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この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)この本が、世界に存在することに (ダ・ヴィンチ・ブックス)
(2005/05)
角田 光代

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本にまつわる短編集。

タイトルどおり、「この本が、世界に存在することに」ついて、
本と主人公の関係や、それにまつわるエピソードが多い。

快く読める第一編の「旅する本」。
学生時代に読んで古本屋に売った本と、
20代になって、旅行先で遭遇。
逢うたびに売るんだけど、まためぐり合う本。
そして、何年もしてめぐり合うたびに読む返すと、
自分がどれだけ、前回読んだ時と違うのだろうかということを感じる。

同じ本でも、読む自分の年齢や、其の時の状況で、
その本から「読める」ことって、不思議に違う。
あの時は見えなかったもの、わからなかったもの、察せられなかった文章からの
隠喩や雰囲気を、例えば10年後また読み返すときに初めてわかったりする。
それどころか、10年後に読み返した時に初めてわかることもある。

そんなテーマで書かれた「旅する本」は印象に残った。

あと、自分がこの本の中で一番気に入った作品は、「彼と私の本棚」。
5年間付き合った彼と別れた主人公が引っ越しをする話。
しょっぱなから、同棲していた部屋を出て行くために荷物整理をしてて、
そして、二人の共通の趣味であった本を目の前に溜息をついている。

とてもよくにた読書傾向で、お気に入りの本が同じ恋人と同棲した5年間。
この5年間の記憶が本棚に現れている。


・・・・・・・・・・(本分より)・・・・・・・・・


私の目に文字も絵もうつらないのにぽとりと水滴が落ちる。頬をはられたように気づく。だれかを好きになって、好きになって別れるって、こういうことなんだとはじめて知る。本棚を共有するようなこと。たがいの本を交換し、隅々まで読んで同じ光景を記憶すること。記憶も本もごちゃまぜになって一体化しているのに、それを無理やり引き離すようなこと。自信を失うとか、立ちなおるとか、そういうことじゃない、すでに自分の一部になったものをひっぺがし、永遠に失うようなこと。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


誰かを好きになって別れる時の、引き裂かれるような悲しみ。
これが、この文章に表されてて、とても心を打たれた。
「失恋」とはうまく言ったものだ。
好きになって別れるということは、色んな意味での喪失、という言葉が、
凄くよくわかる。二人が共有した時間は「思い出」として残されるけど、
でも、その「思い出」に片付ける作業は、まさに自分自身の心をひっぺがすような、
そして引き裂かれるような悲しみや痛みを伴うもの。
「思い出」という枠に入れざるおえないのに、
いれることが既に喪失の始まりだったりする。

共有した時間は失われない。
いつかは、それを「思い出」として語ることができるし、
心の中で位置づけはできる。
でも、共有した時間は戻ってこない。
永遠に失われて、そして失われてるからこそ、
ずっともち続けていられるんだと思う。

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