ魚
(2007/07)
恩田 陸

商品詳細を見る


『木洩れ日に泳ぐ魚』 恩田陸

ある一晩の物語。
明日引越しをする部屋にて対峙する一組の男女。
二人はお互いに、相手があの男を殺した、と思っていた。
そして、一緒に暮した部屋を出る、その前の晩、
今日こそは、真実を話し合うんだと決めていた。

この作品は、男女、ヒロとアキの視点から代わる代わる語られる。
最初はお互いがお互いを疑っているが、それを聞けずにいる緊張感。
緊張感がはじけた後は、お互いに、自分が「あの時」どうしていたか、
自分の記憶にはなく、相手が見た「あの時の自分の行動」を思い出し、
そして、やがて記憶の糸が解かれていく。

こういう心理描写が多い、緊迫したお話は好きです。
それも一晩設定なのも好き。
密度の濃い、一晩、と設定された時間内で、
人間の心理がどう変わるのか、と丹念に書かれているのが
興味があって、深層世界を覗くように面白いんですよね。

色々、小さな罠が仕掛けられている文章なので、
あれこれと感想を書くと、ネタばれになってしまって、
面白みが減ってしまうので。

この本を読んで思ったこと。
男性、ヒロ側からの気持と、女性、アキ側からの気持が
書かれているのですが、なんというか・・・。
ヒロはアキを愛しているのだけど、アキにはそれが伝わっていなくて。
疑惑でしか、相手の愛を受け止めるしかない、
そのぎこちなさと、すれ違いが後半、読みすすめてて辛かったです。
ヒロにとっては嬉しくて幸せな瞬間が、
アキにとっては水をかけられたような冷静で醒めた目で見ていたり。
相手の愛の言葉をリップサービスでしか受け取れない、
心の底にあるのは、いつまでたっても消えない疑惑なのか。

愛してた気持が醒めた後の寒々とした気持と、
愛していた頃の残り香、愛の欠片に決別の意を込めて
決着するクライマックスは、哀しかった。
新たなスタートは光が満ちているようで、そして哀しみもあって。
アキは強いと思いました。
所詮、最終的に土壇場では女のほうが心は強いんだろうか。
ヒロからすると、最後は、納得いく答えなんだろか。
アキの方が数歩先に行ってしまって、ヒロが取り残されたような、
そんな気がしました。



ブログランキング・にほんブログ村へ


 | 恩田陸  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑

Blog状況

最近の記事

カテゴリー

訪問者数

メールフォーム