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ロミオとロミオは永遠に (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)ロミオとロミオは永遠に (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)
(2002/11)
恩田 陸

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ビバ!20世紀のサブカルチャーよ!

正直、この作品が、ここまで自分の好みにぴったりはまるとは
思ってもいなかったです・・・。もっと早くに読んでいてもよかった。
2002年発表の作品で、現在文庫落ちもしてます。
が!紹介は、このハヤカワSFコレクションの表紙で出したかったので、
上記のようなアマゾンの商品画像で♪

著者の恩田陸さん曰く、「20世紀のサブカルチャーを自分なりに処理した作品」
だそうです。目次からしてステキ!昔懐かしの名画のタイトルばかり。
エデンの東、ショウほどステキな商売はない、暗くなるまでまって、などなど。

内容も、20世紀を代表するサブカルチャーだらけ。
狂乱の名門高校入試に、高校生クイズ選手権から始まり、
アンダーグランドではプロレスやコスプレ、そして演劇にアイドル評論やら。

物語は、主人公のカナザワアキラが「大東京学園」に入学するところから。
そのころの日本は、日本人だけが地球に居残り、化学物質や産業廃棄物の
処理にあたる近未来。そんな世界で生き残るエリートになるため、
大東京学園への入学を決めたアキラと、そして北海道から入学してきた
シゲルとの友情、学園生活に秘められた謎と罠、陰謀。
そして、学園からの脱出を試みる「新宿」クラス。
学園生活の息抜きに夜な夜な学生が集まる、秘密の場所、
『アンダーグランド』と呼ばれるサブカルチャーの宝庫。

アキラとシゲルは学園の謎に近づき、そして、この前世紀サブカルチャーの
歪んで狂った遺物で閉ざされた未来しかない学園から脱出すべく、
命を燃やす。後半、脱出劇が火花を散らすように繰り広げられます。


ぎっしりと、この1冊に20世紀のサブカルチャーと呼ばれる大衆文化が詰まってた!
切り口はどこでも金太郎飴、のようなもの、サブカルチャーだらけ。
なかでも面白いのは、そのサブカルチャーについて、近未来からの推測で語られるので、
ディズニーランドが実は軍事工場だったとか(都市伝説だろ!)、
観覧車(本作中では逃亡者をいれる独房)だったり。
プロレスやK1、こんなことさえも、アンダーグランドでは熱狂的にいで迎えられ。

あとがきでも書かれているように、20世紀はサブカルチャーが花開き、
そして謳歌した時代でもありました。
今まさにその時代を生きている自分としては、そのサブカルチャーの力や影響力、
そしてそれが自分にもたらした影響などは、とても感じないけれども、
この本を読むと、「ああ、こういうこともあったね~!」と
面白い面白いと読みすすめられました。

作品の流れも、色々な要素が詰まってて、なだれるようなラストへ。
あたしは、シゲルの方が好きだけど、でも、アキラも、多分名前からして、
某有名漫画「AKIRA」からきていると思うし、気になる所です。
(シゲル、はどこから来たのだろ~。知ってる人教えて)
キョンキョンとか、懐かしい名前も出てきてました。

近未来な日本が面白かった。壮大なテーマだったけど、脱走劇って
やはり読んでいながら(映画で見てもそうだけど)面白いです。
脱走する、ってところが、気持ち良いのよね、多分。
日常からの脱走、というか、人間は常に『脱走』という逸脱行為を
心のどこかで望むというか。非日常的だからこそ魅力にうつるのかもしれない。

まぁ、この本も映画『大脱走』を見ながら書かれた作品らしいけど、
その雰囲気が濃く漂っています。
面白かった!
文庫本、買っても良いな。
大風呂敷を広げちゃった感があったのですが、最後には全てちゃんとまとまり、
サブカルチャーへのオマージュが綺麗な形で片付いてよかった。


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晩夏に捧ぐ  09/29/2007  
晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)晩夏に捧ぐ<成風堂書店事件メモ・出張編> (ミステリ・フロンティア)
(2006/09/30)
大崎 梢

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『晩夏に捧ぐ』大崎梢

駅ビル6階、成風堂書店事件メモ(出張編)

前作の『配達あかずきん』に続き、今度も書店員の杏子と
アルバイト店員の多絵が活躍する話、こちらは長編。
そして舞台は、駅ビルの成風堂書店じゃなくて、
元店員で今は地元の本屋で勤める杏子の友人、
美保のお店、『まるう堂』。

前作の『配達あかずきん』の短編集も、それぞれ味があって
小さい事件ながら、ほのぼのと終わるし気に入っていたけど、
本屋について語るなら、こちらの長編の方が力入ってる!

特に地元で長年愛され、全国的にも知名度が高い宇津木書店、
通称「まるう堂」に寄せて、個人経営の書店の品揃えや
ディスプレイ、そして販売について熱く語られてるのは、
非常に面白かった。

「生きてる棚、死んでる棚」
「棚が話しかけてくる」
「いつも通う本屋は居心地がいいのが一番、
でも寄るたびに新しい発見も欲しい」

面白い表現だなぁと思ったのだけど、いつも客側からの視点でしか
本屋を見ていなくて、本屋からの立場で見ると、
本の品揃えやディスプレイって、確実に客足に関係してて、
だからこそ、書店員がどういう風に本を扱って
そして売っていくのかというのが、本屋の行く末に
影響しているものだと思う。

自分がいつも寄る本屋は、大体が「死んでいる棚」ばかりだなぁ。
あんまり入れ替わりがなくて、そして売れ筋本はじり貧で、
売れていない本ばかりが本棚を占めているという(苦笑)
でも、扱っている本の数が多いから、まぁまぁ拠り所はあって、
それで行くようなもの。
それは全国展開のチェーン店だから、そんなに工夫されていないから。
でも、個人経営の本屋って、本を読む人自体が少ないし、
版数も少ないから、売れ筋本を数冊しか手に入らなかったり、
経営するにしても、本を手に入れることから難しい事が
往々にしてあるらしい。

この本の中に出てきた「まるう堂」は個人経営の本屋としては
とても理想的な本屋で、それは経営者の目が光っているから、でも
あるのだけど、実際こんな個人経営の店って、なかなかないんだよな~。
ないからこそ、理想の本屋として、本格本屋ミステリのなかで
登場するのかもしれない。

いやはや、真面目に「まるう堂」みたいな店が
もっと増えてほしいです。そして出来れば、うちの近所に!

あ、本作のミステリについて語る、どころか、
理想の本屋の話だけで終わっちゃったけど、
内容的にまぁまぁでした。難しい謎、というより、
本屋本屋本屋!みたいな感じで・・・。


紹介したい本 | 大崎梢  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
配達あかずきん  09/28/2007  
配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)配達あかずきん (ミステリ・フロンティア)
(2006/05/20)
大崎 梢

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『配達あかずきん』大崎梢

駅ビル6階にある成風堂書店が舞台。
しっかり者の書店員・杏子と、
勘の良いアルバイト店員・多絵のコンビが、
さまざまな謎に取り組んでいく本格書店ミステリ。

本屋の謎は本屋が解かなきゃ。

存在しない本を探している老人。
亡き息子の行く先をたどる漫画『あさひゆめみし』。
配達先のお店に配られた週刊誌に挟まれた暴露写真。
書店員より詳しく本を客に勧めた謎の人物。
発売フェアのディスプレイ展示での出来事。

本屋の内情に精通しているからこそ、
生み出せる謎、ミステリーだよなぁと感心しました。

連作短編集で、表題の短編もさることながら、
あたしは、『標野にて 君が袖振る』が気に入った。

茜さす 紫野ゆき 標野ゆき 野守は見ずや 君が袖振る

万葉集に収められた額田大君の相聞歌。
ロマンティックだなぁ。
こんな歌を恋人から贈られてみたいものです。

あと、『6冊目のメッセージ』もお気に入り。
書店員ではない人物が、病床の娘に本を届けたい母親に
アドバイスして、色々な本を読ませる話なんだけど、
その選んだ本のチョイスが渋い。

病床で読みたい本って、意外と選ぶのが難しいんだよね。
自分が長期入院していたころを思い出すと、
本を読むほど元気がないときもあれば、なにかしら本が
心の慰めになって、退屈で長い入院生活の時間を
楽しめるようになったり。まぁ、病床で読むとしたら、
出来れば文字があんまり沢山詰まっていなくて
なおかつ、難しくなく、読みやすくて面白いもの。
写真集が定番かもしれないけど、意外と写真集って飽きちゃうし、
ついでに、外に出れない分、写真を見ていると猛烈に外へ出たくて
たまらなくなったりする(ようするに鬱憤が余計溜まるわけ)

この書店員じゃない方が選んだ6冊って、
バラエティ豊かで、こんな風に本を薦めるっていいな~と思いました。

この『配達あかずきん』、若手作家フェアみたいに
本屋で宣伝していて、平積みされていたんだけど、
意外と読んでみて面白かったです。
珍しく本屋が、「本屋」らしく活躍している作品というか。
本屋が舞台っていうのがいいね。
面白い設定。
この本、『本の雑誌』の2006年上半期ベストテンで
堂々の第2位だったんだね。本好きな人の聖地である
本屋を舞台にしているからか、この大好評は♪

紹介したい本 | 大崎梢  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
まこという名の不思議顔の猫 (マーブルブックス)まこという名の不思議顔の猫 (マーブルブックス)
(2007/06)
前田 敬子、岡 優太郎 他

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人気ブログ 『まこという名の不思議顔の猫』http://scomu.jp/makocatの写真集を手に入れました!
ずっと探していたのよね~。
なかなか近所の本屋で見つからなくて、いずれ・・・と思っていたら、
友人から目撃情報(!)が入り、買いに走ったです。

ブログのなかからの傑作写真が写真集になったんだけど、
まだブログを知らない人も、是非一度見て欲しい!

あたしは、この本を富士夫さん(仮名・大の猫好き)と
一緒に本屋に買いに行ったのだけど、
富士夫さんは、本屋であたしが、
「これ買うんだ~!まこ凄すぎ!」と
自分の猫のように自慢して、ちらりちらり中の写真を見せたら、
思わぬ、まこの写真に(本屋だから大きな声で笑えないので)
堪え笑いで、おかしすぎて笑って笑って、顔を真っ赤にして振るえてました。
笑憤死するんじゃないかと心配したよ、富士夫さん。

表紙のまこからして、かなり顔つきがスゴイもんね!
このキモ可愛さ(ごめん、まこ)、まじで耐えられません。

ちなみに、猫好きな富士夫さん曰く、
『飼うなら、猫は不細工に限る』だそうです(笑)
美人猫(美猫)より、ちょっと不細工の方が見飽きないらしい。
むむ、人間にも当てはまる事は猫にも・・・・、
女性もそうなのか?そうなのか?富士夫さん!

この写真集、本当に笑えます。
一番最初にページを捲った時は、爆笑の嵐でおなかが痛すぎた!
しかし、何回か捲っていくうちに、まこの不思議な顔に対する免疫がついてきて
じわじわ・・・っとその魅力に、取り付かれていく。
なんて不思議な顔をしてるんだ、まこ!
(↑もはや自分家の猫のように親近感を抱いている)

ちょっと慣れてきたら、ゆっくり冷静に(?)まこの写真を
みれるようになってきた。やっぱ猫って表情があるんだね。
今まで犬ばっかり飼ってきたから、猫については無知の世界だったけど、
猫も良いな。

まこの写真集を買ったら、無性に猫にあいたくなってきた。
明日辺り、猫カフェに行ってこよ。


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くらのかみ  09/25/2007  
くらのかみ (ミステリーランド)くらのかみ (ミステリーランド)
(2003/07/30)
小野 不由美

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隣町の図書館に行った。
ヤングアダルトコーナーというのが出来ていて、
そこにミステリーランドの本がワンサカ!興奮しました。
借りる事は出来ないので、図書館でささーっと読書。

この『くらのかみ』、装丁がめちゃくちゃ好みなんですよね。
布張りのハードブックにうっとりしています。
あたしが小学生なら、是非とも本棚に並べたいシリーズ!
そして、この『くらのかみ』、絵が好きです。
コロボックルシリーズを思い出すよ、佐藤さん。

もちろん、主人公は小学生。
そしてストーリーは子供の目線から書かれていて、冒険もの。
夏休みに遭遇した不思議な出来事を書いているので、
なんというか、ものすごーく懐かしい匂いがしました。
(本の匂いじゃなくて、文章から漂うの)

主人公が、母親の田舎の実家へ夏休みいくことになり、
そこで巻き込まれる相続争い(!)
家督後継の問題で集められた親族達。
一族にまつわる呪いのために、現当主の子供では告げず、
一族の中から跡継ぎを決めなくてはいけないという状況。
そして、その大きなお屋敷にまつわる因縁話に、くらのかみさまの話。

表題の「くらのかみ」とは、蔵の神、と書いて、
座敷童子みたいだ、と本文では書かれている。

田舎の大きな屋敷で起こる事件を、集まった親族の子供たち、
主人公は耕介って男の子だけど、その親族の女の子や男の子が
数名で、跡継ぎ問題で起こる食中毒事件などに挑む!

って内容(笑)

ようするに、ひと夏の恋、じゃなくて、ひと夏の思い出ちっく。
あたしが夢中になるキーワードは、古くからの大きな日本家屋の屋敷、
そしてその一族にまとわりつく呪い。
ちなみに、蔵の神は、その呪いから一族を助ける存在。
呪われつつ守られている、という二重構造。

読み進めるうちに、子供対大人の構図だったのが、
段々曖昧になってくる。子供の集団でも、すごく理論的に食中毒事件の犯人を
あげてみたり。きちんとタイムスケジュールをつくってみたり(笑)
アリバイ確認したり。

子供のころにこんな冒険やってみたかった!

そう思えるようなお話。一番最後にちゃんと日常に戻るのが良い。
冒険の日現実世界だけを描くんじゃなくて、
ちゃんと夏が来たら、次に秋が来るように。
夏休みがあるのなら、夏休みの最後の日が来るように。
きちんと日常に戻ってこれる仕組みをとってるのが良い。

ミステリーランドシリーズのお話として、これを見るに、
もの凄く良い作品だと思う。視点が面白いし、なによりも、子供が読んで
わかりやすくもあり、ミステリーファンの大人も満足できる。
むむ、やるなぁ!




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ようちゃんの夜  09/25/2007  
ようちゃんの夜 (ダ・ヴィンチブックス)ようちゃんの夜 (ダ・ヴィンチブックス)
(2006/08)
前川 梓

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『ようちゃんの夜』 前川梓 2006年

本作で第1回ダ・ヴィンチ文学大賞を受賞し、デビュー。
装丁に、刺繍作家ヨシエの刺繍をもちいて、乙女ワールド全開。
ひたすら、装丁がステキ。

ようちゃんは、みんなの前にいる時は「塙ようこ」だけど、
あたし(アサコ)と一緒にいる時は、「ようちゃん」になる。
アサコも、みんなといる時は、「小石亜沙子」だけど、
ようちゃんといる時は、ただの「アサコ」になる。

アサコは、ようちゃんに憧れてて、
ようちゃんになりたくて、ようちゃんの全てを欲しいと思っている。
ようちゃんは、少女特有の美しさと儚さと危うさを持っていて
それを、アサコは欲しているけれども、近くにいて触れない。

ようちゃんについて、憧れる気持が淡々と書かれつつ、
ようちゃんのようになれないアサコの落胆と、哀しみと
そして、二人の世界を取り巻く違和感が、匂ってくる。

ようちゃんは、いつも危うくて、見えないものを掴もうとしてて
アサコもそれを見えて欲しいと願うのに、アサコには見えない。
ようちゃんの鋭い感受性の世界を一緒に見ようとしても、
アサコは憧れるばかりで手にいれられない。
隣にいても見えないこともある。

少女のころ、誰かになりたいと思ったことがある。
誰かとは、繊細でそして感受性が強い、芸術家のような子。
憧れているけれども、それは届かなく、隣にいるしかなくて。
愛してるとか、恋してる、とかの感情じゃない。
ただ、その人の傍にいて、その人の世界を一緒にみたいだけ。

そんな世界があたしにもかつてあったんだ、ということを
この本を読んで思い出した。
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アサッテの人  09/23/2007  
アサッテの人アサッテの人
(2007/07/21)
諏訪 哲史

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『アサッテの人』 諏訪哲史

芥川賞受賞、群像新人文学賞受賞。
鮮やかな緑色の表紙に奇妙な女性のイラストがあり、
そして、なおかつ、栞がステキな若葉色(笑)
綺麗にグリーンで統一されている本。

内容は、叔父をモデルに「アサッテの人」という小説を
書いている「わたし」の回想録。
主に、叔父との交流の記憶、失踪した叔父の残した日記や、
亡くなった叔父の妻の日記などから、
叔父の人物像を浮かび上がらせている。

この主人公の叔父は、どんな人だったのだろうか。
「アサッテ」と表現される世界に取り込まれた叔父。
突然意味不明の単語を発する叔父は、
幼少の頃から吃音に悩まされ、成人してからは、
アサッテの世界に取り込まれていくギリギリに
立っていたが、ある日を境にアサッテの世界へ移行していく。

主人公が、叔父の住んでいた廃墟になった団地の一室を
訪ねるシーンから始まるのだが、ほぼ回想録や、
構想している小説「アサッテの人」の話ばかりで、
主人公以外の登場人物は回想録にしか出てこない。
ということは、もっぱら本文は主人公1人で
頭の中で考えている思考回路を書き出している。

叔父が苦しんだ吃音や言語障害に関しては、
自分が今勉強してる医療分野なので、かなり興味を持って
読み進めることが出来た。
「アサッテ」とは一体なんなのであろう。
狂気の世界、という一言だけでは表すことが出来ない。
叔父の苦悩や、アサッテの世界に対抗する苦しみや
理解されない辛さ、そしてアサッテに対する不安や恐怖。

それらがキチンと表現されていて、なおかつ、整合的に表され、
自分が読んでいるのが「アサッテの人」という現実の本なのか、
それとも、小説中に出てくる書きかけの「アサッテの人」なのか、
読み進めるうちに、その境界線が曖昧になってくる。

規則正しく、叔父のアサッテを書きだしている文末のイラストなど
内心(ここまで考えたのか!)と現実的過ぎて、
作者の意図が少し不気味に思えたあたしは、既に作品に取り込まれ
アサッテの世界を見ようとしている、といえるだろう。
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趣味は読書。  09/23/2007  
趣味は読書。趣味は読書。
(2007/04)
斎藤 美奈子

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『趣味は読書』 斉藤美奈子 2003年

三浦しをん著『三四郎はそれから門を出た』に
書評が載っていて、それで覚えて、図書館から借りてきた。
ここ数年のベストセラー本を書評し、ユーモアたっぷりな内容と
読者層を分析した本。取り上げられた41冊は、本屋や新聞広告や
人の噂とか口コミで、目に耳にした作品ばかり。
あたしも、この本の中で取り上げられている作品で
読んだことがあったのは、14作品。

・『鉄道員』浅田次郎
・『朗読者』B・シュリンク
・『銀座のママが教える「できる男」「できない男」の見分け方』
ますいさくら
・『プラトニック・セックス』飯島愛
・『みにくいあひるの子』梅宮アンナ
・『永遠の仔』天童荒太
・『「捨てる!」技術』辰巳渚
・『冷静と情熱の間 Rosso 』江國香織 /
『冷静と情熱のあいだBlu 』辻 仁成
・『LOVE論』つんく
・『模倣犯』宮部みゆき
・『海辺のカフカ』村上春樹
・『チーズはどこへ消えた?』S・ジョンソン
・『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』J・K・ローリング
・『世界がもし100人の村だったら』


だいぶベストセラー作品を読んでいるなぁ!
41作中の14作だから、34%(笑)

この本を読んで思ったこと。

本を読む人って、人口の1割ぐらいしかいない(らしい)!

本を読む人は少数民族だ…。

本は、イメージするよりずーーーーーーーーっと
購買層の少ないマイナーな商品…。

一冊の初版が多くて5000部。
今は、2000~3000部の本も珍しくない。
そんな小ロットの商品だから、1万部売ればシングルヒット。
10万部売ればホームラン。

もし日本が100人の村だったら、40人は全く本を読まず、
20人は読んでも月に1冊以下。
しかし、これには図書館で借りる人(あたしみたいな人)も
含まれているわけで、実質的に、「買う」視点からみると、
「毎月1冊以上の本を買う人」「定期的に書店に行く人」
「新刊書に関心のある人」など、本に一定のお金と時間を割く人は
せいぜい100人の村に4~5人、数にして500~600万人ぐらい。

…、本が趣味と豪語している自分としては、
「本を読んでいる」って日常茶飯事なことで、
当たり前なんだけど、それは少数民族で(マイノリティ)で
多数民族(マジョリティ)は、本を読まない人々なんだというのを
あらためて実感しました。
実感したけど、ここまで少数民族だとは思ってなかった!(笑)
まぁ、周りを見渡しても、読書が趣味っていう人は少ないけどね…、
少ないどころか、殆どいないけどね…。

この本の内容である書評はさておき。

斉藤さんの面白いところは、ベストセラーとはなんぞや?
本を読む人口とはなんぞや?という問題を最初に提示しながら、
読書人の分類までしているのが面白い。

『偏食方の読者』
特定の分野しか読まない読書人。ビジネス書しか読まないサラリーマンや
ファンタジー小説しか読まない高校生や、専門書だけ読む研究者、
教祖の本しか読まない宗教団体の信者、などなど。

『読書原理主義者』
本であればなんでもいい、本ならば何でも読めという人々。
本に対する無根拠な信仰を持っている。
「若いときは乱読せよ」「若いうちこそ古典を読め」などなど。
中には、読書とスポーツを混同する格闘家までいる。
(音読勧めや、本に線をひけ、など)

『過食型の読者』『読書依存症』
年中本に関するゴタクばっかり捏ねている。
書評や書籍広告にもよく目を通し、読んだ本についてあれやこれや論評。
ネットで読書日記を公開など。

『善良な読者』
面白そうな本、感動できる本だけを読みたい読者。
ベストセラーを買い、出版産業を支えている。
素直で感動好き。明朗で前向きに読書と付き合っている人々。
読書ビギナーともいえる。


・・・・長くなってしまったけど。

斉藤さんのこの本を読んで、自分と本との関係をあらためて考えた。
あたしは、多分『善良な読者』を卒業しつつある、読書依存症かな。
最近、感動や涙を売り物にする本って、あんまり好きじゃないのよね。
エンターテイメント性に富んだ作品は好きだけど、
でも、あまりにもエンターテイメント色が強い作品は、
違和感を感じてダメ。かといって、純文学みたいな、硬質の世界は
まだ馴染めない。んだけど、読書日記をブログで公開してるし(!)
ついでに、その自分で書いた日記を集めて、本なんか作ろうと思ってる
いわゆる変人部類に入る(断言できる)

斉藤さん、本は趣味、とだけ言い切るだけあって、
読書人口に対する考察、面白すぎです(笑)
上記に漏れて「邪悪な読者」っていうのも存在するンだけど、
それは裏の裏を読んで、批判本ばかり愛する人達のこと。
邪悪って表現に笑ってしまったけど、確かにそういう人達いる!
なぜか、批判的に書く書評こそが「本当の書評だ」と言い
賛美するような人が(苦笑)それはそれで好みの問題だから。

最後になったけど・・・。
ベストセラーの書評が続く、この本だけど、
書評はさておき。売れている本って、結局、
「お父さん頑張ろう!」「年をとるとは」という
テーマ2つに沿って書かれている本が多いというのが
(嗚呼、やっぱり今の時代求められているキーワードね)と
思いました。高齢化社会だから?!

これから先、多分しばらくの間は、老いについての
本がずっとコンスタントに売れ続けていくんだろうなぁ。

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青年のための読書クラブ青年のための読書クラブ
(2007/06)
桜庭 一樹

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『青年のための読書クラブ』 桜庭一樹 2007年

この世界、好き!!

思いっきり、聖マリアナ学園の世界に浸ってしまった。

聖マリアナ学園とは、東京山の手に広々とした敷地を誇る、
伝統ある女学校。幼稚舎ら高等部までが同じ敷地にある校舎で学び、
大学のみが別校舎になる。20世紀初めに、パリの修道会を母体とした
修道女聖マリアナによって建てられた。
この聖マリアナ学園には良家の子女が通う。

読書クラブ・・・、これはすなわち、学園内ではみ出し者が
集まる倶楽部。他の倶楽部に行き様がない生徒が集まり、
場末感が漂う読書クラブ。ここには秘密に受け継がれている
読書クラブ誌というものがあり、学園の生徒会から抹殺され、
忌むべきものとして暗躍した事件に関して綴られている。
文責は、その当時の読書クラブに在籍していたもので、
コード名で書かれる。

ちなみに、読書クラブ誌に書かれた事件は下記のとおり。

* 鳥丸紅子恋愛事件
* 聖女マリアナ失踪事件
* 奇妙な旅人
* 一番星
* ハビトゥス&プラティーク

聖マリアナ学園の歴史を揺るがす大事件が書かれてて、
それを秘密に盗み読んでいるような倒錯感がステキ!
そして、ミッション系のお嬢様学校のイメージそのままの世界で、
まさに少女の世界を描いている学園物に久しぶりに当たったので、
読みながら、もの凄くはまってしまいました。
少女小説さながらの世界・・・(うっとり)

どの事件話も好きなんだけど、一番のお気に入りはというと、
やっぱり最初の、鳥丸紅子恋愛事件かしら。
1960年代の事件として描かれているのだけど、
こんな世界…、クララ白書やアグネス白書を
もっとダークにしてそして艶美で倒錯の世界だわ…。
学園に一人、「王子」と呼ばれる人がいて、
それは全校生徒の憧れであり、そして男役(宝塚の世界!)。
女子高にありがちな苛性エス(レズというのかな)の雰囲気が
まるだしで、読みながらドキドキしてしまいました。
その「王子」を場末で中央政治から遠ざかっている読書クラブから
輩出するために暗躍する読書クラブのメンバー達!
この参謀の腹黒ぷりに感服しました(苦笑)
語り口も硬派で、正統派日本語で喋る良家のお嬢様に
魅了されました。

シリーズ物では出ない作品で、これ一作で十分に楽しめる。
初めての桜庭一樹作品なんですが、惚れました。
其の他の作品も読んでみたい!
少女の世界を描いた作品に定評があると、
桜庭一樹に関して聞いたことがあるので、
おもいっきり少女の世界が好きな自分としては、
注目の作家だわね。
 | 桜庭一樹  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
むかしのはなし  09/22/2007  
むかしのはなしむかしのはなし
(2005/02/25)
三浦 しをん

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『むかしの話』三浦しをん

日本昔話をベースに、この昔話が現代ならば、
というテーマで書いた作品。

・かぐや姫
・花咲か爺
・天女の羽衣
・浦島太郎
・鉢かつぎ
・猿婿入り
・桃太郎

心を打たれたのは、猿婿入りをベースにした『花』。
地球が隕石で滅びる前に、科学者や選ばれた人間だけが
地球外の星へ移住するのだけど、その移住のために
結婚した二人の話。
旦那の「サル」が献身的な愛を捧げるのに対して、
サルに引き摺られるるかのように、つれてこられた妻は、
サルの事を「愛していない」。
夫婦の愛とは、どういう形なんだろう。
献身的に愛す、盲目的に愛すとは、どういうことなんだろう。
愛する側は幸せでも、愛される側はどうなんだろう。
そういうことを考えた。

あと、天女の羽衣をベースにした『ディスタンス』は
禁断の恋を、叔父と愛しあう姪の話。
叔父と引き離され、逢いたいと願う彼女のカウンセリングの様子を
描いているのだけど、妙にリアルで、そして切ないです。

短編が連なって1冊の本になっているのだけど、
ところどころ、繋がりがあって、それを探すのも楽しい。
登場人物の縁故の者が出てくるとか。
設定は近未来ってところかな。

あなたは、隕石による地球崩壊で、地球が滅びるその瞬間、
誰と一緒にいたいですか?

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三四郎はそれから門を出た三四郎はそれから門を出た
(2006/07)
三浦 しをん

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『三四郎はそれから門を出た』三浦しをん 書評エッセイ

三浦しをんが読書について、色々な雑誌に載せたエッセイ集。
中高生のためのお勧め本について書いたり、
犬雑誌でのエッセイだったり、雑誌アンアンに載せたエッセイだったり。
変わっていないのは、本に対する愛。

ここで紹介されている本で気になったのは、
いくつか本メモ帳にメモってみた。
よく、お勧め本とかブログで見るたびに、興味が湧いたのは
メモ帳に残しておく。そしたら図書館で探す時に役立つから。
メモ帳の中に書かれた本の横には、☆印。
星の数だけ、どれぐらい読みたいかという目安(笑)
意外とメモ帳があるお陰で、本を読んで好きになった作家もいる。
あながち、自分以外の人が勧める本っていうのも、
読んでみるに限る。

中高生向けの本もあるけど、戦争物の作品や、
50年前の作品なども取り上げられてて、意外と三浦しをんが
あれこれ読んでいるんだなぁ~と感心した。
誰かの読書記録を読むと、その人の脳内回路を覗いているようで
面白い。思考回路の成長がわかるというか。

三浦しをんにとって読書は、「趣味」なんて次元で語れるものじゃなく、
持てる時間と金の大半を注ぎ込んで挑む、
「おまえ(本)と俺との愛の真剣一本勝負」というものらしい。
こんなくだりを読んで、その気合の入りようにびっくりした。

あと、この本の中で嬉しかったことがある。
梨木香歩さんの本、『村田エフェンディ滞在記』が中高生向けの
お勧め本のエッセイの中に登場していた。
『異質なものの存在を認識せよ』という題名で書かれたエッセイで、
取り上げられていた。『私』と『私以外』の人間の関係を
きちんと認識することが大事だ、という内容なのだけど、
この本について書かれたエッセイのなかでは、的を獲ていると思う。

そして、もう一つは、自分が梨木香歩の作品の中でも
傑作だろうと、愛して止まない『春になったら苺を摘みに』が
出てきていたこと。文庫になるまで時間があって、このまま消えるのか?と
不安に思っていたのだけど、文庫になった途端、読む人が増えたのか
この本の名前を他人の口から聞けるようになって嬉しい。
三浦しをんが、この本を、『静謐で、強く、美しい。』と評していたのが
とても嬉しかった。まさに、そう!そうなんですよ。
今まで読んだエッセイの中で、ベスト5に入る、と、
三浦しをんが評してくれてるのも嬉しい。
このエッセイは、とてもいい。
そのよさをわかってくれるのが、自分の大好きな作家の三浦しをんで
とても嬉しい。あなうれしや。

(脱線)表紙にエケコ人形(通称エケコ様)が写真入で載っているのが可愛い♪
 | 三浦しをん  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
おとぎ話の忘れ物  09/21/2007  
おとぎ話の忘れ物おとぎ話の忘れ物
(2006/04)
小川 洋子、樋上 公実子 他

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小川洋子が文章を書き、樋上公実子が挿絵を担当。

大きな絵本もどきの、挿絵が満載のお洒落本。
スワンキャンディという会社の売り場の隣にある忘れ物図書館のお話。
スワンキャンディの2代目(売り場話し手の祖父)が、
世界各地の忘れ物保管室で見つけてきた、おとぎ話の忘れ物を
それぞれ、世界に一冊しかない本として、装丁して、本として置かれている場所、
それが、忘れ物図書館。

スワンキャンディで、忘れ物図書館の案内から始まり、
おとぎ話の忘れ物は、
「ずきん倶楽部」「アリスという名前」「人魚宝石職人の一生」「愛されすぎた白鳥」と
4編が収録されている。

あたしが一番お気に入りなのは、「人魚宝石職人の一生」。
もともと、アンデルセンの人魚姫の話しが子供の頃から一番好きで、
あのロマンチックで悲しい物語に魅了されていたので、その世界のお話は
印象に残りました。美しい文章で書かれる静謐なる世界。
ひたむきで、献身的な愛を捧げる人魚姫と、その宝石職人の愛。
哀しく美しい話と共に語られる邪悪で毒に満ちた展開。

綺麗なものには毒がある。
綺麗な話の最後には、毒をもって死に至らしめましょう。

小川洋子の昔の作品が凄く好き。
少し病んでいるような暗さと狂気を湛えた作品が。
『ミーナの行進』や『博士の愛した数式』など、心温まる作品もあるけど、
圧倒的に、こういう病的で、かつ、狂気をはらみ、どこか捻じ曲がった
世界を描くのは、小川洋子の魅力だと思う。

この文章を書いてて、ちょっと気がついたけど、
あたしが惹かれる小川洋子の世界には、なにかしら「職人」が関ってくる。
宝石職人もさることながら、『薬指の標本』の採集家や、
そして別の作品で語られる美しい指を持つ速記など。
職人にまつわる、硬派で求道的であり、静かな情熱が胸を打つのかな。
1つのものに熱中して、それを狂気のように魅了されるのは、
ある意味、エロティックだ。

今回のコラボで、挿絵が非常に魅力的だった。
人魚宝石職人のところの挿絵もステキすぎて、部屋に飾りたいくらい。
ロマンチックで、そして乙女心をくすぐり、なおかつ扇情的で美しい。

 | 小川洋子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)
(2005/05)
角田 光代

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本にまつわる短編集。

タイトルどおり、「この本が、世界に存在することに」ついて、
本と主人公の関係や、それにまつわるエピソードが多い。

快く読める第一編の「旅する本」。
学生時代に読んで古本屋に売った本と、
20代になって、旅行先で遭遇。
逢うたびに売るんだけど、まためぐり合う本。
そして、何年もしてめぐり合うたびに読む返すと、
自分がどれだけ、前回読んだ時と違うのだろうかということを感じる。

同じ本でも、読む自分の年齢や、其の時の状況で、
その本から「読める」ことって、不思議に違う。
あの時は見えなかったもの、わからなかったもの、察せられなかった文章からの
隠喩や雰囲気を、例えば10年後また読み返すときに初めてわかったりする。
それどころか、10年後に読み返した時に初めてわかることもある。

そんなテーマで書かれた「旅する本」は印象に残った。

あと、自分がこの本の中で一番気に入った作品は、「彼と私の本棚」。
5年間付き合った彼と別れた主人公が引っ越しをする話。
しょっぱなから、同棲していた部屋を出て行くために荷物整理をしてて、
そして、二人の共通の趣味であった本を目の前に溜息をついている。

とてもよくにた読書傾向で、お気に入りの本が同じ恋人と同棲した5年間。
この5年間の記憶が本棚に現れている。


・・・・・・・・・・(本分より)・・・・・・・・・


私の目に文字も絵もうつらないのにぽとりと水滴が落ちる。頬をはられたように気づく。だれかを好きになって、好きになって別れるって、こういうことなんだとはじめて知る。本棚を共有するようなこと。たがいの本を交換し、隅々まで読んで同じ光景を記憶すること。記憶も本もごちゃまぜになって一体化しているのに、それを無理やり引き離すようなこと。自信を失うとか、立ちなおるとか、そういうことじゃない、すでに自分の一部になったものをひっぺがし、永遠に失うようなこと。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


誰かを好きになって別れる時の、引き裂かれるような悲しみ。
これが、この文章に表されてて、とても心を打たれた。
「失恋」とはうまく言ったものだ。
好きになって別れるということは、色んな意味での喪失、という言葉が、
凄くよくわかる。二人が共有した時間は「思い出」として残されるけど、
でも、その「思い出」に片付ける作業は、まさに自分自身の心をひっぺがすような、
そして引き裂かれるような悲しみや痛みを伴うもの。
「思い出」という枠に入れざるおえないのに、
いれることが既に喪失の始まりだったりする。

共有した時間は失われない。
いつかは、それを「思い出」として語ることができるし、
心の中で位置づけはできる。
でも、共有した時間は戻ってこない。
永遠に失われて、そして失われてるからこそ、
ずっともち続けていられるんだと思う。

 | 角田光代  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
重力ピエロ  09/21/2007  

重力ピエロ (新潮文庫)重力ピエロ (新潮文庫)
(2006/06)
伊坂 幸太郎

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『重力ピエロ』 伊坂幸太郎 2003年

神様に突然質問をぶつけ、どうすることが正解なのか、と
問いただしたところ、帰ってきた答えは『自分で考えろ!』。
これって、凄くシンプルだけど、神のあり方としては
まっとうで正しいと思う。

泉水と春の兄弟、そして父。この家族の物語だ。
泉水と春は血が繋がっていない。
春は、20年前、母がレイプされた時の子供だ。
そのことを知りながら、父母は春を家族として向かいいれた。
春の遺伝子の半分は、レイプ犯のだ。
しかし、遺伝子が繋がっているから「家族」なのではない。
家族とは?というテーマを、この本の中で何度も語られる。

上記の神様への質問は、父が母からレイプ犯の子供を身篭ったと
告白された時のこと。父は「自分で考え」て、「産もう」と決断した。
「春は俺の子だよ。俺の次男で、おまえの弟だ。俺たちは最強の家族だ」

それから20年。

事件が起こる。

落書きと放火。落書き消しを仕事としている春に
引き摺られるように遺伝子工学の仕事をしている泉水が、
落書きと放火の事件の犯人を捜す。

あたしは、この本の中で一番、父が好きだ。
そして、一番好きな章は、「父の価値とゴッホ」。
人の凄さを知るには、それ相当の時間が必要である。
ゴッホがレンブラントの絵を見た時のエピソードから、
父の人間像にについて描いている。
地味で目立たず、特技もないが、父は凄い。
「最強の家族」という表現がまさにピッタリ。
「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」
なにもかもが終わった後での父の言葉は、
とても胸に響いた。
最後の言葉を読むためだけに読み始めても
この本は良いかもしれない。

タイトルの「重力ピエロ」。
これは泉水と春が子供の頃に観たピエロの話から。
楽しそうにブランコを移動しているピエロを見て、
落ちてしまう心配をするのじゃなくて、
ふわりふわり飛ぶピエロには重力なんて消えてしまうってこと。

楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる。

まさにそのとおり。

そんな風に生きていたいと思う。
 | 伊坂幸太郎  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
袋小路の男  09/20/2007  
袋小路の男袋小路の男
(2004/10/28)
絲山 秋子

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『袋小路の男』絲山秋子 2004年

純文学って苦手だ。

芥川賞と直木賞が違うように。
あたしの好みは、明らかに大衆文学の直木賞。
この「袋小路の男」は芥川賞ぽぃ正統派の文芸で
作品中に流れる、この「正統派!」という硬派な空気に
最後まで馴染めなかった…。

ちなみにこの作品は、2004年第30回川端康成文学賞を受賞。
川端康成文学賞は、その年1年間のうちで発表された
一番優れた短編に与えられる賞らしい。

面白くなかった、という一言で表すわけじゃない。
ただ、この硬質の世界に近寄りがたくて、
そして余り理解が出来なくて、痒くなる。
読んでいて、あまり面白くない。
エンターテイメント性を求めるわけじゃないけど、
この本の魅力は「ストーリー展開の面白さ」じゃなくて
「ストーリーの味わい深さ」だろう。
この味わいを自分が咀嚼できない、というか、
なんというか、・・・食わず嫌いだ(苦笑)
娯楽作品だけが、「面白い本」ではない。
味わい深い本も、また「面白い本」であると思う。

日向子と小田切。
日向子は先輩である小田切が好きで、ずっと追いかけている。
小田切は小説家を目指していて、そして恋人もいるし、
日向子のことは相手にしない。
でも、日向子と近からず遠からずの関係で、
「友達以上恋人未満」のような言葉で喩えで言うならば、
かぎりなく、友達以上であり、そしてそこには恋人未満という、
「恋人」という言葉はふさわしくない。
振り向いてくれない男をずっと追い続けるという、
片思いの典型的な例だけど、そこには、相手に振り向いて欲しいという
思いよりも、「ただただ好きで、好きだから好きでい続ける」って
盲目的な思いの強さと長さが描かれている。

途中で日向子が小田切に体の関係を求めて、
それがあれば諦められるかもしれないと足掻くシーンがある。
諦めきれないから、その手段か?!と
大きな疑問が残ったのだけど、唯一そのシーンだけ
人間らしい葛藤や俗ぽぃところが感じられて、
なんだか親しみを覚えた。
ツクヅク、自分は俗ぽぃ恋愛が好きで(そしてそれしかできなくて)
「袋小路の男」のようなプラトニックな恋愛は苦手だ。
苦手、というか、実践したことがないからかな。

絲山さんの書く文章は格調高い。
それでいて、堅すぎる事はなく、女性のほのかな色気がある。
文学を感じさせる正統派の美しさ、この本全体から漂う。
よく考えれば、好き嫌い無しにこの本を思うに、
この品格は素晴らしい。上手く文章で表現できないのがもどかしい。
柔らかくもありながら、芯のある雰囲気を醸し出すことは
書き手のもつ才能である、ということかな。

この1冊には、3作収められている。
連作の「袋小路の男」「小田切孝の言い分」、そして
叔父と姪が宇宙の星についてやり取りをする「アーリオ オーリオ」。
一番最後の「アーリオ オーリオ」が好きだ。

手紙をやりとりするうちに、姪が自分だけの新しい世界を作り、
そして想像の世界、内面的な世界を深めていく若さゆえのエネルギーが
叔父の哲の心を揺り動かす。
世界を想像すること、そして、想像したことを誰かと共有すること。
それは絆であり、心の交流であり、二人だけの間で閉じていながら、
どこまでも自由に広がっていく世界である。
やり取りするうちに、お互いの仲が深まっていくのが感じられて、
いい視点から切り取っている作品だと思った。


 | 絲山秋子  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
読書ブログを書こうと思い立ったのは、自分の本を作りたかったから。
読書は好き、でも読みっぱなしで、それの記録さえつけたこと無くて、
1年間でどれだけ本を読んでいるだろう?という疑問があったから、
せめてタイトルだけでもメモしておこうという試みを6月から始めてみた。

タイトルと著者名だけの他に、自分が心に残った言葉を、
小さなノートにまとめていたんだけど、そのうち、メモ書きが面倒になり、
現在に至る(笑)

ちょっとだけ書いているのが面倒。
メモ書きだからこそ面倒。

どうせなら見える形で、きちんと体裁を整えて読書記録をつけるなら、
読書にも張り合いが出るだろう、と考えた。

そして思いついたのが、読書日記を1冊の本にまとめること。

きゅるる文庫とか、ブログをまとめて製本できるサービスがある。
きゅるるに登録したのは、実は日記を製本したかったから。
しかし、登録して既に5年が経つけれども、一度も製本をしたことが無い。
もとをいうなら、原稿にするだけ毎日日記をきゅるるで書けなかった、というのが原因。

それである意味、諦めていたんだけど、今回奮起してみた。
なぜかというと、1ヶ月の夏休みがあるから。
この夏休みの間で、何かを成し遂げたいと思っていた。
沢山勉強してもいいし、何か別な事に取り組んでも良いし。
思いはあるものの、心が定まらなかった。

そして、夏休みの半分を過ぎた時点で、ふと気づく。

この夏休み中に沢山読書をして、念願の読書日記を本に仕立ててみようかと。

のんびりした毎日の時間の中で、近くにある図書館が唯一の娯楽のような存在。
毎日通って、読んだ本を返却して、新しい本を借りる。
このペースだと、前からお気に入りの作家の作品は読みつくしてしまうから、
新しく自分が好きになれる作家を発掘するため、本の雑誌を読んだり、
ダヴィンチを丹念に読んだりする。

そして、そういう本や雑誌だけでは飽き足らなくなって、
今度はネットを徘徊。読書ブログをつけている人達の下へ足跡をたっぷりつけ、
読書ブログのつけ方を参考にしているうちに、段々と自分でも読書ブログを
つけたくなってきた。

ブログをつけることで、自分の読書生活にめりはりがでるし、
最終目標の製本までこぎけるため、とりあえず1ヶ月の30日分の原稿は
入念に書かなくてはいけない。
出来るだけ、同じ作家に固まるより、色んな作家がいるから、
色んな作品に触れる機会にする。

そう決めて、ブログをはじめた。

ブログで毎日、本の感想や、思ったことをつづり、原稿を準備する一方で、
製本について、アレコレ考えている。
製本して、自分の本を作りたいがために感想を書いているので、
どういう形式で、どんな本を作るのか、そのイメージが膨らむ。
きゅるる文庫で有料製本してもらって、その後、ハードカバーに自分で加工しようか。
もしくは、自分で印刷して、カラーコピーを使って本の写真を貼るかナドナド。

色々迷う所はあるのだけど、迷っている間が楽しいので、
前から購入していた製本を毎日見ている。
毎日見ていることで、モチベーションを保つ、という役割もある(笑)
自分が既に持っている製本の本だけでは飽き足らず、
本屋を徘徊してみた。

そして出会ったのがこの本。


普通に製本技術を提供する実用書もあるけれども、このリトルプレスの作り方、
アイディアは、目から鱗、斬新だった。

「こんな可愛い本が~!?」そして豆本でもない。

最初は、普通に紙で手作りする絵本みたいので~、と手に取った本を
棚に戻したのだけど、しばらく考えて、やっぱり購入してしまった。

この手の本は、後から欲しくなっても、ネットでしか買えなかったりする。
買える内に買っておこう、という気持と、最初は自分の考えている製本テーマの本から
はずれていたので除外してしまったけど、よく考えると、製本が好きになれば、
多分この手のことも、自分は手を出すはずだから(笑)

あと、なによりも、表紙が可愛いし、中の写真も可愛い。
女の子チック、乙女チックな心をくすぐる作品ばかりなのもいい。
こんな可愛い本が出るなんてステキだなぁ~という一言に尽きる。

自分の読書本を作り終わったら、リトルプレスで写真集を作ってみようかな。
出来れば、小さな作品を沢山作って(製本でも良いし)、
展示とかしてみたい。手作りアーティストのフリマみたいな場所に参加しても良いし。
手作りは好きだけど、人様に見せるほど、入念に作れる作品って、
実は自分にはあまりない、と思ってる。
売り物にはしなくても、自分の趣味の延長として、展示をするとか、
小さな手作りが好きな人が集まるところに参加したい、そういう思いがある。

自分の読書本を作り終わったら、今度は小さな、可愛いリトルプレスを作ってみよう。
こういうのって、実用的ではないけど、可愛くて作っているのが楽しいのよね。
インテリ、として置いておくのもいいし、プレゼント用でもステキ。

Petit Book Recipe ~リトルプレスの作り方~Petit Book Recipe ~リトルプレスの作り方~
(2007/06/22)
yojohan

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死神の精度  09/17/2007  
死神の精度死神の精度
(2005/06/28)
伊坂 幸太郎

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『死神の精度』 伊坂幸太郎 2005年

主人公は死神の「私」。
調査を行って、「死」を実行するのに適しているか判断し、
報告するのが仕事。
調査は、1週間前に相手に接近して、2,3度話を聞き、
「可」もしくは「見送り」か判断するだけ。
判断基準は、死神故人の裁量に任されてて、
よほどの事がない限りは「可」。

作品は、主人公の死神が調査に赴く1件1件で
6つの短編に分かれている。
一番最後の短編で、それまでの物語が少しづつ
繋がったのが面白かった。
キーワードがここで繋がっている!という
パズルの楽しみ。

表題となった「死神の精度」。
死神は音楽が好き、という意外なツボの設定と共に
書かれているのだけど、一番最後に死神が未来に向けて
賭けをするのが小気味よかった。
生死がない死神が未来を望むというのも変な話だけど、
こういう楽しみを抱くところが妙に人間臭い(笑)
読んでいる自分でさえ、どうなるんだろう~と
その賭けの面白さにウキウキしてしまった。

あと、印象に残ったのは「死神と藤田」。
藤田という任侠のヤクザの調査に出向いて、
藤田と敵の抗争に巻き込まれた死神の話。
「死ぬことについてどう思う?」と聞いた死神に
「死ぬことよりも、負けることのほうが怖い」と答える藤田。
任侠…、弱気を助け、強気をくじく。
任侠=ヤクザなんて、映画の世界だけで、
実際は、任侠の心なんて、いまどき、
ヤクザの世界でも滅多に見られないものだろな。
任侠の男、藤田の生き様がカッコいい。
(いまどきの日本で任侠っていうと哀川翔くらい?)
哀川翔をイメージしながら、これを読むと非常にはまります(笑)
映画化するなら、是非哀川翔でお願いします!!
(映画化の話なんて出てないと思うけど)

この作品が、何度目かの直木賞候補作になったのだけど、
正直、直木賞にこの作品が?という疑問がある。
実力があり、独自の世界観で物語を紡ぐことの出来る
伊坂なのだけど、この作品で直木賞を目指すのは、
なんというか・・・、作品にまだ力が足りないな。
勿体無い、他の作品で直木賞にチャレンジしていたら
獲れると思うんだけどなぁ。



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きつねのはなし  09/16/2007  
きつねのはなしきつねのはなし
(2006/10/28)
森見 登美彦

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不気味な話、4篇。

第1話の「きつねのはなし」では、芳蓮堂という古物屋でバイトをする
主人公が、ある特殊な客である天城さんとの取引に取り込まれる話。
きつねのお面がモチーフのように、ところどころ出てきて、気味が悪い。

けして小さなものでも、彼とは取引はしてはいけない。

その取引が最後にはどうなるのか、そして、それを止めることが出来るのは。

恐ろしいです。大したものではないから、と、取引をしてしまうと、
最終的に一番大事なものを取引に引き出されてしまう。

本当にニンゲンなのか、天城さん!?と聞きたくなる不気味さでした。
ナツメさんの人物設定が、弱弱しいようで強く、そして巧妙で実に人間らしい。
生きている「物」に取り憑かれた人々の話、といいましょうか。
人間じゃない「物」を巡る奇妙に歪んだ話、と言い換えたほうがいいかもしれない。

そして、第2話。

「話すに値する人間」とはどういう人間なんだろうか。
話始めると、とても魅力的で、そして面白く、彼の話を聞いているだけで
自分はなにも成し得てないと思うような相手。
そんな登場人物が出てきます。
彼の話は、確かに色々なエピソードが満載で面白い。
面白いんだけど、実は、その話は・・・、という展開。

話しがつまんなくてもいいじゃんー、って思う一作。
主人公が尊敬する話の上手い先輩って、話している内容が全て
「過去の出来事」であるのが、自分的に「過去の自慢話ですか?」みたいな
そんな印象を抱きました。過去の話ばかりしている人間は、あんまり好きじゃない。
これまでの人生、どれだけ起伏があって、色々な出来事や事件があって
そして自分はこういう奇妙な人生を歩いてきた、なんて、吹聴すればするほど、
その過去は、ただの飾り物に過ぎなく、その人本人を空虚にしてしまうね。

あと、印象的だったのが、第3話の「魔」。

街をぶらぶら歩くのが好きな主人公が出会う、「魔」のケモノ。
あいつは昔からここにいたんだ、という過去の出来事を思い出す街の人々。
ケモノはどこにいるのか、ケモノはいったいなのをしたのか。

こんなん読んだら、街ブラとか怖くて出来ないですよー!
最後にケモノは倒されたんだろうか。
ケモノとの対決シーンで、あっと驚く結末があります。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

森見作品にハマって、それでこの作品を図書館から借りてきたのだけど、
一風変わった作品でした。京大半径3kmを舞台にしたご都合主義な
ドタバタ・ファンタジーとは一味違って、大正時代や昭和初期などの
あの日本の空気を感じさせる作品ばかり。京極夏彦の妖怪の世界とは違うよ。
一番最後の第4話「水神」で琵琶湖の流水を堰き止める役目を果した
樋口一族のその後の話など、非常に濃密な話もあります。
水神、ってタイトルからしても、まさに昔の日本にあった民間伝承のような
滅びる前の静けさを湛えるダムに沈んだ村など、キーワードがちりばめられた作品。

全体的に、この本1冊の中の4話が、ところどころ繋がっていて、
それを読み進めるうちに、1話では知りえなかったこと、そしてその後の展開など
謎が明らかにされていくのが、面白いかな。

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チルドレン  09/15/2007  
チルドレン (講談社文庫 (い111-1))チルドレン (講談社文庫 (い111-1))
(2007/05/15)
伊坂 幸太郎

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『チルドレン』 伊坂幸太郎

伊坂幸太郎…、友人からお勧めされていたのにも関らず
(それも二人から)、偏食してしまって避けていた。
伊坂幸太郎の本をちらりと捲って粗筋を文庫本の裏で
見たりするときも
「この人の設定ありき、の作風は・・・」と思っていた。
独特の設定で書かれるからこその世界。
SFとかファンタジーじゃないんだからさぁという思いが
偏食する原因の一つだったに違いない。

でも、読書ブログを書くのなら若手作家の中でも
実力と人気を兼ね備えている伊坂幸太郎ぐらいは
チャレンジしてみよう~、いい機会だし、という思いで、
図書館の「作家別 イ」で探してみた。
何冊もあったし、友達がお勧めしていた「グラスホッパー」や
「オディボーンの祈り」もあった。
まずはお勧めしてもらった作品から、と思ったのに、
なぜか、この本「チルドレン」の表紙に猛烈に惹かれた。
(えー、お勧め本じゃないけど、これが読んでみたい…)と
猛烈に思って(多分あの脱力系の表紙が凄く好き、犬もいるし)
インスピレーションのまま、借りてきた。

収録されている短編は、
・バンク
・チルドレン
・レトリーバー
・チルドレンⅡ
・イン

5つの短編は、小説現代に掲載されたのを1冊にまとめるにあたり、
手を加えて、初めから終りまで1つの長い物語になっている。

主な登場人物が、あちらこちらで出てくるのが面白い。
時代もそれぞれ交互に並んでいて、回想録になっているのもある。

あたしが好きな登場人物は陣内だ。
勝手気ままで、自信に満ちていて、屁理屈を捏ねるのが得意で、
そして、真っ直ぐなところが好き。
妙に「世間帯」とか「良識」とか「常識」を振りかざすことない
正直に、自分の生きたいように生きている姿が眩しい。
自分の周りで陣内がいたら、すぐ惚れるんだけどな~。
陣内に関するエピソードが面白すぎて、
それを書いちゃうとネタばれなので、あまり書けないのだけど、
読みながら、陣内の活躍(迷走ぶり?)に、
非常にほがらかな気持になります(笑)

あと、盲目の永瀬と、その盲導犬レトリーバーのベスも好き。
陣内が人間よりかなり犬に近い存在で、
ベスが陣内のことを気に入ってるのがわかる気がする。
盲導犬として「立派」な姿が書かれているより、
盲導犬の日常的な、犬らしい姿がところどころに見え隠れするのが
読んでいて微笑ましいです。

陣内って、トラブルメーカーだけど、にくめなくて、
そしてギターと歌が天才的に上手い。
魅力的な人物設定で、陣内がキーワードになって
短編が進んでいくんだけど、年代設定が変わっても、
いつもいつも陣内は陣内で、明るい光で照らし続けているのが嬉しい。
明るい作品が続いてて、奇抜な設定もないけど、
普通な毎日でも、小さな事件はちょこちょこあって、
でも、それは悲惨さを伴うものではなく、明るさが消えない。
スゴイ展開が待ち受けているわけではない作品だけど、
ほのぼのとした作風が、あたしはツボに入りました。
何度読んでも陣内に笑ってしまう(笑)

この作品が伊坂幸太郎の直木賞候補作への最初のノミネート。
まだ直木賞を獲っていないけど、いつか、
というか、多分ここ数年の間では獲るだろうな。

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しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)
(2000/05)
佐藤 多佳子

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『しゃべれども しゃべれども』 佐藤多佳子


作品が深い!味があって面白かった。
流石は、『本の雑誌が選ぶ年間ベストテン』第一位。
地味なように思えて、とても人間味があり、暖かかったです。

主人公は落語家の今昔亭三つ葉。落語が好きで前座よりちょい上の二ツ目。
頑固だし、気が短いし、女の気持にも疎いんだけど、
そんな三つ葉が、話し方教室(話し方指南というのかな)を
従兄弟から頼まれてはじめたら、小学生やらOLやら元野球選手が通ってきた!

「はなすこと」に苦労している人たちのもどかしさや、
人間関係においての不器用さが、とても親身に感じられた。
そろぞれが問題を抱えながら一生懸命生きていて、
時には投げ出したくなったり、逃げ出したくなったりするけど、
でもちゃんと戻ってきて、頑張ってる姿っていうのが
とても心に残った。

話すこと=コミュニケーションが苦手、って人は
意外と沢山いると思う。自分の思っていることをきちんと言葉で置き換えて
表現する、相手に伝えるのがなかなか出来なくて苦労してるとか。
「自分ではうまく自分の思っていることを表現できないんだけど、
でも話さなくても、こんな私をわかって欲しい」と思っている人って一杯いる。
話さなくてもわかる、なんてことは、あんまりあり得ないし、
それを他人に期待するのはどうだろう?と思うのだけど、
少なくとも、この作品の中に出てくる、言葉に出来ない思いを抱えて
もどかしい思いをしながら生きている登場人物とかは、
そんな甘えがあまり見えずに、それがすごく好感持てた。

一生懸命相手に不器用でも自分の気持ちを伝えようとしている、
そんな頑張りが好き。タイトルのしゃべれどもしゃべれども、って
反義語だよね。喋れども喋れども(伝わらない)とか、そんなの。
全部自分の思いが伝わらなくても、伝える努力をする、っていうのが
実は大事だと思う。特に他人との関わりにおいては。
その努力を怠けちゃって、それでも『私のことをわかって!』なんてオコガマシイ。

ま、そんな作品以外の部分での悪態はなしとして。

読んでいて、落語に興味を持ちました。
以前、笑いについてのレポートを書くことがあって、
それで日本の笑いとして落語を取り上げた事があるんだけど、
DVDで寄席を見たりして思ったこと。落語ってすごいねー。
一言で簡単にいうのはなんだけど、味があるし、あの世界感好きだな。
実際に寄席で雰囲気を味わってみたいと思います。
口演(わざわざ口って漢字を使うのがミソ)って、
まさに話術、というか、喋ることに命を懸けてるというか、
小噺を愛しているからこそ出来る、そんなところが好き。

三つ葉の一生懸命さや、がむしゃらに相手にぶつかるところが
好感持てたな。近くにいたら、絶対惚れる。
クライマックスの落語発表会のところは、自分も手に汗を握りました。
村林少年の「まんじゅうこわい」、終わってホッとしたよ。
話し方指南の講座では、受講生(?)の三人が其々いがみあっていたり、
お互いに妙に距離をおいたり、牽制していたりするのに、
いざという時はお互いがお互いを思いやるところもあって、
その不器用な人間関係に、ほっとさせられた。

佐藤多佳子さんの作品は初めてだったから、
あんまり前評判で受けずに、期待しないで読んだからか、
かなり濃い読書になりました。この作品に描かれている
不器用だけど繋がっている人間関係やそれぞれの人物像に親近感持てて。
味のある作品だった!

映画化されているらしいので、DVDで観てみたいなと思います。
主演は国文太一かー。わりかし好きな俳優なので嬉しいです。


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卵の緒  09/10/2007  
卵の緒 (新潮文庫 せ 12-2)卵の緒 (新潮文庫 せ 12-2)
(2007/06)
瀬尾 まいこ

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『卵の緒』 瀬尾まいこ

いつも図書館で借りているのに、なんとなく立ち寄った本屋で
買ってしまった文庫本。可愛いカンゴールの絵が好きだな。

表題作の『卵の緒』と『7’s blood 』の2編を収録。

気に入ったのは、表題作。育生という小学4年生が主人公。
育生は捨て子だったらしい。祖父母の反応を見てもそうだし、
母親の自分に対する知識があやふやだから。
そんな母親に育生は自分のヘソの緒を見せて欲しいと頼むと、
卵の殻を見せてくれた。「母さん、育生は卵で産んだの」と。
そんな母に気になる人、朝ちゃんができ、
どんどん距離が縮まっていって、そして、朝ちゃんも一緒に暮らすようになる。

家族の形ってどんなのだろう。多分、この表題作は家族の愛について
書かれたものだと思う。いな、母親が育生を愛していることについて
書いたというべきか。勿論、母親は育生の実母ではない。
実母ではないけど、母親は育生のことを愛していて、
ことあるごとに、育生に対して愛しているときちんと伝えている。

祖父母も、血が繋がっていないとわかりながらも、
そんなことを感じさせず、育生を大事にしてて、孫として可愛がっている。

家族って、血が繋がっているから家族、っていう血族の意味もあるけど、
愛していて、「この人が自分の家族だ、大事にしよう」っていう、
その気持と行動でも、”家族”になるんじゃないかと思う。
血が繋がっている、繋がっていないだけが問題じゃなく。
きちんと家族として大事にしているか、相手を愛しているかという気持が
血が繋がらない家族(たとえば、夫婦間も血が繋がってないけど、家族だよね)を
繋ぐ力になるんだと思う。

クライマックスの母の独白は、読みながら号泣してしまった。
きちんと相手に愛してる、と伝えるのは、すごく強いことだと思う。
母の愛強し、という意味で感動した、わけじゃなくて、
もっと深いところで、母親が育生のことを愛しているというのを知って、
それで感動して泣いてしまった。

育生と朝ちゃんの卵の赤ちゃん対応は、微笑ましかったけど、
こういうことが出来る大人、朝ちゃんって、やっぱり
育生の母親が選んだだけあるなーと感心しました。
良い女性には、良い男性が。(理解がある男性、というのかな)
育生の母親みたいな女性になりたいな。
ちゃらんぽらんなところもあるし、めちゃくちゃなところもあるけど、
それでも、きちんと誰かを強く愛する事ができる人。

こんな登場人物をかけてしまう瀬尾まいこに感服です。


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しをんのしおり  09/09/2007  
しをんのしおり (新潮文庫)しをんのしおり (新潮文庫)
(2005/10)
三浦 しをん

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『しをんのしおり』 三浦しをん

『人生劇場』に続き、三浦しをんさんのエッセイを堪能したく、
本屋へ買いに走りました。
タイトルが洒落てる。こんな回文ちっくな(?)名前に
自分もなりたいな。「ツグミの口噤み」とか。
あんま面白くないか。(漢字読めないし)

相変わらずな、はちゃめちゃな勢いでオタク日和のような
エッセイなんだけど、三浦さんって語彙力あるなーと思う。
若手の女性作家にしては、というのかな。
色々な言葉での表現を知っているのが作家であり、
言葉・文字のエキスパートであるっていう意味ではそうなのだけど、
勢いよく笑わせながら、古風な悪態をついちゃうところが
実は好きだったりする。
オタク話なところも好きなんだけどね。

樹なつみの作品における女性像の考察は面白かった!
(こうやって漢字で書いてみると硬い表現だけど、
実際は、オタクぽく漫画の世界の話をしている時は、
これよりも、もっと俗ぽくて軽いように感じられるかも)
樹なつみの作品は宝塚的である、というくだりに対して、
友人と論議したというエッセイから。

あたしは、樹なつみの作品は、アレコレ読んでいるけど、
一番ビックリしたのが”花咲”。
女性が「選ぶ」立場である漫画って、あの時代には確かに少なそう。
ある意味画期的?!ストーリーは、花鹿という少女が
結婚相手を3人の候補者から選ぶって話なんだけど。
あたしも、三浦しをんと同様、樹なつみの作品は宝塚的じゃないに1票!

あと京都旅行での、友人との妄想話、爆笑したよ。
超戦隊ボンサイダーという、日曜日早朝の子供向けのTV番組戦隊物を
友人と設定考える、って奴なんだけど、これまた爆笑です。
京都のお寺を見て、ボンサイダー(盆栽ダー)を思いつくなんて
スゴイ!こんな面白い友達(というか妄想に付き合ってくれる友達)!
哲学の道を歩きながら、そんなことを話して盛り上がってる女三人旅って
どうなんだ?というのはさておき。
ボンサイダーだけでも読む価値あります、この本。
詳細設定をお互いに話し合いながら(それもどこかBL系なのがオタク)
盛り上がれるって、どういう交友関係やねん!?とツッコミつつ、
かなり笑ってしまいました。



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クローズド・ノート  09/08/2007  
クローズド・ノートクローズド・ノート
(2006/01/31)
雫井 脩介

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『クローズド・ノート』 雫井脩介

映画化されましたね。
態度が横柄だった江尻エリカのことばかり放映されてるけど。
先にダ・ヴィンチでこの本を見かけたので、
映画化で注目された後に読むより先にチェックしました。

主人公は大学生の香恵。マンドリン部在住で控え目な女の子。
その子が引っ越した部屋のタンスにしまわれていた日記帳を
見つけることから話しが始まります。
日記帳をつけているのは、伊吹という女性。
伊吹は小学校の先生をしていて、そして同級生と恋に落ちる話が
日記で延々と書かれているのを、香恵がちらちら読んだりしつつ、
アルバイト先の文房具屋で出会った、イラストレーターの
石飛という男性に恋に落ちる話。

正直言って、あたしは誰かの日記を読むっていうのが
あんまり好きじゃない、つーか、部屋に置かれている誰かの日記を
そのまま楽しんで読んじゃうっていうことに違和感を感じました。
なんていうのかな~。日記とか、個人的なことだし、
自分としては、日記を書いた伊吹に自分を投影しちゃうというか、
自分だったら、自分の書いた日記を誰かに読ませたくない気持。
誰かに読ませる前提で書いていないから、ガードが低いことばかり書いてて、
読まれるだけで、なんか土足で踏まれている気持というか。

こういう、「誰かの日記を見つけました、読んでみたら、なんと!」
という展開の小説って多くないですか?
日常にドラマがある、って点からすると扱いやすいテーマなの?
誰かの秘密(=日記)がキーワードにあると、食いつきがいいのは、
皆、自分以外の誰かの秘密を知りたがってるから?
あんまり好きじゃない題材だったからか、
読みすすめながらも、違和感があり、楽しめなかったのが残念です。
それなりに話の構成が悪くは無かったと思うけど、
個人的理由ですね。

あと、携帯小説のような感じで、心理描写に深みがないというか。
万年筆のところは面白かった。
しかし、何回か再読したいなと思うような深い意味を持つ
作品には、自分としては感じられなかったです。
話の展開も、ベタだな、と思ったり…。
周囲が絶賛しているし、映画化で注目されている中、
アンチなことを書いてしまう自分もなんだけど・・・。
正直言って、まぁまぁでした。

あ、書き忘れる前に。
あたし的に、鹿島さん、サイテーです。
というか、こういう変わり身の早い人間って多いよね。
今の恋人と上手くいかなくなったら、スグ次に行くというか。
「切り替えが早い」という良い評価も出来るけど、
「飽きぽくて根気がない」とも言えると思う。
友達の彼女に手を出してしまう、とか、好きだからって理由だったら
なんだって許されるのか?!と、鹿島さんを呪いつつ、
読みすすめてました。(ダークな気持だった、意外と)
鹿島さんがいたからこそ、やっぱ読みながら楽しくなかったのかも。
ダメダメだな、この男、とか悪態つきながら読んでたし…。


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青春俳句講座 初桜  09/08/2007  
青春俳句講座 初桜青春俳句講座 初桜
(2006/06)
水原 佐保

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『青春俳句講座 初桜』 水原佐保

図書館で気になって借りてきてしまった。
小説コーナーに置かれた俳句のキーワードの題名って、
かなり反則的に心を掴むのはなぜだろう。
俳句・短歌コーナーに、そんな題名の本があっても、
そこまで興味を示さないのに。

主人公は高校生の女の子。
若手の花鳥先生という(美男子!)俳人の俳句講座に通い、
高校生活の一番最後に俳句集を作ることを目標にしている。

連作短編で1年を通しているのだけど、
表題の「初桜」、「菫」、「雛祭り」と乙女心をくすぐる
可愛い題名がつけられてて、思わずうーんとうなってしまいました。
初桜、っていう響きも、菫という響きも、
俳句で使われるって考えたら、とてもステキだな。

ちなみに、あたしは本作品中の俳句、

残る花 空に余白を あましけり

というのが好きです。表題『初桜』の一番最後で主人公が詠む歌。

これに影響されて、自分でも一句作ってみました。

春過ぎて 思い出香る あの日の午後

…、意味わからないけど、俳句や短歌の本を読むと、
なぜか自分も一句詠みたくなります。影響されるのよね。


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小生物語  09/07/2007  
小生物語小生物語
(2007/04)
乙一

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『小生物語』 乙一

買おう買おうと思いながら、なかなか本屋レジに
連れて行かないままだった、この作品。
乙一は、大好きな作家です。
「GOTH」に出会った時、こんな若手作家が出てくるなんてスゴイ!と
狂喜乱舞したものですが、あれから数年。
乙一、働いていなかったのね(笑)
どうりで新作見ないはずだわ~。

というわけで、久しぶりに乙一の近況を知るべく(?)
日記集を買ってみました。

のっけから、乙一自身の
「この本を読んでも良いことはひとつもない。
この本にお金を咲くのはやめたほうがいい。」
という前書きを読み、ほくそえんでしまった自分。
やっぱ乙一本人らしいや。
いつもなぜか、この人ってダ・ヴィンチとかのインタビューでも
低姿勢&自虐的なところがあって、びくびくした感じを思い出します。

エッセイ、というか、日記なんだけど、
毎日書いているわけじゃなく、それも現実世界を書いているわけじゃなく、
時に妄想なような、そして乙一の頭の中での世界を覗いているような、
不思議な日記でした。ところどころ、小ネタが仕込まれてて
まぁ読むのが楽しい作品でした。
小生、とは、つまり乙一本人の自称。
物語、と書かれているわけだから、そういう風に読めば良いのよね。

一番面白かったのは、91ページ。

以下引用で。

・・・・・・・・・・・・・・

東京の若者たちの間で、「ありえねえ!」という言葉が大流行しているという
噂を聞いた。そこで家に帰ってから僕も「ありえねえ!」を1時間ほど練習した。
うまくできなかった。僕も若くないなと思った。


・・・・・・・・・・・・・・・

小説書かない間にそんなことをしていたのか!と、本屋で立ち読みして大爆笑。
いいよ、本書かなくて。こんな面白いことをしていたなら、許す。
(何様だ、自分)

あと、文庫版を買ったのですが、ハードカバー版から
数年後の文庫落ちだったので、その間の話やら、注意書きやらが
沢山書き込まれてました。中でも、西尾維新さんらとの作家合コンの話もあって
延々と何ページも注意書きみたいな、本文横の走り書きが続いてて、
それも笑ってしまいました。

意外と笑いが足りていない日常にはオアシスのような小生日記かも。
おすすめです。



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人生劇場  09/06/2007  
人生激場 (新潮文庫)人生激場 (新潮文庫)
(2006/07)
三浦 しをん

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『人生劇場』 三浦しをん

エッセイ集です。表紙のユニコーンの面白顔つきを見てもらえば、
大体の内容が把握できると思う…。
装画・挿画担当の佐藤三千彦さんのイラストが妙で
三浦しをんの文体とマッチしてて、イイ感じです。

三浦しをんは、『きみはポラリス』から入ったので、
どちらかというと、小説よりのイメージが強かったんだけど、
普通は、三浦しをんって小説よりエッセイリストぽぃ印象を
持ってる方が多いのかな。エッセイ、色んなの出してるし~。
小説の数より多い。

読み始めて思ったこと。

三浦さん、エッセイ面白い!
というか、同じ女子として、三浦さんみたいな友達欲しいです!
ついでに、オタクぽぃところも、全然OKですから!(笑)
あ、でも、あんまりアニメの話とかついていけないかも。
オタク友達とは失格でも、頭の中、見てみたい!

のっけから、ワールドカップのサッカーの話ばかりで、
美しい男たちにうっとりしたり、お気に入りの選手について、
こと細かくストーカーな調べをしていたり、
一体なんしよるねん!?と思ったのだけど、
一途に好きな男を追いかける乙女像、っていうのを
勝手に解釈して当てはめてみると、少しわかる気がした。
ドイツのカーン選手とか、なっつかしい~!
あたしも中継をみているころは、カーンのゴリラ顔が大好きだったな。
強烈な顔って、最初はビックリすると、見慣れると癖になるのよねん。

ワールドカップの決勝戦で、審判のコッリーナさん(地球外生命体ぽぃと表現)と
ドイツのGK、カーン選手とのやり取りで、

審判
「大丈夫か、カーン君。君が交替なんてことになったら、このフィールドでは
人類じゃないのが私だけになってしまう。くれぐれも大切にしてくれたまえよ」

カーン
「グオアアアア!(うるさい、あっち行け)」

なんてセリフを勝手に当てはめて、テレビの前で一人遊ぶ著者。
アテレコですか?!
セリフもおかしいけど、そうやって見ている著者の方がおかしすぎ!
(嗚呼、でもそういう風に観察していたらTV見ているのが面白くて
サッカー中継とか見ているのをやめられないかもしれない)

あと、「ハートに火をつけて」というタイトルで書かれたエッセイは、
近所に過激派アジトのように拡声器で怒声を飛ばすオバちゃんがいる話。

あんまりにもおかしすぎる近所に頭がおかしくなりかけた著者が
犯行現場(!)を目撃して、つぶさに観察してたり、
その拡声器での声の数を数えてみたり。
あまりのうるささに怒鳴り返してみようかと考えていたら、
後日、拡声器のオバさんに対抗して、どこかの家のおじさんが
「うるさい!いい加減にしろ!」と怒鳴り返すようになったらしい(それも拡声器で)
考える事はみな同じなんだな、と感心した著者。

なんか、こんな話題がエッセイに出てくるなんて、ビックリした。
「ハートに火をつけて」の火、って、近所の喧嘩ネタ火みたいで怖い!
意味が違うし(汗)
ついでに、この事を事細かに観察している著者にビックリ。
というか、そんな地域に住みたくない!!!

一体、著者は東京のどこら辺に住んでいるのか…。
確か、前に世田谷と読んだような。
毎日自宅の自室で生活して仕事をしているせいか、
生活に密着したワイドショー的なネタが多くて、
ちょっと三浦しをんのエッセイは笑えます。
ちゃんと仕事してんのかな~って心配になっちゃうよ。


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恋する四字熟語  09/05/2007  
恋する四字熟語 (集英社文庫)恋する四字熟語 (集英社文庫)
(2006/09)
佐藤 真由美

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『恋する四字熟語』 佐藤真由美

四字熟語っていつも、「よんもじじゅくご」だと
読み間違えてました、あいたたた。
それだったら、四文字熟語だってね。
漢字が1つ足りないのに、そう読んでいたって自分にビックリです。

この感想を書こうと思ってアマゾンで検索したら、
10月1日に新作が出ててビックリ。買いに行かなくては。

この本は、著者が四字熟語について、彼女なりの解釈を
したものを掲載している。裏書によると122の四字熟語に対して
恋愛エトセトラをくわえているというのだから、
それもまたスゴイ。四字熟語を勉強するつもりで読んでみるのも
ありかも。エピソード付で覚えやすいし。

ちなみに自分が一番印象に残ったのが、「無理難題」。
エピソードは、ずばり。
『世の妻子持ちの皆様は、独身女性に手を出すのをやめて頂きたい」。
(そだそだ!)

ようするに、不倫をするなー、少子化問題もこれで解決、って
手短に締められているのが面白かった。
ついでに、それにつけられている四字熟語が無理難題なのも、
(確かにそうだよなー)と感心する。

あと、「落花流水」。
この言葉は、山本文緒の作品題名で綺麗な言葉だなぁと思っていた。
表紙のイラストがほんわかとしたパステル調でステキだったのも
相まって、頭の中では『落花流水』=山本文緒と思う次第。
四字熟語だと気がついたのは、この本を読んだからでした。
勉強になります。

ちなみに、「落花流水」の意味。

『散った花が水の流れにまかせて流れていきたいと思えば、
それを受けた川の水もその花を乗せて流れたいと願う。
男が女を思う情を持てば、女にもまた男を思う情が生まれ、
お互いの心が通じ合うこと。また、人や物が落ちぶれることのたとえ。流水落花」

前半と後半の意味がかなり違いませんか?!
心が通じ合う~っていう情愛的な表現と、落ちぶれる表現が一緒なんて、
それって、落ちていく結末を迎える男女の愛もあるぞ、みたいで
シュールじゃないですか。

確か、山本文緒の『落花流水』では、一目惚れをした男か、
それか昔好きだった男を追って、ある日突然バスに乗って蒸発する、
みたいな話だった気が…、今一度読み直さなければ。



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 | 佐藤真由美  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
梨木香歩の作品の中で一番好きな本。
彼女のエッセイ第1作目。
何度も、何度も読み返しました。
いつ読んでも、静かな感動がある本。
彼女の生き様に触れることが出来ます。

書かれているのは、主に彼女がイギリス留学中に経験したこと。
ホームステイをしていたウェスト夫人や、その家に住んでいた人々との交流など。

あたしが一番好きなのは、「夜行列車」。

そこで作者がイギリスの夜行列車に乗り旅をした時の出来事を書いている。
車掌から誤解をうけた事をキッカケに、戦争など国家間の出来事で起きた
謝罪問題について書いている。



(本分より)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

謝罪要求する彼或いは彼女が望むことは、本当は「対等」の立場を奪回する事なのだ。虫けらのように扱われた、そのときに一瞬でも変容してしまった自分の意識--哀れみを乞う、卑屈になる、怯える、徹底的な劣位を体験する--自分の身の上に起こったそういう感情を払拭することだ。そして自分の身の上に起こったことの本当の意味を分かってもらいたい。痛みをそれぞれ個人レベルの痛みとして感じてもらいたい。それが形を変えて保証金要求になっていく。せめて相手国家の懐ろを痛めて欲しい。よくある犯罪加害者に対して、「同じ目に遭わせてやりたい」という被害者側の発言も、恨みの響きをまとっているが根は同じところから発しているのではないか。起こったことの本当の意味をわかって欲しいという。そして意識の様々な層を貫いてそういう表現になる。
彼或いは彼女らの心を相手が本当に悼んでくれたと、彼或いは彼女らが感じることが出来たら、そのときやっと本当に「それ」が終わる。

そうだ
共感してもらいたい
つながっていたい
分かり合いたい
うちとけたい
納得したい
私たちは
本当は
みな

でもそれは本当に難しく、その葛藤の中で生きることは疎ましく、時にはモンゴメリのように堅く殻を閉ざし、群れを遠く離れてしまいたくなる者も出てくるのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


あたしはこの文章を読んだ時に、心が震えた。

許す、という行為は、言葉だけの意味だけで表されるほど単純ではない。
そこに秘められた様々な思いがあるからこそ、「許す」は難しくて、そして難しいが故に
人間同士の交流や絆を引き裂いてしまう。
従軍慰安婦問題のことや、そして、戦争で傷ついた人達や、
大きな問題じゃなくても、日常的に生きている上で、誰かに誤解をされたり、
そして諍いが起きた場合、誰しもがこのことを感じるのではないだろうか。

時折、この本を出してきて、この短詩を読む。
共感する、誰かと繋がる、そして分かり合いたい、打ち解けたい、納得したい。
その思いは、誰もが持っていると思う。
持っているけど、それを実践するのは難しい。
それでも諦めずにいること、それが生きることなのではないだろうかと思う。

この本に出会ったのは、大学生の頃だった。
本の中で散りばめられている彼女の思想の1つ1つを丹念に読んだ。
読みながら、作者の真摯な生き方、そして周りを取り巻く人々の優しさや
交流から生み出される友情などを学んだ。
こんな風に考えられる人間になりたい、そう思った。
今でもこの本は、あたしの心の中にある核の糧になっている。
小さな本で、とりとめない日常の中から生み出されたエッセイだけども、
含まれている内容は、とても深い。

2002年発売だったが、なかなか文庫本にならず、
いい作品なのに読んでいる人が少ない、と残念がり
待ち続けていたけれども1年ほど前に文庫本になった。
手に取りやすい値段で、これでこの本が沢山の人に読まれることになるんだと
本屋で感動したことがある。「いい本だから読んで」と押し付けるような本ではない。
面白いから読んで欲しい、という言葉だけでは、この本は表せない。
あたしのように、この本と「出逢ったしまう」人が増えてきますように、と
心から祈っている。


春になったら苺を摘みに (新潮文庫)春になったら苺を摘みに (新潮文庫)
(2006/02)
梨木 香歩

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きみはポラリス  09/02/2007  
きみはポラリスきみはポラリス
(2007/05)
三浦 しをん

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三浦しをんの自薦アンソロジー。

アンソロジー本に投稿することが多い三浦しをんの作品と、
自ら「お題」を決めて書いた作品を収録。
他本に投稿した短編は、明るい結末が多いけれど、
「自分お題」の作品は、テーマを掘り下げて書いただけあって、
ディープに、そして密度の濃い作品に仕上がっています。

あたしが一番心に残った作品は、『わたしたちがしたこと』。

かつて、主人公のわたしと、その恋人だった俊介が、二人でしたこと。
二人を襲った出来事が、運命を変えていく。

この作品を読むと、ものすごく寂しい気持ちになります。
じーんとくる、どころじゃなくて、冷え冷えとした冬の空が広がる草原に
一人取り残されたかというような孤独感。
もし、運命の恋人がいるのならば、こんな風に寂しくて、
そして閉鎖的で、どこにもいけない気持ちになるんだろうか。

愛しているからこそ、相手を全力で、命をかけて守った。
守ったからこそ、二人では一緒にいられなくなった。
愛しているからこそ、苦しい。そして苦しませた。
「愛してる」を貫く為には、離れるしかなかった。
離れたからこそ、忘れられない。
忘れられないんじゃくて、忘れたくないんだ。
一生、この愛で絡みとられた世界で腐敗して終わっていい。

一生、愛している相手を縛り付けるためには、
相手の前で、自分の命を捧げることが究極ではない。
相手のために、誰かを殺すこと。
そんな激しい愛を目の前で見せ付けられたら、
もう他の人を愛することはできない。

もし、運命の恋人たちがいるのならば・・・。
究極に突き詰めていったら、
それは、二人でお互いを見詰め合っていく狭くて閉鎖的で
そして苦しい世界なんじゃないかと思う。
二人だけだからこそ、息苦しい。
でも、愛しているからこそ、息苦しいのを息苦しいとはいえなくて、
そして、ただただ、その世界に埋没するしかない。
寂しすぎる。


この本のタイトルは、作者によると、いつも心の中で
光がともるような存在が君であるような、恋愛においても、人生においても。
そんな意味が込められてるらしい。
ポラリスは、北極星のこと。
冬の凍える空で一番に光って、そして目印になる星。
そんな存在である誰かと巡り合えたら、
多分、とても幸せなんだと思う。

収録されている作品の中で、そのほかに好きなのは、
幼馴染への恋心に気づくラブレターの話。
永遠に届かないラブレター。

ラブレターって、届かないものの方が圧倒的に数多い。


 | 三浦しをん  | TB(1)  | CM(2) | Page Top↑
読書ブログスタート♪  09/01/2007  
読書用のブログを作ることにしました。
9月中は読書月間と名づけて、毎日本を読んでいます。
できれば、感想をブログにまとめて、それを製本したいなぁ。
製本はもちろん自分で。
まずは、自分が以前から好きな作家さんの作品だけじゃなく、
興味をもった作品を乱読することからはじめましょう。
太陽の塔 (新潮文庫)太陽の塔 (新潮文庫)
(2006/05)
森見 登美彦

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森見にはまってます。
8月に出会った運命的な出会い。
文庫だったので、手軽な値段で買ったのがつきで、
思いっきり嵌ってしまいました。

これを読むと、思いっきりアホだった
自分自身の大学生時代を思い出します、
ああ、恥ずかしい(赤面)
あのころは、そんなにアホな青春を自分で送ってるとは
思ってなかったぞ!

あまりにも男汁くさくて、恥ずかしいのだけど、
こんな作品を書く作家も出てきたんだ~と嬉しくなり
友達に紹介しまくりました。
もちろん、文庫を買ってね!なんて薦めるんじゃなくて
「これを読め!」とばかりに押し付けてきたんだけど(笑)

森見の作品で一番お手軽な値段で手に取りやすいってことで
これを一番最初にお勧め。


はじめまして | 森見登美彦  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑

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