2017 10 / 09 last month≪ 12345678910111213141516171819202122232425262728293031≫11 next month
スポンサーサイト  --/--/--  
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 | スポンサー広告  | Page Top↑
風紋  03/05/2008  
風紋〈上〉 (双葉文庫)風紋〈上〉 (双葉文庫)
(1996/09)
乃南 アサ

商品詳細を見る



『風紋』 乃南アサ

久しぶりに、乃南さんの作品を読みました。
前に読んだのは、確か10年以上前だから、読んだのも覚えてないし。
(たしか、『窓』だったかな)本当に久しぶり。

確かどこかの書評で、乃南さんの作品で、『風紋』と『晩鐘』が
続きものの話だということを聞いたことがあるから。
続き物を書いた、ってことは、それだけ、元の作品に力があって、
そして、その登場人物のその後の生活を描くだけの、
力のある作品なんだろう、と思った。
1つの作品で話が終わりきれなくて、その後の、何年後かのことも
書かせてしまう、っていうのは、それだけ、そこから溢れるもの、
語るべきことがあったからだと思うから、
続編を作ってしまう作品っていうのは、実は好きだったりするのです。

『風紋』を読みながら思ったこと。
非常に緻密で、そして観たまま全て情景を想像できるほど
表現された日常生活の場面が、時にはしつこいほどに、
描き出していること。文量もさることながら、ここまで細かく
この作品を描いているって、非常に作家の力量があるなぁと感じました。

『風紋』のストーリーは、ある日突然起きた殺人事件の話。
犯罪被害者の家族の目を、母を殺された娘の目で描き出し、
残された家族が、傷つき、お互いに心がバラバラになりながらも、
再出発を切らないといけない葛藤や苦しさを描き、
一方では、犯罪加害者とされる容疑者の妻の目から、
犯罪者の家族となった日からの転落を描く。

一人の人間が殺された、という事実には、殺された人間、
そして殺した人間、二人がいて成り立つものだけど、
その殺人は、その二人の周囲の人々、家族の運命をも変えていく。
暴力のような、流れに逆らうことができず巻き込まれていく人々の姿が
この作品では中心として描かれている。
事件は、被害者・加害者だけで終わるものでもなく、その周囲まで、
そして、その事件の余波により、加害者の家族もまた傷つけられ、
被害者となりうる。

読んでいて苦しい作品でした。
母を殺された娘の真裕子が、繰り返し繰り返し、
この事件で、どうして母が殺されたのか、そしてこの事件が
裁判になって、容疑者が裁かれても、そこにはもう母の姿はなく、
死んだ人が忘れられていく事実。
一方の容疑者の妻の香織の視点からは、ある日いきなり夫が
容疑者として捕まり、生活が暗転し、どん底に突き落とされ、
幼い子供を2人抱えながら、これからの将来が見えず、
段々と堕ちていくこと。

どんな結果に終わっても、結局はたくさんの人が苦しみ、
そして、傷つけ、巻き込まれていく。
この非情な事実がとても苦しかったです。

只今、続編の『晩鐘』を読書中。
こちらでは、容疑者とされた松永の息子、大輔の視点から
犯罪加害者の家族として残された人々の人生が描かれている模様。
続編も読み終わったら、この物語の結末が見えてくるかな。

ブログランキング・にほんブログ村へ

スポンサーサイト
オススメの本の紹介 | 作家〔ナ〕行  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑
遮光  10/17/2007  
遮光遮光
(2004/07/01)
中村 文則

商品詳細を見る


『遮光』 中村文則

2003年芥川賞候補になった作品。
ネットサーフィン中に見つけた読書ブログでの
お勧め本だったので、読んでみた。

話は、美紀という恋人を失った“私”の話。
これまで生きてきた中で、家族を失い、
そしてきちんとした人間関係を結べないまま大人になった私。
現実乖離をしている私は、ある日、出張ヘルス嬢の美紀と知り合う。
大きく口を開けて笑う明るい美紀と愛し合うようになった私は
初めて生きてきてよかったと思うようになる。
結婚を申し込んで一緒に生きていこうと決めた矢先、
美紀は交通事故で死んでしまう。
かくて、私がこれまで取り戻せるはずだった、“
喪失した人生”のやり直しさえも“喪失”した私は、
美紀のいない現実を否定しながらしか生きていけなくなり、
よりいっそう、現実から乖離してしまう。
美紀の死体から指を切り取り、持ち去った後、
その指と一緒に暮すこと、そのことを隠すことのみが、私に出来ることだった。


読みながら、私の抱えている息苦しさや重さ、喪失感で
鬱々としてしまいました。少しづつ狂っていく人間の思考に入り込むというか。
押しつぶされたような感覚を覚えながら読み進めていくのは
気が進まないし、好んで手に取りたい、というより、
少し自分から遠ざけておきたいような作品だった。
でも、よく考えると、そこまで感じさせる文章の力は凄い。
これが純文学か~、と溜息をつきながら読み終えた。

私はいう。

『恋人同士がやる典型さに憧れた。
美紀がいれば、私には違う人生があった。
ただ美紀を幸せにしたかった。
美紀と、よくある平凡な生活を、典型的な生活をただしたかった。
美紀の指なんていらなかったのだ。
指なんかよりも、美紀そのものが、ただ欲しかった。』と。

恋人を失ってしまったとしても、現実はずっと流れていて、
そして、一人残されてしまったとしても、否定して嘘をついても、
死んだ恋人をいくら待とうとも、何度も何度も思い出して後悔しても
死んだ恋人の体の一部を持っていようとも、帰ってこない。

著者があとがきにこう書いている。
『どうしようもない事柄、というものがある。いくら平和な国で生活しているとは
いっても、乗り越えがたい苦しみは、確かに存在する。』

乗り越えがたい苦しみ、だからこそ、文章で表し、
それを形にして、生み出す作業が必要だ。
そこに人間として生きる真髄があり、心の深いところにある感情を揺り動かす。
そんな悲しみについて書かれた作品が、この『遮光』である。

読後に襲ってくる重みがあるので、精神状態が余り安定しない時に読むのは
お勧めしないのだけど、でもこんなに鬱々としながら、そして最後まで
その力を維持しつつ走り抜けていくさまは、読む価値あり、だと思います。
泣けるから、感動できるから、というプラスの面だけで本を判断するのではなく、
マイナスな感情を喚起するものであっても。
ここに書かれているのは、人間が太刀打ちできない圧倒的な悲しみだ。


ブログランキング・にほんブログ村へ
ブックレビュー | 作家〔ナ〕行  | TB(0)  | CM(0) | Page Top↑

Blog状況

最近の記事

カテゴリー

訪問者数

メールフォーム