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逃亡くそたわけ  10/29/2007  
逃亡くそたわけ (講談社文庫)逃亡くそたわけ (講談社文庫)
(2007/08/11)
絲山 秋子

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『逃亡くそたわけ』 絲山秋子

なにやら映画化されるらしい。
ついでに、最近文庫化されたね。

絲山作品の中では、一番これが好きかもしれない。
『袋小路の男』では絲山作品なんて肌に合わない、って思ったけど、
それから、この苦手感を克服するつもりで、別の作品を読んでいたら、
なんとまぁ、この『逃亡くそたわけ』はかなりのお気に入りになった。

ストーリーは簡単に言うと、ロードムービー。
(あ、これじゃぁ映画の種類か)
躁うつ病の花が、うつ病のなごやんを巻き込んで、
福岡の百々地にある精神病院から脱走して、南下する話。
脱走してスグに西新にいってみたりする。
その後、なごやんの車で国東半島を回り、
大分を抜けて阿蘇に寄った後、宮崎により、鹿児島を目指す。
読み終わったあと、地図がついてて嬉しかった。

九州で学生生活を送ったことのある自分としては、
慣れ親しんだ土地の言葉、激しい福岡訛りで喋る主人公のセリフが
とても心地よかった。「そうくさ」なんて、久しぶりに聞いたよ!
読んで思い出す方言の数々がオンパレードというか。
懐かしい。懐かしいし、なんか、主人公のセリフだけ、
方言の平仮名で書かれているのが可愛いし、その響きが読んでスグ反響する。

逃亡の旅ではあるんだけど、お金を100万も下ろしちゃった
なごやんが、時折地元の名産を食べるシーンがあって、
大分の「だご汁」にはじまり、熊本の「いきなり団子」や
宮崎の「地鶏」とか、(あ~!!美味しいよね~)と、
自分の食記憶がメラメラとしました。
いきなり団子、いまだに謎の名前だと思っていたのだけど、
あれって、「いまだかつてない味」って意味でつけられてたのね(笑)
普通に食べていて、「いきなり」芋が出てくるから、
いきなり団子だと思っていたよ。
それにしても、あれを「いまだかつてない味」って評した熊本人って(笑)

阿蘇の大観望で景色を望むシーンは良かった。
自分も学生時代に何度も大観望にいったことがあるからこそ、
知っている場所が、作品中に出てくると、凄く嬉しい。
大観望、広いし、気持ち良いし、秋冬に行くと、寒いんだけど、
空気が澄み切っていて、広いよな~って感動するんだよね。
今度、熊本に行く時は大観望まで足を伸ばそう。
草千里より、やっぱ阿蘇といえば大観望でしょ。

読みながら、まじで地元贔屓の血が騒ぐ!というか、
(ああ~、あのルートを通っているわけね)と、
実感を帯びた感覚で読んでしまう。
まじ、九州人には読んでもらいたい一作。

映画化されるのが楽しみ。
大観望が映画のシーンで使われたのって、
確か前に『ユリイカ』で観た気がするんだけど、
自分が実際に慣れ親しんだ場所が映画のシーンで使われると
凄く変な感じ。まぁ、親近感を感じて嬉しいと思うこともあるけど。
この作品の映画化、楽しみです。

東京かぶれの名古屋出身のなごやん、良い味だしていたしな。
キャラ立ちしてるというか。
名古屋嫌いなくせに、名古屋名物のシキシマのお菓子、
「なごやん」を自慢しちゃうところとか、可愛い。
誰になったんだろ~、キャスティング。

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イッツオンリートーク  10/07/2007  
イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)イッツ・オンリー・トーク (文春文庫)
(2006/05)
絲山 秋子

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最初に読んだ絲山作品『袋小路の男』があんまり肌に合わず、
(こ、こんなはずではなかった・・・)という思いが強かったので、
他の絲山作品に挑んでみました。負けず嫌いだなぁー。

図書館の本棚「イ」で立ち往生し、絲山作品のあれこれを手に取りながら、
肌に合いそうな本を探して、一番ぴたっと予感がしたのがこの作品、
イッツオンリートーク。
英語のフレーズだけでも、ピンと来るんだけど、
実際読み込んでみて思ったのは、あれほど『袋小路の男』では
肌に合わないと連呼したのにもかかわらず、
あっさりと鞍替えします。

絲山さん、なんか妙な作品書く人ですね。
一冊に収められているのは、表題と、「第七障害」の2つの短編。

表題の主人公の私が精神病を患い、ついでに周囲にはろくな男がいなくて
悩み、とか、現実、とか経済、とか、そんなビジネス書ぽぃことがない
のんびりとした日常生活で、出てくる人物全てに「・・・・・しっかりしろよー」と
言いたくなったのではありますが、それでも、この雰囲気嫌いじゃないです。
どちらかというと、社会のレールを一生懸命走っている人の世界じゃなくて、
そこから逸脱してしまって、それでも毎日世界は回っていて、って人の世界。

主人公には共感しなかったけど、妙に痴漢男には親近感を持ってしまいました。
なんていうか、主人公と痴漢男との絡みが、ドライだけど、冷たさはなく、
親密さという言葉のようなプラスのイメージじゃなく、
ただ一緒にそこにいる、お互いにその時必要としあってる関係が
他人との安心できる距離といいましょうか。
痴漢男の書き方は好きでした。

そして『第七障害』。

馬術経験者としては、この短編、見逃せません。
ここまで、馬術の障害競技について書かれた話を読んだ事がなく、
期待してなかった(!)絲山文学でこの話題が出てくるなんて、
天と地がひっくりかえるような驚きでした。

試合中の落馬で馬を死なせてしまった順子。
国体をも目指して馬術に励んできたのに、
その熱意も消えうせ、馬術から離れ、忘れようとしている毎日。

そんな順子が馬術時代のライバル・篤に逢って
そこから運命が段々と変わっていくのが面白いです。

ま、恋愛のことより、あたし的には、この作品で馬術関係の
単語やら用語やら、その世界に触れていること、その世界の話が
出てきてることが、ものすごく新鮮で、心に残ったのだけど。
あらためて、自分と馬との関係を考え直しました。
順子のように、ある種屈折した気持を抱いている馬術に対して、
ここまで自分が食いつきが良いのは、自分でも謎だけど。

ちなみに、あたしがよく躓いたのは、第七障害でなく、
第三障害、第四障害とかでした。
馬のリズムがつかめなくて、そこら辺がターニングポイントだったというか。
第七障害まで来たのなら、殆ど最後まで飛べる、って手ごたえあったから、
最初にノセる間までが大変だったなぁ。



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袋小路の男  09/20/2007  
袋小路の男袋小路の男
(2004/10/28)
絲山 秋子

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『袋小路の男』絲山秋子 2004年

純文学って苦手だ。

芥川賞と直木賞が違うように。
あたしの好みは、明らかに大衆文学の直木賞。
この「袋小路の男」は芥川賞ぽぃ正統派の文芸で
作品中に流れる、この「正統派!」という硬派な空気に
最後まで馴染めなかった…。

ちなみにこの作品は、2004年第30回川端康成文学賞を受賞。
川端康成文学賞は、その年1年間のうちで発表された
一番優れた短編に与えられる賞らしい。

面白くなかった、という一言で表すわけじゃない。
ただ、この硬質の世界に近寄りがたくて、
そして余り理解が出来なくて、痒くなる。
読んでいて、あまり面白くない。
エンターテイメント性を求めるわけじゃないけど、
この本の魅力は「ストーリー展開の面白さ」じゃなくて
「ストーリーの味わい深さ」だろう。
この味わいを自分が咀嚼できない、というか、
なんというか、・・・食わず嫌いだ(苦笑)
娯楽作品だけが、「面白い本」ではない。
味わい深い本も、また「面白い本」であると思う。

日向子と小田切。
日向子は先輩である小田切が好きで、ずっと追いかけている。
小田切は小説家を目指していて、そして恋人もいるし、
日向子のことは相手にしない。
でも、日向子と近からず遠からずの関係で、
「友達以上恋人未満」のような言葉で喩えで言うならば、
かぎりなく、友達以上であり、そしてそこには恋人未満という、
「恋人」という言葉はふさわしくない。
振り向いてくれない男をずっと追い続けるという、
片思いの典型的な例だけど、そこには、相手に振り向いて欲しいという
思いよりも、「ただただ好きで、好きだから好きでい続ける」って
盲目的な思いの強さと長さが描かれている。

途中で日向子が小田切に体の関係を求めて、
それがあれば諦められるかもしれないと足掻くシーンがある。
諦めきれないから、その手段か?!と
大きな疑問が残ったのだけど、唯一そのシーンだけ
人間らしい葛藤や俗ぽぃところが感じられて、
なんだか親しみを覚えた。
ツクヅク、自分は俗ぽぃ恋愛が好きで(そしてそれしかできなくて)
「袋小路の男」のようなプラトニックな恋愛は苦手だ。
苦手、というか、実践したことがないからかな。

絲山さんの書く文章は格調高い。
それでいて、堅すぎる事はなく、女性のほのかな色気がある。
文学を感じさせる正統派の美しさ、この本全体から漂う。
よく考えれば、好き嫌い無しにこの本を思うに、
この品格は素晴らしい。上手く文章で表現できないのがもどかしい。
柔らかくもありながら、芯のある雰囲気を醸し出すことは
書き手のもつ才能である、ということかな。

この1冊には、3作収められている。
連作の「袋小路の男」「小田切孝の言い分」、そして
叔父と姪が宇宙の星についてやり取りをする「アーリオ オーリオ」。
一番最後の「アーリオ オーリオ」が好きだ。

手紙をやりとりするうちに、姪が自分だけの新しい世界を作り、
そして想像の世界、内面的な世界を深めていく若さゆえのエネルギーが
叔父の哲の心を揺り動かす。
世界を想像すること、そして、想像したことを誰かと共有すること。
それは絆であり、心の交流であり、二人だけの間で閉じていながら、
どこまでも自由に広がっていく世界である。
やり取りするうちに、お互いの仲が深まっていくのが感じられて、
いい視点から切り取っている作品だと思った。


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